SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】 作:カサノリ
・秘密を話したら死んでいた
・自分から話しかけたら死んでいた
・きもい話し方をしていたら死んでいた
・馴れ馴れしくしていたら死んでいた
・解釈違いに気を悪くしていたら死んでいた
・アカネを軽く見たら死んでいた
「なあ、リュウ。お前、新条となんかあったのか?」
俺とアカネさんの間で、ひそかな同盟が結ばれた数日後、青天の土曜日。サッカー部の練習試合で訪れていた近場のサッカー場。その日陰に据えられた休憩所で、クラスメイトの刈谷が尋ねてきた。
俺は刈谷の顔を見る。イケメンでリーダーシップがあり、女子からも人気がある、友人としても気のいい奴。けれど、今、俺に問いかける眼はどこか深い色が渦巻いていた。裏切り者を見るような、非難の色。
そんな目を向けられる心当たりは、実はある。
彼もアカネさんに憧れている一人だ。いや、この部活の同級生でアカネさんにあこがれを抱いていない者はいないから、皆がそう。ここしばらく彼女と親しく話していたが、彼女はまごうことなき学年のアイドルなのだから。
彼は明らかに、俺とアカネさんの仲を疑っていた。けれど、その質問に答えることは彼女の秘密すら話すことになる。友人への罪悪感を抱きつつも、俺はごまかすことにした。
「えっと、どうしたんだよ、いきなり」
「どうしたも何も、お前が新条と渡り廊下で話してるの、見たって奴がいるんだよ」
胸の内で、肺が締まった気がした。気づかれないようにしていたのに。長く続けていたからだろうか。これからは場所を気を付けないと。
「いや、たまたま会って話しただけだよ。特に何も無いって」
「……会って何を話したんだ」
「景色が綺麗だとか、弁当は何を選んだとか」
刈谷の眼が細められる。
「あの新条がそんな話、お前なんかにするわけねえだろ。……お前がアイツ、無理やりに連れ出したんじゃねえのか?」
「……そんなわけない」
彼が漏らすのは獣のように欲に走った声だった。それはまるで、自分の恋人を奪った間男へと向けるもので……。決して、いつも昼飯を食べていた友人に向けるものではない。
嫉妬。その二文字が彼の顔に張り付いているのが、はっきりと見える。
その瞬間、入学して初めて刈谷に嫌な感情を抱いた。
「もし新条に言い寄ってるなら……」
「なら、どうだってんだ」
俺は彼の言葉を遮り、声を荒げた。肌がひりひりした。心がささくれ立った。刈谷の口ぶりは彼女のことを何も知らないくせに、さも俺と会うのが不自然だと言いたげで。アカネさんと友人になれたという俺の幸福が分不相応だというようで。
「……ふざけたこと言ってんじゃねえよ。こんな試合前に」
俺はそう吐き捨て、刈谷を置いて日陰を飛び出る。
外に出て、頭を振り、少し後悔。刈谷のことは言えない。俺にも、独占欲なんてあったようだ。
けれど、彼へ向けた言葉はいら立ちを隠したかったが故の言い訳ではあったが、事実も内包していた。今日は強豪校との練習試合。だが、ただの練習試合でもない。夏の大会へ向けて、ベンチ入りできるか。一年生を試す重要なトライアルだ。
真実、これからの三年間を占う大事な試合。刈谷のふざけた物言いでペースを乱されるわけにはいかなかった。アイツと違って、俺は未だベンチ入り圏内なんだから。
それに、俺には失敗できない理由がある。
俺は自然を装って視界を遠くへ飛ばす。グランドを超えた反対側に用意されている応援席。座るのは監督や学校関係者、それに部活仲間の親類に同級生。いつもは俺の応援なんていない場所。けれど、今日だけは一際に華やかな少女がいた。
アカネさんが、友達と一緒に微笑んでいる。
来てくれた。そんな気恥ずかしさを感じながら、彼女を誘ったときのことを思い出した。
『あのさ、もしよければだけど、試合見に来てくれないかな?』
『試合って、サッカーの?』
『いや、もしアカネさんが良かったらだけど……。ほら、ウルトラシリーズでもサッカー回やったりするし、勉強になるかもって。でも、嫌なら……』
『……いいよ』
『え?』
『だから、応援してあげる。リュウタ君の大事な試合なんでしょ? クラスのみんなが言ってたよ』
数日前、そんな無作法な誘いを受け入れてくれたアカネさん。そのにへらとした笑顔に、心が浮き立った俺がどんな反応をしたのかなんて覚えていない。ただ、その言葉のおかげで俺の気合は十分だった。
俺のポジションはフォワード。ボールを受けて、敵陣を突破する攻撃の要。何よりシュートが好きだった俺には、気持ちがいいポジションだった。けれど、そこはポジション争いが厳しい位置でもある。同級生のフォワードは五人、そこから選ばれるのは一人だけ。
上級生に混じってベンチ入りできるのは、それだけだ。
だからその座を勝ち取るため、候補者五人の中から突出するにはゴールを挙げること。それでなくても強豪校相手に競り負けない強さを示す必要があった。
試合時間はすぐにやってくる。
幸いにも、俺は今日もスタメンで出場。ユニフォームを着てピッチに飛び出した俺は、仲間たちと円陣を組む。その中には刈谷もいたが、俺の視線に黙って頷きを返した。どうやら落ち着いてくれたようだ。
懸念事項が無くなったのに安心して、センターサークルに立って、ボールをそろえる。キックオフはこちらからだった。すると、
『馬場君、がんばってー!』
遠くからアカネさんの声が聞こえてくる。あの柔らかい声を強く張り上げて、こんな場所まで届くほど。アカネさんだけじゃない、アカネさんの友人たちも同じように手を振り応援してくれている。
「……ふう」
喜びを抑えて、息を整える。けれど心は燃え上がるほどに熱い。今の俺は、負ける気がしないと、ヒーローの気持ちが分かった気がした。
開幕のベルが鳴る。
相手は都大会の入賞経験もある強豪校。事前の予想では、よくてこちらの引き分け。だが、試合は意外にも拮抗した状態で進んだ。
理由は双方にあった。相手はテストマッチだと思って控え選手中心の布陣。楽観的で、どこか真剣さが足りていない。それに比べて、こちらは学年のアイドルの見学も相まって気合十分。ボールへと向かう執念は、俺たちツツジ台の方が強いくらいだ。
俺もその勢いに飲まれて、いや、それ以上にアカネさんへと良いところを見せたいと、ピッチを全力疾走し続ける。そうして一回り大きいバックスと競り合いながら相手陣地でスペースを縫いつつ進んでいった。
いつも応援なんて、力にならないと思っていた。だが、それは間違いだったのだと気づかされる。今までにないほど、試合に集中し、力が湧いてきた。
そして、
「行け! 馬場ァ!!」
ゴール前、左サイドからのセンタリング。俺を目指して飛んでくる、サッカーボール。それが、あのスフィアのあんちくしょうに見えて。けれど位置は悪かった。スペースは狭く、センタリングも綺麗なものではない。
まさに、ここで決めれば最高にかっこいい場面。
「おらぁ!!!」
だから、俺はがむしゃらに足を振りぬいた。右足に確かな感触。少し苦手だったボレーシュート。それは打ち上げられることなく、白い流星のようにゴールへと突き刺さる。
「……」
脳が硬直するとは、こういうことか。
俺はしばし、目の前の光景に呆然として。そして、その結果を認識した瞬間、感情がダイナマイトのように爆発した。
「よっしゃ!!!!!」
力を込めたガッツポーズ。それは、チームメイトの飛びつきによってかき消されるが、観客や仲間たちの歓声が何倍もの達成感を与えてくれた。その爆音の中、アカネさんの嬉しそうな声が俺の耳に届いたのは、神様のくれたちょっとした贈り物だったのだろう。
だから、俺は刈谷の向ける眼に気づくことができなかった。
歓喜の瞬間から数時間後……。
「……これはしばらくサッカーは無理だね。ただ、数日で歩けるようにはなるし、休めば完治するから。二か月くらい、無理な運動はしないように」
太った医者は、淡々と俺に宣告をくだした。
俺は霊安室のように冷たい場所で、一人、その言葉を噛みしめる。不思議と落ち着けてはいた。
「……わかりました」
どこから漏れているのかわからない声。
その後、どうやって診察室を出たかは覚えていない。渡された松葉杖の動かし方なんて、知らなかったのに。いつの間にか、俺は診察室から逃げていた。
気を落ち着けようとする深呼吸は、何度も肺を行き来したけど、頭に空気を送ってくれない。俺は何だか苦しくなって、体を九の字に折り曲げる。
正直に言えば、俺は自分がこんなにショックを受けるとは思っていなかった。元々、兄への対抗心から始めたスポーツ。そして怪獣趣味を隠すための偽りの趣味。サッカー自体に思い入れは少なかったはずなのに。
今は死にたいほど辛い。
しばらくして気づくと、外はすっかりと暗くなっていた。コンクリの壁がよく冷えて、春から夏に変わろうとしているのに、冷蔵庫みたいにこの場所は冷たい。時間も時間なのか、単に世間一般では運がいい日だったのか、他の患者は待合室に座ってはいなかった。
チームメイトの出迎えさえも。
「……」
存外みんな冷たいものだと思ったが、冷静に考えれば今はミーティングの時間。送ってくれたコーチには、自分で帰れるなんて伝えてしまったから居ないのは当たり前だ。
けれど、心の中は虚しくて、誰かに一緒にいてほしい。なんて、女々しい思いが駆け巡る。
そんな時だった、
「リュウタ君、大丈夫だった?」
暗闇の奥から、やさしい声が聞こえた。
それだけが、この地獄のような冷たい場所を溶かしていく。
まさかと思い、顔を上げた時、アカネさんがそこにいた。
思わず、泣き出しそうになる。けれど、好きな女の子の前でそんな醜態は晒せなくて。俺はずいぶんと不恰好な顔をしていただろう。喉奥が熱くて、言葉が形をつくらないが、無理に音を絞り出す。
「……うん。ちょっと休まないといけないけど、復帰はできるってさ」
「……そうなんだ」
「試合は、どうなったの?」
「よくわからないけど……、勝ったみたいだよ。点はあのリュウタ君のだけ」
「じゃあ、怪我して頑張った甲斐があったな……。きっと、明日はヒーロー扱いしてもらえる」
無理くりな笑顔、精一杯の強がりは、アカネさんの眼にどう映っただろう。
ヒーローには程遠い、夢を見せられなかった男の姿。
あの渾身の得点の後、チームはさらに勢いづいた。俺などは特にそう。ベンチ入りへと大きく前進したこと、アカネさんへカッコいいところを見せられたこと。このまま二点目、三点目を決めて、今日のヒーローになるのだと少し無茶な攻め方をした。
だから、
『お、おい! リュウ、大丈夫か!!?』
頭上で響く刈谷の声。俺は利き足をかばいながら、それを聞いていた。
再びの攻撃のチャンスに、俺たち攻撃陣は全員でペナルティエリアに飛び込んだ。当然、追加点は許さない相手側の守備と大変な競り合い。そこへボールが放り込まれ、俺は足を延ばそうとして……。
駈け込んできた刈谷の蹴り足とボールの間に差し込まれてしまった。それを刈谷は気づかなかったのだと信じたい。容赦なく脚は蹴り上げられた。ついでに刈谷は転んでしまい、足首にかかったのは、刈谷の全体重。
結果は捻挫。骨折だったり、入院の必要がなかったのだから、まだ良かったというべきなのだろう。けれど、当然の結果として、夏の大会のベンチ入りも敵わなくなった。いや、これから数か月も練習できなくなれば、今後レギュラーの候補に選ばれるかどうか。
未来が分からない以上、たった一つの汚点が自分の人生を塗りつぶしていくように感じていく。
頭を駆け巡る後悔と悲しみ、そして考えたくはない疑念。
俺はそれらを振り払うようにアカネさんへと再び口を開く。彼女の表情は、薄暗くて見えない。作り物めいた笑顔も、柔らかい笑顔も、揶揄うような視線もない。
「……今日はごめん。せっかく見に来てくれたのに、こんなカッコ悪いところ見せちゃって」
「……」
勝手に盛り上がって、勝手に期待させて、勝手に期待を裏切った。無理に良いところを見せて関係を深めたいなんて、そんなことを考えたのが悪かったのだろう。
頭を下げると、目に熱がたまっていく。ああ、本当に悔しい……。
けれど、うつむき、滲んでくる視界に、だぼだぼのパーカーに包まれたほっそりした手が入ってきた。差し出されるように、ゆっくりと。それは俺の腕へと近づいていき。
ためらうように、震える手は、ようやくと俺の手に重なった。
震える、温かい指。
顔を上げると、彼女は目の前にいた。
赤い瞳に、俺の姿がはっきりと映っている。泥だらけになって、今にも泣きそうな情けない男。彼女は笑顔じゃなかった。小さく、彼女が言葉を伝えていく。
「……リュウタ君のお誘い。私ね、本当はちょっとめんどうだなって思ってたんだ」
「……そうなんだ」
「うん。だって、部活動なんて頑張っても意味ないし、外に出るのも暑いし、砂ぼこりも煙たいし、友達はきゃーきゃー叫んでうるさいから。ほんと、昨日なんてサッカー場が壊れればなー、なんて思ったり。
今日来たのは、リュウタ君は同盟仲間だし、一度くらいは付き合ってあげようかなんて。……それだけ」
つぶやいていく言葉は、アカネさんの普段の姿とは想像がつかないほど、普通のそれだった。完璧な美少女なんかじゃなくて、めんどくさがりで、すぐにイライラしてしまう、今どきの女子高生。
意外な言葉に目を見開く俺に、アカネさんはどこか、不思議な顔をした。今、それを話しているのが、自分でもどういった感情に依るのか分からないというような。戸惑う表情。
「ほんと、めんどくさかったんだけどなぁ……。
けどね、見てたら結構ワクワクしたんだ。リュウタ君、なんだか訳わからないくらいに必死で。変だけど、私も応援してあげたいなって」
だから、
「ゴール、かっこよかったよ」
その言葉が限界だった。
必要な時にいてくれる人なんて、俺には誰もいなかった。部活仲間も、家族も。友達は今日、きっと失った。けれど、そんな俺にアカネさんだけは寄り添ってくれている。
この子だけいればいいと思った。今すぐに彼女を独り占めにしたいなんて、悪魔のような思いすら湧いてくる。俺を置いて消えた母親も、金だけ残してさっさと死んだ父親も、結局最後まで俺を見下して去っていった兄貴もいらない。
けれど、自分でも嫌なくらいのその熱情こそが……。この気持ちが恋なのだと、はっきりと教えてくれた。
馬鹿みたいに泣きじゃくる俺の手を、アカネさんは黙って握ってくれた。
『おい刈谷! お前、見舞いに行かなくていいのか?』
『見舞いって誰のだよ』
『誰のって、リュウの奴だよ。事故だって言っても、ほら、あんなに思い切り蹴っちまったもんだから』
『……まあ、見舞いくらいは、行った方がいいか』
『言い方! って、やっぱわざと?』
『決まってんじゃねえか! ほら、アイツ、いつもすかしてやがるし、付き合い悪いし。そのくせなんか必死に部活やっちゃって』
『そんなこと言って、ほんとのほんとは?』
『新条に手を出すなんて、万死に値する!』
『ははは! お前も彼氏じゃねえじゃん! でも、あいつも応援貰ってニヤニヤしてさ。いい気味だったよな』
そこまで会話が進んだとき、マウスカーソルが停止ボタンを押した。マウスに添えられた細い指は苛立たし気に何度も何度もパッドを叩く。
暗い部屋だった。
日が入らず、ごみ袋がたまった、お世辞にも清潔とは言えない部屋。無機質な怪獣の大群が敷き詰められた狂気のおもちゃ箱。
その主である少女は、大きく息を吐くと、付けていたヘッドホンをゆっくりと机に置いた。次の瞬間、癇癪が爆発した子供のように、近くのごみ袋を大きく蹴り上げる。何度も何度も。非力な彼女の脚では、飛び上がることはなかったが、バスバスとした大きな音が部屋へと響く。
彼の足なら、どこまで袋は飛び上がれただろうか。
ようやくと気が晴れたのか、息を乱しながら少女は椅子へと座りなおす。再びヘッドホンを付けて向かうのは、眼前の大型モニター。そこには、どこか不気味な、映画の悪役のようなマスクをかぶった存在がいた。
見るものが見れば、一目で悪役と分かるフォルム。漫画やアニメ、ウルトラシリーズに出てくるキャラクターとしか思えない異形。その奇妙な怪人へと、少女は親し気に話し始める。
「……ほんと、この間の堀井ってやつもそうだけど。こういう男子ってくっだらないよね」
その声は、彼女の友人たちが知る、いつもの穏やかな調子とは違う。普通の少女が世間へと喧嘩を売る調子で、そこに世間体や遠慮を根こそぎ取り外したような、我儘な世界の女王。
そして怪人は見た目に似ず親しみ深い声で、少女の不平へ追随する。
『確かにそうだね。ちょっとしたことで友達を嵌めるなんて可笑しいよ』
「そーそー。アレクシスもそう思うでしょ? 最低だよ! 生きてる価値ないよね!!」
『こんな人間がいると、君の世界も汚れてしまうねえ』
「……リュウタ君のサッカー、綺麗だったのにね」
少女は考える。どうして自分はここまで苛立っているのだろうか、と。
最初は単なるおもちゃのつもりだった。退屈が蔓延する、くだらないクラスで一人。自分のマイナー趣味に勘付いた男。ぶつかってきたときは、堀井と一緒に殺してやると思ったが、その事実は彼女へと興味をもたらし、少しの猶予を少年へと与えた。
そうして数日が経っても、数週間が経っても、不思議なことに猶予は消えなかった。
秘密をばらそうとしたら殺そう。
共通の趣味があるからとべたべた関わってきたら殺そう。
怪獣の趣味が違ったら殺そう。
下心を見せてきたら殺そう。
彼女の中で設定された死へのボーダーラインをすり抜けるように近づいてきた彼。いつからだろうか、彼を知りたいと思い始めたのは。
真実、この世界の無邪気な神となった少女にとって、あの程度の男、どうでもいいはずだったのに。とうとう今日は、自分から彼に触れてしまった。彼から触れてきたら容赦なく殺したはずだったのに……。
「ま! いっか! めんどくさいこと考えるのは、あとあと!!」
『おや、また怪獣かい?』
「そーだよー。私を怒らせたらどうなるか、ちゃんと教えてあげないと♪」
少女はカッターを取り出しながら笑みを深めていく。作り上げるのは、無邪気な殺意の具現。理不尽な悪意の鉄槌。彼女が大好きな怪獣……。
「とびきり痛い目に合わせてあげる! えっと、それじゃあ、触手に口を付けて、棘を付けて、そこから溶解液を吐くようにして……。あ! そうそう名前! いい名前思いついたんだ!! 五体満足怪獣バラヘドロ!!!」
『おやおや! いつにもまして背徳的なフォルムだ! ……本当に君は、楽しそうに怪獣をつくるんだねえ』
「楽しいよー。復讐は蜜の味っていうもん。でもでも! 他の人の復讐してあげるなんて、私は良い子だよね?」
『……フフフ、その通り。君は最高だよ、アカネ君』
その夜、アカネの狂気が世界を蹂躙した。
馬場くんの恋愛はいつでもドキドキ。何処に死亡フラグが転がってるか分かりません