SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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さてさて!
ラストバトル、開演です!



同・盟

 ラスボス。

 

 最後にして最大の強敵。

 

 それは俺のような特撮オタクにとって、魅力的なワードだった。

 

 ガタノゾーアに、グランスフィアに、ゾグ。TDGだけでも絶望的で、けれども、最後には激熱展開と共に倒されるラスボス達が活躍した。中にはウルトラマンを道連れにしたり、倒してしまったり。ほんと初代マンやダイナに関しては、何度見ても結末に愕然としたり……。

 

 ともかく、そんな特撮に夢を見ているオタクが本物のヒーローと怪獣に出会ったら、

 

『俺達のラスボスは、どんな奴になるんだろう』

 

 なんて内海と一晩中、議論するに決まってる。

 

 戦いはいつまでも続くわけじゃないし、ラスボスもいるんだろうって無邪気に考えていた頃のこと。

 

 まだ何も知らなかった俺はアカネさんを守って、その時には彼女の記憶も戻っていたら、と都合のいい妄想をしていた。内海はゼットンとか、ハイパーゼットンとかイフとか、めちゃくちゃ強い怪獣が出てくるんじゃないかと熱弁していた。

 

 でも、最近は『ラスボス』っていう言葉を思い浮かべるのが怖かったんだ。

 

 戦っている相手がアカネさんで、彼女がどんな存在かも思い出していたから。

 

 仲間がいてくれるから、きっとハッピーエンドが待っている。そう信じて戦えたけど、やっぱり結末は分からないし、取り返しのつかない結末が待っているかもしれないって思ってた。

 

 けれど、今のような状況はそのどんな想像も上回っていた。

 

『ハハハハハハハハ!!!』

 

 目の前には巨大な『ラスボス』、アレクシス・ケリヴが現れて、俺を守ったのが何度も殺しあったアンチだなんて。

 

 かつての敵が味方になってくれたなんて王道の展開だけれど、わけのわからない状況に、俺は混乱しそうになる。

 

(でも……)

 

 どうしてだろう。

 

 見上げるだけでアレクシスの底知れなさは伝わってくるのに。今までの敵とは比じゃないほど強いのに。

 

 不思議と俺は……怖くはなかった。

 

 

 

 

 ひゅんひゅんという紐を振り回す音だったら縄跳びで経験があったが、ズバンズバンと一撃でもくらったら、首が飛びそうな音は今まで聞いたことがなかった。

 

 それが何十も飛んでくるとなれば、一瞬も気が抜けない。

 

 俺とシグマはそういう状況に放り込まれていた。

 

『どうしたんだい? 逃げるばかりじゃないか!』

 

 しかもうざい悪魔は調子よく、弄ぶような笑い声も投げかけてきて、聞くだけで頭の中が煮えたってしまう。『そういうセリフは敗北フラグ』とでも言いたいのに、軽口をたたく余裕もない。

 

「ぐっ……!」

 

『リュウタ!』

 

 さっきの不意打ちで深くえぐられた腹部はシグマの力で復元に向かっているが、えぐいくらいの痛みを発し、それが俺の集中力も奪っていく。

 

 結果として、

 

「っ……!」

 

 アレクシスが放つ黒い帯が、俺達の首へとまっすぐ向かってきて、反応することができない。俺たちだけなら、これでやられていただろうが。

 

『ハァ……!』

 

 攻撃をアンチがはじいてくれた。アンチ、いや、グリッドナイト。まんまハンターナイトに影響されたのだろうか、腕には光の剣を生やして、なんか妙に様になっている。

 

「アンチ、助かった……!」

 

『……なぜだ?』

 

「……な、なぜ?」

 

 いきなりグリッドナイトが不思議そうにつぶやいていたので、聞き返す。

 

 もしかしてこの状況を改善する疑問でも浮かんだのかと、少し期待した。こういう時は素朴な疑問が解決のヒントみたいなこともよくあるし。

 

 だが、元怪獣が言ったのは。

 

『こういう時は、相手を簡単に倒せるものではないのか?』

 

「……は?」

 

 なんて、子供みたいな疑問だった。

 

『俺は死にかけのお前を助け、アレクシスへ戦士の名乗りを上げた。

 ウルトラマンであれば主題歌が流れ、アレクシスが爆散する場面のはずだが……』

 

「いや、それは特撮の話で……」

 

『せっかくお前がやられるのを待っていたのに……』

 

 おいこら!

 

「ちょっと待て!? お前、まさか出待ちしていたのか!?」

 

『ヒーローにはタイミングが大事なのだろう?』

 

「一歩間違えたら、俺、斬られてたんだぞ!?」

 

 前言撤回。

 

 ヒーローっぽくなったけど、まだ全然ヒーロー精神足りてない、こいつ! めちゃくちゃ外見は好みなのに!

 

『そんなことより、また攻撃が来るぞ、グリッドの父よ』

 

「なんだそれ!? 俺はお前の父親じゃねえ!!」

 

『勝手に決めた。ピンチの場面で親子の共闘も勝利の条件だ』

 

「こんなツッコみまくってたら、勝てるもんも勝てないって……うぉ!!?」

 

 言っているうちに攻撃がさらに勢いを増していく。

 

 十や二十じゃ足りないほどの鋭さが増した帯による斬撃。だけれど、

 

『行くぞ、グリッドマンシグマ』

 

「……ああ! グリッド、ナイト!!」

 

 俺はなんだか笑えていた。

 

 四方八方から帯が殺到する。先端はシグマの体を簡単に裂くほど鋭く、側面も柔軟で叩いてもすぐに方向を転換して襲ってくる。

 

 だが、こういう時こそ鍛えてきた斬撃の出番。

 

『リュウタ、シグマスラッシュだ!』

 

「了解! グリッドナイト、背中は任せた!」

 

『……いいだろう』

 

 両手に光の剣を出し、次々に帯を交わしながら、すれ違いざまに斬撃を加えていく。さすがにアレクシスの力だけあって強力だが、こちらも戦いの経験だったら上だ。すぐにコツを見つけて、帯を切り裂くことに成功する。

 

 しかも、

 

(むかつくけど……相性は、いいんだよな!)

 

 グリッドナイトがシグマとの戦闘経験によって進化した姿だからか、互いの動きが手に取るようにわかって、なんの不安もなく任せることができていた。

 

 確かにアカネさんが生み出して、俺とシグマの戦いで成長したのなら、こいつが言うことも一理というか、アカネさんが母で、俺が父とかは……うん。

 

「そういうのはあり――、って、うぉ!?」

 

『呆けているんじゃない。間違えて斬るところだ』

 

 いきなりグリッドナイトが体を回転させ、全方位を斬り伏せるものだから、危うく俺の頭も飛ぶところだった。

 

「やっぱなし! お前が息子とか、マジで! マジで! 願い下げだ!!」

 

『何を言っている……俺だってそうだが?』

 

 だったら変なこと言うんじゃないって! 気が散るんだよ!

 

「ほんっと、お前と喋ってんのは疲れるんだけど――」

 

 けれど、さっきの攻撃で、周囲の帯が一掃されたのも確か。今、この隙を使えば。

 

「合わせろ!!」

 

『ああ!』

 

 俺は腕を組み、エネルギーをチャージし、グリッドナイトは両手に丸ノコのような光を生み出す。

 

「グリッドぉ……!!」

 

『……ビーム!!』

 

『グリッドナイトサーキュラー!!』

 

 俺とシグマが放った青いビームの周りを、螺旋を描くように丸ノコ光線が滑っていく。そうして、二つの光は俺たちを見下ろすアレクシスの仮面へと直撃した。

 

 衝撃と爆風を伴うクリーンヒット。十分に手ごたえはあり。

 

 ただ、

 

「……」

 

『……』

 

 俺とグリッドナイトは一言も発さないままでいた。

 

『どうした、リュウタ?』

 

「いや、こういうのは……」

 

『「やったか」というのは敗北の前兆だ』

 

『……もしかして、君たちは気が合うのでは?』

 

 失敬なシグマ。この非常識ヒーローと一緒にしないでもらいたい。

 

 だが、せっかくの俺達のフラグ回避も無駄に終わる。

 

 もとよりあのアレクシスがこれくらいでやられるはずもなかった。煙が晴れると、アレクシスのふざけた仮面が無傷で現れる。

 

『フフフフ! もっと抵抗してきたまえ! 希望が見えた時ほど、絶望はより深くなるのだから!』

 

「ちっ……!」

 

 結局、アレクシスがこんな回りくどい手を使っているのも、そのためなのだろう。こいつは俺達と戦っていながら、意識はアカネさんだけに向けている。

 

 アカネさんが俺達の戦いを見て一喜一憂することこそがこいつにとっての娯楽。

 

 だから、この戦いすらも楽しむための工夫に過ぎない。

 

『さて、ここでスパイスを一つまみ入れようか。仲間の登場と連携攻撃……だが、現実は甘くないとねえ』

 

 宣言とともに、俺たちの周囲に光の玉が無数に出現する。

 

 それはあの女神が俺を何度も弾き飛ばしたのと同じ力。

 

『忘れていないだろうが、この体にはカミサマを取り込んでいる。アカネ君が生み出した神に等しい力。アカネ君の分身。つまり、ね――』

 

 光が瞬く。

 

「グリッドナイト! 避け――」

 

『今度は、痛いだろうねえ』

 

 アレクシスの言い切る暇もなく、全身が打ちのめされていた。

 

「ぐっ、あ、ぁ……」

 

 倒れた体は力が抜けたように動かない。腹部の傷も治りが遅い。カミサマを取り込んだ影響か、それともいよいよシグマが俺を保護するのにも限界が来ているのか。

 

 そこへ、クイーンモネラみたいになったアレクシスがゆっくりと近づいてくる。

 

 グリッドナイトも立ち上がろうとしているが、全身の装甲はひび割れて余裕はなさそうだ。

 

『ふぅ……こんなものかい? もう少しスリルというか、そういう刺激が欲しいのだがねえ……』

 

 再び俺たちの周りに光が集っていく。

 

 あの避けられない神の攻撃。

 

 光の強度が高まって、臨界に近くなったその時。

 

『む……?』

 

 光がアレクシスに向かって殺到し、その巨体を包んで拘束した。

 

『なるほど! さすがだね、アカネ君!』

 

 アレクシスの腹部が光っていて、その輪郭はあのカミサマのもの。アカネさんたちがいる校舎を見ると、そこではアカネさんが必死の顔でタブレットを握りしめて、隣では内海が俺に手を振っていた。

 

「内海! いったいなにが……!」

 

「新条が怪獣の力を使って、動きを止めてんだよ! 今のうちにいったん撤退しろ! 今のままじゃ勝てねえだろ!」

 

「っ……」

 

 内海の言う通り、敵には遊ばれている状況で俺もグリッドナイトも満身創痍。

 

 アレクシスを止めている拘束も、次第にほころびが大きくなっている。

 

(どうする……?)

 

「今のうちに攻撃も……」

 

『いや、彼の言う通りだ。今の私たちにアレクシスを倒しきる力はない。……この時間を使って、少しでも有利な条件を作らなければ』

 

「ああ、そうだな……! グリッドナイトも! いったん下がるぞ!」

 

 グリッドナイトの手を取って、無理矢理に撤退する俺達。

 

 だが、そんな俺たちの抵抗を無駄だというように。

 

『フフフフ……』

 

 アレクシスは不気味な笑いをこぼしていた。

 

 

 

 アカネさんも含めたみんなは、屋上に集まっていた。俺とグリッドナイト……いや、人間形態はアンチが名前なのか? ともかくアンチは変身を解除してそこへと降り立つ。

 

 もう慣れきったまぶしい光が消えると……

 

「……リュウタ、くん」

 

 ああ……。もういいんだよな?

 

「アカネさん!!」

 

「っ……」

 

 俺は、一も二もなく、小さな体を抱きしめていた。

 

 アカネさんは腕の中で少しだけ身じろぎして、次第に俺の胸元に熱いなにかが伝っていく。

 

「りゅうたくん……リュウタ君……!」

 

「ずっと、こうしたかったんだ……」

 

「ごめんなさい……! わたし、わたし……!」

 

「うん、わかってる……」

 

 でも、今はそんな後悔よりも先に、

 

「アカネさん」

 

「えっ……んんっ!?」

 

 懐かしい温かさが欲しかった。

 

 一秒、二秒、もっと長くこうしていたいけれど……。

 

「……ごめん、むりやりで」

 

「ううん、ほんとは私もずっと……こうしたかったし」

 

 ようやく間近で見れたアカネさんは涙でぐちゃぐちゃになっていて、でも、照れて赤くなった顔は昔と変わらなく愛おしかった。

 

「アカネさん……もう一度……」

 

 

 

「ごほん、ごほん!」

 

 

 

 おいこら、内海。

 

 無理矢理な咳払いに半目を向けると、そこにはポリポリと頬をかきながらもこちらをチラチラと横目で見てくる内海に、苦笑いする響、そして呆れ果てたような顔の宝多さんがいた。

 

「えーっと、そのだなぁ、俺達もいるんだし、状況からみても、その……」

 

「邪魔すんだったら、文句ぐらいはっきり言えよ!」

 

「うっせえ! 今の状況わかってんのか! このバカップル!!」

 

「内海君……」

 

「っ、はいっ!」

 

「黙って」

 

「…………はい」

 

 ほら、アカネさんの機嫌、急降下中だぞ。

 

 ただ内海が言ったとおりに、いまの状況でゆっくり諸々をする暇もないのも確かだった。

 

「グリッドマンシグマ、作戦はあるのか?」

 

 俺たちのやりとりには興味が無さそうにアンチが俺に尋ねてくる。だが、俺はといえば苦い顔で黙るしかない。

 

 俺がノープランなことに気づくと次にアンチはアカネさんを向く。アカネさんは自分の生み出した怪獣に何を思っているのか、目を少しそらして、ひどく気まずそうにしていた。

 

「アレクシスの動きを止めているのは……新条アカネ、お前だな?」

 

「う、うん……このタブレットでカミサマの力を使えるようにしてたから……。なんとか、中から邪魔できてる、けど……その……」

 

「アカネが言うには、あと十分くらいしかもたないだろうって」

 

 十分か。

 

 ウルトラマンだったら十二分に戦える時間だが。あのアレクシスを相手にするには、たったの十分って考えたほうがいい。

 

 アカネさんもどう見ても本調子じゃないし、いつ不測の事態が起こるかわからない。俺とシグマ、グリッドナイトも負傷している。

 

 ここからできる、最善の策は……。

 

「むむー、むー! むー!」

 

 …………律儀に守りやがって、こいつ。

 

「アカネさん」

 

「え? あ、あー……。内海君、しゃべっていいよ」

 

「ぷはぁ! おいおい! 作戦がなきゃ、リュウタ達を呼び戻すわけがねえだろ!」

 

 と、ウルトラオタクは水を得た魚のように生き生きと話し始めた。

 

「いいか、よく思い出せよ?

 今、目の前にはでけえラスボスがいる。それでライバルが味方になって、新条も味方になって、こっちは総力戦だ! だけど、いま、ここに肝心のヒーローがいないだろ?」

 

「それって……グリッドマンのこと?」

 

「裕太の言う通り! 俺たちに必要なのは、グリッドマンだよ!」

 

 確かに、それはそうだ。

 

 けれど、ここから都合よくグリッドマン復活とか、そういう特撮のお決まりみたいなやつは……。

 

「いや……」

 

 違う。

 

 そうだ。今こそ、ヒーローが必要なんだ。

 

 目の前には大怪獣。世界の危機で、最愛の人のピンチ。ここから必要なのはシリアスじゃない。決めたじゃないか、言われたじゃないか。

 

『ご都合主義でもハッピーなごっこ遊びにしないといけねえじゃねえか!!』

 

 俺たちは防衛軍でも、ウルトラマンでもない。ただのウルトラマン好きな学生。

 

 俺たちにできるのはヒーローごっこ。だから、アレクシスのたくらみなんて知らない、世界がどうなるかなんて考える必要もない。

 

 不思議だったんだ。アレクシスは巨大で底も知れないラスボスなのに、カミサマや他の怪獣を倒したときのような怖さも感じていなかった。それはきっと、もう大事なことは終わっているから。解決しているから。

 

 アカネさんがいて、元敵のライバルがいて、信頼できる仲間がいて。俺の中には最高にかっこいいヒーローがいる。

 

 だったら憧れたヒーローのように、ご都合主義のヒーローごっこをやればいい。その先に、希望が待っているんだから。

 

「……アカネさん」

 

「な、なに……?」

 

「グリッドマンを元に戻すことはできる?」

 

 もしかしたら酷な質問かもしれない。アカネさんが嫌って、封印したグリッドマンをよみがえらせることは。けれど、他に今から打てる最善の方法もない。

 

「あのカミサマはグリッドマンを殺さなかった。だから、もしかしたらって、思ったんだけど……」

 

「…………」

 

 アカネさんはうつむき、手をぎゅっと握っていた。

 

 それは怒りや悲しみではなくて、自分の中での大きな何かと戦っているような……。

 

 でも、アカネさんは静かに顔を上げると、

 

「うん……できるよ」

 

 はっきりと言った。

 

「ほ、本当か!?」

 

「ちょ、内海! 近い! 近いって!」

 

 内海が興奮してアカネさんに飛びつきそうになり、俺がキレる前に響が間一髪で止めてくれる。

 

 アカネさんはそんな内海を一瞥もせず、俺の目を見ながらうなずいた。まだ自信はなさそうだけれど、確かな意思をもって。

 

「カミサマの力を使えば大丈夫だと思う。アレクシスがほとんど持っていったけど、あそこ……」

 

 指さす方向にあったのは、女神が抱えていたビー玉のような球体。

 

「あそこに、まだ力が残っているから、それを使えば……」

 

「じゃあ、今すぐにグリッドマンを復活……」

 

「で、でも……その……」

 

「アカネさん?」

 

「に、二度と復活できないように、すごくいっぱい、封印しちゃって……その……」

 

「えっと……つまり?」

 

 アカネさんは恥ずかしそうに言う。

 

「封印解くの、どのくらい時間かかるかわかんないし……。管理用にしてた家のパソコン使わないと無理っぽくて……」

 

 あー……。

 

 口ぶりから見て、十分そこらじゃ無理っぽいと。

 

「ご、ごめんなさい! 私、こんなことになるとは思ってなくて……!」

 

 アカネさんは申し訳なさそうに手を振るわせる。けど、俺は何も不安はなかった。

 

「おい、内海……」

 

「ああ……」

 

「燃えるシチュエーションだよな?」

 

「当たり前だろ!」

 

 むしろ、俺は燃えてきた。

 

 ウルトラマン的には最高の逆転フラグじゃないか。

 

「じゃあ、作戦を決めるぞ!」

 

 内海が眼鏡を光らせながら、まだ状況がつかめていない宝多さんや響に宣言する。

 

「方針は一つだ! グリッドマンを復活させる!」

 

 そのために、

 

「時間稼ぎはリュウタとシグマ! それに……えっと……」

 

「グリッドナイトだ」

 

「そう! グリッドナイトに任せる! なんでもいいから、あの黒いやつを引き留めてくれ」

 

 それが難しいんだよな。せめて、シグマのフルパワーを出せれば。

 

『……そのことだが。一つ、考えがある』

 

 シグマ?

 

『グリッドナイト、君の協力が必要だが。もし……』

 

 …………

 

「それって、ありなのか?」

 

 その方法は俺にとっても驚きで、ちょっと突拍子もなかったが、説明を受けたアンチは不承不承という顔でうなずいた。

 

「わかった。俺にとってもアレクシスが目障りだ。シグマとの決着の前に協力してやる」

 

「よぉし! それで、グリッドマンを復活させるために新条の家に行くのは、新条と俺!」

 

 おいこら、どさくさに紛れてアカネさんとチーム組んでるんじゃねえよ。微妙に自分の願望も加えてねえか?

 

 そう言って苦笑いすると、内海も歯を見せて決め顔をした。あんまり締まっていない顔だった。

 

「こういう時こそ、ウルトラ知識が必要だし! なんかあった時は、新条のこと守って、ちゃんとリュウタのとこまで連れ帰らなきゃいけないだろ?」

 

「……内海君、私よりウルトラマンに詳しいの?」

 

「うぐっ!?」

 

「アカネさん、そこを突っ込みまくるのは後で」

 

 アカネさんも内海のウルトラオタク熱に当てられたのか、少しだけ元気になったようだ。

 

「で、でだ……! 復活したグリッドマンのところに行くのは、裕太と六花! 二人は先にジャンクの前で待っててくれ!」

 

「私は……うん、わかった。でも、響君は……」

 

「もちろん、行くよ」

 

 宝多さんが何かを言おうとしたのを止めて、響が前に出る。

 

「俺は自分で戦った記憶もないけど、できることがあるならやりたいから」

 

 本当にグリッドマンが響のふりをしていた時と、全然変わらない。

 

 いつも穏やかでゆったりしているのに、いざというときはかっこいいヒーローみたいな姿。

 

 これで全員の役割は決まった。

 

 でも……。

 

(この作戦の核は……)

 

 だから、俺は最後にアカネさんに確認する。

 

「アカネさん……一緒に、アレクシスと戦ってくれる?」

 

 アカネさんはその言葉に少しだけ、考えるように口を結んだけれど、

 

「リュウタ君……」

 

 次の瞬間には、アカネさんの顔が目の前にあって、唇にまた温かいものが重なっていた。

 

 宝多さんが「うわー」とか呆れ声出したり、内海が歯ぎしりしていたり、響が目のやり場に困ったようにあちらこちらを見ている。俺も少し戸惑ったけれど、こんな局面なのに、こうして抱きしめて、キスができていたら、緊張もなくなって、あの悪魔なんてメじゃないと勇気がわいてきた。

 

 十秒くらいして、名残惜しく、アカネさんが離れる。

 

「……まだわかんない。私、最低なことをしてきたし、グリッドマンも敵だと思ってきた。都合よすぎだって、自分でも思う」

 

 アカネさんが顔を上げる。

 

「でも、リュウタ君は大好きな人で、六花は友達で。それに、響君も、内海君も、私のために頑張ってくれて」

 

 だから、

 

「私も……私のできることをやらなくちゃ」

 

 最後はそういってくれた。

 

「うん、ありがとう」

 

 だったら、あとは全員であの悪魔を倒せば大団円だ。

 

「よし! 全員で円陣組もうぜ! グリッドマン同盟、最後の戦いだ!!」

 

 内海の空気を読まない大号令に、文句はなかった。ためらいがちなアカネさんの手を引いて、興味なさそうな顔していたアンチまで引き入れて。まだ向こうでは巨大アレクシスがうねうねと気持ち悪い動きをしているから、それが吹き飛ぶくらいに、こっちはカッコつける。

 

「おい、超ウルトラオタクな作戦部長。せっかくだから、作戦名も決めろよ」

 

「お、俺か!?」

 

「内海がグリッドマン同盟つくったんだから、任せるよ」

 

「まあ、良いんじゃないの? ……結局、最後まで付き合っちゃった」

 

「どうでもいいから、さっさと始めろ。なんだ、この集まりは」

 

「……もうちょっと、アンチは空気読むようにしたら良かったかな」

 

『ふふふ……』

 

「シグマ?」

 

『いや。こういうのは私も……初めてだ』

 

 見事にバラバラな、同じ学校にいても仲良しグループにはならなそうな面々。そこに怪獣とヒーローまで加わって。

 

 でも、これがいい。バラバラなみんなが集まって一つの作戦に向かうのが『同盟』って言葉にはぴったりだと思えた。内海はノリと勢いで決めたのだろうけど。

 

「えっと、女神が変身した怪獣相手で、グリッドマン復活させなきゃで……」

 

「作戦名パクったら、さすがにテンション下がるぞ」

 

「ガイアにはしねえよ!? あ、でも、俺達はグリッドマン同盟で、シチュエーションもぴったりだし!」

 

 内海が自信満々な顔で俺に耳打ちする。なるほど、微妙にパクリじゃないし、センスもよさそうだ。アカネさんに伝えてもまんざらでもなさそう。宝多さんだけは恥ずかし気。アンチは……意味が分かってのかな、こいつ。

 

 そうして、円陣の真ん中へと内海が拳を伸ばす。あとはそれに倣って、みんなの拳が一か所に。そして、内海の号令に従って、俺達の最後の作戦が始まった。

 

「行くぞ! グリッドマン同盟、最後の作戦!」

 

 

 

「「「オペレーション・ユニオン!!!」」」




>NEXT「√・Σ」

次回は来週末、更新予定です!

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