SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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感想ありがとうございます!
なかなか返信しきれず心苦しいのですが、ご理解いただけると幸いです。


世界

「え、また幽霊が出たのか?」

 

「今度は風呂場で!! もう勘弁してほしいよ……」

 

 またも幽霊か宇宙人に遭遇した響の嘆きが、昼の校舎に沁みる。

 

 外では怪獣にあって、家の中でも不可思議現象というのには同情しかないのだけど……怪獣の後に幽霊というのはいささかランクダウンな気持ちもあって、俺を含めてみんなの反応は鈍かった。

 

 内海は特に興味もなさそうに言う。

 

「水場はやばいっていうしなぁ……お祓いしてもらったら?」

 

「あー、うちのお店にそういうグッズもあったかも……」

 

「六花のお家、探したらいろいろでてきそうだもんねー」

 

「けっこう俺は切実なんだけどなぁ……」

 

 俺も幽霊もどきは見たから気になるのだけど、やっぱり優先度は怪獣>幽霊。しかもアカネさんのメンタル問題的にも怪獣の方が重要だ。できれば自分で解決してくれ。

 

 ともあれ、こんな会話をのんびりできるくらい、怪獣が出た翌日だというのに街は平穏を取り戻している。あれだけ街が破壊されたというのに、誰も気にしている人はいない。

 

 それは既視感というか、前回の怪獣騒動とまるっきり同じだ。一日経ったら記録にも人の記憶にも事件は残っていない。俺たち以外の人は、怪獣のことなんて覚えていない。

 

『あの時はベノラとかカミサマ使ってたけど……今は他の怪獣はいないと思うし』

 

 とはアカネさんが言ったこと。

 

 世界全体がリセットされているってわけじゃなさそうだけど……きっと、あの怪獣がアカネさん謹製でなかったのと同じように、他の方法で記憶修正が行われているんだろう。

 

 勝手に頭の中がいじられているなんて、考えるだけで不気味な事態だ。

 

 本当はもっと慌てたり、必死に原因を探さないといけないはず。だけど、学校が通常営業な以上、俺たちも普通に学生として過ごす方が優先だと普通に登校してしまってる。今もこうして校舎外の休憩スペースに集まって再びの脚本会議中。

 

(にしても、内海も宝多さんも肝が据わってるなぁ……)

 

 なみこさんとはっすさんと『リアリティがない』とか『いや怪獣出たし』とか『フィクサービームは優しい設定でアリ』とか言い合っている二人を見る。

 

 脚本がまたダメだしされてしまったことに凹んではいるが、怪獣のことを深刻に悩んでいる様子じゃない。その中に混じっているアカネさんは……どうなんだろうな、昨日は夜までずっと悩んでる感じだったし、平気なフリな気がする。

 

 けど、

 

(やっぱりくぐった場数だけじゃないよなぁ……)

 

 俺は怪獣のこともアカネさんのことも、ちょっと前から頭を悩ませてるあのことも気になって仕方がないんだけど、二人はそれはそれと分けて、やるべきことをやっている。

 

 なのに俺ときたら……。昔から細かいことでぐちぐちと悩みがちだからみんなが羨ましい。

 

 シグマに変身できたり、あの事件で成長したところはあるけれど、やっぱりヒーロー気質あふれる友達を見ると、まだまだだなぁと思ってしまうのだった。

 

 

 

 

 結局、第N回の脚本会議は宝多さんたちの抗議もむなしくボツで決着し、二人は再度書き直すことになってしまう。

 

 その流れでアカネさんのデザイン進捗も聞かれたけど、昨日の騒動の後で怪獣を作れるような気分ではなかったから、進捗は相変わらずのゼロだった。とりあえずデザインのはっきりしているグリッドマンのスーツから先に作ることになるらしい。

 

 そして場所を移した渡り廊下で、

 

「ぶっちゃけどうなんよ? シグマが来てる感じとかあんの?」

 

「ねーな。タイミング的には昨日のあれとかちょうど良さそうだったけど」

 

「ふっ……! ってことは、いよいよ俺の出番ってことか……! 俺の髪は青いし、裕太と一緒にダブルグリッドマンを……!」

 

「えー、やっぱりシグマはリュウタ君のほうがいいよー。六花はどう思う?」

 

「私はどっちでも……あー、でも内海君はそんなに強い感じしないから、馬場君の方が頼れるかも。響君的には二人だったらどっちがいいの?」

 

「そこは俺じゃなくてグリッドマンに聞いた方がいいかも……」

 

「おっ! さっすが裕太、いいこと言うなぁ♪ ってことで、シグマが来た時に決めてもらおうぜ♪」

 

「それなら、むしろ俺が当確だろうよ」

 

 あんだけ一緒に戦ったんだし、いきなり内海にチェンジとかはさすがにショック。むしろウルトラ兄弟的にどんどん弟が増えて、そっちが内海とタッグ組む方がよくないか? 名前は……シグマだし、オメガとか?

 

 そう提案してみると内海は思案顔になる。うむむむとうめく様子から、どうやら頭の中でIFの妄想を繰り広げているようだ。

 

 たっぷり一分くらい考えた挙句、妙に悟った顔になって内海は呟く。

 

「いや……シグマにグリッドナイトに、それでもう一人ってくると、さすがに画面に入らないって。出番もラスボスイベント戦くらいな感じになりそう」

 

「確かに四人は映画レベルでも多い感じするな……」

 

 そうは言ってもウルトラマン映画だと無茶苦茶やるけど。客演十人とか。

 

 なんて、みんなと昨日のことを話す。

 

 怪獣騒動を覚えていないなみこさんたちの前で怪獣だのなんだのを言い合うのは気が引けて、場所を変えることにしたのだ。

 

 そして前のように、平穏で普通の日常の中、俺たちだけが非日常を抱えている。周りの人が仮初とはいえ平和なのはいいことなのか悪いことなのかは……俺には判断がつかない。

 

「リュウタ的にはこのシチュエーションってのはどっちっぽいのよ? OVAか劇場版か」

 

「だから、あんまりウルトラマンに例えすぎるなよ。まあ、新シリーズ開始ってシチュエーションよりも最近のニュージェネ映画な始まり方って感じはするけど」

 

 半年後っていうタイミングとか、みんなそれぞれ悩みが出てたりとか、それっぽい。

 

 だけどそれはあくまでウルトラマンだったらの話。もちろんウルトラマン映画みたいに最後はハッピーエンドで終わるのが理想的だけど、昨日あっさり死にかけたのとかを考えると、楽観視しすぎるのもどうかと思ってしまうのだ。

 

 そんなオタク全回の会話をしている俺たちに苦笑いしながら響が言う。響もどちらかというと俺寄りで、冷静に昨日のことを振り返っているようだったが……

 

「グリッドマンも世界のバランスが乱れているって言ってたし、きっとあの怪獣だけじゃなくて……うわぁ!?」

 

 突然、響は驚きながら腰を抜かしてしまった。

 

 でも仕方ない。歩いていたら柵の向こう側に、ピンク髪のヤカラっぽい不審者がへばりついているのだから。

 

 そして、その不審者は驚く俺たちを気にしないで柵を楽々飛び越えると、人好きのする笑顔を浮かべて挨拶してくるのだ。それは昨日出会った、新しい仲間。

 

「よお! グリッドマン同盟♪」

 

「レックスさん!?」

 

「あのさ、ここ学校なんだけど……許可取った?」

 

「もちろん♪ ちゃんと失敗から学んでいるからな!」

 

 そう言ってレックスさんは首から『入校許可証』と書かれたネックストラップをひらひらさせた。いや、この人を通すってうちの学校おおらか過ぎんだろ。

 

 元はそういう風に設定した疑惑のあるアカネさんを見ると、俺の言わんとするところがわかったのか、気まずそうに頬をかいていた。

 

 とにかく学校にまで来てしまったレックスさんは、街を感慨深げに眺めながら言う。

 

「実はさっきまでこの街を見回ってたんだが……この世界は俺がいた世界によく似てんだ」

 

 それって……

 

「え、世界ってそんなにいっぱいあるんですか?」

 

「あるっ!」

 

 レックスさんの自信満々な断定と、理解が及ばない様子の宝多さん。

 

 ただ驚いているのは宝多さんと響くらいで、俺と内海、それからアカネさんは『わかってました』という平然っぷりだった。

 

 アカネさんが当たり前のように言う。

 

「だってそもそも私が別の世界から来てたわけだし」

 

「シグマたちのハイパーワールドってとこも別世界っちゃ別世界だろうし」

 

「近年のニュージェネだったら基本概念だぞ、マルチバース」

 

「……いや三人とも、常識ですみたいな顔で言わないでよ」

 

「だ、大丈夫だよ、六花……! 俺もよくわかってないし」

 

 でもパラレルワールドとかって小説とかでもよくある概念だし、割と一般人も認知していると思うんだよな。

 

 マルチバースはウルトラシリーズが躍進した大きな要素だけど、それを受け入れる下地は日本人にはあったのだろう。まあ、それをうまくシリーズに入れ込んだのはゼロや銀河伝説での円谷の苦闘があってのもの。アイデア出した人は正直にウルトラシリーズを救った英雄だ。

 

 おかげで客演をたくさんしてオールドファンを維持しつつ、毎回世界観一新で新規参入のハードルを低くするって奇跡を成し遂げてる。

 

 まあ、それは今はどうでもいいか。

 

 レックスさんは俺たちがあっさりと話を飲み込んだことで、満足げに頷く。そのままさらに説明を続けようとしてくれたのだが、そこで出待ちでもしていたのかぞろぞろと不審者四人が出てきた。

 

「かつての戦いの後……」

 

「だからここ学校だっての!?」

 

 特にマックス! あんたが一番性格まともだけど、外見が一番まともじゃないから! 髪を切るとかおしゃれする前にそのごついマスク外せっ!! キャリバーはその刀を家に置いてこいっ!!

 

 

 

 閑話休題……ってこれで使い方あってんのかな?

 

 わざわざ全員そろってやってきた不審者集団。俺たちとしては、あんな人目のつく場所でこいつらと話をしていたらどんな噂が広がるかわからないので、再度の場所移動。人がいない学校プールに来て話を続けることにした。

 

 まだ真夏というには太陽の日差しは強くないけれど、気温はそこそこ。水泳部もこのプールを使い出しているみたいで、きれいに掃除されているし、水は透き通っていた。

 

 見るからに夏が始まったという日常風景。そこに黒スーツのみんなが集まってると……なんか、変なものを見てる気分になる。

 

 特にボラーはなんか靴を脱いで足湯ならぬ足プールをし始めてるけど……お前、ほんとに何歳だよ。

 

 そんな中で新世紀中学生たちは、現在のツツジ台になにが起こっているのか、仮説を説明してくれたのだが、その内容はまたもウルトラシリーズよろしく突飛でSFなそれだった。

 

「つまり……いろんな世界があったけど、それが一つに重なっちゃってるってこと?」

 

 アカネさんが半信半疑で呟く。俺も完全に理解できたわけじゃないが、その説明であってるはず。

 

 響と宝多さんもジェスチャーしながら理解しようとしているようで、響がかざした両の手を上から宝多さんの手がサンドイッチしていた。

 

 なるほど、わかりやすい。

 

 元はバラバラな世界が上からミルフィーユみたいになっていると。だからまだ怪獣がいる世界とレイヤーが重なって、俺たちの世界に出てきてしまったってわけだ。

 

 そして響と宝多さん。それで付き合ってないってありえないからな、その距離感。

 

 すると隣で無自覚いちゃつきをしている二人を見て、悪戯心が芽生えたのか、対抗心が生まれたのか、アカネさんがこっそり耳打ちしてくる。

 

「リュウタ君、リュウタ君♪」

 

 アカネさんが差し出した手は響と同じで、

 

「はい、これでいい?」

 

 俺も宝多さんみたく、自分の手をそこに重ねてみる。

 

「えへへ♪ 私の世界、リュウタ君の世界につかまっちゃったー♪」

 

 あー、かわいい。

 

 おいマジでかわいいよ、この天使。いや、元神様。

 

 なんか並行世界とかパラレルワールドとかどうでもよくなってくる。アカネさんいればそこが俺の世界だわ。

 

「おーい、肝心な説明がまだだから戻って来いっての」

 

「ダメっすよ、ボラーさん。アイツらいつもああなんで」

 

「まーじか、半年の間になにやってんだよ」

 

「ふっ、青春だな」

 

「むしろ半年前の方が、この子たちにとってはおかしかったんだろうね」

 

 内海もボラーもうっさい。そしてマックスとかヴィットは後方理解者面すんなっての。

 

 ただ、ことは思ったより楽観的ではないようだ。

 

 今の程度の重なり方だと、せいぜいが別世界の人間や怪獣が迷い込んだりするくらいの影響らしいのだけど、これがさらに重なっていくと大問題。

 

 マルチバースが一つの世界にどんどんと収束して、重なり合い、潰し合い……

 

「消滅するかもしれないんだと!」

 

 最後はレックスさんがわざわざ響たちの手を振りほどきながら実演してくれた。

 

 そのものずばりでこの世の終わり。パン、と何もかもがなくなってサヨウナラ。

 

 ついでにレックスさんは高校生の甘い恋模様の邪魔をしたことは理解できていないようだった。ドンマイ、響。でもちゃんと付き合ったらそれくらい普通になるぞ? がんばれ。

 

 とにかく一人の少年を涙目にしながらの説明によると、世界の始まりのビックバンとは逆の現象が起こるかもしれないとのこと。

 

 ビッグ……クランチとかなんとか? ウルトラマンシリーズでは今まで出てきてないタイプの概念だな。

 

「……またスケールがでかい」

 

 アカネさんが世界を創ってたとか、この世界が箱庭とか、高校生のスケールから外れた出来事にも慣れたつもりだったけど、今度は次元を跨いでの事件とか。

 

 話を聞き終えた俺は、ため息をつきながら青空を見上げる。

 

(あの向こうから別の世界が迫って来てるのか……)

 

 あくまで仮設の一つだというけれど、それでも『世界の終わり』というフレーズは重かった。

 

 規模だけで言うならウルトラマン以上、ウルトラマンキングとかノアとかが出張ってくる事態にも思えてしまう。

 

 そしてそれを成そうとしている黒幕がいるのなら、アカネさんみたいな人間とかじゃなく、別格な存在のような気もするのだ。

 

 だけど……なんだか、

 

(なんか、違和感ある気がする……)

 

 世界が終わりに近づいている、けれど、世界は平和に続いている。そんな矛盾したような感覚を俺は感じていた。

 

 

 

 

「世界の終わり……っていうのに、なんか普通に買い物としてるし……」

 

 リュウタ君が苦笑いしながら言う。

 

 プールサイドの秘密会議からあっという間に今は放課後。今日は二人で決めてる買い物日なので、リュウタ君とついでにゲストの一人とでスーパーに直行。

 

 だからリュウタ君の手にはスーパーで買ったものが下げられてるのだけど、昼間に話した話とそれがリュウタ君的にはミスマッチで面白かったみたい。

 

 実は私も、同じことを思ってたり。

 

 ビッグクランチと怪獣、並行世界と世界の終わり。

 

 新世紀中学生のみんなから聞いた話だとかなり大事なはずなのに、私たちは普通に今日の夕飯の話をしたりしている。

 

 えっと、正常性バイアスだっけ? 大きなことが起こったときに無理矢理平気だって思う心の動きがあるって聞いたけど、それに近いのかな?

 

 でも、まだ世界の終わりが近づいている実感もないし、それを四六時中怖がってもいられないので、日常を続けられるのは私的には大歓迎だった。

 

 けれどその気持ちは……

 

(ちょっと逃げが入っちゃってるよね……)

 

 昨日から怪獣のことも考えられてない。それは劇の怪獣もそうだし、この世界に来てしまった怪獣のことも。

 

 リュウタ君も私が悩んでいることは気づいてると思うけど、今はそっとしてくれている。私の大好きな彼氏は、私のことを私以上にわかってくれてるから。

 

 本当に世界の終わりが近いなら、私だって悩んでいるわけにはいかないのに、リュウタ君の優しさに甘えてしまっている自分がいる。

 

 今はただの人間でしかない私がこの事件でできること、リュウタ君のためにできること……結局わからないまま放置してしまっているんだ。

 

 そんな罪悪感を隠しながらリュウタ君と歩いていると、肩から

 

『ぎゃうっ!』

 

 とダイナドラゴンがひと鳴きして、ペロッと頬をなめてくれた。

 

 元は機械の怪獣なのに、なんだかあったかくてほっこりしてしまう。

 

「えへへ、ありがと……」

 

 小声でお礼。

 

 この子も私の心から生まれたから、リュウタ君と同じくらい私の気持ちを察するのは上手みたい。頬をなめたり、すりすりしてきたり、慰めてくれる。

 

 最初はおっきなあの姿じゃなくなったことに怒りかけたけど、これはこれで可愛くていいかもね。

 

 そして、この子が小さくなった原因のレックスさんも実は近くにいるのだけど……

 

「リュウタは何を買ったんだ?」

 

「明日から忙しそうだし、作り置きできるカレーにするつもりでルーとか野菜とか。あと、あのスーパーのセール日だったから、アカネさんの好きなトマトジュースをたくさん。毎日消費する奴は、こういう日にまとめて買うとお得だしね」

 

「お前ら、若いのによく考えてんなぁ。まったく偉いもんだぜ」

 

「二人だけで暮らしてるから、これくらいしないと。レックスさんこそ、それ宝多さんちの買い物でしょ?」

 

「六花のママさんには一食の恩があるからな! これくらい普通だって」

 

「レックスさんはほんと律儀だよなぁ。見た目は割と怖いのに」

 

「5000年前はこれくらい普通だったんだぞ? それに前の服の方が派手だったしな」

 

「ははっ! どんな服だよ、それ」

 

 そんな話をしながらリュウタ君とレックスさんは楽しそうに話をしている。

 

(やっぱり、レックスさんとリュウタ君は相性よさそうだよね)

 

 見た目は完全にヤクザさんだし、夜一緒に歩いていたら職質されそうだけど、レックスさんは見た目と違ってしっかり大人なお兄さんって感じがする。

 

 それはリュウタ君にも伝わってて、珍しくリュウタ君は距離感が近いというか、心を許してるみたい。

 

 ダイナドラゴンにそっと顔を寄せながらこっそりお話をする。

 

「実は、リュウタ君って年上の人が好きだと思うの」

 

『ぎゃう……?』

 

「お兄さんとも仲直りしてからちょっとうれしそうだし。リュウタ君がすごくしっかりしてる方だから、甘えられる人が欲しいのかな?」

 

 ダイナドラゴンはちゃんとは理解してない気もするけど、思いつくまましゃべってしまう。

 

 考えてみると、年上属性のシグマはかなり信頼してたし、新世紀中学生のみんなとも……あの人たちは個性強すぎて甘えるとかナシなんだろうけど、内海君たちには見せないとこを出してた気もする。

 

 別に嫉妬することじゃないし、リュウタ君をもっと知れるのはなんだか嬉しい。

 

 だけどちょっともやもやもあって。

 

 ……私だけに見せてくれるとこはもっとたくさんあるけど、頼ってくれているのかと言われたらちょっと違うよね。むしろ私を守りたいってあったかい気持ちが大きすぎて溺れちゃいそう。

 

 この間から抱えてるっぽいリュウタ君の悩みは明かされないまま。大事にはされているけど無条件で頼ってくれるパートナーにはなれていない気がするの。

 

(私も大人っぽくなれたらいいのかな?)

 

 体つきは……包容力っていう意味だと結構あると思うし、抱き着いたりするとリュウタ君も嬉しそうだし。でも精神年齢的なところだと年相応。六花みたいにしっかりしてないから、年上のお姉さんみたいな役はできそうにない。

 

「うーん……」

 

「アカネさん? どうしたの?」

 

「あっ、ごめんね。ちょっと考えごと……」

 

 はぁ……また気遣われちゃった。怪獣のこともだけど、心配ばっかりさせてるのがいやだ。

 

 そのことで心がずきずきして、それをリュウタ君がまた心配するって変なスパイラルが始まりそうになりそうなときに、レックスさんが間に入って優しく言ってくれる。

 

「アカネ、悩みがあるなら彼氏に相談した方がいいぞ? 変に抱え込んだりすると大変だからな。それに、まだ短い付き合いだがリュウタは頼りになる男だ! 俺が保証する!」

 

「……えへへ♪ リュウタ君が頼りになるのは、私が一番よく知ってるよ! ありがと。

 ……って、レックスさんこそ、なんか相談とか慣れてる感じがするよね?」

 

 高校生との距離感っていうか、なんだろ? そういうのをわかってる感じがして、不快感が全くない。

 

 それを素直に尋ねると、レックスさんは苦笑いを浮かべた。

 

「お前らにも話した別の世界のことだけどよ。実は、俺の仲間にお前らくらいの歳の二人がいたんだ」

 

「え、もしかして高校生? その子もグリッドマンに変身したりしたのか?」

 

「いや、俺たちの場合はダイナゼノン……あー、ロボットっていうのか? ダイナレックスが変形してなれるんだよ。それに乗って力を合わせて、怪獣と戦ってくれたんだ」

 

「うわー……完全にジャンル変わってるじゃん」

 

 怪獣VS巨大ロボットとか。

 

 私的にナシな概念。

 

 でも、レックスさんは懐かしそうに続けるから、私も自分の変なこだわりはしまっておいた。

 

「それで蓬は……リュウタと性格が似てる気がするな。あいつもスポーツ得意だったし、夢芽に一途っていうか、とても大事にしてた。ちょっと控えめだけど、思い切りが良いのも似てる。

 それでアカネと夢芽は……性格自体はあんまり似てないが、自分の世界ってのかな? こだわりが強いとこは似てるかもしれねえな。……っと、悪いな。いきなりこんな話をしちまって」

 

 頬をかきながらレックスさんが頭を下げる。

 

「お前らが仲良くしてるのを見てたら、蓬も夢芽も今頃はこんな風にしてるのかなって思っちまってよ」

 

「その二人も、リュウタ君と私みたいに付き合ってたの?」

 

「さあ、どうなったんだろうな……。二人が好き合ってたのは間違いない。

 蓬が告白したとこまでは見届けたし。だけど……その後に俺はレックスになっちまって、ちゃんとお別れも言えなかった」

 

「レックスさん……」

 

「だけどあいつらならきっと大丈夫! お前たちみたいに幸せにやってるはずだ!!」

 

 言いながら星空を見上げるレックスさんは……どこか悲しそうで、でも、どこか満足そうだった。

 

 私にその気持ちはわからないけど、きっとその仲間の二人のこと、レックスさんも大事に思ってたんだと思う。

 

 それでもうちょっと詳しく聞いてみたら、その蓬君は夢芽ちゃんに告白したんだけど、そこを狙って敵が攻撃してきたらしい。

 

 ……私の怪獣もだけど、向こうの世界の怪獣は人の気持ちを吸収して大きくなる。それで、アレクシスが私にやろうとしたのと一緒。敵は二人のハッピーエンドを壊すことで、大きな情動を得ようとしたみたい。

 

 なんとかその最後の怪獣も倒せたらしいけど、そんな事情だからレックスさんも気がかりなんだと思う。

 

「本当に悪かったな、二人とも。こんな未練を引きずって、お前らを蓬たちと重ねちまうなんて、どっちにも失礼だ」

 

「いいよ、それくらい。むしろ気にしすぎだって」

 

「そーそー♪」

 

「はは……。お前ら、ほんとにいいやつだな」

 

「「レックスさんもね」」

 

 リュウタ君とハモってしまって、二人でくすくす笑う。

 

 きっとこんなお兄さんがいたら、その二人も楽しかっただろうし、頼りにしてたんだろうな。

 

 昔の私も、もっと周りの人に頼れてたら……でもそれは今更だよね。

 

 それに後悔も罪もたくさんあるけれど、そんなダメな私がいなかったら今こうしてリュウタ君と一緒にいることもできなかった。

 

(今の幸せ、か……。うん、そうだよね。ずっとぐちぐち悩むよりも)

 

 レックスさんと話をして、少しだけ自分がやりたいこと、守りたいことがはっきりした気がする。ちょっと気持ちも楽になってきた。

 

「リュウタ君、レジ袋貸して? こーたい♪」

 

「はい、けっこう重いから気を付けてね」

 

 リュウタ君から荷物を受け取って、掌に重さを感じる。

 

 神様だった頃には感じなかった重みが、今は幸せの証。

 

(私にできることも、今は分からないけど……)

 

 でもレックスさんが大切な仲間と重ねるくらいに、幸せなことができてるなら。

 

 まずはリュウタ君と二人で、今の生活を守っていきたい。何が起こったとしても、それだけは絶対に。

 

 だから変な悩み事は胸の奥にしまって、家に急ごうとした時だった。ポケットから通知のピロって音が鳴る。

 

「あ、ちょっと待って。六花からライン……え? これどういうこと?」

 

「俺の方にも響と内海から……うーん?」

 

「どうした、二人とも?」

 

 レックスさんが心配そうに尋ねてくるけど、私もリュウタ君も届いた情報があまりにもわけわからな過ぎて理解できない。

 

「えーっと、六花が別の世界の人と会ったって」

 

「内海も別の世界の迷い人探してて……響は、いきなり三十代無職が風呂に全裸で乱入してきたとか」

 

 …………響君だけ、ガチの警察案件じゃん。




アカネもちょっとだけ前向きになって、次回からよもゆめ合流です。

それにしても、三十台無職が全裸で風呂場に乱入って……裕太のトラウマになりかねない出来事ですよね……




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