==施設に残された元Vault76住人の残したメッセージ==
キーカード、コードの断片集めは想像以上に苦労する事となった。
と、言うのもキーカードはカーゴボットと護衛のベルチバードを撃破して回収せねばならず、カーゴボットが想像よりも早く弾が普通に当たらない。
更に厄介なのは逃げ回られる事でスコーチの群れやフェラルの群れ、果てはヤオグアイとまで遭遇して割と命の危機に陥った事だ。
途中でスコーチからはぎ取ったライフルが無ければ墜とせなかっただろう。
次にコードの断片探しだが、これもまた手間が多く、またアパラチア中を走り回らされた。
ただ、走り回らされたがキーカード程死ぬような目には合わなかった。
いちいちホワイトスプリングに帰還するのが大変だったが、其処はもう諦めるしかなかった。
そして集めきって俺はフリーズした。
暗号の複合方法がさっぱり解らなかったのだ。
俺自身それなりに頭は回る方だと思うのだが、残念ながら知恵と言う方面では閃き的なモノが働いた試しが無い。
それが出来るようなら俺は整備士ではなく開発者になっていただろうしな。
なので、全力で助けを求める事にした。
『Vault76居住者諸君、聞こえているだろうか?俺の声は届いているだろうか?
俺はVault76整備士だった爺だ、どうかスコーチ病根絶の為に知恵を貸して欲しい。
現在ホワイトスプリング・リゾートで奴等を根絶する手段を見出したのだが、どうしても俺一人では解決できない問題がある。
そしてその先にあるのはスコーチビースト、そして奴らの女王であるクイーンとの戦いだ。
かつてこの地でアメリカの、人類委の復興の為に戦った組織の遺した情報によりワトガ南東にある奴らの巣を攻撃し、クイーンを倒す。
そうすれば少なくとも今の状況は随分と改善される、スコーチ病に怯えないで済む未来を得られるかどうかという瀬戸際だ。
そして、その手段とは巣の破壊方法はシンプルだ、核ミサイルを撃ち込む事だ。
賢明な諸君は愚かな考えだと思う事だろう。
だが、奴らを滅ぼす為に我々に残された時間はどれほどだ?
奴らがこのアパラチアの外にまで出てその生息域を増やすまでの時間はどれほどある?
かつて、この地で戦って命を懸けて我々が地上に出るまでの時間をつないだ人々が居た。
命を懸けてスコーチ病の抗体を作ったレスポンダー達。
死ぬと解っていてもスコーチに対する警戒網を用意し力尽きたフリーステイツ。
そしてこの命懸けで時間を稼いだB.O.S.が居た。
彼等が遺した総てが我々が未来に進む為の遺産となって今の我々がアパラチアで生きる礎となった。
そして今度は俺達の番だ。
俺達がこのアパラチアの、アメリカの再建の為に命をとして奴らと戦い、勝たなければならない。
核ミサイルの使用と言う愚行を繰り返してでも……それでも人類の未来の為に勝たなければならない。
どうかこの放送を聞いているVault76居住者諸君、スコーチ根絶の為に力を貸して欲しい』
それから暫く、数日するとホワイトスプリングに段々と人が集まってきた。
中には当然俺を止めようとする声もあった。
だが、俺が集めた情報を伝え、彼らの遺したホロテープを聞かせると段々と状況を察した。
更に、俺が撮影した巣の周辺写真も見せればどれだけスコーチ化したアボミネーションに溢れかえっているかも理解したようだ。
何せマイアラーク全種揃った上でフォグクロウラーもいてその上でスコーチビーストも出てくる、その上で大量のそれらの頂点に立つのがスコーチビーストクイーンだ。
それらの脅威は察して余りあるものだった。
故に彼らは核の脅威を理解しつつも俺に協力し、それ以上の脅威であるスコーチ病の拡散を止めるべくこの作戦に参加する事を決意してくれた。
賛同を得られてからの話は早かった。
先ず暗号の複合があっという間にできた。
次にミサイルサイロ・アルファに乗り込み施設を全員が重武装のPAで完全制圧した上で遂に発射の段階となった。
後は場所を設定し、ボタンを押すだけと言う段で若者たちのリーダー格の男女に少し待ってくれと声をかけられた。
「爺さん、アンタが今回のリーダーだ、発射前に声掛け頼むぜ」
「そうね、整備士のおじさん、頼むわよ」
他にも同行してくれた若者たちが同じように声をあげる。
「……人は過ちを繰り返す。
有史以来、何度も戦争という過ちを繰り返してきた、この核ミサイルと言う力はその象徴だ。
俺のご先祖は人類で初めて核を落とされたニホンのヒロシマ出身だったそうだ。
全てがたった一つの爆弾であっという間に落とされた。
放射能の毒が人々を長く毒し続けた。
故に核を用いるのは悪い事だと教えられてきた、これに関しては戦前のアメリカ国民にとっても同じだろう。
俺達はその核の脅威から運よく逃れた人間だ、そしてお前たちはその脅威から逃れた両親や祖父母を持つ者達だ。
この中でヌカランチャーの爆発を見たことがある人間は?
はっきり言おう、核の爆発はあの程度では済まない。
この一撃はスコーチの巣とあらゆるものを吹き飛ばし、そして強烈な放射能汚染をばらまく事になる。
だが、放射能汚染も何時かは晴れるだろう。
しかしスコーチ病は放っておけば拡大するばかりだ。
そして奴らが拡大すれば俺達も死を待つばかりだ、先人達の様に。
俺達の使命は何だ!」
「アパラチアの再建!」
「ウェストバージニア州の再建!!」
「アメリカ合衆国の再建!!」
「文明の再建!!」
「再建!!」
「再建!!」
「再建!!」
「過ちを繰り返してでも、奴らを止める。
未来の為に!!」
「「「未来の為に!!」」」
そして25年ぶりの核ミサイルがアパラチアに降り注いだ。
光と衝撃波が一瞬で着弾点を食い荒らし、抉り、吹き飛ばし、猛毒の放射能が大地を汚染した。
それは狙い通りにスコーチビーストクイーンの巣穴さえも蹂躙し、多くのスコーチを滅ぼしつくした。
だが、それでもクイーンは生き残った。
そして訳も解らず同胞を死滅させ、巣を破壊した何者かに怒りを燃やした。
必ず復讐せねばならないと。
或いはこれをできる何者かを我々に取り込めば恐れるものは何もなくなるとも。
しかし、考える以上に今は巣穴からの脱出が必要だった。
長い時間をかけて築き上げた巣穴は先ほどの攻撃で今にも崩れ落ちる寸前だ。
そうして随分と久しぶりに外界の光を浴び、空を飛ぶ。
直後に強烈な衝撃と熱と炎が自身に何度も叩きつけられた。
意識が一瞬跳ぶ。
しかし続けざまに痛烈な激痛が自身に幾つも刺さり、痛覚で意識が強制的に覚醒する。
我々よ、助けろ!
「ミサイル喰らってまだ生きてるのかあの化け物は」
「核を直撃では無いとは言え耐えたんだ、さもありなんだな。
鉛玉にプラズマ、レーザーも浴びる程にたらふく食わせてやれ!」
「余裕がある奴は防御陣地構築急げよ!前衛PA隊、少しで良い時間を稼げ!」
「屋根を忘れるなよ!後、空だけじゃなく陸から他のスコーチ感染者共が来るからタレットの設置を忘れるな!」
「ならここで拾い物のロボット達の出番ね!こいつらにも弾幕張らせるわ!」
「弾薬補充用意できました!薬品は準備中です!!」
「放射能汚染に注意しろよ!」
多くのVault76元居住者がそれぞれに出来る最善を尽くしていた。
クイーンのみならず、スコーチ化した数多くの敵を前に力尽き膝をつく者もいた。
誰一人として最後の瞬間とて役割を放棄しなかった。
最早弾が尽き果て、壊滅寸前の元居住者たちの前に、多くの配下を殺され息も絶え絶えとなったクイーンが降り立った。
「くたばれ、蝙蝠野郎!!」
最期の一撃、文字通りの鉄拳を見舞い、クイーンの頭を潰したのはT-61Aパワーアーマーを纏った青年だった。
彼の事はよく知っている。
第三世代の若者たちの中で一番良くも悪くも目立っていた正義感があり、カリスマもある男子だった。
その光景に何となくだが、既にバトンが渡りきり、時代は切り替わったんだな、と思った。
為すべきは為せた、ならば老人の出番はもう終わりだろう。
どうにも急に体の力が一気に抜けていく。
立っているのも億劫だ。
視界が黒く染まった。
「爺さん!!」
クイーンの討伐成功から数日後、スコーチの活動は以前よりも明確に連携が悪くなり、また弱まっていた。
元居住者の何名かはあの戦いで帰らぬ存在となった。
あの戦いに参戦が間に合わず後から駆け付けた者は自身の無能を悔いて、しかし戦場からの後退において彼らを助けた。
「しっかし、監督官の婆ちゃんもスゴいけどあの整備士の爺さんもかなりスゴいよな」
「あぁ、確かに……私達もかなり頑張ってアパラチア中を旅してたが大体の場合監督官のホロテープかあの爺さんのメモ書きや注意書きが残ってたな。
しかも、時々割と大きめの休憩所まで作っていたし」
「他の爺さん婆さん達はどうにも力尽きている人が多かったしな、俺達の世代も何人も道半ばで…」
「それでも、今回の件で難敵の一つ、スコーチは大いに弱体化する筈だわ。
なら、後は本格的な再建こそがあの人達から託された私たちの使命……でしょ?」
「そうだな……それじゃあ、行くか。アパラチアの為にしてやれる事は沢山ある」
「そうね、私達の再建を始めましょう」
25年の歳月を経て開かれたVault76の居住者がその身に使命を日て旅立った。
アメリカの再建という国家の為にという誇りを胸に旅立った世界は居住者達の想像を遥かに超えた過酷で、そして寂しい世界であった。
幾つもの組織があった。
レスポンダー、レイダー、フリーステイツ、BOS、そしてエンクレイブ。
それぞれが疑心暗鬼から手を取りあえず、方針或いは欲望から対立し殺しあう事すらあった。
人々は脅威が差し迫った環境でなお一つにまとまる事は出来ずにスコーチの脅威の前に滅んだ。
人は過ちを繰り返してしまった。
しかし、後から現れたVault76居住者達は彼らの歩みを知り、思いを知り、遺産を得てスコーチを撃滅した。
核ミサイルという禁忌を用いた事の善悪は人類が続くのならば後の歴史が物語ってくれるだろう。
唄が聞こえる。
帰る事などでき無いと知るあの故郷を思い起こさせる唄が、何時までも聞こえていた。
以上にて本編完結となります。
途中随分駆け足にしましたが、グダグダと地域紹介するのも似たような描写連発になりかねないんで巻いて駆け抜けさせてもらいました。
なお、劇中では主人公が自分をジジイと言ったり、他の居住者からもジジイ扱いされますが設定的には実際はまだギリギリ50歳にもなってないぐらいだったりします。
監督官の方も年齢的には近いものと思われます。
また、本編で描写の無い第一世代では当然現時点で60歳半ば近い方々も当然いると思われますが多分サットン辺りを手始めに近場から居住地を精力的に作っていると思われます。
60歳を超えてアパラチア中を精力的に旅して殺して回っての大暴れは少し無理があると思ったのでこんな扱いです。
そして描写無しに裏で襲撃されて何人も死んでいるものと思います。
Wastelanders編は要望があれば、或いは気が向いたら書いてみます。
Wastelanders編の要望確認です。
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読みたくない
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それより将軍(ry
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お前のフォトニック(ry
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人は過ちを繰り返す(将軍並感