最低限で言うなら
加減乗除さえできれば、取引の基礎は十分だからな。
それ以上を求めるのは本格的な科学を取り扱う人間ぐらいだ。
だが、まぁよく聞け。
農業は労働の基本だ、どんな仕事よりも素晴らしい。
(延々と農業を称え農家になる事を誘う言葉が続く)
そんな訳で先ずはテイトから始めようか。
==Vault76元居住者で農業指揮担当アバナシーの音声ホロテープより
ヌカコーラワクチンの運搬が終わった後、俺は再びサットンの監督官の家に戻ってきた。
手土産として、ファウンデーションのジェネレーターや近場の監視塔、クレーターの農地の写真や石碑周辺の写真なんかを携えて。
監督官の家に着くと俺はさっそく監督官にそれらを交えて報告をする。
「ご苦労様です。
これらの情報と彼らとの友好は今後の我々の身の振り方のカギになりますね」
「そう……ですか?」
俺が良く判らないままに尋ね返すと、監督官は頷いて説明を始める。
「先ずファウンデーションですが、このジェネレータは調子がいいとは言えそうにありませんね?」
「そうですな、ガワもボロくなっていましたし、内部も少々不都合が出そうでした」
「そして極めつけはこの監視塔です。
近場であるにも関わらず、レイダーに占拠されています。
本来であれば彼らが確保していて然るべき場所で、軍事的に見てもこの場所を占拠されるというのはのど元にナイフを突きつけられているのと変わりません。
ここから読み取れるのは戦闘力不足、そしてそれが理由で施設の補修用の物資も不足しているのではないか、という予測です」
監督官は次にレイダーの拠点、クレーターの写真を取り出す。
「クレーター側で読み取れるのは彼らの食糧生産能力の低さです。
まぁ、そもそもあの汚染された地域で農業を行うというのがそもそも間違っていると思うのですが宇宙ステーション跡というのはそれだけ中の物資も期待できるものなのでしょう。
少なくとも彼らがそこを拠点にし続ける旨味を感じる程度には。
そして石碑周辺ですが完全にがら空きです、あそこは見晴らしのいい場所なのであそこに前線基地の一つでもあれば厄介ですが、彼らは攻める事は考えても周辺に防衛拠点を気付くことはしていないというのが読み取れます。
或いはクレーターの防衛に自信があるのか……。
基本的に補給線と言う物を考慮していないのでしょう、彼らの補給は略奪とイコールで結びつきそうですし。
とはいえ、今回の件で判るように交渉が出来ないわけでもない事が証明されました。
彼らに旨味がある取引だと思わせる事が出来れば当面は何とかなるでしょう、そしてそれはファウンデーションにも言えそうです」
所で、と言って監督官は話を改める。
「あなたは『財宝』の噂はご存知ですか?」
「それは……レイダーや入植者、それ以外の人々がアパラチアに来る原因となった噂のあれですか?
えぇ、それだったら一応……」
ザ・ウェイワードでの顛末を監督官に語ると納得したようにうなずく。
「先ず、私の見解ですが『財宝』は存在します」
「……本当ですか?」
流石の俺もこの発言には素直にうなずけなかった。
「はい、というのもアパラチアというのは私が知る限りではVault-techからの扱いが少々特殊だったのです」
そう言って監督官は付き合いの長さや信頼もあってか俺にそれなりに色々と語ってくれた。
端的に言うと、Vault-techの闇というか暗躍に関してだ。
「なるほど……なんとなくそんな感じだというのは軍に居た頃やアパラチアの各地を巡って集めた情報、あなたのログで察していましたが……まさかそこまで一企業がやらかしているとは」
とは言え、俺の所感としてはVault-tech自体は既に滅んでいるのではないか、という事だ。
監督官が独断で実験から外れた行為を行うのは裏切り行為であり、粛清が行われる可能性も十分にありうる。
アメリカの影の支配者を自任していたエンクレイブ……MODUSの存在がそれを証明している。
「Vault76は私の独断であの形にしましたが、本来であればVaultは須らく実験室のフラスコと変わらない存在であり、住人はフラスコの中の試薬と言ったところでしょうか。
監督官は実験者……と、勘違いさせられているのが大半でしょうが、結局は監督官もまた実験材料の一つに過ぎません」
「だが、少なくとも俺達Vault76の居住者は大半が監督官の事を信頼している。
それはアンタが常に全力で俺達居住者の為に心を割いてくれていたと実感しているからだ」
「ありがとう……少し照れてしまいますね、真正面からそういわれてしまうと。
話を戻しましょう、Vault-techとしてもVault76の表向きの目標である『アメリカの再建』を行う心算は当然ながらありました。
しかし、人材だけで再建が出来ると思いますか?」
その言葉に俺は少し首をひねる。
「戦前の常識で言うなら人がいても資材や金が無ければ無理だな」
「そう、ここで注目したいのはその部分です」
「……つまり、Vault-techないしエンクレイブの財宝がアパラチアの何処かにあると?」
「はい、私はそう睨んでいます、そしてなのですが恐らくその情報が残されているのは『Vault-tech大学』です。
あそこはVault監督官候補の養成も行っていましたし幹部も多く輩出しています、そして時折その幹部がこぞって集まる事がありました。
こうなれば何かあると考えるのが自然な事でしょう」
「なるほど、ならば探ってみるのもありでしょうな」
途中、ママドルスの食品加工工場で工場が再稼働するという報告があったのでそちらによって食料を確保したが、その際に矢鱈ジャンプ力が高かったり、卵みたいな頭になってたり、なんかよく分からない事になってる第3世代、の子供達が居た。
「監督官、若者の人間離れが凄すぎて俺はもう隠居した方が良いんじゃないかって気がしてきた」
「これが終わったら飲みましょう、飲んで忘れましょう」
二人揃ってちょっと現実から目をそらしたくなったのは、まぁしょうがない事だと思いたい。
まさか、一年足らずで知人がこうも変化してるとは誰が想像できるというのだろうか。
とはいえ精神面で彼らが変わっていたわけではなく、効率や能力を求めてそうなってたらしい……いや、それもどうなんだろうな、本当に。
「気を取り直して大学に向かいましょう」
「そうですね」
大学の建屋に入ってすぐに俺と監督官は分かれて探索を行う。
内部はフェラルとガードロボットがうろついており、多少面倒ではあったが大した障害ではなかった。
「そういえば、BOSがここでスコーチビーストのDNA解析をして弱点探しをしようとしてたはずだな…」
そして俺は監督官の依頼で動き回っている際にもスコーチビーストを撃破して肉を手に入れていた。
「とりあえず、DNA解析やらせておくか・・・」
BOSの遺した装置を動かし、俺は更に探索を行うが、結局の所成果は特になかった。
別棟で探索中の監督官の元に向かうと何やら大学のロボットとやり取りをしているようだが旗色は宜しくなさそうだ。
「丁度良いところに、本来であればある筈の私の卒業資格で恐らく入れる筈のエリアがあるのですが、どうにもデータの一部がトンでしまったようで」
何とかならないかと交渉を重ねたが、変にデータが残っているせいで監督官のデータではどうにもうまくいかなかったようだ。
その結果、仕方なく交渉を交代して俺が学生として色々課程をスキップして卒業課題の監督官候補の試験を受けることになった。
「所で、あなたはこのVaultに来たことはあるのですか?」
「えぇ、何度か。ジャンク漁りがメインだったのでまさか今回のような秘密があるとは思いもしなかった」
雑談をしながら課題をこなす。
課題はVaultの内部分裂を防ぐためのものだ。
詳細は看護士の行方不明一名と推定死者の整備員一名、そしてリアクター故障とリアクターの封鎖。
これらが絡み合って殺人事件か適正な対処であったかが争点となる。
詳細は省くがメンタスグレープ味をキメて知的カリスマを発揮する事となった俺が適当にペラ回しをしてリアクターの鍵を受けとり、リアクター調査して真相を調査して終了だ。
「中々スムーズな解決でしたね」
「良い見本が居ますから」
これでようやく通行権限を得たので監督官と共に隠しフロアを調査すると、なるほど確かにVault-Techは財宝を隠していたようだ。
それはアメリカの再建……とまでは行かなくとも、この近辺の立て直しにはかなり役立ってくれる事だろう。
だが、その為にも俺達元Vault76住人とレイダーと開拓者たちとの勢力的な付き合いをうまくこなす必要があるだろう。
それこそ事後を見越した関係構築が必要だ。
本来であれば若者達を事の中心にしてやりたいところだが、はてどうしたものか……。
「こちらでも若者たちの協力者を集いますが、先ずはあなたが率先して動いてもらってもよろしいですか?」
「えぇ、準備は整えておきますよ。問題はレイダー達の事をアイツらがどう思うかですが……」
レイダーは端的に言えばならず者集団だが少なくとも一部は交渉は出来る様に見えた。
開拓者たちも自分たちに理があるのならば協力し合える可能性は十分あるだろう。
ただ、両方同時となればどういう化学反応を起こすかは俺にとっても監督官にとっても未知数だった。
長らくお待たせいたしました。
仕事が忙しかったり、別ゲーで忙しかったり、別作品に詰まってたり、PS4でつ買ってた外付けHDDが壊れて気力を失ってたりで執筆が滞っておりました、すみません。
ちょっと中途半端な所で区切りますが宝探しはここからが本番です。
ここはともかく、後の戦闘がきつくて逃げてたって訳じゃないですよ、多分。