クロノさん達と広場の奥に向かっていく途中でマールさんがふと足を止めると
「あ!キャンディ売ってる、ごめんなさい。ちょっと買ってくるね!」
そう言うと彼女はキャンディを売っているお店にかけていく
「え?ちょっと、マール?」
クロノさんは慌てて後を追いかけてようとしたが、私達に気を使ったのか一度こちらに戻ってくる
「ごめんなさい。すぐに戻ってくると思うので。」
「いえいえ、気にしないでください。クスッ、お二人は仲がよろしいのですね。」
「うーん、そう見えますか?実は今日会ったばかりなんですよ。」
「え?お二人はお友達ではないのですか?」
「サラよ。男女の距離は時間などでは測れぬものよ。」
「そうなのですか?お二人は運命の出会いというものなのですね。」
「ち、違いますよ!そういうのじゃなくてマールが一緒に祭りを回ろうって、あの、とにかく、友達です!」
「クックッ、そうなのか?まぁ、せいぜいエスコートしてやることだな。」
慌てるクロノさんは暫く弁解していたが、そこに買い物を終えたマールさん戻ってきた
「おまたせしました!ん?クロノ顔赤いよ?どうかしたの?」
「な、なんでもないよ。」
そう?っとあまり気にした様子でないマールさんが私とお母様の前にくる
「はい!サラさんジールさん、これは、お近づきの印です!」
と、綺麗にラッピングされたキャンディを渡してくれた
「良いのですか?ありがとうございます。」
「ふむ、あとで頂こう。サラ、そなたが預かっていよ。」
「はい。」
私はお母様の分のキャンディも預かりローブにしまう
私はこんなに綺麗なキャンディは初めて見たし、凄く嬉しいプレゼントだ
あとで劣化しないように魔法を掛けて保存しておこう
ジャキと一緒にいつか食べられるように祈りを込めて
そのまま合流したマールさんと会場へ向かう
広場の奥はすでに沢山の人が集まっていた
私達も前の方に進むと、よくわからないが何かの装置の様な物とそれをいじっている男女が居た
親子だろうか、男の方はおじさまというくらいの年齢に見えるし女の方は私と同じくらいの年頃くらいかしら?
眼鏡を掛けて少しヘンテコな恰好だけど凄く可愛い娘
あの娘がクロノさんの幼馴染なのでしょうか?
うーん、しかしあれは一体なんだろう?魔力を感じない事から天への道の様な転移装置ではないだろうし
お母様の方を見るとお母様も興味深そうに眺めている
クロノさんの幼馴染の方の出し物と言っていたが、何が始まるのだろう?
色々考えていると装置の近くに居たおじさまがこちらに歩み寄ると
「さあさあ、お時間と勇気のある方はお立会い!これこそ、世紀の大発明! 超次元物質転送マシン1号だ!!」
「早い話が、こっちに乗っかかると、こっちに転送されるって夢の様な装置だあ!こいつを発明したのが頭脳明晰才色兼備の、この俺の一人娘ルッカだ!」
周りの人達が動揺してどよめく
私もかなり動揺した
「お母様、本当なのでしょうか?」
「‥‥魔力を用いずにその様な芸当が出来るわけなかろうよ。」
「そう‥‥ですよね。」
私達が話していると、クロノさんの近くあの眼鏡の娘がやってきた
「クロノ! 待ってたわよ! だーれも、このテレポッドの転送に挑戦しないんだもの。こうなったら、あんたがやってみてくれない?」
「え?ぼ、僕?」
「面白そう! やってみなよ。私見ててあげる!」
「でも、危ないかもしれないし」
「ふむ、クロノよ。わらわも見たいぞ。やってみよ。」
「‥‥ジールさんまで」
「へ? ちょ、ちょっとクロノ。あんたいつの間に、こんなカワイイ子達を口説いたのよ。それに綺麗なお姉さんまで‥‥。」
「ま、まぁいいわ。とにかく向こうのポッドに乗ってちょうだい。」
「うん‥‥わかったよ。」
クロノさんは渋々といった感じでポッドの上まで移動していく
正直、私も凄く興味があるが少し可哀想にもなってくる
彼はどうやら頼まれたら断れない気の弱い性格なのかもしれない
「クロノ!頑張ってー!」
「ハハ‥‥」
マールさんが応援すると乾いた笑いを浮かべながらクロノさんがポッドに乗り込んだ
「さぁ、いくわよ!エネルギー充填開始!」
眼鏡の娘が合図するとおじさまの方が装置を起動していく
‥‥‥‥
結果から言うと成功だった
クロノさんは本当に転送されて反対側のポッドに立っていた
私は暫く目の前の光景が信じられずに放心してしまったが
隣に立つお母様が
「‥‥ありえぬ‥‥そんな‥‥もし、そんな事が可能なら‥‥」
と、私より遥かに動揺しているのを見て我に帰る
「お母様?大丈夫ですか?」
「‥‥ああ、大丈夫だ。少しばかり取り乱した。」
私達が動揺していた間にクロノさんが戻って来ていたようだ
マールさんと何やら話している
「ね、いいでしょクロノ? ここで待ってて。どこにも行っちゃ、やだよ!」
「うん、ここにいるよ。頑張って。」
「さあさあ、挑戦するのは何と!こんなに可愛らしさ娘さんだ!ささ、どーぞこちらへ!」
司会者の様に場を盛り上げるおじさまに手を引かれて
「エヘヘ。じゃ、ちょっと行ってくるね!」
マールさんがポッドの方に歩き出す
「大丈夫かい? やめるんだったら今のうちだぜ。」
「へっちゃらだよ! 全然こわくなんかないもん。」
マールさんがポッドの上に乗り込み私達に手を振っている
私はまだ少し動揺しながらも笑顔で手を振り返す
「それでは みなさん! この可愛い娘さんが見事消えましたら、拍手喝采。」
「スイッチオン! エネルギー充填開始!」
先程と同じ様にマールさんを乗せたポッドに魔力ではないエネルギーが集まっていく
‥‥‥‥
しかし、変化は突然訪れた
エネルギーが先程とは比べられないくらいに高まっていく
この感覚は!?まずい!!
「マールさん!逃げて!」
私はマールさんに向かって叫ぶ
しかし声が届いて居ないのか、マールさんは首の辺りを気にしている
「何これ? ペンダントが……。」
マールさんのペンダントに力が集まっていく
嘘‥‥どうして?そのペンダントは‥‥!?
高まっていくエネルギーはやがて時空に歪みを発生させた
すぐに異変に気が付いたクロノさんがマールさんの名前を叫びながらポッドに向かい駆け出していくが間に合わず
マールさんはタイムゲートに飲み込まれて行ってしまう
場には静寂が訪れた
マールさんはこの場所から完全に姿を消したのだったが私は動けずにいた
だってあのペンダントは私の‥‥‥‥
いつまで消えたままのマールさんに会場にも少しづつ動揺が広がっていく
「おい、ルッカ 出て来ねーぞ?」
「‥‥‥‥‥‥。」
ルッカと呼ばれた少女は額に指を当てて考え込んでいる
集中しているのか何も言わずに黙っている
「ハ、ハイ! ごらんの通り影も形もありません! こ、これにてオシマイ!!」
「今日の出し物はこれにて終了!みなさんありがとうございました!」
おじさまが周りの人達を会場から帰らせていく
私が少し落ち着きを取り戻しているともう、周りにはお母様とクロノさんとクロノさんの幼馴染の親子しか居なかった
「お母様‥‥これは‥‥」
「‥‥‥‥サラよ。暫し考え事をさせてもらうぞ。」
そう言ってお母様はその場に座り込んでしまった
「おい、ルッカ! 一体どうなってんだ? あのコはどうしちまったんだ!?」
「あの娘の消え方はテレポッドの転送の消え方じゃない。あの空間のゆがみ方……ペンダントが反応していたようにも…もっと別の何かが……。」
「どうしたらいいんだい? 助けることは?」
「あの娘……んっ? そういえばあの娘どこかで見たことがあるような?」
あの親子の会話が聞こえてくるが私の頭にはあまり入ってこなかった
私はポッドの近くに落ちているペンダントを拾いそれを眺めながら考える
こんな事があり得るの?
タイムゲートから偶然訪れた場所、時代で日も跨がない内にまたタイムゲートに遭遇して
それにあの娘がつけていたこのペンダントは‥‥
偶然なの?
私の物と同じ物に見える、しかし魔力は宿っていない
このペンダントの未来の持ち主って事?
駄目だ、考えがまとまらない
「サラさん‥‥サラさん‥‥‥‥サラさん!」
名前を呼ばれてハッとする
「クロノさん‥‥。すみません‥‥ボーっとしてしまいました。」
「サラさん、マールのペンダントを貸してください!」
「は、はい。」
私は勢いに押されてクロノさんにマールさんのペンダントを手渡す
「ルッカ!用意して!」
というとクロノさんはポッドの上に乗る
まさか‥‥
「クロノ‥‥あんた‥‥」
「おーッ! 後を追うってのかクロノ。さすがは男だぜ!」
「そうね‥‥あの空間の先に何があるのかわからないけど、それ以外に方法はなさそうね。」
「でも、都合よくまた穴が現れるとはかぎらないぜ?」
「やってみる価値はあるわ! きっとペンダントがキーになってるのよ!
クロノ! しっかりそれを握ってて。きっと同じ事が起こるはずよ!」
直ぐに準備に取り掛かろうとする親子を私は止める
「危険です!あの穴はどこに通じてるかわからないのですよ?それに戻ってこれる保証も
「関係ないよ!それなら尚更マールを早く助けに行かないと!」
クロノさんと目が合う
「‥‥!?」
この人は先程の青年と本当に同一人物なのかと思うほど、その瞳にはどこまでも真っ直ぐで強い意志が宿っている
そこには気の弱そうな青年はもういない
「サラ、行かせてやれ。」
「お母様‥‥しかし‥‥」
「クロノよ‥‥そなたは、良い瞳をしておる。クックック‥‥黒い風も追い風になる様な良い瞳じゃ。そなたならきっと出来るであろうな。」
「ありがとうございます!ジールさん!僕は必ずマールを助けてきます!さぁ、ルッカ!お願い!」
「了解よ!」
「スイッチオン!」
「エネルギー充填開始!!」
再び装置が起動していく
「クロノさん‥‥どうか、ご無事で‥‥」
その後クロノさんはマールさんを追ってタイムゲートへと入って行ったのだった