転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~   作:れーと

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少女と戸惑い

「おーい!レグルーッ!」

 

集合時間丁度、見慣れた亜麻色の髪を見つけて手を振る私。

隣でグレン様が苦笑いしているのには無視だ、無視。

 

「あぁ、アミス……って、え?そ、その子は…?」

 

早速隣にいるグレン様に気づいて困惑するレグル。

ふっふっふ~、聞いて驚け。

 

「カナストル王国第二王子の、グレン様です」

「あぁ、グレンだ。よろしく」

「あ…はい、よろしくお願いします…?」

 

おや、まだ困っているぞ…?

そんなに困惑することでもないでしょうに。

 

「本当アミスって少し目を離すだけで、何かやらかすよね」

 

はぁ、とため息をつきながら言うレグル。

 

「…人をトラブルメーカーみたいに言わないで。トラブルを起こすんじゃなくて、トラブルが近づいてくるの。今回だって、窓から飛び降りたらグレン様に会っちゃっただけなんだから」

「いや、ソレ自分からトラブル起こしているよ。ってか何やっているの?!普通に階段で降りようよ。何で窓から飛び降りたのさ!」

「そっちの方が近いかな、と」

「いや、家ならまだしもココ王宮だから!変な行動しちゃダメでしょ!?」

「変な行動じゃないわ!窓も交通手段の一つよ!」

「…ぶっ、あはははははははははは!」

「「え?」」

 

突如響いたグレン様の爆笑にレグルと顔を見合わせる。

 

(レグル、何か変なことしたかしら?)

(…していないと思う、よ…多分)

 

アイコンタクトを取ってグレンに視線を戻す。

 

「あのー、グレン様?大丈夫ですか」

 

まぁ、グレン様笑い過ぎて呼吸困難に陥っているんですけどね。

うん、コレ駄目なヤツや。

レグルと二人で呆れた顔を張り付けて約二分後、ようやくグレン様の笑いは収まった。

 

「はー…笑った、笑った」

 

本当、めっちゃ笑っていたね。オーバーってくらい。

 

「お前ら、本当に面白いな」

「「…そうですか?」」

「あぁ、変わっている」

「いやいや、そんなことないですよ」

「…アミスに限っては同意見ですね」

「ちょ、私は至って普通よ!?」

「「どこが!!」」

 

全て…かな?

って、今はそれどころじゃないんだったよ!

 

「レグル、その様子だと殿下はいなかったのよね?」

 

…これは立場が危うくなって、話題を変えたわけじゃないんだからね?

 

「え、あ…うん。残念ながら見つからなかったよ」

 

申し訳なさそうに目を伏せるレグル。

…私も見つけられなかったのだから、落ち込まないでッ!

 

「残り時間は二十分…やっぱり、温室へ行ってみましょうか」

「そうだな。残るはそこぐらいだ」

「じゃあ、グレン様!案内お願いします!!」

「ちょ…アミス!?」

 

何故かレグルが慌てている。

…私、変なことした?

 

「あぁ、分かった。ついてこい」

「え…いいんですか?」

「ほら、行こう?レグル」

「……僕がおかしいのか……?いや、そんなことは……」

 

隣でレグルがぶつぶつ言っている。

………レグル、大丈夫か?

 

 

**

 

 

少しずつ変わっていく景色を見ながら考える。

 

殿下ってどんな人なんだろう。

ゲームでは天才肌でなんでも出来ちゃうから、何も楽しむことが出来ない子って風に描かれていたな……

そのせいもあって大体が無表情なんだよね。

 

…ん?無表情……?

そういえば、ゲームの途中に王子の過去の回があったな。

 

確か…かつて存在した何とかって兵器を蘇らせようとしていた伯爵の企みに気づいて、どうにかしようって奮闘するんだよね。でも中々証拠が見つけられないんだ。

それで現場を押さえようって、『頼りになる子』にヒントだけ置いて一人で温室下の地下室へ向う。でも証拠を掴めないまま伯爵に見つかっちゃって、逆に捕らえられてしまう。それで五日くらい監禁された後に一人の少女が伯爵を捕まえてくれて、やっと日常に戻ることが出来るんだ。でも、監禁された恐怖は消え去らなくて無表情になっちゃうんだっけ。

殿下も大変だなぁ……

 

あ、そういえばこの事件で一人の攻略対象と仲違いしちゃうんだよね。

えーっと…何とかっていう強い公爵家の子。

王子を救う剣のはずなのに、気づけなかったって自分を責めちゃうんだよね。

しかも、その子が殿下が唯一ヒントを残した『頼りになる子』だったから尚更。

 

そういえば、私その子のルート好きだったんだよな…

紅い瞳をしているせいか多くの人から避けられて生きてきて、本当は辛いはずなのにいつも頑張って笑っているんだよね。

それを知ったとき私の方が泣きそうになっちゃって――

うわぁ…懐かしいな。

そうそう、二人が仲直りした時のスチルなんて本当に素敵で……

 

―あれ、どうしてだろう。

体が震えている……

あはは…変なの。

 

ねぇ、もう逃げるのは止めなよ。

…本当は分かっているんでしょう?

 

ううん、違う!

ここは、そっくりな世界ってだけ…!

そう―ッ!違うわよ!違う…ッ!

 

「アミス、温室が見えてきたぞ?……アミス?」

「―ッ!………何でも、ない…」

「……?」

 

グレン様とレグルが心配そうにこちらを向く。

大丈夫だ、と微笑めば彼らは再び温室へ向かって足を進めた。

 

そうだ、違う。

乙女ゲームの世界にアミスなんてキャラクターいなかった。

だから、温室へ行けば殿下がお茶を飲みながら微笑んでいるはず。

 

「失礼しまーす……あれ、ココにもいねぇな…?」

「…!?」

 

適当な挨拶をしながら温室へ入るグレン様。

…王子様がいない……?

 

「あれ、机に何か置かれているよ?」

 

…まさか。

 

「えーっと…?『水の双子に眠るのは失われし古の力』………なんだこれ」

「―ッ!?」

 

『強い公爵家の子にヒントを置いておいた―』

『イベント開始は十歳の春―』

『双子の像を動かした下にある秘密の研究室―』

『水の双子に眠るのは失われし古の力―』

 

ねぇ、もう認めなよ。

私の中の誰かが言った。

 

そっか。

ココは乙女ゲームの世界なんだ……

 

ずっと逃げていたくせに、危機に瀕せば簡単に現実を認めた。

私って案外薄情だな。

 

…ねぇ、殿下を救いたい。

どうすれば良い?

どうすればみんなを幸せにできる?

アミス、考えなさい―

〈氷の戦姫〉に不可能なんてないのだから―ッ!!

 

「…レグル、グレン様。聞いてほしいことがあるの」

 

覚悟を決めろ、私!

私にあの子の未来がかかっているんだ…ッ!

 

「…うん。なんでも言ってアミス」

「何か気づいたのか?言ってみろ」

 

大丈夫。大丈夫だ。私。

二人を信じろ。

決して長いとは言えない付き合いだけど、信じるんだ。

大丈夫、大丈夫……

 

「あのね…実は―ッ」

「「「!?」」」

 

その時だった。

 

どかあああああああああんッッッ

 

そんな衝撃音と共に、温室が大きく揺れた。

 

「「!?」」

「…ッ!」

 

やばい!もう時間がない!

 

『世界が揺れたかと思うほどの衝撃を受けて、ソレは姿を現した。そう、これが伯爵がずっと望んでいた古代の兵器―』

 

頭に浮かぶのは王子が伯爵に見つかってしまう、その場面。

 

「!?アミス…ッ!?」

「おい、アミス!!」

 

二人の悲鳴帯びた声を背に聞きながら、私は噴水へと駆けて行った――

 

 

 

To be continued………

 

 




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