何てこった。
………本編のつもりが閑話。
再び舞台は特派。
ー名も無き技術者ー
私は特別派遣嚮導技術部、通称特派の名も無き技術者である。
私達はKMF開発にて
私はマリアンヌ様が代表を務める開発チームの一人だ、テスト機である『士魂号』を元にKMFを開発している。…今回は『士魂号』をランクダウンさせる、…何故にわざわざランクダウンさせるのか? 普通にそう思うだろうが必要なことなのだよ。何せ『士魂号』は替えのないテスト機であり高コストのKMF、現状では量産不可であり機密の塊なのだ。故に『士魂号』を元にして新型を開発している、低コストでありながら高スペックのKMFを。
まぁ機密の塊と言いながらも、そのデータを他の機関に送ったりしたが。…送ったのは初期のデータであるから脅威にならない、逆にそこから何かを掴めたのなら称賛に値するだろう。私達としてはそれを願っている、やはりライバルは強力な方が遣り甲斐があるしな。…どうかそのデータから独自の技術を開発して欲しく思う、さすれば私達も更に奮起出来るというもの。…抜かれることはないと思うが油断は禁物、常に驕らず研究・開発に鍛練を続けなければ。
他の機関がデータを元にKMFを開発しているであろう中、私達は低コスト高スペックで更に『士魂号』を小型化した新型KMFを開発した。ヴァルター君がいない中での新型完成だ、これ程嬉しいことはない。ヴァルター君チームの『サムライ』が良い刺激になった、ありがとう…ヴァルター君!
この新型…完全ではないけれど、『士魂号』の下でありながらアッシュフォードの『ガニメデ』よりは上のKMF。聞くところによると『グラスゴー』なるKMFを開発中とのことだが比べるまでもないだろう、…私達の新型の方が素晴らしいと言い切る。
…新型KMFの名は『互尊』という、…何? 何故に日本名で名付けたのかだって? …そんなのはアレだ、『士魂号』の流れを汲むKMFであるのと同時に、私を含めた大半の技術者が日本好きだからだよ。…ヴァルター君の日本かぶれに感化されたわけだ、…分かったかね?
とにかくこの新型KMF『互尊』は出来立てホヤホヤの機体、テストは十二分に行われている。汎用性を重視し、換装によって仕様が変わるようにする予定だ。しかし換装は現段階で構想のみ、作るとなるとなかなかに難しい。故に現状では通常型と白兵型、狙撃型の三種三機を作らせて貰った。この三機をそれぞれでテスト運用をし、問題点を洗い出しながらデータを蓄積させて換装を目指すのだ。
因みに『互尊』の白兵型を乗り回しているのはマリアンヌ様、無茶をしないよう言ってもやらかすから困ったものだ。…どうせヴァルター君に操縦の腕で負けたからだろう、彼は今…日本にいるからな。戻ってくる前に腕を上げてドヤ顔をする予定なのだろう、…マリアンヌ様は大きな子供だな。
…後の通常型と狙撃型は開発チームの主任と副主任がテストをしている。元々そういう技術を持っていなかったのだが、ヴァルター君が主導する全体鍛練のお陰で取得したらしい。この鍛練…乗り気ではなかったのだが、『健全な研究・開発は、健全な肉体に宿る。』とヴァルター君が演説が如き熱弁を私達に向けて語った。その圧倒的な雰囲気を纏いし熱弁の前に私達は、日々の鍛練や組手に汗を流すこととなる。そのお陰で十分過ぎる程の体力が身に付き、頭が冴えたことにより研究・開発が進み『互尊』というKMFが誕生したのだ。…ヴァルター君には頭が上がらない、感謝の極みである。
『互尊』三機のテスト運用をしながら、専用の武装を考えるもしっくりこない。現在テスト運用中に使用しているのは『士魂号』用の武装、規格が合わない為にどうにも正常なデータが取れないでいる。まぁ無理に使用しているからな、仕方がないと言えるが問題が起きる前に開発せねばならない。…規格が変わるだけでなかなかに難しい、四苦八苦してしまう。単純に『士魂号』専用武装を小型化するにもね、何か違うと思っていた矢先にヴァルター君からの定期連絡が………。
その連絡時に新型KMF『互尊』のことを話した、するとヴァルター君が物凄い勢いで食い付いてきた。食い付きついでに設計図があるとのことで、それを参考にしてくれたら嬉しいと言われた。…言葉通りに彼の研究室へ設計図を取りに行けば驚いた、この設計図…少し手直しをするだけで『互尊』の規格に合う。……何という用意周到、いや…開発しようとしていたモノを私達が先にってことになるのだろうか? …だとしたら嬉しい限りであるのと同時に、自らの案を軽く提供するヴァルター君の度量に頭が下がる一方だ。…これはもうより良いモノを開発して報いねばわりに合わなくなる、気合いを入れて武装の開発をしなければ!
ヴァルター君の好意に甘え武装を開発したり設計したり、確実に私達特派の技術力が上がっている中で起きた。『『『決闘だ!!』』』の叫び声が施設内に響き、現場へと向かってみれば主任と副主任が対峙していた。注視していると、『先に開発するのは私が設計した閃光弾だろう!? 強力な閃光で相手を怯ませる牽制武装に決まりだ!!』と主任が怒鳴り、『牽制は所詮牽制でしかない、まずは相手を射程外から撃ち抜くことが可能であるロングバレルライフルこそが必要であると何故分からん!!』と副主任が怒鳴り返す。…そこから始まる決闘、…という名の殴り合い。…………何をやっているのか、…この二人は。
…壮絶な殴り合いをハラハラと見詰める同僚達、………とは裏腹に私はこの場を立ち去る。この隙に私が推す『超硬度刺突剣』を開発してしまおう、そう思った矢先に殺気を感じた。振り返ってみれば、決闘という名の殴り合いを演じていた二人が私を見ている。顔の所々に痣を作り、口元からは血が滲んでいる。総じて技術者には見えぬ面相、それが私を見ていたのだ。
………危険を察知した私は身を翻して離脱を決行、背後からは『『待て!漁夫の利を狙う卑怯者!!』』と叫びながら追ってくる二人。…私は捕まらんよ!
これが特派の日常の一コマである。…因みに私は何とか逃げ切り開発室を数人掛かりで確保、無事…『超硬度刺突剣』を開発することに成功した。更にコイツをマリアンヌ様が気に入ってくれた時の喜び、…それを見てもんどりうって倒れた主任と副主任が笑えた。
『互尊』の性能はサザーランド級。
現在通常型、白兵型、狙撃型の三機だがテスト運用の後に換装の目処が付き次第、通常型を基本として換装システムを組み込む予定。
あらゆる局面に対応出来るKMFを目指し、ヴァルター派の主力にする予定。
『サムライ』と『互尊』の誕生により、格下とはいえ『グラスゴー』の開発も早まり性能も上がった。『サザーランド』の開発も早くなることだろう。
シャルルの構想である競争と進化は、順調にブリタニア国内に浸透している模様。
……という感じになるのか?
因みにヴァルターの演説が如き熱弁はアレです、芝村的演説です。まぁ言わずとも分かるか、…うん。
ガンパレとかでも決闘はあったよね。
来須とののみとか、…勿論ののみは負けてたっけ。
数日後、ののみの死が発覚。食料不足らしいけど本当に? …って思った俺は間違いではない。