SSSS.GRIDMAN うたかたのそらゆめ【完結】   作:カサノリ

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すみません、諸々事情があって遅れました…!コメント返信も滞ってしまい申し訳ございません!全部読ませていただいております。いつもありがとうございます!


呼名

「蓬君、ヘイパス!」

 

「いくよ、リュウタ君!」

 

 そう言って蓬君が、こなれた様子でボールを蹴り上げる。

 

 向こうでもバスケを熱心にしていたという蓬君は、思っていた通りにスポーツのセンスが良かった。ちゃんとインサイドで蹴られたボールは、ワタワタとしている内海の股下を抜けて俺の元へ。

 

 とっ、と軽くボールをトラップしつつ、シュートをしやすいポジションに移動。ストライカーとしてこの辺りは得意分野。ボールが吸い付くようにコントロールできる。

 

 あとは目の前ではでっかいマックスがゴールを守っているが……右の隅!

 

「むっ……!」

 

「と見せかけて、こっち!!」

 

 軽いフェイントを入れて反対側にゴロで鋭く打ち込むと、ボールはネットに突き刺さってくれた。よっしゃ♪

 

 超人軍団相手だけど、今は人間レベルに身体能力を抑えてくれているというし、サッカーのテクだったらこっちだって負けてないんだよ。

 

 審判のボラーがピピーと笛を鳴らしてゴール判定。ついでに一点を取ったら勝ちというゲームだったので、俺達の勝ちだ。

 

「蓬君、ナイスパス!」

 

「そっちこそナイッシュー!」

 

 いえーい、と駆け寄ってきた蓬君とハイタッチを交わす。

 

 そのままバックスになっていたキャリバーと、ゴールキーパーだったレックスさんにも。レックスさんは俺が手を差し出すとバチンと痛いくらいのタッチで応じて、その後でにやりと笑って言う。

 

「やるなぁ、リュウタ!」

 

「そりゃあ、これでもエースですから?」

 

 あんまり普段はしないけれど、鼻高々な気分。

 

 なんていうかな、めっちゃほめてくれるのが嬉しいのかな。アカネさんがほめてくれるのは格別な喜びなんだけど、レックスさんの時は"どや"って気持ちになれる。

 

 少年漫画的な達成感とか、そんな感じなのかもしれない。

 

 それはそれとして向こうのベンチでは、

 

「よもぎー! かっこよかったよー! だいすきーっ!」

 

「リュウタ君もーっ! さいっこー!!」

 

 なんてアカネさんと夢芽さんが大声を上げて喜んでくれていた。

 

 ただ蓬君はそんなストレートに好意をぶつけてくる夢芽さんを見て、照れくさそうに頬をかいていて。蓬君は夢芽さんに隠れるように耳打ちしてくる。

 

「ねえ、リュウタ君? ちょっと前から夢芽がめっちゃデレてるんだけど……なんか理由知ってる?」

 

 確かに、この数日で夢芽さんの様子は大きく変わっていた。

 

 出会った時は警戒する猫みたいな感じに蓬君の後ろにくっついてたけど、今は異世界に慣れきったのか隙あらば抱き着いてるもんな。俺が見てる範囲でもそれなんだから、二人っきりの時はどうなんだろう。

 

 蓬君としてはその急なデレに戸惑いが大きいようだ。

 

「いや、知らないけど……困ってる感じ?」

 

「困っては……いないけど。うーん、心の準備がっていうか……反動が怖いっていうか」

 

 ははーん。

 

「照れんなって。付き合ってて、お互い好き同士ならいいじゃん」

 

 アカネさんとはあれくらい普通だし。

 

「あー、なんかわかってきた。そっちのアカネさんの影響だ、これ。リュウタ君とアカネさんのがうつってるんだ。しかもこっちに知り合いがいないからって遠慮ないし」

 

「それは……どうも?」

 

「お礼は言ってないよ、お礼はさ」

 

 もにょもにょと居心地悪そうな蓬君。

 

 だけど、喧嘩したりお互いにわだかまりを抱えていくよりは、毎日でも好意をストレートにぶつける方がいい気がするんだよな。

 

 うちの親とか、そういうのないがしろにしたからああなったわけだし。

 

 なので老婆心ではあるけど、蓬君の手を掴んで、無理くりに夢芽さんの方に向かって振らせてみる。すると遠目だけど、夢芽さんは嬉しそうに反応して、隣に座ったアカネさんとこそこそ話をしはじめる。で、そのさらに隣の宝多さんがじとーっとそんな二人を見ていた。

 

 今日は学校帰りに、みんなで川沿いの市民グランドに来ている。

 

 バスケコートとかサッカーコートとか簡単に整備されていて、ちょっとお金を出したら小一時間くらい貸し出してくれる場所だ。

 

(うちの学校で文化祭の準備もしてもらってるけど、こういう風に遊ぶのも大事だしな)

 

 で、女性陣も含めてスポーツウェアに着替えて、軽く運動。アカネさんの普段は見せないジャージ姿はそれはそれはかわいいものだったと述べておく。すぐばてちゃうところも。

 

 そして今は男子チームで二手に分かれてのサッカーをしていたのだが……

 

「ずりぃぞ、リュウタ! 蓬君までそっちいたら、俺達が不利に決まってんだろ!」

 

「こっちはマックスさんはいたけど……ヴィットさんはマジでやる気ないし」

 

 あっさり勝負に負けてしまった内海と響が意気消沈したように愚痴ってきた。

 

 けれどくじで決まったことだから仕方ないだろ。もっと日ごろから運動するがいい、ぷにぷに腹筋よ。

 

「最近はちゃんと固くなってきたんだよ!!」

 

「どれどれ……」

 

 どやる内海が腹に力を入れているので、軽く拳でどすどすと。

 

「確かに鍛えてる……やるなターボーイ」

 

「あ、ほんとだっ」

 

「俺も俺も……!」

 

「お、お前ら、俺の腹はサンドバッグじゃ……おふっ!?」

 

 気を抜いてすぐそうなるんじゃ、まだまだ鍛えなきゃだめだぞ。夏に向けて彼女に見せるためとかなら猶更。

 

 そんな男子らしいあほなことをしながら、同年代高校生四人でくっちゃべりながらボールを転がしていく。この後は蓬君の得意なバスケをする予定だけど、その前にポンポンとサッカーボールで戯れるように。

 

 やっぱり運動っていいよな。

 

 世界が滅びるとか不穏なこともいろいろあるけど、運動してるときは頭を空っぽにして集中できるし。何より蓬君とこういう風に遊んでると、一気に距離感が縮んでいる気がする。

 

 ……ていうか、

 

「なんかいちいち"君"つけるのも変だし、蓬でいい?」

 

「いいよ、じゃあ俺もリュウタって呼ぶから」

 

「おー、やっぱこっちの方がしっくりくる」

 

 サッカーとか相手に呼びかけるときにイチイチ君とかつけないもんな……って、あれ?

 

 そんな風に蓬と話をしていたら、じーっと響と内海がこっちを見ているのだ。

 

 内海はなにやら不服そうな表情で言う。

 

「おいおい、リュウタさんよ。いつまでも苗字呼びされてる俺らはどういう扱いなのよ? 俺らの方こそグリッドマン同盟でウルトラオタクで、大親友のはずだろ?」

 

「あー……、なんか最初のあんま仲良くなかった期間の癖が残ってるからかも」

 

 個人的に呼び方はあまりこだわりがないほうだ。内海たちより付き合いが長いサッカー部の仲間も基本は苗字で呼んでいるくらい。

 

 むしろ蓬とか夢芽さんが例外的。

 

 たまたまレックスさんから名前を先に聞いていたってのもあるし、周りの人間がみんな下の名前で呼んでるのに自分だけ壁を作るみたいに苗字呼びするのはどうかと思ったというのが理由。まったく他意はない。

 

 だけど……確かに内海と響に関しては検討の余地はあるかも。

 

 内海が言ったように、二人はただの友人ではなくて大切な仲間だ。

 

 でも、響は名前の音がかっこいいから捨てがたいし、内海は内海だし。

 

「裕太……はありだけど。将っていうのは……」

 

「「え、将って誰?」」

 

「俺の名前だよ!? 蓬君はともかく裕太まで乗っかるな!!」

 

 でも学校でいきなり『将』って呼んでも、誰も気づかんと思うぞ? 内海は全身が内海感を出してるから。

 

 それに、考えてみたら今のままの方がいいって理由もある。

 

「いや……今となっては単にタイミングなかっただけだけど、グリッドマン同盟でバリバリやってた時の呼び方の方が思い出深いんだよな」

 

 俺がヘタレて逃げたりとか、やけっぱちになったりとかいろいろあったけど、その時を支えてくれた響と内海は間違いなく俺の恩人で親友だ。だからその時の呼び方を大事にしたい気持ちもあったのかもしれない。

 

 ちょっと言っていて照れくさいけど。

 

 それを伝えると、内海たちもまんざらでもないように笑ってくれた。

 

「ま、そういうことなら俺は別にいいけどよ♪」

 

「俺も。あ、でも六花は名前呼びの方が好きだっていうし、リュウタもそっちで呼んであげたら?」

 

「タカラダって苗字好きなんだよなー」

 

 宝田明さんとか、ウルトラマンじゃないけどその大大先輩なシリーズで有名だし。

 

「でも、確かに店長も宝多さんだもんな……。うん、どっかのタイミングで変えてみるよ」

 

 きっとこれからも宝多さんとは家族ぐるみで付き合いがあるだろうから。それに……なあ?

 

「将来的に苗字が変わったら、響が二人でかぶっちまうからな」

 

「うえっ!?!?」

 

「ねえ、内海君……やっぱり裕太君って」

 

「そうなんだよ、もうじれったくて」

 

 なので響と宝多さんが無事にくっついた時が、呼び方を変える良いタイミングなのだろう。

 

 改めて女の子を名前を呼ぶのって、ちょっと恥ずかしいけど。

 

 するとそんな話を聞いていた蓬が、素朴な疑問という体で尋ねてきた。

 

「でも、呼び方の話だとリュウタが『アカネさん』呼びなのって意外な気がするな」

 

「…………え?」

 

「いや、あんなに仲いいのにって。女の子的には呼び捨てされるの好きって子が多いみたいだし。だから俺も夢芽のことは"夢芽"って呼んでるんだけど……リュウタ?」

 

「ちょ、ちょっと待って……! いま、頭が真っ白になってる」

 

 え、え、ちょっと、おい待て、アカネさんのこと呼び捨て? 誰が? 俺がだよ、バカ。いや、でも俺はあの子のこと尊重したくて……って、彼女にする前の呼び方を引きずってるだけだろが。宝多さんなんて、いつもアカネ呼びだし。

 

 た、例えば、俺が呼び捨てにして……え、『アカネ』って言っちゃう? 言っちゃうか? なんか、それもそれで距離感近くなった気がして……

 

「おーい、リュウタさーん」

 

「こいつ、ぜってえ新条とのこと妄想してるぞ」

 

「もしかして俺、余計なこと言っちゃった?」

 

「蓬君は悪くないよ」

 

 シャラップ、お前ら! と、とにかくこの話題は保留! 保留!!

 

 でも……そういう形でまた仲を深めるのは、いいかもしれない。

 

「「このむっつり」」

 

「変な妄想はしてねえよ!? ほら、さっさと続きやろうぜ!」

 

 もうずいぶんと動いたはずだけど、体は全然疲れていない。

 

 まだまだたくさん走り回れそうだった。

 

 

 

「意外だったよね、響君がけっこうバスケ得意だったの」

 

 夜になって私と同じくパジャマに着替えた六花と夢芽ちゃん、それにちせちゃんと一緒に布団に転がりながら、六花に向かって言う。

 

 今日はもう何度目かの六花の家でのお泊り会だ。

 

 元々は夢芽ちゃんが『アカネ先輩ともっと話したいです』なんて嬉しいことを言ってくれたのがきっかけで、女の子同士で顔を突き合わせながら恋愛とかいろんなことをお話してる。

 

 今の話題は昼間にやってたぷちスポーツ大会。私はもこもこのダイナドラゴンを抱き枕にしながら、汗を流して頑張ってたリュウタ君たちの姿を思い出していく。

 

「蓬もけっこう教えてましたけど、裕太さんも飲み込み早かったですよね」

 

「見た感じはあんまりそっちは得意そうな感じしなかったっすけどねー。うん、意外だった」

 

 と夢芽ちゃんもちせちゃんも乗ってくれて、全員でニヤッとしながら六花を見る。

 

 ほらほら六花さん、キミの片思い相手を褒めてるんだよ?

 

 このチャンスに乗っかっていろいろとぶちまけてみない?

 

 そうしたら視線を受けた六花がちょっと顔を赤くして、口をすぼめながらぼそっと。

 

「ま、まあ、いつもと違う感じでいいなーって思ったけど……。そっちこそどうなの? 馬場君と蓬君が一番大活躍してたじゃん」

 

 あ、照れたからって話そらした。じゃあ、六花が言い出したんだし。

 

「そりゃあ……ねえ?」

 

「ですよ……ねえ?」

 

「うわっ、めっちゃにやけてんのウザっ」

 

「南さん、完全に同類見つけてブレーキ壊れましたね」

 

 なんか言ってる六花とちせちゃんを放っておいて、夢芽ちゃんと二人で話し始めちゃう。

 

 二人はまだ彼氏いないからそういうこと言うんだよ。彼氏がかっこいいところ見せてくれてるんだから、にやにやするくらい普通じゃん。

 

「私ね、リュウタ君がサッカーしてるとこ好きなんだぁ。っていうか、一番最初に"この人好きかも"って思ったのがサッカーの試合見た時でね? めっちゃリュウタ君が私が見てるの意識してること伝わって……えへへ、それでバシーってゴール決めたの♪」

 

 その時はアレクシスいたり、その後の件とかあるから、素直に喜ぶことじゃないって分かってるけど。それでも、最初に彼から男の子を感じたのはあの試合だった。

 

 逆に夢芽ちゃんは蓬君が普段はスポーツしてるとこ見せてくれないみたいで、惚れ直したって感じに頬がゆるゆるしてる。

 

「私はあんまり蓬の友達と仲良くないから、そういうの見れなくて……でも、かっこよかったなぁ蓬。うん、でもいつもより子供っぽくてかわいかったし……。はぁ、私といるときちょっと頼れる感じ出してくれるのもいいけど、ああいうのもいいなぁ……」

 

 最後の方は枕を抱きしめながら夢見心地。

 

 お泊り会のたびに夢芽ちゃんはのろけ話を聞かせてくれる……っていうか九割くらいその話しかしないんだけど、夢芽ちゃんも彼氏の蓬君のことが大好きみたい。

 

 夢芽ちゃんにとっては蓬君は自分が苦しい時に支えてくれて、助けてくれたヒーローみたいな人なんだろう。そこは私から見たリュウタ君とも似てる。

 

 えーっと水門から落ちそうになった時もかっこよく助けてくれたんだっけ?

 

「はい、『夢芽っ!』ってめっちゃ必死に手を伸ばしてくれて」

 

「やっぱり記憶変えてますね、南さん。あの頃は『南さん』呼びだったのに」

 

「ほら、恋は盲目って言うから。……アカネも頭の中だとどうなってんだろ」

 

 失礼な。

 

 私はちゃーんとリュウタ君との思い出は改変したりしてないよ! ……記憶喪失にされちゃったことはあるけど。

 

 なんて思ってたら、十分に妄想の中の蓬君とイチャイチャしたのか、夢芽ちゃんがゴロンとこちらに顔を向けて尋ねてきた。

 

「そういえば、リュウタさんもアカネ先輩のこと、助けたりとかあったんですよね?」

 

「そうだよー。えっと、どちらかというと私の方がめっちゃ荒れてたっていうか……」

 

 怪獣を実際に暴れさせてたりとかは、言いづらいけど。

 

「でもね、私が思ってた自分の嫌なとことか、そういうのも全部抱きしめてくれて……今はそんなリュウタ君と一緒な私が好きなの」

 

 今もバッグの中に入ってる、この間に出来上がった怪獣を思い出す。

 

 とりあえず第一形態ってことだけど、自分が思った以上にシンプルでオーソドックスな怪獣になってた。どちらかといえば特撮の神様が作った、あのゴッドでジラなタイプ。襟巻外したジラースとかに近い。

 

 でもそれは私が一番最初に好きになった怪獣のイメージそのままで。

 

 誰かを殺したいとか傷つけたいとか、そんな感情を込めないままに作れた怪獣。

 

 ダイナドラゴンもストレートにかっこいいタイプになったし、元々の私はそう言うのが好きだったんだろう。リュウタ君と一緒にいられて、悩みも全くないから……

 

「あれ?」

 

「アカネ先輩、どうしたんですか?」

 

「う、ううん! なんか変だなーって思っただけ」

 

 ちょっとノイズが走ったような感覚がしただけ。

 

 けれどすぐにそれは消えて……

 

 ぼーっとしていた間に続いていた、夢芽ちゃんと六花の話が耳に聞こえだす。

 

「で、いつ告白するんですか? もう両片思いなのはわかってるんですから、しちゃいましょうよ……!」

 

「夢芽ちゃん、めっちゃぐいぐい来るね……」

 

「だって、六花さんと裕太さんお似合いだと思いますし。それに……なんかトリプルデートとかいいじゃないですか」

 

「南さん、そっちが目当てかー。確かにあっちの世界だと難しいですもんね。うちのパイセンはそんな彼女つくれる甲斐性なさそうですし」

 

「でも……裕太はいま、グリッドマンで忙しいし」

 

「それですよ!」

 

「うぇっ!?」

 

 突然夢芽ちゃんが六花に向かって顔を近づける。

 

「六花さん、いつも隠れて『裕太』とか呼び捨てにしてますけど……恋人になったら普通に裕太呼びできるんですよ? したくないですか、呼び捨て!」

 

「えっと、それは……」

 

「私はすぐに蓬呼びにしましたからね。向こうは三か月くらい南さんでしたけど、私はもう絶対に蓬って呼び捨てにしたかったから。

 女の子って、そういうのありますよね? 他の女の子がしない特別な呼び方をしたいとか。ちょっとの独占欲感じたり、六花さんにもあるはずです……!」

 

 なんだか勢いが乗ってきたのか夢芽ちゃんが押せ押せムードになって、六花がたじたじになってる。

 

 でも、それは分かるかも。

 

 リュウタ君が呼んでくれる『アカネさん』ってすごく優しい音がして好きなんだよね。

 

 六花みたいにアカネって呼び捨てなのもいいけど、ちょっとだけクッションを作ってくれてるっていうか。

 

 特別な相手には特別な呼び方を。ロマンチックでいい。

 

 あ、それなら……

 

「私もリュウタ君呼び、変えた方がいいのかな?」

 

「あー、アカネ先輩もなぜか君づけですもんね。あんなにガチ恋結婚間近みたいな距離なのに。じゃあ、変えちゃいましょう。そうしましょう」

 

「南さん、やべえな。この人、止まる気ないわ……」

 

 ちせちゃん、そんなに引かないで。布団の中に隠れないで。

 

 夢芽ちゃんのターゲットがこっちに向いてくるけど、確かに付き合い始めてもうすぐ一年くらいが経つわけだし、そういう特別なことしてみてもいいかも。

 

 え、でもどうしよ。

 

 リュウタって呼び捨ては、なんかしっくりこないんだよね。

 

「じゃああだ名っぽくしてみたらどうですか?」

 

「うーん、リュウ君とか?」

 

 一文字減っただけで雰囲気がだいぶ違う感じがする。

 

 そう言うと六花と夢芽ちゃんも楽しそうに続いてきた。

 

「いいんじゃない? なんかアカネと馬場君っぽい感じの呼び方だし」

 

「すごく夫婦感が出てます……!」

 

「夫婦ははやいよー」

 

 言われたことを想像して、熱くなっちゃった頬を隠しながら笑う。

 

 でもいいかもしれない。

 

 トリプルデートの時とかにサプライズで呼んであげたら、リュウタ君のことだから照れてかわいい反応してくれると思う。

 

 じゃあ、そのためにもまずは六花と響君をカップルにしないと。

 

 グリッドマンになったり響君は大変だけど、だからこそ六花が支えになれることもあると思う。むしろヒーローものだとヒロインの役割ってそういうのも大きいもんね。

 

 逆に私は気楽なもの。だってリュウタ君は戦わないし……

 

「あれ……?」

 

 リュウタ君は戦わない……?

 

 また、変な感覚がある。

 

 なんだろう、それが当たり前で私にとっても嬉しいことのはずなのに……

 

 なにか大切なことを忘れている気がした。




違和感が明確になってきたところで……次回から急展開予定。



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