SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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死亡フラグ 回避

最後の箸休め回です


友・達

「えーっと、ちょっと待ってよ……」

 

 宝多さんが困ったように呟き、俺を見た。

 

「まず、馬場君が、アカネの元カレで……」

 

「今も彼氏のつもりだけど……」

 

「けど新条は覚えてないんだろ?」

 

「はぁ!? フラれてないから付き合ってんだよ!?」

 

「もー! ちょっと黙ってよ!!」

 

 バンと机を叩かれて、俺と内海は黙る。恐る恐る、目を開けると、ジャンクの前では、宝多さんが状況が把握できないとばかりに、頭をひねっていた。

 

 戦いが終わって、次の日の放課後。俺たちは『絢』へ集合し、状況の確認を行っている。

 

 まずは昨日のことを謝って、俺は知っている情報を全て伝えた。アレクシスとか、アカネさんとか、世界のこと。……まあ、少し話しづらいところは誤魔化して。

 

 そして、その情報は、宝多さんにとっては寝耳に水だった。友達が神様だったとか、怪獣を操っていたなんて突然聞かされて、普通に受け入れる方がおかしいから、当然だけれど。

 

 宝多さんは、自分を納得させるように、小さく呟く。

 

「……アカネが怪獣好きはともかく、怪獣使いで。変な悪魔がアカネに寄生していて。それに、この世界が、アカネの造り物とか……。意味わかんないんだけど……」

 

 俺は頷きしか返せなかった。俺だって、まともには信じられず、混乱して、昨日はあんな騒動を起こしてしまったんだから。

 

 ただ、俺たちが人形とは思わないまでも、この世界の成り立ちにアカネさんが関わっていて、彼女が別の世界の住人だというのは、正しいと思っている。

 

 街の外には、何もない。

 

 それはグリッドマン達も確認している。街の天蓋に広がる、不思議な世界を。そして、今にして思うとだが、アカネさんのことを、遠くからでも見つけられたのは、彼女が他の人達と違うと、感じていたからかもしれない。

 

「……響君たちは、どう思うの?」

 

 宝多さんが、おとなしく隣で話を聞いていた響へ話しかける。

 

 当の響は、宝多さんから話を振られるまで、ぼーっとしていたようで、話しかけられたことに驚いて肩を動かした。

 

 ほんと、この話を聞いても動じてないとか、肝が据わっているよな。

 

 すると響は、恐る恐ると、

 

「……実は、同じこと、俺も聞いたんだ」

 

 と言い出した。

 

 響の話も大概、ファンタジーだった。

 

 二日前、自分を怪獣だと名乗る少女が突然現れて、新条アカネが神様だと告げたのだとか。とても親しみやすく、奢ってくれたそうだ。

 

「それと、昨日も」

 

 アカネさんが、わざわざ響の家に現れて、自分が怪獣使いだと明かしたという。多分、アカネさんは随分前から、グリッドマンの正体が響だと、アタリをつけていたのだろう。

 

 俺にも責任はある。響と会っていることとか、アカネさんに伝えてしまっていたから。

 

 一通り話し終えると、響は皆に頭を下げた。

 

「ごめん。ほんとは、すぐに話したかったけれど」

 

 内海がとても落ち込んでいて、アカネさんと友達である宝多さんには、簡単に開かせなかったらしい。

 

「……まあ、リュウタの話とか、昨日のアレを観なかったら、俺も信じなかったと思うし」

 

 内海達にとっては、ちょうど良かったのかもしれない。

 

 ともかく、これで、同じ証言が二つ。情報ソースが別でもあるし、信憑性は上がってしまった。

 

 宝多さんは、ますます悩まし気に、大きなため息を吐く。

 

 そして、内海も。椅子の上で足をくみ、腕をくみ、考えながら言うのだ。

 

「……新条が黒幕とかさ、この世界が箱庭とかは判断つかねえけど。……でも、俺も、リュウタが元クラスメートだってのは思い出した」

 

「…………は?」

 

 おい、今なんて言った?

 

「ちょっと待て、内海!? ……俺のこと?」

 

「サッカー部の馬場隆太、だろ。東聖大付属ボコって、ちやほやされてた。それで新条と付き合い始めて、……ついでにウルトラオタクだった」

 

 その馬場隆太がお前だろ、と。

 

(……なんで?)

 

 確かに、俺のことだけど。ちょっと待ってくれ、思い出したっていつだよ。さすがに、最初から知ってたとかなら、怒るぞ。

 

「昨日だよ! 昨日!! シグマのとこに行った後! あの時は必死で分からなかったけど、落ち着いたら『そういえば』って。リュウタは、元クラスメートだったって……」

 

「どうやって!?」

 

「……わかんね」

 

「そこが一番大事だろ!?」

 

 思わず、内海にチョークスリーパーをかける。

 

 ほんと、そこ大事だぞ! どうやればみんなの、アカネさんの記憶が戻るのか。ずっと、悩んでいるんだから! 本当に大事なところだぞ!!?

 

「いってえよ!? って、やっぱりお前、教室でネコ被ってやがったな!? カッコつけてたからな、サッカー部連中!!」

 

 教室じゃ、こんなこと絶対にやらなかったのは、本当だけど、さ。

 

「おい、こいつ泣いてるぞ」

 

「ボラーは黙って! 泣いてねえ! 全然泣いてねーし!!」

 

「だーかーらー! いちいち話を切らないでよ!? 二人とも!!!」

 

「「……すみませんでした」」

 

 

 

「まずは、整理をしよう」

 

 マックスはホワイトボードに、『解決しなければいけないこと』とペンで書き込んだ。

 

「皆の話から、課題が見えてきたな」

 

 言い、その下に続くのは三つの課題。

 

 一、アレクシス・ケリヴの討伐

 

 二、新条アカネの説得・救助

 

 三、世界の維持

 

「もちろん、全て、難題ではあるが。理由も分からず現れる怪獣と戦ってきた事と比べれば、前進だ」

 

 その言葉にうなずきながら、考える。

 

 見れば見るほど、どうすればいいのやら。

 

 特に三番。世界をどうするとか、アルケミースターズ並みの天才が必要な場面だ。具体的には我夢とか。我夢とか。ほんとに我夢が欲しい。ウルトラマンガイアの前に、高山我夢が欲しい。

 

 周りを見渡すと、響も宝多さんも、どうしたものかと、顔を曇らせていた。そんな雰囲気の中、真っ先に声を出したのは、まさかの内海。

 

「……でも、案外なんとかなるんじゃねえの?」

 

 えらく呑気な声だった。思わず、俺は内海へと疑問を零す。

 

「いや、ここが箱庭世界だったら、どうやって維持するかって、超重要な問題だろ? なんとかってなんだよ、なんとかって」

 

 けれど、内海は内海で、考えていることがあるようだ。ガサゴソとバッグからとある物体を出した。

 

「リュウタ、ってか、そのアレクシスが言うように、俺たちが造り物とか、全部、新条の思い通りとかが本当だったら。そりゃ、どうすりゃいいのか分かんねえけど。隔離された街って方が納得できるし。

 けどさ、この世界の丸ごと全部は、新条も好き勝手にできてないって思うんだ」

 

 出てきたのは、BDだった。俺たちの好きなヒーローに混じって、奇妙な物体が並んでいるBD。ウルトラオタクとしてはコメントしづらい作品のBD。

 

 

 

『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』

 

 

 

 悪名高いハヌマーンが出てくる作品だった。

 

「「「……」」」

 

「黙るなよ!?」

 

 黙るよ。俺だって意外だよ。それが出てくるとは思わなかったよ。

 

 宝多さんなんて、本当に冷たい目を内海へと向けてる。ちゃんとした理由を話さないと、後が大変だ。皆の視線に気まずそうにしながら、内海はハヌマーンを指さし、言う。

 

「これ、リュウタへの罰ゲームで借りてきたんだけどさ。……あの怪獣好きの新条アカネが、自分の世界にこんなの作ると思うか?」

 

 ……ああ、なるほど。罰ゲーム云々は後にして、ちょっと納得してしまえるのが悔しい。

 

「馬場君、どういうこと?」

 

「……この映画、版権とか、ストーリーとか、色々問題多すぎるんだけど。……絶対に、アカネさんは大嫌いな話なんだ」

 

 なにせ、怪獣がボコボコにされるんだから。ウルトラ兄弟全員集合に、変な猿も混じって、一方的な集団リンチ。ウルトラリンチなんて、不名誉な言葉が生まれた作品でもある。

 

 当然、アカネさんには、我慢ならない作品。

 

「これだけじゃなくて、ウルトラマンも。初代から、あんなに何本もシリーズになってる。新条が一から十まで作ってるなら、怪獣主役番組ばっかだろ。ウルトラマンいらねえだろ」

 

「……アカネさん、ほんと怪獣好きだからなぁ」

 

「えぇ……。アカネ、そんなになの?」

 

 ついでに、ウルトラマン大嫌いだ。

 

 宝多さんがちょっとひいている横で、俺と内海は頷きを交わした。

 

『なるほど。世界がある程度、新条アカネから独立している根拠になるな』

 

「ハヌマーンを根拠にしたくないけど」

 

 アカネさんの、怪獣への拘りは、信用できる。グリッドマンも、ハヌマーンを見ながら、頷いていた。この猿が世界を救う日が来るとは思わなかったな。

 

 とはいえ、アカネさん、というかアレクシスが街を作り直したり、記憶を奪ったり、世界に対して大きな力を持っていることは事実。それに、この街の外に、何も存在しないことも。

 

 この件は、引き続き、新世紀中学生が調査を進めてくれることになった。世界の外から来たエージェントに、今は任せるほうが良いだろう。

 

 さて、俺をめちゃくちゃ悩ませた課題が、ウルトラ理論で保留になったところで。次は、

 

「アレクシスの野郎をどうやって倒すか、か」

 

 午前中、新世紀中学生を引き連れて、アカネさんの家に乗り込んだら、あいつは怪獣部屋ごといなくなっていた。無人どころか、部屋もなくなっていた。アカネさんは学校に来たと言うので、拠点をどこかへ動かしたか、俺たちが入れないように細工をしたのだろう。

 

 これでアカネさんが学校にいなかったら、なりふり構わず探していたとこだ。

 

 そんな黒幕であるアレクシスは、

 

「えっと、不死身の怪人で、怪獣を実体化させるんだっけ?」

 

「不死身ということは、攻撃はまともに効かないと考えた方が良いだろう」

 

「斬っても、だめ、か?」

 

「ダメだろ。バラバラになっても生きてんだろ」

 

 下手に戦うのは嫌な予感がする。姿はエンペラ星人っぽいし、多分、かなりのチート野郎。対処を間違えば、アカネさんにも被害が及ぶ。

 

 すると、右手のアクセプターから、声が聞こえた。

 

『リュウタ、アレクシスへの対処については私に考えがある』

 

「シグマから?」

 

『ああ、記憶を取り戻した今なら、伝えられることがあるんだ』

 

 言われるまま、シグマに話してもらうことにする。以前と同じように、アクセプターからホログラムが出てきて、シグマは、話を始めた。

 

『改めて名乗らせてくれ。私はハイパーエージェント、グリッドマンシグマ』

 

 そうして、シグマが語ったのは。この世界へやってきた時のこと。

 

 シグマは、グリッドマンよりも少し前に、この世界へとやってきた。目的は、ハイパーエージェントとして、犯罪者であるアレクシスを捕縛すること。

 

 けれど、無理にツツジ台へ潜入しようとしていたシグマは、迎撃され、大きなダメージを負ってしまった。記憶喪失や弱体化は、その後遺症とのことだ。

 

 そうしてまで、侵入を急いだ理由は……、

 

(俺、か)

 

 死にかけた俺を助けようとしてくれたのだろう。迷惑かけっぱなしじゃないか、とまた謝りそうになるが、続いた言葉が、そんな暇を与えなかった。

 

『その後、兄さんも、アレクシスに敗れてしまったのだろう……』

 

「……ん?」

 

「え?」

 

「……兄さん?」

 

『む? ……ああ、グリッドマンは私の兄だ』

 

「「「えぇ!?」」」

 

 学生三人、揃ってジャンクを見る。

 

 以前、グリッドマンとシグマの関係性について、色々とオタクトークを繰り広げたのに、当たっていたなんて。しかも、当のグリッドマンはといえば、

 

『なるほどな。君が私の弟だったのか、シグマ』

 

『ああ、兄さん』

 

 なんて、納得したみたいな調子で会話をするのだ。

 

「……いや!? もうちょっと、兄弟らしい会話とかないのか!?」

 

 『あ、俺たち兄弟だったわ』みたいなヘンテコなノリは何なんだろう。やっぱりウルトラマンみたいに、ハイパーエージェントはどっかずれてるんだろうか。

 

「ま、まあ、グリッドマンも兄弟が見つかって良かったってことで……。じゃあ、グリッドマン達が記憶を失っているのも?」

 

『ああ、おそらく、アレクシスから受けたダメージが原因だろう。兄さんもまだ全力を出せてはいない』

 

「じゃあ、急ぐのは、グリッドマンの回復。……けど、そのフルパワーのグリッドマンを、アレクシスは破っているかもしれないのか」

 

 気が重くなる。

 

 昨日の戦いでは、グリッドマンはアンチグリッドマンに退けられた。けれど、それは連戦でエネルギー切れ寸前だったことが理由。シグマとで地力を比べたら、まだ全然、グリッドマンの方が上。シグマには俺という枷もある。

 

 アレクシスも余裕なわけだ。俺たちの、最高戦力であるグリッドマンにも、勝ったのだから。

 

 そこで、シグマは首を振り、俺の悲観を否定した。

 

『リュウタ、勝負は時と場所が肝心だ。次の戦いまでに有利な状況に持ち込めば、結果は変わる。次は私たちもいるだろう?』

 

「……そうだな」

 

 まだ、アレクシスは出てこない。奴は怪獣を出せるし、目的はアカネさんの感情を味わうこと。現状、アカネさんは俺たちの戦いを楽しんでいるというから、この状態を維持したいはずだ。

 

 何かきっかけがあって、その余裕を崩した時が、勝負。それまでは、被害を少なくするためにも、アカネさんの怪獣を倒し続けなければいけない。

 

『不死身への対処も、命まで奪う必要はない。十分に力を削れば、封印は可能だろう』

 

「じゃあ、そこも何とかしようってことで……」

 

 最後は。

 

 俺はホワイトボードを見て、残った文字に、表情を引き締める。

 

『新条アカネの説得・救助』

 

 俺にとっては、一番大切な問題。けれど、俺が何かを言う前に、口火を切った奴がいた。

 

「なあ……」

 

 と、悩むような内海の声。

 

 らしくない口調に、そういえば、今日、内海は妙に静かだったと思い返す。グリッドマンとシグマの関係性なんて、興奮して踊り出しそうな話題だったのに、椅子に座ったままでいたし。

 

 その内海は、立ち上がり、小さくもはっきり言うのだ。

 

 

 

「……新条、どうするんだよ?」

 

 

 

 俺は、間髪入れずに答えを返す。

 

「助けるに決まってるだろ」

 

 書いてある通りに。

 

 内海が言っている意味が分からない。確かに、彼女は怪獣使いで、俺たちと敵対している。けれども、その背後にはアレクシスが存在するし、ああいう奴がいたら倫理観が壊されるのも当たり前だ。

 

 俺は皆にはっきり伝えて、そこを悩む気もなかった。

 

 けれど、内海は頷きつつも、俺をまっすぐ見ながら言う。

 

「だから、どうやって?」

 

「……どう?」

 

「新条、俺たちのこと、何とも思ってないんだろ? 造り物だって、そう思われてんだろ? 裕太が聞いたみたいに、問川達を狙った理由が『ぶつかってイラついた』だったらさ。……そんなヤツ、俺たちで説得とか、できるのか?」

 

 彼女が人へと怪獣をけしかけたのは、そんな、『イライラして人を刺した』より酷い理由。

 

 そんなことを行えるのは、相手を対等とも思っていないから。人間とは思っていないから。だとしたら、『クラスメート』が何かを言ったところで、新条アカネは聞く耳を持たない、と。

 

「……」

 

 俺も、すぐに内海へ反論は、できなかった。

 

 内海は言葉を迷いながら、感情が止まらないというように話を続ける。

 

「そりゃ、お前は新条と付き合ったりとか……。俺よりも、ずっと一緒にいただろうけどさ。

 ……アイツ、そんなお前のことも殺したんだろ?」

 

「内海、それはリュウタには……」

 

「……俺だって、言いたくねえよ。リュウタは新条のこと、マジで大切に思ってんだろうし。俺だって、新条のこと……。

 けど、あいつが俺の友達を殺したなら。しかも、ゴミみたいに怪獣で潰したなら」

 

 俺は、あいつを許したくねえ。

 

 小声が、異様なほど店内に響いた。

 

 誰も、後に続いて、口を開かない。新世紀中学生も、グリッドマン達も黙ってしまった。きっと、俺たちが答えを出すことだと、思っているのだろう。彼らの瞳は、俺たちそれぞれへ、真っ直ぐに向けられていた。

 

 そして、

 

「……内海君は、アカネを倒したら、追い出したらいいって、そう思ってるの?」

 

 宝多さんが立ち上がり、内海へと静かに言う。

 

 隠す気もなく、その言葉には非難の感情が込められていた。

 

「六花……」

 

「……ごめん。私、馬場君が元クラスメートとか、死んじゃってたとかも、実感ない。正直、アレクシスとか、世界とか、話にも付いていけてない。

 けど、アカネの話は別。アカネを、化物みたいに言うのはやめてよ。アカネは普通だし、私の、友達なんだから」

 

 けれど、内海は俯きながら、言ってしまった。

 

 

 

「……そう思ってるの、六花だけじゃねえの?」

 

 

 

 言いすぎだって、思った。

 

 何かを言おうと、口を開いた瞬間には、

 

「っ!!!」

 

 宝多さんは、肩を震わせながら店を飛び出して行ってしまう。

 

 後には呆然とした響と、『やっちまった』と顔を青くした内海、どうしたらいいのか分からない俺が残されてしまった。

 

 顔を見合わせるも、内海は視線を逸らす。となると、俺たちしかいない。

 

「……響、追いかけたほうがいい」

 

「……うん」

 

 言い、俺と響は急いで店を出た。

 

 ずっと話し込んでいたから、とっくに夕暮れに空は染まっていた。走り去ってしまったのか、もう宝多さんの姿は見えない。放っておく訳にはいかなかった。響や内海にとっては、ずっと最初からの同盟仲間。俺にとっても、もう宝多さんは大切な友達だったから。

 

 店の前から、響には左へ行ってもらい、俺は右へ。しかし、駆けだす直前、背後からの声に止められる。

 

「リュウタ!」

 

「……内海」

 

 どっか切羽詰まった様子の内海が立っていた。内海は、何かを言いづらそうに口を開け閉めし、けれど、最後には、覚悟を決めたと、ぐっと締めた。

 

 そして、

 

「……さっき。わざと話題にしなかっただろ」

 

「なんの……」

 

「お前がもう、死んでいるってこと」

 

 ウルトラマンのハヤタ隊員とも違って、身体もシグマに借りてる状態のことを。

 

「……そう、だな」

 

 確かに、俺はその部分を、深刻にならないように誤魔化した。嘘はつかなかったが、たぶん、何とかなるみたいな調子で。

 

 俺がどう思っていようと、事実を見れば、馬場隆太はアカネさんの怪獣に殺されている。シグマとも相談しているが、問題は解決する兆しもない。今、余計な話をして、アカネさん救助の邪魔をしたくなかった。

 

「……ほんと、お前、変なとこ気を遣うよな。けどさ、言いたくねえけど、新条のこと、信じられるか?」

 

「もちろん」

 

「断言って……。お前、殺されてんだぞ?」

 

 そりゃ、字面からすれば、そうだ。正直、傍から見られた時に、十分おかしいって自覚もある。けれど、気持ちは全然変わっていないし、助けたいって真剣に考えていた。

 

 別に、アカネさんに洗脳されてるとか、そんな理由じゃない。

 

「……アカネさん、全然変わってなかったから」

 

 俺が死んでから、奇跡的にもう一度出会えて、話もした。そこでの彼女は変わっていなかった。

 

 人一倍に繊細だし、好きなものに見せる笑顔は素敵だし、心を許してくれた相手には、からかったり、小悪魔みたいに可愛い。俺が好きになった、彼女のままだった。

 

 それに、

 

「俺が殺された時、アカネさんは泣いてくれたんだ」

 

 記憶の断片で、アカネさんの泣く声がずっと聞こえていた。

 

 前は、俺の幻聴かとも思ったけれど、きっと、本当にアカネさんは泣いてくれた。なにせ、当のアレクシスも認めたのだから。俺をやりくるめるための物言いだが、そこだけ、あいつはミスをした。

 

『まさか、君は、恋人が死んだ記憶を抱えて、毎日泣いて暮らして欲しいとでもいうのかい?』

 

 確かに、俺は聞いた。あのままなら、アカネさんはずっと泣き続けていた、と。

 

 なら、アカネさんだって、俺たちのことを、ただの人形だとは思っていない。なにより、誰かのために泣けるのなら、まだ間に合う。ウルトラシリーズを見ていれば分かるだろ。

 

「だから、きっとアカネさんも記憶を取り戻したら……」

 

 止まってくれると思っていた。まだ希望的な考えでしかないけど、他ならぬ内海が、俺に教えてくれたんだから。『諦めるな』と。だったら、俺は諦めないで、シグマと一緒に出来ることをやるだけだ。

 

 そう言うと、内海はなぜかバツが悪そうな顔をした。

 

「……悪い」

 

「別に、アカネさんのことは……」

 

 内海みたいに考えるのが、普通だとは思うから。

 

「それもだけど。……あの夜さ。……俺が余計なこと言ったから、殺されたんじゃねえのか?」

 

「……」

 

 あの時のこと、か。

 

「俺、お前の話、意味わかんなくて。ただの妄想の話だと思って。で、ウルトラシリーズなら『諦めねえ』って。無責任に言っちまった。でも、お前は走って行って、それっきり。

 ……あの時は、グリッドマンのことも、怪獣のことも。……何にも分かってなかったから。けど、お前、殺されたの、その後だろ? それくらい分かるよ」

 

 だから、内海が焚きつけなければ、と。まあ、な。

 

「……おまえのせい、だな」

 

「……っ、じゃあ」

 

 けど、

 

「内海のおかげで、今、こうしていられる。……だから、ありがとう。本当に」

 

 あの言葉があったから、走れた。だからこそシグマは助けてくれた。昨日だって、内海がいなかったら、腐ったまま消えていた。

 

 内海は『無責任』だなんていうけれど、無鉄砲な言葉じゃなきゃ、希望も持てなかった。このウルトラオタクのせいで死んだとも言えるけど、俺は『内海のおかげ』だって言い直したい。

 

 謝らなくちゃいけないのは俺の方だ。結局、俺はまた諦めそうになったし、内海にも『何もしていない』なんて怒鳴りつけた。俺に、こんなに色々と力を貸してくれているのに。

 

 なので、おあいこだと思う。

 

 そう伝えると、内海は驚くように目を見開いて、その後、少し声を震わせながら、誤魔化すように笑顔を浮かべた。

 

「……お互い殴りあって、とか、そういうのやったほうがすっきりするか?」

 

「やだよ、そんなベタベタなやつ」

 

「おい!? ここは受けるとこだろ!? リュウタには鑑賞会、ドタキャンされたんだし、本気で一発くらいは!!」

 

「その時は、俺もガチでいくぞ?」

 

 運動部だから、かなり痛いと思うが。

 

「……やっぱ、やめとこ」

 

「じゃあ、止めとく」

 

「「……ぷ」」

 

 吹き出したのは、同時。そのまま、お互いに腹を抱えて笑い出してしまった。

 

 おい、もう思い出しただろ? こんな冗談言ったりするけどさ、俺たち、ついこの間まで、話もしたことなかったんだぞ? クラスも同じだったのに。 

 

 それが、こんなに毎日、ウルトラマン見たり、オタクトークしたり。そんな友達との縁を取り持ってくれたんだから、アカネさん助けるのも協力しろよ。

 

「わかったよ! リュウタが良いっていうなら、俺だって新条助けるのに協力する。……けど、俺だって新条のこと、諦めたわけじゃないからな」

 

「ん? 内海、フラれたって聞いたけど」

 

「ふられてねえよ!? 『俺とはいい』って言われただけだ! 『ノー』とも『嫌』とも言われてねえから!」

 

 じゃあ、そういうことにしておこう。そういえば、内海とのウルトラマン鑑賞会に、アカネさんを連れてくるって約束もあったよな。嘘つきにならないためにも、怪獣大好き同盟に連れ戻さないと。

 

 その前に、だ。

 

「さて……。内海のおかげで、宝多さん探すの出遅れたんだけど?」

 

「わ、わかったよ。俺も変なこと言っちまったし、ちゃんと探して謝るよ」

 

「じゃあ、俺は向こうの街角探すから、内海は残り全部な」

 

「さすがに広すぎね!?」

 

「仕方ねえな。半分半分な」

 

「当然だろ! あー、まったく! じゃあ、任せたぞー」

 

 内海がケムール人みたいに走っていく。

 

 すっかり夜が更けてしまったけれど、気持ちは随分と前向きだった。昨日は死んでしまおうと、本気で思っていたのに。こんな世界どうでもいいと思ってしまったのに。

 

 友達がいることが、力になっている。

 

(アカネさんとも、また……)

 

 全部、終わった後、みんなでウルトラマンでも観られたらいい。そう思いながら、俺は勢いよく駆け出した。

 

 

 

 その数時間後、

 

「あ、ちゃんと家に帰ってきたんですか。……はい。はい。それじゃ、また明日。お願いします」

 

 ぺこりと頭を下げてから、店長からの通話を切り、振り返る。そこにはこちらをじっと見つめる響がいる。

 

「響、大丈夫。宝多さん、ちゃんと家に戻ったって」

 

「そっか。よかった……」

 

 言うと、響がほっと胸をなでおろす。

 

 結局、あちこちを走り回った挙句、宝多さんを見つけることはできなかった。俺はともかく、響と内海はかなりばててしまい、一度響家に戻って、電話をかけてみると、当の宝多さんは、小一時間ほどで帰っていたそう。

 

 落ち込んでいるというより、考え込んでいるようだから、バイトに行ったときにでも、改めて話をしてみようと思う。

 

「問題は、何を話せばいいのかってことだよな……」

 

 宝多さんは元々、戦うことには積極的じゃなさそうだし、仲がいい友達相手となればなおさら。

 

「でも、新条さんを倒すんじゃなくて、『助ける』っていう理由なら、六花も」

 

「けど、当面は戦うことになっちまうし」

 

 ……最後は、もしかしたら。

 

(まだ、その時じゃないけど)

 

 アレクシスの言葉が全て本当で、彼女を見送るしかなくなったら。そんな未来を想像はしたくないけれど、考えないわけにはいかない。

 

 それに、別の世界に彼女の家族等がいるのなら、この世界に居続けることは、本当に正しいのだろうか。

 

 俺はどうしたらいいのだろうか。同じことをきっと、宝多さんも分かっている。でも、その未来を回避する方法も、是非も分からなかった。

 

(……今日は内海がシリアスモードだったから良かったな。

 いつもの調子で、怪獣を倒す作戦会議でも開いたら、宝多さんは本気でキレていたかもしれない)

 

 考え込んでしまっていると、不意に響が呟いた、

 

「そういえば昨日、新条さんが来た時、リュウタのこと気にしてたよ」

 

「部屋にいきなり来たんだっけ」

 

 しかも、自分から正体を明かしたというのは、何とも大胆というか、アカネさんらしいというか。多分、怪獣vsヒーローやれているのが楽しいんだろうな。

 

「リュウタが泊ってることも知ってて、リュウタの部屋にも上がり込んだりして」

 

「えぇ……」

 

 響曰く、根ほり葉ほり生活のことを質問攻めにされただけでなく、俺の寝床に寝っ転がったりとか、割と好き勝手されてしまったらしい。

 

 そこで今日も寝る俺の気持ちになってくれ。気恥ずかしくて寝るに寝れないじゃないか。ついでに、隠したい物を買う余裕もなくて、良かった。

 

 俺が頭を抱えていると、響が楽しそうに声を転がす。

 

「響、割と笑い話じゃないぞ……」

 

「ごめんごめん! でも、そうしてる新条さんを見たらさ。……リュウタの言ってることもわかる気がするんだ。怪獣をけしかけたり、人を襲わせたりもするけど。

 気になる子のこと、知りたがったり。俺たちと変わんないところも、ちゃんとあるんだって」

 

「響も、信じてくれるんだ」

 

「うん」

 

 響は朗らかに笑って、そして、

 

「……だって、『響裕太』はそういう人間だから」

 

 と、静かに言った。

 

「……あ」

 

 気が付くと、響の瞳は金色に輝いていて、表情はどこか大人びて見えた。響は、いや、『彼』は俺の反応を見て表情を崩す。

 

「やっぱり、……気づいてるんだ?」

 

「……ああ」 

 

「いつから?」

 

「ついさっき。響と会ったときに」

 

 おせっかいというか、プライバシーの侵害というか。考えてしまった。俺は、既に死んでいて、シグマに取りついている状態。元に戻れるかも分からない境遇。

 

 じゃあ、同じく記憶喪失で、グリッドマンへ変身できる響はどうなのか。もし同じ状態ならと思って、つい響を注意深く見てしまった。新世紀中学生や、アンチグリッドマンへ行ったように。

 

「そうしたら、ちょっと変だなって思ったんだ」

 

 響裕太の中心には、光があった。新世紀中学生と同じ、温かな光が。

 

 最初はグリッドマンとのつながりが原因だと思った。けれど、光は強く、ジャンクに宿るグリッドマンと遜色ないほど。俺はシグマの光の上に、張り付いているように見えたのに。

 

 それで、俺たちが話している響裕太はもしかしたら、というのが、オタクの妄想だった。

 

「……そういう響は」

 

 違う。今は、その名前では呼べない。

 

「グリッドマンは、最初から知ってたのか?」

 

 すると、彼は首を振った。

 

「『私』も自覚したのはつい先ほどだ。

 けれど、最初から違和感はあった。『裕太』の六花への想い。それは私にも感じられる強いものだったが、その感情をめぐる矛盾が、私の中にはあった」

 

 彼女のために何かをしたいという心と、行うのは自分ではないという理性。

 

 中身は他人なのに、人の恋路に手を出そうなんて、グリッドマンからすれば違和感を覚えて当然だろう。

 

「気が付いたのは、シグマの存在が原因だ。シグマへのシンパシーを、私も感じていた。それに……」

 

『今日、私が呼びかけた時、ジャンクと裕太の二人から反応が返ってきたんだ』

 

 最後はシグマから。あの奇妙な宇宙人的コンタクトの裏で、テレパシーのやり取りをしていたらしい。

 

 俺も、気付いていたとはいえ、あまりの事態に脱力する。

 

「ここまで、ウルトラシリーズそっくりなんてな……」

 

 初代マンと同じパターン。ついでに俺とは逆のパターン。グリッドマンの人格が響の体に憑依していた。だから、響はグリッドマンに変身できた。

 

 アレクシスに敗れたグリッドマンは、記憶と力がばらばらとなり、その一つが響へと入った。そこで、響の人格を自分のものと誤解をしてしまったという。

 

 それが、『響裕太』が記憶喪失になったわけ。元から裕太としての記憶はない訳なので、当然だ。

 

 グリッドマンも悪気はなく、今日まで気づいていなかったというから、仕方ない。ただ、俺としては、気になることが一つある。

 

「響は、どうなるんだ?」

 

 グリッドマンのことだから、不安には思っていないが。

 

「彼は今、眠っている。おそらく、私が内にいる間は、目覚めることはできないだろう。……彼には申し訳なく思っている」

 

「そっか」

 

 言いつつ、響裕太は、そんな状態をどう思うのだろう、と思った。

 

 勝手に自分の体を使った、なんて怒る姿は想像できない。まして、戦いたくないなんて、逃げる姿もあり得ない。昔の響とは仲が良いとは言えないけれど、ぼんやりしている中にも芯の強さがあるとは思っていた。だから、それがグリッドマンに選ばれた理由だとも納得していた。

 

 内海に明かすかは、グリッドマンに任せるけれど、俺としては……。

 

「俺が言うことじゃないと思うけど、さ。……ちゃんと響と、響の守りたいものを守って。それで、最後に謝れば。響なら許してくれると思う」

 

「そうだな。……ああ、響裕太はそういう子だろう」

 

「それに」

 

 昨日の今日で、こんなことを言える義理じゃないが、あえて。

 

 中身が響だろうと、グリッドマンだろうと、これまで一緒に戦って、ついでにウルトラシリーズも見まくった友達。

 

「……俺も。ちゃんとグリッドマンも、響も、守れるくらいに強くなるから」

 

 少しは安心して欲しい、なんて。

 

 そう言うと、グリッドマンはくすりと笑ってしまった。大人っぽさと、純粋な子どもが両立したみたいな不思議な笑顔だった。

 

「前から思っていたが、リュウタ。君は自分を卑下しすぎだ。……私は、君を最初から頼りにしている。かつて共に戦った仲間のように。みんな、頼もしい仲間だ」

 

 聞いて、鼓動もない胸が、熱くなった。

 

 いつもは無表情で、感情はジェスチャーでしか分からないグリッドマン。

 

 そんな彼が、こんなに親しみある笑顔を向けてくれている。きっと、いつも、グリッドマンはジャンクの奥で、優しい表情で俺たちを見守っていたのだろう。

 

 まだ記憶は完全ではなく、フルパワーには程遠いというグリッドマン。そんな、もっと強くなる彼と並んで、アレクシスからアカネさんを助け出すために。

 

 俺たちはその日、夜遅くまでウルトラシリーズを見ながら色々な話をした。

 

「グリッドマンからアプローチするのはダメだけど、響が戻った時のために準備しておくのは良いんじゃないか? 宝多さんの好みとか、響のことどう思ってるか聞いたり。響、そっちは奥手っぽいし」

 

「えぇ!? いや、それは、心の準備というか……」

 

 ……

 

「宝多さん関係の話になったら、響の人格戻ってね?」

 

「……実は、私もそんな気がしているんだ」

 

 おっとりしていると思ったけど、恋愛に関しては、響裕太は強情なのかもしれない。

 

 

 

 そんな、二人のハイパーエージェントが話し込んでいた夜中に。

 

「おやおや、アカネ君。随分熱心に作っているじゃないか」

 

 暗い怪獣に囲まれた部屋の中、作業机の灯りだけが輝いている。そこへと部屋へ入ってきた黒づくめの怪人が声をかけた。

 

 灯りの元で、新条アカネが一心不乱に粘土を削っている。針金と歪んだ真珠を骨格にして、張り付けた粘土を少しずつ。そうして、ただの粘土の塊は一つ、また一つとカッターを走らせるごとに命が吹き込まれていった。

 

 アレクシスは楽しそうに、その怪獣を覗き込むが、首を傾げることになった。いつもの怪獣と比べても、完成像は想像できないほど複雑だったから。

 

「……これはまた、複雑な造形だね」

 

「……うん」

 

「あのロボットみたいな怪獣は、どうしたんだい? 同じくらい、力を入れていたじゃないか」

 

「……今は、あっちを出す気分じゃないの」

 

 アレクシスの言葉にも、気がそぞろだという様子で、さらに一彫り。

 

 集中しつつも、アカネの気分は、良くはなかった。

 

 頭の中では、戦いが流れ続けている。青と黒の巨人の戦いが。

 

 片方。勝手に進化して、怪獣どころかグリッドマンもどきになったアンチは最悪。アレクシスに頼み、処分を頼んだが、上手く逃げているらしい。造物主から逃れるなんて、ちゃんと殺さないと。

 

 それがまず一つ。アカネの気持ちを苛立たせる要因。次に、相も変わらず倒されてくれないグリッドマン。そして、何より、胸の奥にあるのは。

 

(……あの時、)

 

 グリッドマンシグマ。彼女に恋する少年が変身する、グリッドマンもどきの姿だった。

 

 アカネはカッターナイフを握り締め、呟いた。

 

「……なんで?」

 

 あの戦いで、シグマはグリッドマンみたいになってしまった。強くなって、鎧まで付けて更にパワーアップ。アカネの生み出した怪獣を、アンチを打倒してしまった。あっけなく、ヒーロー番組みたいに。

 

 勝利が予定調和の、ヒーロームーブなんてシグマに求めてないのに。

 

 それに、

 

(……なんで、私を見てくれなかったの?)

 

 シグマは、その中の少年は、アカネの為だけに戦っていなかった。

 

 リュウタが自身へ向けている感情には、確信がある。元から他人の視線には敏感なアカネだ。少しの機械を通しても、彼の好意は伝わってきたし、不思議と心地よさも感じ取っていた。

 

 同時に、今までの戦いでシグマを好意的に見れた理由も、分かりかけている。あの青い巨人が不格好に、必死に戦っていた理由が、新条アカネのためだから。

 

 けれども、昨日は違う。

 

(……ほかに、誰かいたの?)

 

 女の勘とでもいうものだろうか。アカネには、あの時、少年が自分だけを見ていなかったと分かってしまった。そして、それが強くなった理由ならと考えると、心の奥がざわついて仕方ない。

 

 胸が、痛い。

 

 苦しい。

 

 どうして?

 

 でも、考えるのは嫌だ。

 

 だから、もう一度。

 

「……他の子のことなんて、考えられないくらい」

 

 強い怪獣を作ってあげる。




>NEXT「超・人」



友達殺されていたんで、内海君、かなりのシリアスモードでした。

そして、裕太とグリッドマンについても。ここで話したということは……

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