時をかける女王   作:リバサ昇竜

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消えた王女 前編

 

「サラ様!」

くっ、よもやこの様な失態を犯すとは!

平和な時代だと、油断してしもうた

わしとジール様が雑談していた僅かな隙にサラ様の悲鳴が聞こえ振り返った時には姿はなかった

状況から考えると何者かに拐われてしまったようだ

 

「ボッシュよ、追うぞ。」

ジール様は、そう言って走り出した

「はい!」

すぐさまその後を追う

わしはサラ様の消えた方角へと走りながら考える

何者かの姿は未だ確認出来ないが、状況と、この方角の事を考えるとおそらくは‥‥

「ジール様、この先には洞窟があり人間に対して憎しみを募らせた魔族達の溜まり場になっております。サラ様を拐ったのもおそらくは、その者達かと。」

「魔族?まぁ、良い。ボッシュよ、早う案内するのじゃ。」

「かしこまりましたぞ!」

 

 

わしらはそのまま洞窟へと向かう

そこは魔族の村の者達からは、ヘケランの洞窟と呼ばれている

名前の由来はヘケランと呼ばれるこの辺りの魔族達をまとめている者の名前からとっているらしい

余談だが、ここからは連絡船を経由せずにトルース町へと抜けられる渦潮があり、わしも洞窟が魔族の溜まり場になる前はよく利用していた

 

 

そして洞窟の前にたどり着く

 

「ここか‥‥?」

「そうです。しかし、この先に進めばきっと戦闘になるやもしれませぬぞ?危険ですので、わしが一人で行って

「戯言は良い。行くぞ。しかし、そなたこそ大丈夫か?平和ボケした老人は道案内だけで良いぞ?わらわの後ろに下がっておれ。」

挑発するように自分の後ろを指差すジール様にわしは

 

「ほっほっ、どうやら心配はいらない様ですな。参りましょうぞ。」

カッコイイところを見せようと剣を握りしめるのであった

 

 

 

洞窟へと入っていくとすぐに魔族と思わしき者が門番の様に立っていた

モグラの様な姿で兵士の様な恰好をしている

わしらが、そのまま進んでいくとその魔族の者は我々に気付いて立ちはだかる様に道を塞ぐ

 

「止まれ、ここは我々魔族の土地だ。本来ならば、この場で殺すところだがそこの鍛冶屋に免じて見逃してやる。」

わしはこの洞窟の近くに住んでいて、そこは村からも近く割と普通に話せる魔族も多いのと

村に貢献してきた過去もあるので、この魔族の者も慈悲をかけてくれているようだ

そんな魔族の者を意にも介さずに、ジール様が歩みを止める事はない

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥。」

「止まれと言うのが、聞こえないのか!やはりこの場で殺してやる!」

門番は右手を振り上げてジール様に殴り掛かるが、その瞬間に

 

バチンッ!!

 

と、眩い光と大きな音が炸裂し肉が焦げる臭いが広がる

魔族の者はその場で倒れ痙攣していたが、その横をジール様は一瞥もせずに通り過ぎていく

 

「相変わらず素晴らしい魔法のキレですな。」

「世辞など要らぬ。行くぞ。」

ジール様の魔法の腕は王国でも最上位だろう

サラ様とジャギ様が生まれ魔力の量こそ、かなり落ちたが詠唱の速さと何よりも

「‥‥ぐふっ‥‥に、人間ごときに‥‥‥‥」

わしは、倒れた魔族の者を見るとまだ息がある様で、暫くすれば起き上がる事も出来るだろう

それを確認してわしはジール様の腕が落ちていない事を確信する

これはジール様の慈悲ではない

もちろん魔法の威力が弱いわけでもない

これこそが、魔法の腕とも呼べるスキルだろう

対象の体力、属性、魔法耐性を目視で確認し余計な魔力を一切使用せずに確実に素早く戦闘不能にする

魔法とは、魔力が源でありどんな強大な魔法使いも魔力が切れればそれは戦闘不能と同じ事で魔力の無駄使いなどは以ての外なのだ

先程の言葉はもちろん世辞ではなく本心だった

この様子なら、ジール様の心配はあまりしなくても大丈夫だろう

ここにいる様な魔族達に遅れを取る事はよっぽどあり得ぬじゃろうて

さて、わしも負けてはおれぬな

 

そのあとも、わしとジール様は襲ってくる魔族をあしらいながら奥へと進んで行くと道中ジール様に話し掛られる

 

「ボッシュ、そなたはもしや魔法が使えなくなったのか?」

「いえ、大分魔力は落ちましたが使えぬ事はありませぬよ。」

「ならば何故、わざわざ剣を振るうのだ?」

「ほっほっほっ、わしは元々剣士ですのでな。この程度の相手ならば魔法など使わずとも進めますぞ。」

剣を掲げてジール様に見せる

 

「フ‥‥そうか、精々腰に気をつけるのだな。もう、そなたは若くはないのだからな。」

少し意地悪そうな笑みを浮かべて笑いかけてくる

うーむ

カッコいいところを見せたつもりだったのだが、心配されてしまった

「まだまだ、若い者には負けませぬよ。」

少し体が痛いが、わしは強がってみせる

 

 

「サラ様はご無事でしょうか?」

「フン、この洞窟に入って確信したがこの程度の者たちにサラをどうにかする事など出来ぬだろうよ。」

「‥‥そうですな。それならばよろしいですが。」

ジール様は余りサラ様を心配されてはいない様子だったが

「だが、わらわの娘を拐った者には相応の報いは受けてもらうぞ。」

わしはこの様に話すジール様の目を見て絶句してしまう

「?!」

その目にはかつての記憶と違わずに狂気とも呼べるものが宿っていた

やはり、貴女は‥‥

いや、今はサラ様の事が先決だ

 

サラ様、お待ちくだされ!

今、助けに行きますぞ!

 

 

 

 




ヘケランって割と強かったイメージがあるのですが、どうでしたかね?





誤字報告本当にありがとうございます。直しておきました。気をつけます
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