新年の挨拶がめっちゃ遅いですね。
仕事で疲れていまして、何も考えられなかったんですよ。
ーセシルー
私には夢があります、技術者として何かしらのモノを作るという夢が。何かしらと言っていることから分かるでしょうが、何を作り何を為すのかがまだ未定です。ただぼんやりと空を飛ぶナニカ、出来れば色々と盛り上がりつつあるKMFに携われないかな? と思っていたりします。
未来を見据えて自身の構想を図面に書き込んでいます、それをPCに入れて大切に保管していた筈でした。なのに何故か外へ流出してしまったようで、…KMFの最前線でトップを走る特派に召集されました。予期せぬことに驚きつつも、私は降って湧いた幸運に感謝をしました。
因みに私の構想は漏れたのではなく、私自身が特派にその構想を送ったようで。…無意識ですよ、…それ。…まぁ召集されたのでいいですが、…今度から気を付けないと。
特派に召集されて配属された部署は、ヴァルター・バーンシュタインさんが代表を務める新型KMFを開発する所でした。…彼の名は良く知っています、類い稀なる才能を遺憾なく発揮する天才。特派が最近公表したテスト機『士魂号』という名のKMF、その開発に多大なる貢献をした私よりも一歳年下の男の子。年下ながら尊敬に値する技術者、何せ『士魂号』のデータをライバル筆頭のアッシュフォード財団と他の研究機関に渡したのですから。
それを聞いた時、私はなんて馬鹿なことをするのだろうと評しました。私の周囲は彼を酷く馬鹿にしていましたが、世間一般的に考えればそれが正当な評価であると思います。…しかし、彼を含めた特派の技術者達はその酷評を笑い飛ばしたのです。『我々が考えなしにデータを渡したとでも? …そんな馬鹿なことをするものか。…我々が一人勝ちをしても意味がない、多方面からの視点でKMFを開発せねば停滞するのみ。…故にデータを渡して競争をする、互いに切磋琢磨してこその進化…良いモノが開発出来ると信じている。…貴卿等が進めば我らは更に先を歩む自信がある、負ける気は一切ないと言わせて頂く。…見物であるな、渡したデータを使いこなせるか否か。奮起してくれたまえ、…我らが特派の為に。』…と、ヴァルターさんが代表してこのコメントを発表。この言葉の意味を理解した者は奮起し、理解せぬ者は更に彼等を酷評し馬鹿にしたのです。
…私は理解しましたよ? だからこそ尊敬していますし、私のあの構想が産まれたのですから。それにヴァルターさんと直に会ってみて分かりました、ああこの人はとても凄くて素敵な人なんだな…と。顔面狂気と評される程の強面ですけど、その内面はとても…とても好ましかったと言っておきましょう。
………はい、恥ずかしながら一目惚れです。…この人の為に私、セシル・クルーミーは特派で成果を上げてみせます!
『士魂号』をマリアンヌ様に取られたらしく、ヴァルターさんは新たなKMFの設計図を作成したそうです。現時点で出来うるであろう限界ギリギリのKMF、『サムライ』と名付けられたソレは『士魂号』を超えるスペックのモノになるとのことです。…これ程のモノを開発しきれるのでしょうか?
…と思いましたが開発をする前に、ヴァルターさんとその補佐であるシャーリーちゃんが私達の為に設計図を細かく、そして分かりやすく書き直しているではありませんか! そんなことは無用です!! …と思ったのですけど、原案となる設計図を見た瞬間項垂れました。私と一緒に召集されたメンバー全員が、辛うじて分かる程度でしかなかったのですから。…凄すぎます、新しい技術が多いのです。これじゃあ分かりませんよ、…悔しいですけど。
最年少のシャーリーちゃんに負けている事実に、私を含めた召集メンバーはプライドを傷付けられました。そんな私達を見たヴァルターさんが、『シャーリーは私が色々と教え込んだ逸材、まぁ…気にするな。』…と言ってきましたが気にしますよ! 負けているんですよ?私達は…!!
未熟とはいえ、技術者としてのプライドがある私達はそのことをヴァルターさんに語りました。…そうしたらヴァルターさんが笑顔…と言えるか分かりませんが狂気を含む顔で、『諸君らのやる気、十分に分かった。…故に提案させて貰おうかと思うがよろしいか? 私を信じてくれるなら、諸君らを高みへと上げることが出来る。…まぁ条件として、短期間ではあるが私と共に行動をして貰う。…出来るかね?』と私達に言ってきたのです。…多少の不安はあるけれど、私としては一目惚れをしたヴァルターさんと共に行動出来るなら…と。
まぁ…後悔しましたよ? …高みへ上がれたのだから良かったんですけれど。
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特派の施設に着いた時、ヴァルターさんは既にいました。しかもシャーリーちゃんやマリアンヌ様の開発チームの方々まで、遅いのは私を含めた新人技術者達。特に遅れたということではないようで、ヴァルターさん達は誰も私達を咎めたりはしませんでした。…けれど、『そういえば言っていなかったな。…高みを目指したいのなら、明日からは後二時間…早く来てくれ。』と言われました。
よくは分かりませんでしたけど、言われた通りに明日からはもっと早く来よう。そう決意したのはいいですけれど、…何故に先輩技術者の皆さんは晴れ晴れとした表情で爽やかな汗をかいているのでしょう? 技術者の仕事はKMF関連ですよ? 汗をかく程のものなんてあるかしら? そもそもこんなに朝早く? ここは何も無いただの広い場所よね? …本当に分かりません。
次の日から言われた通り早く来ました。…そこで見たものは、ヴァルターさんを筆頭にそれぞれ鍛練やら組手やらをしている先輩技術者の皆さんがいるではありませんか! …ヴァルターさんなら分かります、今は技術者として活動していますが元々軍人志望の方ですから。その強さはこのブリタニアにて知らぬ者はいません、国に仕える者は皆さん知っています。そしてシャーリーちゃんもまだ分かります、ヴァルターさんを目標に行動をしているようですから。…でも先輩方は分かりません、何故に技術者であるのに鍛練や組手をしなければならないのか? …不思議で仕方がありません。必要ないのではないか? 率直にそう思います。
そう思っていた矢先、私達も鍛練と組手に強制参加をさせられました。ある程度の護身術は身に付けていますが、軽めとはいえ軍人式のモノをやらされるとは。…開発へ精を出す前に心身共々ぼろぼろです、何が何やらと思いつつ二週間近くは軽めの鍛練と組手をやらされました。…因みにその間は開発不参加です、出来る筈がありませんよ。
一時期軍人を目指したことからある程度の体力が自身にあると思っていました、故に技術者としては合格点であると。…ですがそうではありませんでした、まだまだ程遠い自身の体力。そもそも技術者集団である特派でこのような目に遭うとは、…心が疲弊してしまいます。…そんな時に今度は開発に加われと? …まぁヴァルターさんはシャーリーちゃんと今まで二人だけでしたからね、たまにドロテアさんとモニカさんが手伝いに来ているようですけれど。
私を含めた新人技術者の開発チームがダラダラと部署へ行ってみれば、召集の際にはなかった資材やら設備が用意されているではありませんか。…というか、まだ開発をしていなかったのですね。…え? 私達がいない中で開発などする筈もなしと? …共に作り上げてこそのチームですか、…それは何とも嬉しいですね。それに私達が鍛練をしている間に設計図を更に分かりやすく書き直したらしく、新しい設計図はとても分かりやすいです。…ヴァルターさんと鍛練をし、自主的にもやっていた私達が何故に設計図を理解できるのか。分かりやすいと言っても、新しい技術が多くて理解出来なかったんですよ? それが理解出来る、…正直解せません。しかし理解出来るのであれば自身の仕事が出来る、先程までのダラダラとした態度が一新。ヴァルターさんと仲間達と共に、一丸となって頑張りますよ!
…鍛練ばかりの日常からやっと開発に入ることが出来ました。…そして驚愕、…これはもう本気で。ヴァルターさんとシャーリーちゃんが高速でKMFのパーツを二人で作り上げていくのですから、…この二人は人間ですよね? と思う私は正常だと思います。この二人に私は…、私達は付いていけるのか?
………………………………何て思っていたら、…………出来ました。…私を含めた新人技術者は二人に及ばないまでも、以前より身体のキレが違います。スムーズに身体が動くのです、…びっくり!
設計図が分かりやすくなったにしてもこれには驚きます、一体全体何が起きているのか? 自身の身体がミラクルです。以前の私よりも三倍は早いかと、…そもそも私にはこれ程の技術力はなかった筈。………夢オチではないですよね?
自分自身の謎の成長に驚きながら働いていると、『私を信じれば高みへいけると言った、…嘘ではなかっただろう? …私は人を教導する素質があってね、…それが成果なのだよセシルさん。』とヴァルターさんが声をかけてきました。…教導する素質どころではないと思うのですが、…まぁいいでしょう。ヴァルターさんを信じて頑張った結果であることにします、…世の中結果が全てですものね。
自身の謎の成長に驚愕しながらも、新型KMF『サムライ』を開発していく私達。その開発速度は人間離れをしています、特派以外で開発しようものなら二年の月日が掛かるかと思います。何せ新しい技術が目白押しですからね、それを理解するのにどれ程の時が掛かるのか。…………二年では無理かもしれませんね、…きっと。
まぁ開発速度がどうのっていうのは置いておきましょう。とにかく『サムライ』が驚異的な速さで組み立てられていくのです、…私達の手で。本来であればこれ程の開発速度、誰か一人倒れても可笑しくはない筈。なのに私を含めて皆がピンピンしているのです、毎日元気に開発作業をしています。教導と言い張るヴァルターさんは神でしょうか? ………………素敵です。
開発をしている中でも皆に気配りをしてくれます、何よりその技術が凄くて尊敬を一心に集めています。気になるのがマリアンヌ様との距離がとても近いこと、三日に一回はじゃれています。まぁ私にも手取り足取り色々と教えてくれますからいいんですけどね。今日も手と手が触れ合って……………、ウフフフフフ♪
そして新型KMF『サムライ』はほぼ完成しました。その素晴らしい姿に皆が歓喜し、当然のことながら私も全身で喜びました。ヴァルターさんだけは眉をハの字にして不満顔、逆にシャーリーちゃんは跳び跳ねて喜んでいます。マリアンヌ様も別部署ながらお祝いに馳せ参じ、マリアンヌ様チームの先輩技術者の皆さんも自分のことのように喜んでいます。特派一丸となって喜んでいます、苦労した甲斐がありました。
後はテスト運用をして完成、…の筈なのですがヴァルターさんが不満を漏らしたのです。超硬度大太刀が未完成とのことで、…私としては良い出来だと思いますよ? 同じくシャーリーちゃんも。なのにこれだけは譲れないとのことで日本へと旅立ってしまいました、…ヴァルターさんは完璧主義者?
…本音を言えば後学の為に一緒に行きたかったな…って、近くでヴァルターさんの行動を見たかったです。…とりあえずは『サムライ』のテストをきっちりとやりましょう、いつヴァルターさんが帰ってきてもいいように。
………そういえば、特派に召集された要因のアレでも研究しましょうか? 今の私なら良いところまでいけるのでは? …成果を挙げればヴァルターさんが更に目を掛けてくれるかも。
………………………うん、今すぐに研究をしましょう。『フロートユニット・エナジーウィング』の研究をね、成果次第では『サムライ』が空を舞います。…私とヴァルターさんの共同で空を舞う、………何て素敵な光景なのでしょう!
気合いを入れるのよ! セシル・クルーミー!!
自分で言うのもあれですが、…何か違う。
名も無き技術者の話になる予定がセシルの話に。
セシル、…俺は嫌いではないですよ?
だからかなぁ~…、セシルの話になったのは。
とにかく疲れているけど、頭をフル回転して頑張ります。