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海中深くに沈む神殿の最深部
魔神器の間と呼ばれる場所で今まさに神への挑戦を果たそうとする者達がいた
時の賢者ハッシュ、理の賢者ガッシュ、命の賢者ボッシュ
三人ともが老人とも言える年齢だが魔法の王国において三賢者と呼ばれる魔法の英知を極めた存在
彼らが生み出した魔神器と呼ばれる装置は、この海底よりも遥か地中に眠る神の力を取り出し扱えるようになるという
しかしそんな彼らですらこの場の指揮をとるわけではない
この場で最も偉くそして中心にいる人物こそがジールと呼ばれる美しい女王だった
今は地表が常に冬の厳しい時代
人が住むには過酷な環境の中で繁栄を極める国がある
その国は美しく豊かで何よりも遥かに上空にそびえていた
魔神器から取り出した神の力、ラヴォスエネルギーを使い
比喩ではなく大地ごと浮遊させ、地上の冬も関係のない雲の上で太陽の光と自然に溢れている
住まう者たちも選ばれた魔法使いしかおらず
日々魔法の研究が行われ更なる発展を続ける
楽園とも呼べる夢の国
繁栄、まさに魔法王国ジールは繁栄の光に包まれていた
王国には支配者がいた
女王の名がそのまま国の名前になるほどのカリスマと権力をもつ地上と天空を統べる者
それが女王ジール
若くから国を治め、その手腕で王国を導いてきた
彼女には、二人の子供がいる
その一人姉の王女サラは容姿も美しく
優しい性格をしているためか女王とは違ったカリスマに溢れていて
女王になる日を心待ちにしている者も多いという
サラは魔神器の間に同行を許されていた
魔法の才能に恵まれ魔神器の制御と魔力を送るという重要な役割を担っている
三賢者、女王、王女の5名がこの場所で偉大な計画の最終段階を迎えようとしていた
全ての支配者の例に漏れず
女王の目的は神の力で永遠の命を手に入れるであった
「あともう少しだ……。わらわは永遠の生命を手に入れる!ジール王国は神の光につつまれるのだ!ククク……。アーッハッハッハッ……!!」
「お母様‥‥もう、おやめください。この力は災いしか呼びません。」
娘は母が最後に思い留まるように声をかける
娘はこの計画には反対であった
女王は神の力に魅入られ少しづつおかしくなってしまった
優しかった性格は今では考えられないほど非情で冷酷になっていた
そんな母がかつての姿に戻るように祈りを込めて
しかし、女王は聞き入れない
「サラよ、なぜわからぬ?神の、永遠の命の鼓動がもう動き出すのだぞ?これほど素晴らしい事があるか?さぁ、魔神器に魔力を!」
「‥‥はい」
娘はもう、止める事は叶わないと観念したのか魔神器と呼ばれる装置に魔力を送りこむ
「いいぞ、クックックッ‥さぁ、いよいよだ!いよいよ、わらわの願いが叶う!」
順調だった
計画通りラヴォスエネルギーはかつてない程魔神器に満たされていくと
女王は計画の成功を確信し他の者たちには緊張が走る
まさにそんな時に女王のもう一人の子供
王子ジャキが現れる
彼はまだ幼くそして姉を慕うあまりここに来てしまったのだ
「姉上……ッ!!」
「いけない、ジャキ! 来てはダメ……!」
サラは、危険なこの場所に弟が来てしまった事に動揺し離れるように叫ぶ
「で、でも……!黒の風が‥」
ジャキと呼ばれる少年は姉を助けに来たのだ
彼には、良くないことが起こる前兆がわかってしまうのだ
黒の風が吹くとき必ず災いが起こる事をジャキは知っていた
その風が今は吹き荒れている
その時だった
空間に変化が訪れる
「むう……! この次元のゆがみは……!?」
賢者は場の変化に気づいた
魔神器は神の力を吸い出す余り神を呼び起こしてしまおうとしといる
空間は更に歪み神が姿を現わす
「な、なんと神々しいことか!これがラヴォス神‥‥」
女王は突然の神との会合に歓喜している
「これは‥」
魔神器は今や暴走し場は混乱と動揺につつまれている
「やはり無理であったか!?人の手で、この力をコントロールするのは……!」
「いかん……! このままではヤツの次元の渦に飲み込まれるぞ!!」
時の賢者はこの後の危険を素早く察知する
「こ、これは……!!」
理の賢者の足元に時空の歪みが発生し飲み込まれてしまう
「まさか、タイムゲート!?」
命の賢者も飲み込まれる
「しまった……!!」
時の賢者すらも歪みを回避出来ない
そしてその時は訪れてしまう
「あ……、姉上ーッ!!」
王子もまた歪みに飲み込まれていく
「ジャキッ!?そんな‥‥」
「むぅ!?ば、馬鹿な、わらわまで飲まれるというのか!?くっ、永遠の命を前に
「お、お母様!! 手を!キャァー」
近くに居たサラは女王に手を伸ばし助けようとして暗い穴へと落ちていった
そうして物語は動き出したのだった
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目を開けるとそこには青空が広がっていた
だんだん意識が覚醒し自分の状況を思い出してくる
あたりを見回すと先程まで自分達が居た海底神殿ではなくどうやら屋外で森の中のような所にいるようだ
ここは、王国のどこかだろうか?地上は冬なのだから地上ではなさそうだが
「やっぱり夢じゃなかったのね‥‥」
さらに意識がはっきりしてくる
自分は現在タイムゲートに飲み込まれて‥
弟や賢者達は時間の渦に飲み込まれ離れ離れになったのは覚えている
自分の名前を呼ぶ弟の顔を思い出す
「ジャキ‥‥‥。」
やっぱりあの力は災いしか呼ばない
お母様はあの忌々しい力に魅入られてしまっているだけなのだ
私がもっとしっかり説得していたら
「あ! お母様は!?」
自分はゲートに飲まれる母を助けようと手を伸ばしそのまま同じ穴に落ちたはずだ
まさか、逸れてしまったのだろうか?
私は、起き上がり周囲を散策する
するとここが空の上でない事がわかった
ここが過去か未来か分からないが地上は冬ではないようだ
少し離れた場所に小川がありお母様はその近くの切り株に腰掛けていた
お母様は私に気付くと声をかけてきた
「目を覚ましたか。どうやら、わらわ達も時間の渦に飲まれたらしいな。」
「お母様!ご無事だったのですね‥よかった。」
「わらわがこの程度の事でどうにかなるはずなどないわ。サラよ、体の方はなんともないか?」
不意の言葉に心臓が強く脈打つ
お母様に身を案じられる言葉をかけられるとは思わなかった
私は動揺していたが、直ぐに答えようと体を確かめるように魔力を巡らす
どうやら問題はないようだ
「ええ、体の方は異常ないようです。魔力の方も問題ないです。」
「ふむ、そうか。」
もしかしたらお母様は元に戻ったのではないだろうか?そんな希望が私の中で膨らんでいく
「しかし、悲願を前にこの様な事になるとはな。まぁ、サラが無事ならばなんとでもなるであろう。」
「はい‥‥しかし、ジャキが‥」
私は大丈夫だがジャキはまだ幼い
右も左も分かない場所に急に飛ばされて平気なはずない
願わくば優しい人が近くにいてくれたら‥
私がジャキの事を考えていると
「さて、それでは行こうか。時間もあまりない。」
「え?ど、どこへですか?」
生返事になってしまった。まさかお母様もジャキを助けに
「決まっておろう?神の元よ。わらわは諦めぬぞ、必ずや永遠の命を手に入れる。こんなところで立ち止まっているわけにはいかぬわ。」
私は母の目に宿る狂気に絶句してしまう
一体何を言っているのだろうか、このような状況でまだそんな事を言うのか?
ああ、やはり母は壊れてしまったままだ
貴女の息子が行方不明なのだ
今、貴女がしなければならない事はそんなくだらない事ではないはずだ
それを声に出そうとする寸前で我慢する
今のお母様に言ったところで聞いてもらえないだろう
「どうした?サラよ、早く支度をせよ」
「‥‥そうですね。では、まず私が周囲を見回って参ります。お母様はここで待っていてもらえますか?」
おそらくここは地上だろう
もしも地の民が近くにいた場合を考えると母と一緒では無用のトラブルを招く可能性が高い
しかし
「わらわには止まっている時間などないわ。」
そう言うと母は私に付いてきたのだった
基本サラとジールの話ですが、色々なキャラが出る予定です