転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~   作:れーと

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少女と戦闘

 

「おい!そこで何をしている!」

 

えーっと、親睦会…かな?

ラヴィルとグレンとの友情を深めていましたよ。

え?羨ましい?はっはっはー、そうだろう、そうだろう。

 

「…無性にイラつく顔を止めろ、小娘」

 

…なんか怒られてしまった。

というか、前世で二十五歳、三千年前に十八歳、今十歳…計五十歳越えの私を小娘…

面白い冗談だね。

 

「…ハーヴェル伯爵」

 

私が心の中でピッカリオジサンを貶していると、徐にラヴィルが口を開いた。

 

へぇ、この人が噂の伯爵なのか…うん、ピッカリだ。

どこがとは言っていないよ?ここ大事。

 

「先ほど私に襲い掛かってきた軍用殺戮兵器について、詳しいお話を伺っても?」

 

ラヴィルの翠玉の瞳が伯爵を見抜く。

 

「―ッそれ、は…」

 

言葉に詰まらせて二、三歩退いてしまう伯爵。

 

うん、ラヴィルの威厳はすごいからね。

そうなってしまうのも無理はないかな。

 

「一つ、貴方に確認します」

「……」

「伯爵は確か、ゲルバニアとの外交を中心的に活動していらっしゃいますよね」

「…!」

「そして先日ゲルバニアの外交官が変わられた、と耳にしました。そして、そのせいで外交が上手く行っていない…とも」

「……」

「まさかとは思いますが、貴方はあんな武器を作り出して、ゲルバニアと戦争をするおつもりだったのではないでしょうね?」

 

つまり、外交が上手く行かなくなったことに腹を立てて、ゲルバニアにあの兵器を送り込もうとした…ってことだよね。

そして兵器を送り込んだことがバレたら、もちろんカナストルとゲルバニアの全面戦争になる。

世界三大国が戦争になったらその被害は計り知れない。

…世界中を巻き込んだ第二次世界大戦になる可能性もある。

その上、平和条約を破ったのだからカナストル王国は『裏切り者』のレッテルを張られる。

 

ラヴィルはそれを止めたかったのか……

最近の十才はすごいなぁ。

前世だったらあほ面して缶蹴りしていたよ。

 

「……に」

「?」

「…お前にッ、何がわかるッッ!!」

 

伯爵は、ばっと真っ赤な顔を上げて捲し立て始めた。

 

「温室で花よ蝶よと育てられたお前らに何がわかるッ!?私は外交が失敗したら、家族を養っていけないかもしれないッ!その恐ろしさがお前にわかるかッ?!お前らは絵本を読んでいるだけで、裕福な生活を送れるかもしれないがな…ッ!!私はそんな甘い生活を送っていな…」

 

伯爵の熱弁(笑)はそこで終了した。

何故なら私が頭から冷水をかけたから。

 

「「「……」」」

 

レグル、ラヴィル、グレン、伯爵に同情の目を向けるのはやめて。

私が悪者みたいじゃない。

顔を真っ赤にして吠えているものだから、暑いのかと心配してあげたのよ?

…まぁ、私の大切な主が貶されているような気がしたからやっただけなんだけどね。

 

「お言葉ですがピッカリ伯爵?公爵家の子であるレグルでさえ、日々血のにじむ努力をしています。比喩でもなんでもなく日々の鍛錬で骨折なんて当たり前。それはこの国の上層に立つ一人として中層、下層の人の何十倍もの努力が必要になるからです。いつか命を懸けて、戦場の最前線に立ち、そして生き残るために」

「―っ!?」

「命を懸けているのは、みんな一緒です。公爵だの伯爵だの、関係ない。どれが外交だろうが、戦場だろうが意味ない。そんなことも分からないのに世界三大国の一つに戦争を仕掛けたい、だなんて貴方はバカなのですね」

 

戦争の恐ろしさを、彼は何もわかっていない。

生き抜くのがどんなに大変なのか。

明日も、明後日も、そのあともずっと戦場だと知ったときの絶望がどんなに大きいものか。

なんのために戦い、生きるのか分からなくなってしまう虚無感も。

転生してずっと戦場だと国への愛着など微塵もなかったから尚更ね。

両親からも「戦姫」と呼ばれる悲しさを、貴方は何も理解していない。

 

「……ッ、私は―ッ!」

 

冷水効果か、さっきより幾分怒りが収まった顔の伯爵へ、ラヴィルが冷静に告げる。

 

「…伯爵、貴方の身柄は拘束させていただきます。私を殺そうとしたこと、その罪が如何なるものかは分かりませんが、いず…」

「罪?…私は、牢屋へ行くのか?」

 

ピッカリ伯爵の顔が真っ青になった。

え、まさか考えていなかったの?

戦争を仕掛けようとしたり、牢屋へ行くことに驚いたり、とんだ阿呆伯爵だな。

 

ラヴィルも呆れて残念なものを見る目しちゃっているよ…

 

「はぁ…まぁ、戦争を仕掛けようとした上私も殺されそうになりましたから…」

「わっ、私は殿下を殺そうとはしていないッ!」

「でもな、結果論で言えば兄貴はアイツに殺させる寸前だった。アミスがいければ…兄貴は助からなかった…ッ」

「そっ、そんなッ!」

 

あ、あれも忘れちゃだめだね。

 

「あとは~さっきの『お前』とかも不敬罪になるわね。しかも、ダブル王子様プラス公爵家の子…この罪も大きいかもね」

「……うそだ」

 

ふっふー、残念ながら現実よ。

さて、主を貶めたのだからもう一押ししなきゃね。

 

「まぁ、これだけ罪を犯してしまえば、一生牢獄暮らしか最悪死刑ね」

「―ッぁ……嘘だ…嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だ、嘘だぁぁああああああッ!!!」

 

だから現実、本当だって。

十歳の殿下の方がよっぽど大人っぽいわね。

本当、こんな精神状態のおバカさんが戦争をおっぱじめたいだなんて、世も末ね。

 

「ラヴィル、うるさいから拘束しちゃっていい?」

「……そうだね。じゃあお願いするよ」

「!? そこを動くなッ!ガキどもッッ」

 

あちゃー、どれだけ罪を増やしたいのかしら。

伯爵…戦争を始めようとした罪どころか不敬罪で簡単に死ねるわよ?

それに、拘束って土魔法使えば出来るし、別に動く必要ないんだけど。

まぁ、面白そうだからピッカリ伯爵に付き合おう。

 

「これはさっきの兵器を始動さえるスイッチだ。ここには五十体しまわれている。一体ならなんとか出来ても、五十体いると無理だろう?」

 

…いや、今まで五十体どころか五百体相手にしたこともある。

でも…アレを使えないこの状況じゃ十体が限界か。

だからと言って、大人しく伯爵につかまってしまえばゲームと同じになるし…。

―まぁ、四人いるからお泊り会みたいになるかもしれないけど♪

 

うーん、考えるのも面倒だしスイッチ押さないようにして拘束しちゃう?

いやでも、ずっとここに兵器がしまわれ続けるのも物騒だよな。

それにこの計画には他の仲間が存在するはず。

そいつらを洗い出す前に兵器を手に入れられても迷惑極まりないし…

 

うん、コーロスちゃんは全員ここでヤっちゃおう。

 

 

「レグル、ラヴィルとグレンを連れて温室へ転移して」

「!?」

 

レグル達がここにいても特に問題はないけど、アレを使う姿を極力見られたくない。

もし万に一つ、千に一つ彼に拒絶されたら、私は……

 

「一度行ったことあるから出来るでしょう?そして温室にて待機」

「…アミス一人で、倒せるの?」

「当たり前よ。私は魔法の天才なんだから」

「……分かった。無事を祈っているよ〈転移〉」

 

レグル、グレン、ラヴィルの足元が光って―いなくなった。

 

「さて、ピッカリ伯爵。どうぞそのスイッチを押してください。押さないと貴方が死んでしまいますよ?」

「…ッ!言われなくても押すわ!来いッ、コロース君!」

 

…やばい、名前のセンスがほぼ同じなんだけど。

コーロスちゃんでしょ?なにコロース君って!

 

「じゃあ私も、相棒を呼ぼうかな」

 

膨大な力が迫ってくるのを感じながら、手首に着けている銀の腕輪に魔力を通す。

 

(久しぶり。元気にしていた?)

 

どくん、どくん、と脈を打つ。

 

(主ノ魔力ヲ確認。スリープモードカラ移行シマス)

「おはよう、三千年ぶりだね。ホロビーロちゃん」

(オハヨウゴザイマス、主。五十ノ敵兵ヲ感知、殲滅シマスカ?)

「うん、お願い。全武装装備、魔力チャージ開始!」

 

銀の腕輪の中心についた真紅の魔石が煌々と光り輝く。

懐かしいな…よくこうやって一緒に戦場を駆けまわったよね。

 

あ、そういえば天井落ちてきても困るし一応結界を張って置こう。

範囲はこのボスモンスターの部屋的空間全部でいいかな。

 

ぱっぱと半径三キロくらいに結果を張ると、男性の声が響いた。

 

「…な、なななななななんだッ!?ソレは!」

 

私の背に浮かぶ大量の大砲やら銃やら魔法発動装置やらを指さして震える伯爵。

えっへん、かっこいいでしょう?

 

あれ…?そういえば伯爵まだいたの?

ホロビーロちゃんとの感動の再開を邪魔しなかったことは褒めてあげるけど…

ここにいたらホーちゃんに殺されちゃうよ?

 

…どうせ大した魔法も使えないんだろうし、仕方ない。

 

「〈転移〉」

 

目標はラヴィルのところね。

雷属性の殻に転移魔法を包んで、伯爵に投げる。

伯爵に当たると殻が初めて空間魔法が発動する原理。

他人に魔法をかけるのって〈治癒〉くらいしかないから試行錯誤して作ったんだよね。

 

「さて、邪魔者もいなくなったし、ちゃっちゃと片付けますか!」

 

さて、私も剣で応戦しようかな。

 

〈マジック・ホール〉から取り出すのは魔石で出来た双剣。

剣に魔力を通すことによって折れなくなるし、炎を想像して魔力を通せば剣に炎が巻き付くっていう優れもの。

三千年前に鍛冶師さんに土下座して作ってもらったんだよね…

うん、今じゃいい思い出だぁ~(?)

 

剣を構えて状況を確認する。

私を取り囲むように並んでいる五十体のコーロスちゃん。

 

「じゃあ殲滅開始だよ!ホロビーロちゃん、冷却魔法!」

(了解シマシタ。殲滅、開始ィィィイイ!)

 

とりあえず今の魔法で第一線のコーロスちゃんが氷漬けになった。

はっはっはー、〈氷の戦姫〉復活じゃぁああああ!

 

「―フッ!」

 

自動で敵を滅していくホロビーロちゃんと合わせて私も敵を一閃していく。

十属性の超上級魔法を連射し続けるホーちゃん…

ちなみにホーちゃんが連発している魔法の魔力は全部私持ちです。

私が「おごるよ」って言ったら、いつも以上にバカ食いする阿呆後輩を思い出す…はぁ。

 

(目標残リ三十ニナリマシタ)

「了解ッ!私も魔法行くよッ!〈魔力変換〉」

 

説明しよう!

〈魔力変換〉とは敵の魔力を精力に変換させる魔法。

自分の魔力に変換さえると魔力貯蓄量に耐えられなくて、自分が爆発しちゃうからそこは注意しましょう!

私やレグルみたいな〈精霊使い〉は精力を使って魔法を発動させられるから、SSS級の魔法を使う前にこの魔法を使うと敵も弱くなるし、魔法は強くなるしの一石二鳥。

 

「からのーッ〈還元〉」

 

私を中心にして敵の足元に大きな魔法陣が出現する。

そして魔法陣はぐんぐん上に上がっていき―

 

(敵反応消失。目標全滅。主、オ疲レ様デシタ)

 

敵は微粒子となって消え去る。

 

「うん、ホーちゃんもお疲れ様……―ッ!?」

 

(主?)

 

「…ッ、大丈夫。十歳の体じゃホーちゃんの魔力に耐えられなかったみたい…っ。くぅッ、いくつか血管切れちゃっている……」

 

くそぉ…めちゃめちゃ痛い…

戦闘中に気づかなかっただけ不幸中の幸い…

というか、よくこんな状態で戦えたな、私。

あれか、火事場の馬鹿力ってやつなのか?

……いや、なんでもいい。

少し休憩してから自力で上へ戻ろう。

これ以上の魔力行使は死に繋がります、ハイ。

 

「―アミスッ!」

「え?」

 

聞きなれた声に振り返ると、こちらへ向かってくるレグル。

あれ、私まだホロビ―ロちゃんしまっていない。

私の背にたくさんの殺戮兵器が浮いちゃっているよぉ……ッ!

 

ていうか、敵滅したら戻るからこっちに来るなって―

いや、来るなとは言っていないや…待機って言ったんだ。

 

「血だらけじゃないか!僕が見ていた限り敵の攻撃に当たっていなかったみたいだけど…どうして?」

 

マジか…戦闘中からいたのか…

え、どうしよう。

ホロビーロちゃんのことなんて説明しよう。

っていうか、色々ヤバい場面見られていない?

戦場に立ったことないって言ったのに、戦い慣れし過ぎていた?

………本当に、どうしよう。

 

 

 

 

 

 

To be continued………

 

 




★アミス大ピンチッ!
次回正体はバレるのか…?!
それとも…?
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