とある1位の高校生活 作:XY
「おい!お前聞いてんのか?」
一方通行は不良に絡まれていた。というか入学からかれこれ一ヶ月経つというのに未だに絡まれる事が多い。最もその不機嫌なのか不機嫌じゃないのか分からない表情からすれば、仕方ないのかもしれない。
しかし、彼もこの一ヶ月全く学習してこなかったわけではなく、こういう連中に絡まれた場合は余程しつこい連中でない限り、無視して逃げるようにしているのだ。理由は簡単で、面倒な事にしたくないからだ。
なんやかんやいってこの一ヶ月間続けてこれたのだから、今更自ら棒に振るというのはあまりにも勿体ないからだろう。
(あァー、メンドくせェ)
「聞いてんのかって言ってんだよ!」
本当ならぶっ飛ばしてやりたい気分なんだろうが、彼はあえて違う方法を取る。地面を蹴り土煙りを巻き起こし、不良達の視界を奪う。
「うわぁ!?テメェ何しやがる!」
不良達の視界が奪われているうちに全速力で逃げる一方通行。学園都市では滅多に見れない光景だ。しかし、これが彼がこの一ヶ月の間で身に付けた『危機回避術』なのである。
翌日、天候は生憎の雨。朝の時点では晴れていたのだが、午後は天気予報でも雨と言われていたので順当な結果といえよう。
一方通行もちゃんと傘を持ってきている。実際のところ、傘などなくても反射をONにすればいいだけなのだが、そこはグッと堪える。彼が昇降口を出ようとした時、下駄箱で立ち往生している女子生徒を見かけた。
最初は無視しようとも考えたが、何故かそれが出来なかった。彼はそっけない態度で話しかける。
「入るかァ?」
「えっ?」
雨の帰り道。いつも見る景色でも天候が変われば違うようにも見える。
「何かごめんね。入れてもらって」
「別に構わねェよ」
構わないと言ったのは本心だ。今の状況は、一方通行の体の殆どが傘の外に出ている。しかし、別に彼は嫌だとは思っていない。
実を言えば、今彼は反射をONにしている。その影響でよく見ると、雨粒が彼の表面に触れる瞬間に弾かれているのが分かる。しかし、そんな細かい所まで見る人なんていない。
しばらく沈黙が続いた二人だったが、星川の方から話を切り出した。
「ねえ?鈴科くんって夢とかある?」
『夢』。そう聞かれふと過去の事を思い出した。かつては、
しかし、今の彼にはこれといった夢はなかった。
「考えた事もねェな」
「そっか・・・。私はね、ピアニストになるのが夢だったんだ」
「へぇ」
「でもね、それは叶わないんだよ・・・」
「何でだァ?まだそう決まったわけじゃねェだろ?」
「きまってるんだよ・・・」
ここで言葉を詰まらせる星川。
「・・・でも、鈴科くんには言ったほうがいいよね・・・。私・・・」
トラックが二人の横を通る。雨は先程よりも強くなっている気がした。
翌日の帰り道、一方通行は昨日の事を考えていた。
「まさか・・・あいつが・・・」
昨日告げられた信じられない事実を未だに信じられない一方通行。彼が公園を通りかかると聞き覚えのある声がした。
「なぁ俺達と遊ぼうぜ?」
「やめてください!」
その声の主は星川だった。しかし彼は助けようとはしない。
(あいつなら・・・一人で何とか・・・)
彼は無視して行こうとするが、ふと言葉が彼の頭を過ぎる。
(「いいじゃん?能力は使用禁止じゃん」)
(「次問題を起こせば退学処分だからな!)
(「でもね、それは叶わないんだよ・・・」)
「っは。そんなもン俺が知ったことかよォ」
「やめて・・・」
「あー。悪ィンだけど、そいつ俺のツレなんだよ。だからさっさと帰ってもらえますゥ?」
「何だテメェ!」
「一方通行・・・て言えば分かってもらえっかなァ!三下ァ!!」
反射をONにし、彼が男に蹴りを入れる。男は吹き飛ばされる。しかしまだあと二人。
「何だこいつ!?つえェ!」
「相手はたった一人だ!バラバラに攻めるぞ!」
二人の男はバラけ、違う所から一方通行を攻める。彼もそれに応戦するように構えを取る。
しかし、男が一瞬の隙を突き背後を取る。男の蹴りが彼の体めがけ放たれる。
「何・・・!?」
反射されなかった。一方通行はチョーカーを見る。
「クソ!こんな時にバッテリーがっ!」
「おいおい、さっきの威勢はどうした!」
「吠えてんじゃねェぞ!三下がァ!!」
防御体制を取る男だが、そのガードもろとも顔面に彼の拳が刺さる。そして、反射をすぐに切った。
「あ、ありがとう・・・」
「・・・ただの気まぐれだァ」
そう言いつつ彼女に手を伸ばそうとしたその時
「ふざけやがって!」
まだ一人の男はやられていなかったのだ。だが、もうすでにバッテリーの残量は残っていない。絶体絶命と思われたその時!
男の体めがけ一筋の光が放たれていた。いや、それは光だけではなく熱もあった。そう、それは炎だった。
そして、その炎の元には人差し指から煙を出している彼女の姿があった。
「昨日の話、本当だったンだなァ」
「驚いた?自分でも使ったのは久しぶりだけど」
彼女が使ったのは、紛れもない『
「能力開発を受けてないンだから、その能力は『原石』かァ」
「原石か・・・。そっちではそう呼ばれてるんだね」
「そっち?」
そっちという単語に動揺を隠しきれなかった一方通行。
「聞いた事あるんだ。学園都市だっけ?」
彼女の口から出てくる聞き覚えのある単語。しかし彼女の口から出てきたのはそれだけではなかった。
「鈴科くん・・・あっ。そっちでは『
「・・・いつから気づいてたァ?」
少し深呼吸をする星川。
「最初から。あの時助けてもらった時。おかしいと思ったんだ。だって、あんな動き普通じゃありえないもん」
「・・・調べたのかァ?」
「一時期ね・・・。この能力普通じゃないでしょ?だから調べたの。この能力が普通である場所を・・・」
「私は・・・そこに行きたかったんだ・・・」
「行きたかったァ?」
彼女の口から放たれた言葉に彼は言葉を失う。
「私ね・・・昔、この能力が暴走した事があるの」
学園都市で能力制御術を受けた事のない彼女にとっては仕方ないことだ。
「だから怖いの・・・、人前に出るのが・・・。みんな私を違う目で見るような気がして・・・」
この時、一方通行は気づいた。彼女が自分以外の人と話していなかった事を。それはもしかしたら、彼女が彼にある種の安心感を抱いていたからなのかもしれない。
「学園都市なら私みたいな人はたくさんいる。だから行きたかったの・・・」
「でも、今は一方通行くんにがいてくれるから・・・」
「・・・悪ィけど俺はもうここにはいられねェ」
「えっ?」
星川は驚いた。彼は興味なさそうに淡々と続ける。
「二度も問題を起こしちまったからなァ。学校も退学だろうよ」
「私の・・・所為だよね?一方通行くんが私を助けたから・・・!」
自分を責めるように言う星川に、その言葉を断ち切るかのように彼は強い口調で言う。
「お前の所為じゃねェ。言っただろう?あれは俺の気まぐれだって」
「だからお前は何も関係ねェよ」
「でも・・・」
「それに・・・お前は変じゃねェよ。お前は自分が嫌だった能力で俺を助けてくれた。それは全然変なことじゃねェ。もっと自分に自信を持て」
「・・・」
彼は公園を出ようとしていた。
「そんじゃ俺は
彼女は言う。
「私も連れってて!あそこなら私だって・・・!」
「星川・・・」
初めて一方通行が名前で呼んだ。
「原石ってのは世界でも稀なもンなンだ。
「それでも・・・!」
「星川・・・。お前まで黒に染まる必要はないンだァ」
それは黒に染まった彼だからそこ出た言葉なのかもしれない。公園の出口手前で彼は付け加えた。
「ああ、それと。最初はくだらねェと思っていたこの生活だけどよォ。最後の最後でちょっとだけ、やって良かったと思えた」
「・・・お前のおかげだ」
空は秋には珍しい快晴だった。
「あれ?一方通行帰ってたのって・・・えぇ!?何で荷物片付けてるの!?ってミサカはミサカは全身で驚きを表してみる」
「帰るんだよ。
「それでじゃん。あいつがさ・・・」
「ただいまァ」
「お帰りじゃん。ってそこ声・・・一方通行!?」
「ただいま、ってミサカはミサカは言ってみる」
「何で帰ってきてるじゃん!?学校は!?」
「・・・退学になった」
「退学ってまた能力を勝手に使ったんじゃ・・・ん?あの傷・・・?」
一方通行の右肩の傷に目をやる黄泉川。
「おい、触んなよォ。いてェじゃねェか」
「何で怪我してるの?ってミサカはミサカは詳しい事情を追究してみる」
(なるほどじゃん)
「だからやめろってェ!」
「一方通行。どうだったじゃん?学校は?」
「学校?あァ。やっぱくだらなかったよォ。でも、ちょっとだけ行って良かったと思える事もあったァ」
「そっか・・・。よし!今日は久しぶりにみんなでパーティじゃんよ!」
「やった!パーティー!ってミサカはミサカは喜びのあまり踊ってみる」
「そんで今まであった事全部話してもらうじゃんよ!」
「あっ!それならミサカが話す、ってミサカはミサカは志願してみる」
「ふざけんなァ!お前が話すと話がこじれんだよォ!」
「何か楽しそうね。私も入れてよ」
「芳川!お前まで割り込んでくんじゃねェ!」
学園都市のとある学区のとあるマンションのとある部屋にいつもの活気が戻ったのは、もう10月上旬のことであった。
Fin
最終話まで読んで頂きありがとうございました!
何か最後は打ち切り漫画みたいな感じになってしまいましたが、それでも楽しんで頂けたなら幸いです。
あと評価や感想を入れて下さった方、お気に入りにして下さった方もありがとうございました!
思いつき企画でしたので全体を通して稚拙な部分が多かったとは思いますが、作者自身最後まで楽しく出来ました。
本当にありがとうございました!