転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~   作:れーと

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少女と友達

「ほへぇ…ここが大図書館ですか……」

「何を呆けている、行くぞ」

「あー、はい」

 

中庭からずんずん進んで約五分後。

私とグレン様は見渡す限り本、本、本…の空間に来ていた。

―それにしてもココ、戦争になったら大火事間違いなしだな。

 

「グレン様、どこへ向かっているんです?」

「あぁ、政治の本の区間だ。アイツは大体そこにいる」

「…なるほど」

 

…グレン様って本当に殿下について詳しいな。

ゲームの中じゃ仲違いしていたから、やっぱりここはゲームそっくりなだけの別世界…?いや、それか残念王子だけに殿下の前に行くと突っぱねて喧嘩になっちゃう…とか?

うわっ、グレン様ならあり得る……

 

ちらりと横顔を盗み見ると、苦い顔をしてこっちを見ていたグレンと目が合った。

 

「おい、なんか失礼なこと考えていただろ」

 

残念王子について考えているときだけ話しかけてくるグレン様、案外強者だな。

というか―

 

「…グレン様のそれってどういう根拠をもとに言っているんですか?」

「アミスの顔だ」

 

うおっ、即答の上ズバッときたよ!

何気にダメージ大きいっス……

 

「考えていることがほぼ全部顔に出ている」

「…うッ」

 

…これ、レグルにもよく言われるんだよね…

変なこと、突拍子もない考えがいつも顔に出ている~って。

出会って少ししか経っていない人にも同じことを言われるとは……

 

「…私ポーカーフェイスを学ぼうかなぁ」

「いや、アミスはそのままでいいだろう」

「なぜ?」

「面白いから」

 

そういって悪戯っ子のように笑うグレン。

…おぉ、笑うと案外可愛いなぁ……

 

「グレン様、笑っていた方がいいですよ。そっちの方が可愛いです」

「おい、俺は可愛さなんて求めていないぞ」

 

不可解そうに顔を歪めるグレン様。

だから笑っとけって。

 

「愛嬌の話ですよ」

「……いや、例えそうだとしても何もないのにニコニコしていたらおかしいだろう」

「……………そんなことないんじゃないですか」

「長いッ!間が長いッッ!」

 

くだらない会話をしながらもたくさんの本棚を通過し、螺旋階段を上っていく私たち。

一応声の大きさは下げて話していますよ?

だって、文官の人とかたくさんいるんだもの。

みんな勉強熱心だよね~。

 

「……いつもはココにいるんだが……」

 

端の一角を見渡して眉を寄せるグレン。

わを、ただでさえ野性的な風貌をしているのにそんな厳つい顔しちゃ怖いですって。

 

「いませんねぇ…」

 

この一角にいるのは中年のおじさんと私たちくらいの少女の二人だけ。

ちなみにその女の子はすごく美人だ。桃色の髪に紫色の瞳をしている。

甘い髪色とは反対に、少しキツめの顔をしていてギャップ萌えッ!!

…瞳の色変えるとき、咄嗟に瑠璃色にしちゃったけど紫でもよかったかなぁ…

 

「おい、まじめに探せ」

「……至って真面目に探しています」

 

うん、真面目に探していたら美少女を見つけてしまっただけだ。

 

「今プレアに見とれていただろ」

「プレア…?あぁ、あの美人さんとお知り合いなんですか?」

 

プレアちゃん……うん、美人は名前も美しく感じます……

 

「………まぁな」

 

おや?何気なく聞いただけなのに反応が苦いぞ…?

何かあったのか…?

……はッ!もしかして片思いとかッ?!

 

「今お前が考えていることは絶対に違うと断言しておく。で、今アイツはいないみたいだが、どうする?」

 

私の顔で考えていることを読まないでください。

そして違うと断言されたし……ッ!

むぅ、残念だぁ。

 

「…では、温室へ行ってみましょうか」

「いいのか?他の本棚にいる可能性もあるぞ」

 

うーん…グレン様と戦っていたおかげで現在十一時三十分。

あと十分でレグルとの待ち合わせ時間になる。

レグルの方で見つけられていたらそれでいいんだけど……

どうしよう……

 

「やっぱり温室へい…」

「あれ、グレンだ~!どうしたの。ここに来ているなんて珍しいね」

 

私の声を遮って、背後から明るい声をかけられた。

振り返ってみると、鮮やかな青緑色の髪をした少年がグレンに手を振りながら近づいてくる。

…グレン様の友達かな?

 

「あぁ、キース。兄貴を見かけなかったか?」

 

ニコニコしている『キース』君とは反対に相も変わらず仏頂面のグレン様。

友達の前でくらい笑えばいいのに…

 

「え、殿下?……今日は見かけていないけど」

 

グレンの言葉が衝撃的だったのか、眉を寄せて目を見開いている。

片眼鏡越しに開かれた瞳はついさっき見かけた紫色をしている。

―もしかしてカナストル王国で紫の瞳は珍しくないのか?

 

「…どうしたの、グレン。君が殿下を探すなんて明日槍でも降るんじゃないのか?」

「いや、探しているのは俺じゃなくてコイツ」

 

そういって親指で私を指すグレン様。

―本当に残念王子だな。

もうツンデレ拗らせたレベルの話じゃないよ。

人見知りなの?何なの。口悪すぎだろ。

 

「女の子…?本当に大丈夫?君が女の子を連れているなんて…あ、もしかして熱!?熱なのか…?」

 

そういうキース君は騒がしいな…そして、謎のテンション。

見た目だけだとクールで落ち着いているみたいなのに……変な子だぁ。

 

「いや、アミスは普通の女じゃないっていうか…まぁ、いい。とにかく、兄貴を見たか?」

 

おい、私が普通の女じゃないって辺り詳しく。

そしてそれを『まぁ、いい』で流すな!

 

「ぷっ?!げほん、ううん…今日は見ていないよ」

 

…?キース君、何故今吹いた?

 

「そうか…じゃあ、温室に行く。またな」

 

少し強引に会話を断ち切って来た道を折り返していくグレン。

………もう、残念過ぎるよ。

 

「あー、うん。またね」

 

そしてキース君はマイペースだな。

強引に話を切られたというのに不快そうな雰囲気を微塵も感じない。

それどころかニコニコしている…本当、面白い子だな。

 

っと、大事なことをグレンに伝え忘れていた。

 

「グレン様、温室へ行く前にバラ園へ向かってください。私の主と待ち合わせをしているんです」

「…あぁ、わかった。さっき言っていた『レグル』とやらだな」

「はい、可愛いし優しいし強い、私の最高の主様ですよ」

「…嬉しそうだな」

 

フッとグレンが優しく笑った。

 

「……まぁ、私の友達でもありますからね」

 

思わずそう言ってしまえば、グレンは驚いた顔をした。

まぁ、普通主とメイド(護衛)を友達だという人はいないか。

 

「…友達……主と友達なのか……」

「…あー、まぁ…変わっていますよね?」

 

上手く言い訳が見つからなくて否定的になる。

 

「いや、いいんじゃないか?…そうだな、良ければ俺とも友達になってくれ」

 

……え。王子と、友達?

『そうだな』で済まさせる話か?

私とグレン様じゃ身分が違い過ぎるだろ…

いやでも、グレン様がいいって言うならいいのか……?

でもな……

 

「…わ、分かりました。今から私とグレン様はお友達です…ッ!」

 

半場自暴自棄になって承諾する。

「いやです」なんて言って不敬罪になりたくないしね。

 

でも、グレンの方を見て少し罪悪感を抱いてしまった。

だってグレン様、本当に嬉しそうに笑っているんだもの。

 

「あぁ、友達…だ」

「……っ!」

 

不覚にもグレン様に見惚れてしまっていた。

うぅ…今回ばかりはなんかすまん……

いや!これから誠心誠意グレン様と友達として向き合おう!

そしてあわよくばその残念な性格を少しずつ直していこう!!

だって本当はとっても良い子なんだからッ!!うん!!

 

グレンの様子に私も嬉しくなってしまったからだろうか。

後ろから睨んでくる紫の瞳に、私は気づけなかったんだ――

 

 

 

 

To be continued ………

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