SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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赤龍

「いやぁ、助かったぜ裕太ぁ、ありがとな! グリッドマンはお前が協力しないと、実体になって戦えないからなーっ!!」

 

「はぁ……」

 

「それにフィクサービームも……って、ん? お前たちは……」

 

 

 

「おい、そこの不審者……? ちょっとツラぁ貸してほしいんだけど……」

 

「私たちのダイナドラゴンになにしたのかなぁ……?」

 

 

 

 ハイライトがオフになって剣呑なオーラを出しているアカネさんと、きっと同じくらいにやばい感じになってる俺とで、響に馬乗りになった不審者の肩を掴む。

 

 ちょっと離れたところでは内海がビビったように顔を引きつらせるが、俺たちも止まる気はない。

 

 きっとこのピンク髪の〇クザにしか見えない男がダイナレックスとやらの変身者だ。見た目は飛び切り怪しいけれど、俺たちの味方サイドだけど知ったことか。

 

 あのダイナレックスの姿はダイナドラゴンの影響をありありと受けている見た目。しかし、俺たちのダイナドラゴンは断じてこんなガラの悪い兄ちゃんじゃなかった。

 

 もしこいつが何かしてダイナドラゴンを乗っ取っているのなら……

 

 どう落とし前をつけてやろうかと考える俺たちだったが、その男『レックス』は俺たちを見ると。

 

「まさかアンタらがダイナドラゴン先輩の……!」

 

 と目を見開きながら呟いて、

 

「いつも、先輩にはお世話になってますっ!」

 

「「……へ?」」

 

 頭を地面にたたきつけるほどの勢いで、思いっきり土下座をしたのだ。

 

 

 

 ダイナドラゴンに似た、だけれども違うダイナレックスが現れた衝撃で頭が真っ白になっていたが、あの後、無事にグリッドマンとダイナレックスは見事な連携攻撃で怪獣を倒してくれた。

 

 そして最後にはフィクサービームを使って街も元通り。誰一人として死傷者を出さない状態で、戦いは終結。

 

 今はグリッドマン同盟そろって宝多さんの家、ジャンクショップ『絢』にお邪魔して、戦いから戻った響を出迎えたところだが……新しい仲間のはずのレックスというのが、またボラーたちに輪をかけて変な奴だった。

 

 今も目の前で土下座してるし。

 

 レックスは見た目とは違う真面目な……いや、やくざ者ならこういう律儀なのもありなのかな? とにかく、大真面目に続ける。

 

「ダイナドラゴン先輩がいなかったら、俺は生きていない……! つまりその生みの親な二人は、俺の命の恩人でもあるわけだ! この通り、礼を言う!!」

 

「いや、いきなり命の恩人認定されても困るんですけど」

 

「と、とにかく顔を上げて! それでちゃんと事情を話して!!」

 

 まだ怖い顔をしているアカネさんとレックスとの間に入りながら話を促す。なんとなく悪い人ではないと俺は分かったのだが、アカネさんは自分の最高傑作なダイナドラゴンの安否が心配で、それが分からない限りは対処を決めかねているという様子。

 

 これでダイナドラゴンがいなくなっちゃいました、原因はレックスです。なんて話になったら、どうなることやら。

 

 だけれど、それは杞憂だったようだ。

 

 レックスの黒い背広のところから、もこもこっと小さな盛り上がりが作られて襟へと向かい……

 

『ぎゃうっ!』

 

「……え?」

 

「か、かわいいっ!?」

 

 そこから、デフォルメされたような小さな赤いドラゴンが現れた。

 

 そしてそれは飼い主を見つけた子犬のように、アカネさんへとぴょんと飛びついて、じゃれつき始めるのだ。

 

「うひゃっ! ちょっともーっ! くすぐったいってばぁ♪」

 

「もしかしてこの子……ダイナドラゴン?」

 

『ぎゃうぎゃう♪』

 

 いや、確かにダイナドラゴンっぽい特徴は持っているけどさ。

 

 不思議そうにアカネさんとチビダイナドラゴンを見るのは、内海たちも同じ。

 

「でもダイナドラゴンって、もっとデカかったよな?」

 

「うん……シグマと合体するくらいだったし」

 

 そうそう。こんなかわいいマスコットな感じにはなってなかった。

 

 とりあえず、ダイナドラゴンが無事?なことに一安心したところで、おそらくこの事態に関係しているだろうレックスを改めて見る。すると彼は真摯な口調で、なにが起こったのかを説明してくれた。

 

「端的に言うと、俺はダイナドラゴン先輩に命を救われたんだ」

 

 それなりに長い話だったので、俺に理解できたところをまとめると……かつてレックスは別の場所で大きな戦いに身を投じていたらしい。

 

 まだレックスがグリッドマンや新世紀中学生と出会う前の話。説明の時に五千年前とか、怪獣優生思想とか聞きなれない単語も出てきたけど、とりあえずツッコむのは後にした。

 

 その世界でレックスはかけがえのない仲間と出会って、世界を乱そうとする怪獣たちと戦った。だけど、その最終決戦でレックスは力を使い果たしてしまう。

 

 仲間たちとちゃんとお別れもできないまま、悔いを残して消えるはずだったレックスは……

 

「だけど、そうはならなかった。俺はダイナレックスと一体になって、命をつなげることができた」

 

 ただ、そのダイナレックスも戦いのダメージは深刻で、フィクサービームを使うだけでは解決しない複雑な問題があったらしい。

 

 そしてそんなレックスを救うために、ダイナドラゴンが力を渡したというのだ。

 

「ダイナドラゴンとダイナレックスは、非常によく似たアンチボディ。怪獣と対する存在だった。おそらく、どこかもっと上位のレイヤーで縁があったのだろう」

 

「で、ダイナドラゴンと存在を重ね合わせることで、レックスは今の形で落ち着いたんだよ」

 

「わーかったか、二人とも?」

 

「は、ハラキリは……勘弁してやってくれ」

 

「……まあ、俺はなんとなくわかった」

 

 ボラーたちが補足してくれるから、本当になんとなくだが感覚的に納得できた。

 

 そしてレックスも、

 

「二人には返し切れない恩がある。俺にできることがあったら何でも言ってくれ!」

 

 と神妙にしているので、怒る気持ちもなくなっていった。見た目は新世紀中学生の他のメンバーよりも奇抜なのに、性格はとても律儀で気持ちの良い人だ。

 

 むしろ俺としては、アカネさんが作った怪獣が立派に人助けをしていたという事実に胸があったかくなっていく。

 

「そっかぁ……がんばったね、ダイナドラゴン」

 

『ぎゃう♪』

 

 アカネさんも嬉しそうにダイナドラゴンをなでて、そしてダイナドラゴンも親との再会に喜んでいるようだった。

 

 にしても、ほんとにかわいいな! この小さくなったダイナドラゴン。宝多さんもソワソワしながらアカネさんに近づいて、ダイナドラゴンにさわりたそうだ。

 

「ね、ねえアカネ? 私もダイナドラゴンなでていい?」

 

「もちろん♪ ほらほら、ダイナドラゴン? 六花お姉ちゃんだよー♪」

 

「そのお姉ちゃんっていうのやめてって……わぁ♪ なんか機械っぽいのにあったかい♪ ふわふわしてる!」

 

「お、じゃあ俺も六花さんの後に……」

 

「内海君はダメ。前にダイナドラゴンを自分が作ったみたいに言ってたし」

 

「いや、あれはウルトラオタクの性が出ちまっただけで……」

 

「とにかく内海君は最後! 先にリュウタ君、どうぞ♪」

 

 アカネさんがぬいぐるみサイズのダイナドラゴンを俺へと差し出してくれる。ハネジローみたいというか、ハネジローがメカっぽくなってデフォルメされた系統というか……とにかく愛嬌があって愛でたい気持ちがわいてくる。

 

 なので、俺もお言葉に甘えてダイナドラゴンをなでようと手を伸ばしたのだけど……

 

『ぎゃうっ!』

 

 その手はぺちんと、ダイナドラゴンの手に弾かれた。

 

「………………んん?」

 

 何かの間違いだと思って、もう一度手を伸ばす。

 

『がうっ!』

 

 今度はがちんと噛みつかれかけて……こ、これは!

 

「ダイナドラゴンが反抗期になってる!!」

 

 おい、俺がなにをした!?

 

 あれだけ一緒に戦った仲だったじゃないか?!

 

 するとボラーは何が面白いのか、くすくすと笑いながら言うのだ。

 

「第一次反抗期って、一歳とかそれくらいから始まるらしいぜ♪ 残念だったな」

 

「もしかしてこの子、アカネが大好きだから馬場君をお邪魔虫だと思ってるのかな?」

 

「男の子は父親に嫉妬するって言うからなぁ……リュウタ、残念だったな」

 

「え、なにそれ、カワイイ!」

 

「アカネさんまでそんな顔しないで!?」

 

 その後も何度かチャレンジしたけれど、ダイナドラゴンは結局一回もなでさせてはくれなかった。…………悲しい。

 

 いや、俺もいつもは動物に好かれるんだよ? 野良猫とか寄ってきてくれるし、なのにこんなのあんまりじゃないか……

 

 普段はないくらいに落ち込む俺の肩を、大きな手が叩く。振り返るとレックスが励ますような微笑みを向けてくれていた。

 

「リュウタだったか? あんまり気にすんな、ダイナドラゴン先輩も今は母親に甘えたいだけ。それに嫉妬するってことはお前のことも父親みたいなもんだって分かってるってことだ。少し時間が経てば関係も良くなるさ」

 

「れ、レックス……さん!」

 

 やばい。第一印象は悪いけどこの人、いい人だ!

 

 どっかのボラーにも爪の垢を飲ませたいくらいに。

 

「んだと、こらぁ!?」

 

「事実だろ、事実」

 

「よぉーし、久しぶりに特訓してやる! またピーピー泣き言を言っても後悔するなよ!?」

 

「残念でした、シグマがいないし俺は戦えない……って、そうだ」

 

 ひとまずボラーと取っ組み合うのをやめてマックスとジャンクの中にいるグリッドマンに聞いてみる。

 

「シグマは一緒じゃないのか?」

 

 来てくれたなら、喜んで一緒に戦うのに。

 

「…………っ」

 

 アカネさんがちょっと息を呑んだのに気づかず、俺は尋ねてしまう。すると、マックスとグリッドマン が『残念だが……』と前置きをしてから説明してくれた。

 

「彼もグリッドマンと同じく正式なハイパーエージェントだ。私たちとは任務も異なることが多い」

 

『ああ、今回は私たちがたまたまこの世界の近くにいたから、こうして裕太と再び力を合わせることができたが……シグマはきっと離れた場所にいるのだろう。

 すまない、私から連絡を取る手段があればいいのだが……』

 

「そっか……でもシグマのことだから、なにかあったら駆け付けてくれる気がするよ。だからグリッドマンも気にしないで」

 

 グリッドマンと同じようにシグマもかなり律儀な性格していたからな。

 

 そんな話をして、この場は解散となる。グリッドマンたちはひとまず怪獣が再出現した理由を探すというので、解決のための具体的な作戦会議はその後でということになった。

 

 家が離れたところにある響たちと違い、俺たちはご近所。二人と別れて、俺とアカネさんは帰宅する。

 

 幸運なことに被害を免れていたから、まあ最後はフィクサービームで直ってただろうけど、家の中はひとつも荒れておらず家を出た時のままだった。

 

 荷物を下して、ちょっと冷蔵庫からドリンクを飲んで、いろいろあったことに疲れを感じながらソファに腰を落ち着ける。これでやっとひと段落……とは、できないよな。

 

「………………」

 

「アカネさん、大丈夫?」

 

 俺の隣で俯くアカネさん。その顔はどう見ても思い悩んでいるそれで、元気もまるでなかった。俺の声にもから返事をしただけで、俯いたまま声も小さいし、このところ毎日向き合ってたスケッチブックや粘土を一瞥もしないままだ。

 

(無理もないよ……)

 

 俺だっていきなり走り回ったし、命の危険を感じたし……あの事件があったから多少は抵抗力があるだけで、かなりしんどい。むしろ内海たちの方が平然としていた気もして、なんだかんだとあいつらの方がウルトラマン的な適正は高いのだろう。

 

 俺だってそうなんだ。アカネさんはもっとしんどいに決まってる。

 

 再び怪獣が現れて街を破壊していったなんて、過去のトラウマが蘇っても仕方がない。アレクシスにいいように扱われていたとはいえ、喜んで怪獣を暴れさせてしまっていたのは他ならぬアカネさんなのだから。

 

 なんとか元気になってもらいたいけど、俺だってこんなことが起こるなんて想定外。何を言えばいいのか、彼氏として情けないことにわからなかった。

 

 すると、

 

「リュウタ君は……また戦うの?」

 

 か細い声でアカネさんが言う。

 

 それは明らかに俺を心配してくれてる声で……できれば戦ってほしくないと、そんな意志が込められているのも分かってる。だけど、俺の答えは決まっていた。

 

「うん……シグマが来てくれたらの話だけど」

 

 響だってグリッドマンがいない中で立ち上がった。そして再びグリッドマンと一つになって俺たちを救ってくれた。

 

 だったら、俺だって黙って見ていることはできないし、何より……

 

「アカネさんのこと、守りたいから」

 

 あの時と同じくらい、いや、あの時以上に大切な人になったアカネさんを守りたい。それは誰に無理強いされたわけでもない、俺の本心だった。

 

 

 

 

「アカネさんのこと、守りたいから」

 

 そう言ってくれたリュウタ君の顔には、迷いなんて一つもなくて。

 

 それが嬉しくて……だけど怖かった。

 

 こらえきれないで彼の顔から視線を外し、ぎゅっと両手を握る。思い出すのは、もちろん怪獣が現れた時のこと。

 

(私、なにもできなかった……)

 

 怪獣を見た時、私にはわかっていた。

 

 きっとこの事件にも私は関わっているって。

 

 ほとんど直観みたいなものだったけど、間違いないと思う。

 

 私の作りたいタイプの怪獣じゃなかったし、アレクシスもいないし、街を壊す怪獣を作りたくなるほどつらい出来事なんてない。むしろ幸せを感じてる。

 

 だけれど絶対に私も原因の一人。それがわかってしまう。

 

 だから本当はみんなの力になりたいし、なれると思って走り出したけど……結局はグリッドマンたちに助けられただけ。今の私に原因なんてわからないし、暴れまわる怪獣を止める不思議な力も持っていなかった。

 

 そういうのは、全部あの子が持って行ってくれたから……

 

 そんなことは私自身が分かっていたのに……響君を追いかけたいなんて言って、リュウタ君まで危険な目に遭わせちゃった。

 

 新世紀中学生が間に合わなかったら、きっと私たちは一緒にがれきの下敷きでぺしゃんこ。

 

 考えるだけで体が震えてくる。自分が死ぬのも怖いけど、リュウタ君が傷つくのはもう嫌で、でもリュウタ君はもう決意してて……。それにそんな怖いことを、他のみんなに強いていたのが私という存在。

 

(私は……どうすればいいのかな?)

 

 ウルトラマンの隊員みたいに自分で戦える力があればいい? それともただ帰る場所になったり、守られるだけの存在でいればいい?

 

 ただでさえ、自分のしでかしたことの大きさを、酷さを突き付けられているのに、こんな私がリュウタ君の役に立てるの?

 

(君のヒロインでいるためには……私、どうしたらいいんだろう?)

 

 前にリュウタ君が言ってくれたことを思い出す。リュウタ君がヒーローなら、私にヒロインでいてほしいって。

 

 でも、その肝心な答えは分からないままだった。




ガウマさん(レックスさん)って、初出ビジュアルとまっとうな頼れるお兄さんのギャップがいいですよね。

ダイナドラゴン出すアイデアを温めているうちにダイナゼノンが放映されてしまったので、本作でのダイナドラゴンはこんな感じになってます。ビジュアル的にはデッカーのハネジローみたいなデフォルメロボットなイメージですね。


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