昼下がりの午後。冒険者ギルドに、一人の男が入ってきた。異様な風体の、『狩人』の男である。真っ黒なズボン、ベスト、ブーツにグローヴを着用し、その上からコートとケープを羽織っている。左右のツバが前に向かって尖るよう三角に折れた、猛禽の頭を連想させる帽子を被っていて、口と鼻をこれまた真っ黒なマスクで覆っており、人相はよく見えない。
極めつけはその、血にまみれた身体だ。ギルド内の誰もが顔を歪めるほどに強烈な臭いを身にまとっていながら、狩人の男は意に介さないどころか、むしろ、たった今水浴びをしたばかりという風に堂々と、マジェスティックに振る舞っていた。
しかし何よりも奇妙なのはその武器である。腰に下げた原理不明の鉄砲と、鉈と鋸の刃を併せ持った折り畳み式の近接武器――ノコギリ鉈のことである。対峙する敵――NPC(祈らぬ者)の中で表皮や装甲の硬い者には有効そうではあり、納得の武器ではある。が、他の冒険者が、剣や盾といった如何にも誇り高い得物を携えているのに対し、その武装はあまりにけったいなものだった。ただでさえ、攻勢に出るという意志表示が見える武装だというのに、それに対して衣服の下からは板金鎧や鎖帷子の音は聞こえず、しかも盾さえも持たないのであるから、非常に極端でアンバランスなものとなっている。
「完了した。その報告を」
ギルドの受付に向かい、狩人の男はただ一言それだけを受付嬢に告げた。
「は、はい……」
応対した受付嬢は絶望的な面持ちでいた。それでも、えずきつつも手続きを進めていくのは流石のプロと言ったところであろう。
そんな受付嬢を遠巻きに見ながら、周囲の職員や冒険者らは、彼女への同情と、狩人への嫌悪感をあけすけにするのであった。
しかし、いくらその狩人への嫌悪感が募っていても、それと同時に皆、狩人へそこはかとない恐怖心を抱いているためか、誰も受付嬢への助け舟を寄こさないのが実情であった。関わりたくないという気持ちも勿論あるが、そもそも彼は何ら悪事を――悪臭を振り撒く迷惑行為はあるが――犯しているわけでもなく、それに彼自身、優秀な冒険者でもあるということもあり、文句を言いたくても言えないのであった。
再度述べるが、彼は優秀な冒険者、もとい狩人である。
彼はほとんど誰とも組まず、ほぼ常に単身で危険なクエストに赴き、そして毎回血塗れになりながらも、これといった大きな負傷はせずに凱旋してくる。
稀に彼と一緒にクエストに行ったという者が言うには、狩人は、慎重な対処が必要な獰猛なNPCを相手にしても、
「獣だ」
と言って躊躇なく突撃し、爾来、血で血を洗うように壮烈な攻撃の応酬を展開するのだと言う。
たとえ、常人が喰らったら充分に致命傷となるであろう攻撃を受けようが、それでも彼は何ともないとばかりに、どころかお返しとばかりに一撃二撃三撃と返していく。人間が喰らったらひとたまりもないであろう強烈な一撃に吹き飛ばされようが、直後に何やら妙な赤い液体を、何らかの方法で自らの身体に投与して復帰するのだそうだ。
当然、これは話半分に聞く者が大半である。如何に、才覚ある者らによって奇跡や魔法が――日の回数制限はあるが――行使される世界であっても、荒唐無稽過ぎたのであった。
しかし、俄かに信じられない事柄であっても、人々はその狩人の逸話から、彼のことを『獣の狩人』と呼んだ。
『獣の狩人』
それは、狩人の彼が、NPCをはじめとした敵に対して『獣』と言い放つことから来ている。
獣とは、通常、四つ足の動物や、或いは鳥類に向けて言われるものであるが、彼の場合は蛇や蛙や魚、虫といった存在の他、トロルやゴブリンなどの亜人型に対しても、それが人間に仇なすのであれば容赦なく獣だと言い切るのである。
ともすると、同族である人間に対してもそれが適用されるらしい節がある。
人々からすれば、そんな偏執的な攻撃性を孕む彼こそが、他の何者よりも『獣』らしく見えた。
故に、彼は『獣の狩人』と呼ばれ、ギルドでは屈指の鼻つまみ者として見られているのであった。
さて、彼の人生には一体何があったのか、次はそれについて語ろう。
元来彼はこの世界の住人ではない。この世界にとっての異世界、即ち我々と非常に似通った世界から来たのだ。
東ヨーロッパにあるチェコという国の首都プラハにて彼は生を受けた。当時は産業革命で石炭の需要が高まっていたため、のちに炭田が盛んなボヘミアに行った。しかし、ただでさえ石炭の採掘が盛んという不健康な地で、その上人も多く集まってて不衛生であったために、彼は難病にかかる羽目になったのであった。
そんな彼が小耳にはさんだのが、国の東側にあるヤーナムという医療都市のことであった。
そこには『血の医療』なる不可思議な医療が在り、如何なる病気も治せてしまうのだという。それを聞き、一縷の望みを懸けて彼はヤーナムへ赴き、そこで体験したことが、かくも彼を数奇な運命へと導いた。
血の医療、青ざめた血、獣の病、獣化、悪夢の世界、獣狩りの夜、そして上位者。
ゲールマンという老人の案内に従い、彼は獣を狩り、狩り、ある時は人間を狩り、狩り、最終的には上位者を狩った。
そのさなかで、ヤーナムで何が起こっているのかを知った。
自分は所詮、大いなる上位者の手のひらで踊らされ、利用されていたに過ぎなかった。他の人間も同じ。彼自身を導いていたゲールマンでさえも例外ではなかった。
自らに課せられた使命を全うしたのち、彼はゲールマンによる介錯を以って、その悪夢の世界から抜け出すことになっていた。
だが彼は拒否した。
それに因ってゲールマンと衝突し、襲い来るゲールマンを退けたまでは良かった。その矢先に、月から舞い降りし『月の魔物』別名『青ざめた血』にあえなく取り込まれた彼は、そのまま相手の手に落ちることとなった。
この世界に彼を送り込んだのも、きっと月の魔物の思惑によるものだろうと、彼は考えている。
ギルドへの用件を終えて、彼は受付に背を向けて、出入り口へ足を向けた。そうして出入り口に近づいたところで、そこからギルドへ入ってくる男が居た。薄汚れた安物の革鎧と鉄兜を被って、中に鎖帷子を着込み、左手に小ぶりな円盾、腰に短めの段平を下げた男だ。
ゴブリンスレイヤーと呼ばれている。その異名の通り、ゴブリンを専門に狩る者である。冒険者業を始めてから五年間、ずっとゴブリンのみを狩り続けて、現場冒険者における最高等級である銀の冒険者となった男である。
そうした奇抜なことをしているためか、ギルドの冒険者らからは、雑魚敵ばかりを狩る腰抜けだの、偏屈な男だのと評判は良くなく、このギルドに於いて獣の狩人と並んで疎まれている。
で、ちょうど鉢合わせになった獣の狩人とゴブリンスレイヤーは、お互いに歩む足を止め、
「やあ」
「ああ」
一呼吸置いてからの、口に依る挨拶を交わして、再び歩き出し、すれ違ったのであった。
このように二人は、お互いに似たようなところがあるからか、はたまた通じ合える何かを持ち合わせているからなのか、素っ気なくではあるがそれなりに挨拶や会話をしたりするのである。
これが、このギルドに於ける日常の一部である。
〈参考資料・サイト〉
・「Bloodborne設定考察Wiki」, 〈http://bloodborne.swiki.jp/index.php〉2018年11月12日アクセス
・「Blood Borne考察(ブラッドボーン/ブラボ)」, 〈https://you0001.hatenablog.com/〉2018年11月12日アクセス
・ゆっくリム・ゲームチャンネル(2016年2月16日投稿), [ゆっくり実況]ブラッドボーン・ストーリー解説プレイ:01 ペイルブラッド /Bloodborne[Eng sub], 〈https://www.youtube.com/watch?v=G9_86EIrn9c&list=PLO1tlNtEJlLZq9pEYrSZkGBmOpsYfVuYW&index=2〉2018年11月12日アクセス
・「Bloodborne(ブラッドボーン) の物語、設定の考察・解説」, 〈https://matome.naver.jp/odai/2148851648003041301〉2018年11月12日アクセス
・ブラッドボーン:ストーリー&世界観考察(14)|リュンポスー楽天ブログ, 〈https://plaza.rakuten.co.jp/monhanp2nd/diary/201506110000/〉2018年11月12日アクセス
・ブラッドボーン:ストーリー&設定考察(最新版)(52)|リュンポスー楽天ブロブ, 〈https://plaza.rakuten.co.jp/monhanp2nd/diary/201512120000/〉2018年11月12日アクセス
ブラボの考察、それも他サイトからの受け売りの考察を描写するので、今の内にここに載せます。