ーシャーリーー
ヴァルターお兄ちゃんが日本へ旅立ってからもう半年近くも経つ、…当初の予定を遥かに越えているんだよ!? 全然帰ってきてくれない!!
毎日の連絡はしてくれるけど、直に会えないのはとても辛い。いつも一緒にお勉強をしたり運動をしたりして、終わったら頭を撫でて『頑張ったね。』って。…今はヴァルターお兄ちゃんのお手伝いをして、KMF? っていうロボットを作ったりしている。その時も一緒に作業をして、『シャーリーちゃんは優秀だね、お陰様で作業が捗るよ。』って頭を撫でながら褒めてくれる。…それが私の日常だったんだよ?
…だけど今はヴァルターお兄ちゃんがいない、頭を撫でてくれる優しい手がない。ドロテアお姉ちゃんとモニカお姉ちゃん、マリア…黒髪美人さんや特派の人達は優しいけど違うんだよ? やっぱりヴァルターお兄ちゃんじゃなきゃ私は嫌だ、……ヴァルターお兄ちゃんの手が一番なんだよ!
…黒髪美人さんが、『近々ヴァルター君が戻ってくるわよ、…新しいお友達を連れてね♪』と言ってきた。新しいお友達がどんな人達なのか気になるけど、それ以上にヴァルターお兄ちゃんが帰ってくるっていうことが嬉しい! ドロテアお姉ちゃんとモニカお姉ちゃんが特に嬉しそう、特派の人達も目を輝かせている。超硬度大太刀だっけ? アレでも完成度が高いもの。ヴァルターお兄ちゃんが帰ってきたら、…更に凄いものになると確信しているみたい。私はそれも凄く楽しみだけどやっぱり一番はヴァルターお兄ちゃんだよね!
…それにしてもヴァルターお兄ちゃんはイジワルだ。毎日連絡を取り合っているのに、近々帰るってことを私に教えてくれないなんて。…黒髪美人さんはマリアンヌ様、そしてヴァルターお兄ちゃんの直属の上司みたいなお方だから仕方がないんだろうけど。…まぁヴァルターお兄ちゃんが帰ってくるならいいや、半年近くも甘えられなかったんだから一杯甘えちゃおう! ドロテアお姉ちゃんやモニカお姉ちゃんには出来ない私だけの特権なんだから! ………~♪
帰ってくると分かっているから、毎日の連絡もご機嫌な私。…だけど『ヴァルター君、緊急の事案がどうのってことで帰国が先延ばしになったって。』と黒髪美人さんが。それを聞いた私は頭の中が真っ白に、ドロテアお姉ちゃんとモニカお姉ちゃんの顔が般若に。…どういうことなの? ヴァルターお兄ちゃん。
………黒髪美人さんから聞いたこと、今日の夕方にヴァルターお兄ちゃん本人から聞いた。自分専用の刀を打って鍛えて貰えること、超硬度大太刀に役立つであろう技術を学べることが嬉しいと弾んだ声で聞かされる。…ヴァルターお兄ちゃんのバカ! そんな嬉しそうな声で話されたら文句が言えないよ!!
……………………うぅ~っ!
…………声だけじゃあ寂しいよ、……ヴァルターお兄ちゃん。
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ードロテアー
ここ最近むしゃくしゃする。何もかもが気に入らない、大好きな鍛練にも身が入らない。…私の心が安定しないこと、それが原因だって分かっている。そしてそんな風に私の心を乱している年下の男、ヴァルター・バーンシュタインが原因であることは確実。
いつもなら共に鍛練をしている、KMFとかいうロボットのテストを強制的にやらされる、雑談は基本的に聞き流しつつもたまに絡んでくる賢しさ、何だかんだ私のことを考えて栄養価の高いバナナを無理矢理渡してきては悦に入る。何かと絡んでくるヴァルター、…私は気付いてしまった。奴は私のことが好きなのだと!
確信に変わったのはアレだな、私を頻繁にデートへ誘うという行為。断れば…しょんぼりとする顔を見て、あ…コイツ私のことが好きなんだと気付いてしまったのだ。そして私自身もヴァルターが好きであると気付いた瞬間だ、……どう考えても好き。そんないつも良い距離感で私と歩んでくれている彼がいない、このブリタニアにいないことがイラつきの原因であることは明白。
マリアンヌ様が総指揮を取るKMF計画、それに命を懸ける勢いで主導しているヴァルター。そのKMFの為に日本へ行っているのだ、…この私を置いてだ。…まぁ私個人に連絡を入れてくれることについては評価が出来る、…シャーリーとは違い週一だけど。…シャーリーを妹のように可愛がっているからな、それは仕方がないと割り切れる。…がモニカと同じ扱いというのが不満、そこは差をつけろと声を大にして言いたい。
ヴァルターに会えない、しかも声は週一だけ。…彼に会えないだけでこうも余裕がなくなるとは、う~む…由々しき事態だ。少しでもいいから落ち着かなければ、…そう考えている私を嘲笑うかのようにヴァルターからの連絡。『…帰国が遅れる、やるべきことが増えた。』と、驚くべきことを言ってきたのだ。しかも最後の方に、『ヴァルター君、着替えとかの準備は出来たよ。』とか、『…百華ばかり、…私にも構え!』って。女の声が聞こえた、…女の声が聞こえた! しかも二人!!
マリアンヌ様からヴァルターの帰国が遅れると聞いた時、…イラッと来た。そして今、本人から聞いて怒りが湧いた。仕事で行っている筈なのに観光を楽しむ、日本人五人をバーンシュタイン家で雇う等、私的に何をしてるんだと多少のイラつきはあった。…が女は許せん、しかも二人。凄く仲が良さそうだった、…めっちゃ牝の声。…何をしているんだヴァルター! …私という女がいる癖に!!
…更にイラつく私に対し、同世代の男共がいらんことをしてきた。私がヴァルターに捨てられた、遊び人のガキにフラれた哀れな女、自暴自棄になった男女とバカにしてきたのだ。…男というのはバカばっかり、何かあると直ぐにちょっかいを掛けてくる。ガキはお前達だろうに、…小学生かっての。
内容的に今の私には刺激が強い、即ち頭にキタッ! …というヤツだ。片っ端から舐めた口を利いた男共を粉砕、ヴァルターの足下にも及ばないザコと逆にバカにしてやったわ!
…これで少しは気が紛れたか。まぁ…紛れたとしても、ヴァルターが帰国したら一言言わねばならない。私のようないい女がいるのに浮気とは何事だ! …とな。
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ーモニカー
ヴァルターがKMF関連の為に日本へ、その日から私の日常が少しだけ張り合いのないものとなりました。常に目標となる彼がいない、常に前を歩く彼がいないだけでこうもやる気に揺らぎが出てくるなんて。それほど彼…、ヴァルターが大きな存在であるということなのでしょう。
…まぁ目標の他に私が彼に恋をしています、それが一番の理由であることが挙げられるでしょう。私の出会いが悪かったせいで、ヴァルターは私をその対象に見ていないですけど。それでも私に振り向かせてみせる、この気持ちだけは揺らがないと思います。
恋のライバルは二人、シャーリーちゃんとドロテア先輩。特に危険なのはシャーリーちゃん、距離が一番近くてヴァルターが贔屓をする女の子。私とドロテア先輩を適当にあしらう癖に、シャーリーちゃんを猫可愛がりするのです。せめてもの救いは兄=妹の図式であること、…シャーリーちゃんが恋を自覚したら即オチするであろう関係。…ドロテア先輩は私よりも出会いが早いだけ、はっきり言って脳筋で勘違いをする人だからどうとでもなるかと思います。敵ではないけれど注意は必要でしょう、脳筋だからこそ行動が読めない…というわけです。
ヴァルターは自分に厳しいが人にもなかなかに厳しい、私は彼に失望されないように頑張っているつもりです。学校で学ぶことは当たり前、それ以外に鍛練と勉強を、特派での仕事も全力でこなさなければ彼に付いていくことが出来ないでしょう。
ヴァルターはマリアンヌ様の一声で学校には通っていません、それ故に年上世代、同世代、年下世代に侮られます。同性との仲があり得ない程に悪いのです、これ程にまで嫌われるようなこと等一切していないのに。…逆に女性からは一定の支持があります、私の地道な布教が結果を出しているのでしょう。
これもまた恋の作戦の一つ、仲の良い先輩、同級生、後輩に既成事実を植え付けているのです。学校へ通っていないヴァルターが相手だから出来る作戦、外堀を埋めていき周囲にそれが事実であると認識させ、更に鈍感系であるヴァルターに自覚させるのです! 貴方は私と恋人同士であると思われているのよ…って。少し抜けているから彼は、『そうだったのか!』って受け入れてくれると確信しています。………ウフフフフ♪ ゴリラなドロテア先輩には出来ない渾身の作戦なのです♪
ヴァルターがこの場にいなく連絡は週に一度だけ、そんな毎日でもいつも通りの日々を送れるよう心掛けています。彼がいないからモチベーションが少しアレだけど、私は頑張っていますよ? ヴァルター。ここ最近は同級生のリーライナ・ヴェルガモンがヴァルターに会いたがっているのだけど、後…他にも数人の女性が同じように。………布教しすぎたかしら? 外堀を埋める筈がライバルを増やしてしまったような気がします。
…そしてマリアンヌ様から聞かされたこと、その後の連絡を経て私は自分の甘さを呪いました。まどろっこしい策を実行せずに、ぐいぐいとアピールをすればよかったと。…火焔と百華? …シーツー? …ヴァルターはナンパをしに日本へ行ったの? …私がグダグダしている間に女を侍らしていたなんて!
…更に努力をしていい女にならなければならないようですね。ヴァルターが私を目で追ってしまうような魅力溢れるいい女に、…ポッと出の女性に負けるわけにはいかない。
じわじわと恋に変わっていくシャーリーちゃん。
そしてドロテアは勘違いをしています。ヴァルターはドロテアに対して愛よりも友の方です。
モニカは地道に外堀を埋めようと奮戦するも、敵を増やしてしまう失策を。
彼女達はどうなってしまうのか? 作者にも分からんのです。