前世の記憶を思い出したと思ったら火拳のエースと顔がそっくりさん 作:ポポビッチ磯野
背負う咎はふたり分
彼が———エースが俺たちの仲間になった。
かつての仲間たちが命をかけて戦闘を繰り広げた敵船の中で信じて待っていた、彼らの船長がその恩を返すのだと覚悟を決めた。
何処か生き急いでいた彼がやっとここに来て自分を預けられる人を見つけられたのは本当に嬉しいものだ。
思い思いにエースをどついたり、肩を抱いたりして笑っている。
白ひげが万一にもエースに負けるってことは想像してなかった、賭けはもはや成り立ってすらなく、俺とハルタのヘソクリが少しだけ減ったくらいだろ。
もちろん今夜は宴だ。
新しいクルーに挨拶をし乾杯すると料理や酒が運ばれる、4番隊の特製フルコースだ。
仲間に囲まれて飯を食い始めて寝落ちたエースに初見のみんなはびっくりしてデュースさんに助けを求めるも
あれは寝てるだけだと言われて『いや寝てるのかよ!!!』と盛大にツッコミを入れていた。
俺は楽しくなってバレないように大声で笑った、なお面倒を見ていたサッチとは料理の話になったらしく直ぐに仲良くなっていたし、奴ともつるんでいたからか、よく話す。
俺はその輪を眺めてら思わず目を細め、眩しいなと思った
想像と文字でしか読んだことのない世界が今ここにある。
それが数年後には全員散り散りになるなんて誰もこの時思ってないだろう
サッチが殺されて奴が裏切って、エースと親父さんが死ぬなんて。
白ひげ海賊団がバラバラになってしまうなんて。
鼻の奥が熱を持って、それを誤魔化すように酒を飲んでいると気配が近付いてくる。
「いいのか、主役だろ」
「...アンタにも礼を、いいたくて」
「変な話だ、俺はお前に礼を言われる様なことしてたか?」
「メシ分けてくれたろ、傷薬もだ、俺だって海の上でソレがどれだけ貴重かわかってるぜ」
「そりゃサッチに言っとけばいいだろうに、まあそこまで言うなら受け取っとくけどよ」
流石は元船長か、そこら辺はしっかり分かっているようだ是非とも君の義兄弟に教えてやってくれなんて、俺が知るはずもない事にツッコミは入れれなかった。
「俺はポートガス・D・エース、よろしく頼む」
「俺は白ひげ海賊団2番隊隊長マルドリード・エクトル、気軽に呼んでくれ」
握手の代わりにお互い持っていた酒瓶を軽く打ち合わせて、エクトルはそのまま煽ったがエースは固まっていた。
「隊長だって…?」
「ん、ああ俺は15の時に入れてもらったんだけど、いつの間にか隊長になってたな」
うん、任命されて流れるように隊長になってた、ギャグだと思うわ
「じゃあアンタが”不落のエクトル”か!!」
「らしいな、俺からしたら向こうが面白いくらいに術中にはまってるだけだけどなァ」
《不落のエクトル》とはここ最近やっと定着した俺の異名だ。
前世で培ったゴリゴリの脳筋はさっぱり忘れて、俺は母さんに聞かされた通り
この英雄の名前にならい防衛戦を中心とした戦略を学んだ。
如何に相手の思考を先に読んでうまく嵌らせることが出来るのか、自分が相手の立場ならどう動くか常に考えた。
それはどこか村での戦いに似ていたのだろう、身に付けるのにさほど苦戦はしなかった
あの日もそうだったな
もう随分昔のことのようだ、でも村のみんながちゃんと俺の中にも生きているのだとそう思えた。
「驚いたぜ...」
「なははっこんな若い奴だったってか?というか“エース”と俺は同い年だったと思うぜ?」
「はァ?!」
またしてもいいリアクションを貰うのに必死に笑いを抑える、エースはというと俺の様子を見ていたからか拗ねている。
俺も一口酒を飲むと真剣な雰囲気を醸し出す、エースもそれを感じとったの心無しか緊張しているみたいだ。
これは計画の大きな節目のひとつだ。
もしかしたら否定されるかもしれない、ならこの顔を見せてやれば良い流石にこの顔をみて完全に違うとは言い切れないだろう。
俺は心を落ち着かせて静かに話を切り出した。
「なあエース、お前父親がどこの誰か、どんなやつか覚えてるか?」
「...!」
息を飲んだ音がする、視線を合わせることはなく波の音だけがいやに聴こえてくる
「さてね生まれる前に死んじまった奴のことなんざ覚えてねぇよ…それに今日からは俺らの親父は白ひげだ、だろ?」
「まあそりゃそうだけどな...あー、これを見ればわかるか」
甲板で盛り上がっている宴をを見ていた俺は海の方へ振り返る、エースもそれに倣うように振り返りあたりに誰も来ない事を確認する。
口元まである襟を下げて、船に乗ってすぐ親父にもらった帽子を脱げば、エースよりも長い髪が夜風にゆれる
後ろにいるクルーに顔を見せないように隣には視線だけを送った。
「......どう、いうことだよ」
そう今の俺たちは鏡みたいに笑っちゃうほど、そっくりだ。
違うのはそばかすが無く、瞳は黒と紫、あとは俺は髭と髪を伸ばしてるが顔を構成するパーツは気持ちが悪いほど同じだった。
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「どういう事だと思う?」
俺と全く同じ顔をした男は笑いながら言ったのを警戒した、確か悪魔の実シリーズにマネマネの実というものがあったはずだと
「悪いが能力者じゃない、だから驚いた...そして唯一の手がかりだと思った」
まさか、ウソだろうと目の前の男を疑う自分
この痛みが
瞬時にそんな想いを抱いた自分に吐き気がした。
エクトルが話し出すのを静かに、しかし聞き逃さないようにすることしか今は出来ない
「実は俺父親が誰か知らねぇんだ、母さんに聞けば異母兄弟がどこかにいるってことしか教えてくれなかった…なあエース、お前は」
どう思うよ?と表面上はへらりと笑ってみせているがその手は震えていた。
俺とは違う、母親譲りであろう紫色の瞳が期待と不安で揺れる。
「んなコト…」
俺だって分からねェよ
ジジイはそんな事1つも言ってなかった。
サボともルフィとも違う肉親
鬼と呼ばれた血を分けた兄弟かもしれない
「こんなに似てんだし...兄弟にならねェ?」
もちろんエースが良ければだけどさ、と暗い夜の水平線を見ながら呟かれる。
すくには答えられなかった
ここまで似ているのを他人にするには世の中は甘くないことをよくわかっているつもりだ。
だからこそ顔を隠していたのだろう
エクトルは返答を待ちながらいつもの様に帽子を被り直していた。
「...素顔を知ってんのは何人いる?」
「そうだな、乗ってすぐからこの帽子被ってるから、ひと目じゃお前とそっくりだってのはもう誰も知らねェはずだ」
ならその帽子を渡したのはこの船でたった一人しかいない。
若かりし頃のあの男を知ってる奴くらいしか、この顔を見て隠して暮らさせるなんてことはしないだろ。
「だからエースの手配書が出た時は驚いたぜ、俺がいるってな!」
笑う顔はやっぱり鏡でも見てるように似ていて、変につられて俺も笑えてきた。
「...さっきの話だけどよ、双子でいいんだろ?」
仕方ねェな、俺には他にも兄弟がいるが今更ひとり増えても構いやしねぇだろ。
だから不安そうな顔すんな、同じ顔なんだ情けねぇ姿見せんなよ。
「!...よろしく頼むぜエース」
「おう」
「あ、言っとくけど俺が兄貴だからな?」
「オイ寝言は寝ていえ、俺が上に決まってんだろ」
「は?どっからどう見てもお前は弟だろーが」
「いーや、違うねそっちが弟だ」
「「あ”あ”!!?」」
ゴォオ!
チャキ!
双子の兄弟初の喧嘩勃発により、宴に参加していたクルーの5分の1が負傷
船には穴が空いたり、傷ができたり炎が燃え移ったりと全体をみれば軽微ではあるが損傷した。
容疑者2人は悪気はなかったと供述しており、全く懲りていない様子に始末書と修復作業の手伝い等などが言い渡されたのであった。
なお兄弟戦争がことある事に開戦することになろうとは、この時まだ誰も予想していなかったのである。
ワァイ皆さまこんばんは、お久しぶりです
大変お待たせしました!難産だったのと大事な話だったこと
あと年末の仕事が押し寄せてきたのが原因ですね!申し訳ない!!
微妙にダラっとしてしまった気がする...()ウウッ...
それからお気に入り400人オーバーありがとうございますo,+:。☆.*・+。
こんなご都合主義が二足歩行してるようなお話を見てくださって本当に嬉しいです!!頑張ります!!٩(*´◒`*)۶♡
ついにエースが仲間になりました!イェイ
実はこれ書いている途中でノベルティ買って読み進めてたんですけど、ぶっちゃけ今までの見返しても描写出来てないし、増やすのやめよう(真顔)となり、名前とかほんのり情報がでるかも。
なおサッチさんの口調はイキです...。
次がまったく考えてなくて困っちゃうね!ナハハハ!!!
もしかしたら番外編とかの方更新するかもしれないし、なんか動き出す前にワンクッション入れようかなって思います!(´◠ω◠`)
ううん白ひげマーク何処にしようか...良ければ挿絵で見てくだせぇ...
簡単にエクトルの立ち絵も付けとくちゃん!
あんまり上手くねぇから期待しないでくれよな!
【挿絵表示】
と
【挿絵表示】
それではまた次のお話で!
ポポビッチ磯野