転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~ 作:れーと
次回からは十歳!
そして少しずつ、ゲームは始まっていく―
ボクの護衛に成った『アミス』という少女は大分変わっている。
ボクを愛玩動物のような目で見てくるし、剣の一族として常に苦しい訓練に耐えてきたボクのことをいとも簡単に下した。
彼女とボクは相手にすらなっていない―まるで次元が違う。
氷雪の大迷宮で彼女が凍っているのを見つけた時はどうしたものか、と思ったが今では『アミスだからな…』って思い始めているところがある。
剣でボクをあしらった後は、魔法の授業に入った。
そこでも、彼女はやはり変わっていた。
「魔法は一属性しか使えない」という常識を「コイツ何言ってんの。バカなの」とでも言いたげな顔で聞いていた。
そして彼女は言い出したのだ。
「私は十の属性をすべて操ることが出来ます……信じられないなら見ていてください」
十の属性―それはかつてあったとされる属性。
今では四の属性に減ってしまっている。
使える人がいなくなったからだ。
そのことを伝えたら彼女はどんな反応をするだろう。
難しいことを知っているくせに、すべて顔に出ているのだから面白い。
そんなことを考えている間に彼女の周りに暖かい魔力が集まっていた。
「しかと、その目に焼き付けてくださいね……?」
そのセリフを最後に、訓練場の景色は一変した。
空には満天の星。
「……幻想魔法…?」
「はい。特別属性の一つ、闇属性の魔法ですよ。それじゃあ、イッツ・ショータイム」
そして彼女が発動させたのはさっき僕が使った炎・属性の超上級魔法〈ヘル・フレイム〉。
僕たちを囲むように炎が広がっていく。
でも明らかに僕より質が良い。
超上級魔法を使えるだけでみんなから褒め称えられるのに、彼女は常識のようにボクを超えていく。本当に、何者なんだろう。
よく見たら僕たちがいるところと炎の間に結界が貼ってあった。
いつの間に………しかもコレ光属性だ。
あっという間にが端々まで広がっていくと、少女は徐に指を鳴らした。
そして目に映るのは氷の世界。
さっきまで爛々としていた炎は今や氷漬けになっている。
それは熱が逃げる間もなく冷却されたことをさしている。
闇・炎・光・氷…今の一瞬で四属性を操っている。
しかもそのうちの三つは失われた特別属性。
そしてショーは続いてく。
「うわッ……?!」
急に揺れ始めた地面に驚く。
地面がひっくり返るような揺れを感じていると、さっきまで氷だった炎が崩れ落ちていくのが見えた。
「よっと」
それを風魔法で巻き上げるアミス。
キラキラと光ながら氷は上がっていく―そして、天井にでも届いたか、アミスは風魔法を中断させると雷魔法を使用し始める。
ここまでで七属性。
あちらこちらに散らばっている氷を伝わって雷が動いていく。
それは星が星座を片付くっているようにも見えて、とても幻想的な風景だ。
「どう?一属性しか使えないなんて嘘だって、分かった?レグルも訓練すれば十属性全部の才上級魔法くらい使えるようになるわ!」
そういってアミスはボクに笑いかけた。
十属性全部の最上級魔法…って、彼女が言うと可能なのかもって思える。
そもそも今最上級魔法を使える魔法師はこの国には一人もいないんだけどね。
もはや最上級魔法は伝説になり始めているモノだ。
それを失われた六属性も合わせて使えるようになる、と言った。
本当、規格外な少女だ……
あとアミス。敬語崩れているよ?
いや、そのままでいいや。
―人生で初めての友達なんだから。
「…うん。ご指導のほど、お願いします」
強くなりたい。
いつか、誰にもバカにされないくらいに。
強くなりたい。
紅い瞳を恐れて目をそらされることがなくなるくらいに。
真紅の瞳―それは、高魔力保持者の証。
多くの人はボクを恐れる。
多くの人はボクから逃げる。
でも、アミスは『僕』と向き合ってくれる。
神秘的な白銀髪を揺らして、美しい瑠璃色の瞳を僕に向けて。
笑ってくれる。
だから―――
「あ、レグルごめんなさい。敬語使うのすっかり忘れていました」
「ううん、これからは使わなくていい。アミスが先生なんだから」
これからは、守っていく。
自分の手で、自分の力で、大切なものを。
To be continued………
アミスの瞳は幻想魔法で色を変えています。
マイさん(メイド)から〈氷の戦姫〉の話を聞いて用心のために瑠璃色にしました。
本来はレグルと同じ真紅の瞳をしています。