建国千年祭会場近くにあるトルース村
その一角にある少し小さなお店では、夜は酒場として朝から夕方までは喫茶店として営業している
特に朝は、季節の朝食セットと言うものがとても人気だと言う事なのでそれを頼んでみた
内容はこんがりと焼けたトーストと野菜のスープと新鮮なサラダ、何かの果物のジュースだった
美味しい‥‥
この時代の料理は本当に美味しくて私はこの時だけは自分の状況を暫し忘れて素直に感動してしまった
窓から見える穏やかな春模様は私達の時代だと雲の上でしか味わえないような素晴らしい景色で眺めているだけでも、とても穏やかな気持ちになる
ボッシュ様と再会を果たした私達は、まだ朝食も食べていないと言う事と落ち着ける所で話をしてしようと先ずはこの喫茶店に移動したのだ
「ふむ、中々悪くない朝食だったぞ。」
「そうですね、凄く美味しい料理でした。ご馳走様でした。」
「ほっほっほっ、それは良かった。」
最初はかなり動揺していたボッシュ様も少し落ち着きを取り戻し私達と席を囲んでいる
朝食が済み、早速と言う感じでボッシュ様は
さて、と切り出した
「ジール様、サラ様。本当に良くぞご無事で。」
「フ‥‥わらわはあの程度では死なぬよ。」
「ボッシュ様もご無事でなによりです。」
「しかし、その様子を見る限り昨日今日この時代に来たと言う訳ではなさそうだな。ボッシュよ、先ずはそなたのこれまでを聞かせよ。」
その後、ボッシュ様はゲートに入ってからのこれまでを聞かせてくれた
どうやらボッシュ様は何年も前からこの時代に来ていたらしく今は鍛冶屋として生計を立てているようだ
「それにしても本当に未だ信じられませね。お二方は昨日この時代に降り立ったと‥‥。昨日サラ様のペンダントをお見かけして昨日の今日で本人と再会を果たせるとは‥‥なんとも不思議な運命じゃな。」
「運命か‥‥そんなものはありはせぬ。これはわらわが引き寄せた幸運に過ぎぬよ。」
「ホッホッ、間違いありませぬな。それでお二方はこれからどうするおつもりですかな?よろしければ、暫くわしの家に来ませぬか?これでも、多少の貯えはあります。何不自由なくとはいきませぬが、普通に暮らしていくなら問題ないかと思いますぞ。」
とても、魅力的な提案だ
しかし
「フフ‥‥クックックッ‥‥アーハッハッハッハ」
「お、お母様。」
突然笑い出したお母様に周りに居る他のお客さんが私達に注目している
「クックッ‥‥ボッシュよ、普通の暮らしとは随分とこの時代に馴染んでしまったようだな。」
「‥‥ジール様。貴女はやはりまだ‥‥」
「そうだ、わらわの悲願。忘れてはおらぬであろう?」
「ボッシュ様、大変ありがたいお誘いで本当に嬉しく思います。しかし私達はなんとか再会できましたが‥‥私はジャキの無事を確かめたいです。」
「サラ様‥‥。とはいえ、手掛かりなどはあるのですか?わしはこの時代で長い事住んでいますが、タイムゲートなどの痕跡は見当たりませぬ。」
「ふむ、現状では多少の当ては無くは無いと言ったところか。」
お母様は昨日のクロノさん達の話を説明する
「そうですか‥‥そんな事が‥‥信じられませね。しかも、またペンダントの力とは‥‥」
「もう一つの当ては、そなたが出てきたと言う出口じゃな。場所は覚えておるか?」
「はい、覚えております。」
「それは僥倖。わらわ達の出口は、上空だったゆえな。行こうにも行けぬのよ。」
「え!そうだったのですか!?」
私は驚いてしまう
と言うことは私はお母様に助けていただいたのか‥‥
「気づいておらなんだか?魔力が無ければ危なかったが、まぁ降り立つだけなら問題なかったわ。」
お母様はなんでも無い事のように言うが、かなり危なかったのでは無いだろうか?二人とも気を失っていた、と考えたら‥‥ゾッとしてしまう
「ジール様。」
「どうしたのだ、何か思い立ったか?」
「先ずは、改めて謝罪をさせていただきたいのです。魔神器計画の責任者としてわしの計算が甘かったです‥‥本当に申し訳なかったです!」
「‥‥良い。計画が危険だとそなたは何度も延期を訴えておったのをわらわが押し切ったのだ。」
「それに魔神器も破壊されしてしまいました‥‥」
「魔神器暴走に備えてそなたが用意していた赤きナイフだったか?そうか‥‥使っておったか‥‥」
「はい、咄嗟にジール様の許可なく使ってしまいました。申し訳ございません」
赤きナイフとは特殊な石からボッシュ様が作り出したもので魔神器も同じ材質で出来ている
「‥‥あの状況では、仕方あるまい。許そうぞ。」
「ありがとうございます。それから、ジール様。‥‥魔神器計画の真意はサラ様にはお話なされ
「ボッシュ。その話はよせ。」
お母様は先程までの上機嫌な様子を崩されて無表情になりピシャリと言い放つ
魔神器計画の真意ってなんだろうか?
「‥‥申し訳ございませぬ。」
「しかし、となると‥‥ボッシュよ、そなたはどうする?」
「‥‥どうするとはどう言う事で御座いましょうか?」
「うむ、簡潔に言うとだな。今のそなたはこの時代の鍛冶屋ボッシュか?それとも、魔法王国ジールの賢者ボッシュか?と聞いておるのだ。」
「それは‥‥‥‥‥‥わしは‥‥‥‥」
ボッシュ様はかなり迷っているように見える
平和な時代とはいえ何も持たずに放り出され今のように安定して生活が出来るまでにどのくらいの苦労があっただろうか?
私には想像も出来ないが、ボッシュ様が迷われるのも無理はないと思った
「ジール様‥‥少しだけ時間を頂けませぬか?」
「構わぬ。本来なら強制したいところだが今のわらわは国も民も持たぬ裸の王同然よ‥‥本心を言えば、魔神器の修理にそなたの力が借りたいところだがな。」
「ありがとうございます。」
ボッシュ様は、心のそこから真剣に考えると頭を下げる
お母様は、まぁ‥‥と一旦間を空けてから
「とはいえ。そなたは、か弱くも儚い女を援助するくらいの甲斐性はあるだろう?」
そう言って、ニヤリと笑うお母様にボッシュ様は少し目を丸くして笑い出す
「ほっほっほっ、それは任せてくだされ。」
と、力強く自分の胸を叩くのだった
私達は、その後暫くは穏やかな時間を過ごしていったのだった
これ最後まで書いたら何話までいくのか‥‥
誤字方向ありがとうございます
直しました