転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~   作:れーと

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少女の会話

光が収まると、聞き慣れた声が闇に響いた。

 

『…アミス?おーい、アミスー?』

『おい、どうした?』

 

どうやら話しかけても反応のない私(分身)に違和感を覚えている真っ最中らしい。

 

ラヴィルとグレンは反応のない私に話しかけ続ける。

このまま見守っていても楽しそうだ。

…にしても、レグルは?いないのだろうか。

 

私がそう思った途端、レグルの声が魔石越しに聞こえた。

 

『ねぇ、これ…分身人形じゃない?』

 

…もう少し経ってから気づいてくれてもよかったんだよ?

にしても、良く分かったなぁ…成長したな、レグル。

 

「せいかーい!流石はレグル~!」

 

魔石に向かって話しかける。

 

『アミスッ!もう!どこ行っちゃったのさ』

 

うを、すごく心配をかけてしまっているらしい。

 

「ごめん、ごめん。ちょっと攫われちゃって」

『はぁ?もう、本当にいつも厄介ごとに突っかかっていくよね』

 

いや、今回はキースに巻き込まれただけだから。

悪いのは私じゃなくて、隣にいるコイツだからッ!

 

『というか、コレどうなっているんだ?』

『レン、今はレグルとアミスが会話中だよ』

 

まぁでも気になるよね。

この世界には〈電話〉ってないから。

 

「あぁ、これはね。人形の手首に青色の魔石が付いているでしょう?それが私の魔石と共鳴して、通話を可能にしているの。詳しいことは省くけど【空間魔法】【雷魔法】【闇魔法】【風魔法】【土魔法】を合わせているんだー、これ作るの結構大変だったんだよ~?」

 

造るのに丸々三か月使ったんだから。

 

『五属性の魔法使用を会話中続けるのは結構な負担にならない?』

「まぁそうかもね。でも、そもそも五属性使えるのが私とレグルしかいないじゃない?私やレグルにとってこのくらいの消費些細なものだから平気よ」

 

大丈夫、帰ったらレグルにも教えてあげるからね!

私が意気込んでいると魔石越しに呆れたような、諦めたような声がした。

 

『はぁ…それで、今どこ?』

「んー?荷馬車の中」

『………風景は?』

「空と木が見える」

『……………西に進んだんだね。了解』

「はぁ!?なんで空と木で分かるんだよッ!?」

 

いや普通にわかるでしょう。

キースってこういうところはまだまだなのね。

 

『え?アミス以外にも人がいるの?』

「うん、さっき一緒に習われた子供たちと女顔」

「おいッ!女顔はやめろ、銀髪女」

「はっ!文句はあの男たちに言うべきね。言い出しっぺは私じゃないわ」

 

売られた喧嘩は十倍にして返すからな。覚えとけよ。

 

『…それでアミス。僕たちはどうしたら良い?』

「……そうね。レグル、今〈転移魔法〉で何人まで運べる?」

『多くて十人かな』

「……最低でも無詠唱で二十五人。」

『……………ハイ』

 

ちなみに私は詠唱有りになるけど、王都にいる人間くらいなら全員余裕で運べる。日本でいえば首都圏内の人口の半分くらい。

この人数になると、流石にホーちゃん使うけどね。

 

「じゃあ貴方たちは事情を説明して、賊をいつでも捕らえられるように兵でも呼んでいて。あぁ、賊は私が潰すから戦闘準備はいらない。魔石越しに合図するから、そしたらレグルと兵は私を座標に転移して」

『了解』

『おい!俺たちは役目なしかー!?』

 

おう、グレンさん。

流石に王子を誘拐現場に連れてはいけませんよ。

 

「ラビとレンは兵への説得係。レグルは運搬係。兵は捕獲係。私は潰す係。妥当な役割分担でしょう?」

 

勝利に戦略は重要なのですよ!

 

『………分かった』

『じゃあアミス、怪我しないで気を付けね』

『というかアミスは世界を壊さないように気を付けてね』

 

おいレグル、か弱い乙女にそれは失礼だろう。

 

「じゃあ切るね。あとよろしく」

 

レグルのセリフに少しイラつきながら通話を終了する。

熱が収まっていく魔石を眺めていると呆れたような声で話しかけられる。

 

「…世界を壊さないようにって…お前何者」

「しがない公爵家のメイドです」

 

しれっと答えると、イライラした様子でキースは続ける。

 

「しかも五属性の魔法使いなんてきいたことねぇぞ…ッ」

「私は十属性の魔法使いです。五属性だけじゃありません」

「それこそおかしいだろッ!?今は四属性しか存在しないッ!だから俺の闇魔法だってーッ!」

「おかしくありません。ここに十すべての属性を使える私がいるのですから、闇魔法一つ使えたところで、異端でも、異常でもありません」

 

珍しく感情を露にするキースに至って冷静に告げる。

 

「……ッ!」

 

何を豆鉄砲喰らった鳩のような顔をしているんだ。

確かに特別属性は基本属性より威力が強い上、使い勝手が良い。

でも、だから何だ?

 

「しかも使えるといっても精々中級魔法でしょう?そんなもんで魔法を使えるなんて抜かさないでください。魔法への冒涜です」

「…宮廷魔導士でも中級魔法を使えるのはトップクラスの人間だけだぞ」

「じゃあ全員魔法師を止めるべきです。超上級を無詠唱で連発出来ないと使い物になりません」

 

…【雷属性】だけは詠唱必要なんだけどな。

あ、でも【氷属性】なら最上級魔法でも連発できるからね?

 

「…お前は出来るのかよ」

「できますよ、それくらい」

 

〈氷の戦姫〉をなめないでください。

伊達に戦場を駆けまわっていないんです。

 

「あーでも、今やってみろはダメですよ?賊を潰すときに見せてあげますから、少し我慢していてください。こんなところで魔法を使ったらユー君に不審がられます」

「…誰だ、ユー君って」

「誘拐犯のユー君ですね」

「……」

 

おい、その残念なものを見る目で見つめてくるのを止めろ。

私はネーミングセンス以外なら「残念なもの」じゃない。

 

軍用殺戮兵器、殺すから「コーロスちゃん」

自動敵殲滅兵器、滅するから「ホロビーロちゃん」

誘拐犯、誘拐するから「ユー君」

……結構良くない!?

 

「…お前って変わっているな」

「そうですか?普通ですよ。十歳の癖に猫かぶりを極めている貴方にだけは言われたくないですし」

 

えっと、腹黒口悪女顔中二病予備軍くん?

 

「……生い立ち上仕方なかったんだよ」

「へぇ、キースも大変なんですね。でもさっきの言い方だとキースが闇魔法使いだと知っている人は貴方だけなのでは?」

「………まぁ、な。今は俺とお前の二人だけだ」

 

今は…ねぇ?

 

「まぁキースのお家事情なんて知りませんが友として応援しています」

「いつ友達になったんだ、俺ら」

「友とは気が付いたらなっているモノですよ。まぁ強いているならば今です」

 

そうそう一緒に誘拐される仲なんだから。

 

「…やっぱりお前変わっているな」

「みんなか弱い乙女を捕まえて失礼ですね。貴方の言葉を拝借するなら生い立ち上仕方がなかったんです」

「世界を壊すか弱い乙女の生い立ちか?結構気になるな」

 

ふむ。

 

「…簡単に言うならば、三歳のころに敵地に放り込まれて、死に物狂いで強くなって、気が付いたらレグルに拾われていました」

「………」

 

なんだその顔は。

哀れな子猫を見るような目で見ないでください。

その癖してちゃんと苦笑を浮かべないでください。

 

それでも瞳の奥に悲しみが浮かんでいるのは、貴方の優しさ故なんだろうね。

 

「変に気を使わなくて良いです。今までの人生を振り返って後悔することも、今苦しいと泣くこともありません。今幸せならそれでいい。例えそれが血塗られた手で掴んだ幸せだとしても」

 

振り返って後悔しなければ、人生それでいいではないか。

今幸せならそれでいいではないか。

いつ死ぬかも分からない場を生き抜いた今だから言える。

 

「罪から逃げるのも、神に懺悔するのも、なんでも良いではないですか。ただ貴方が今幸せだと、自信を持って言えるなら、それで十分です。言えないなら何がダメなのかを考えて、動くんです。動かなくちゃ、何も変わりません。怖い何て些細な感情です。後々後悔する悲しみの方が、怖いではないでしょう?……だから、闇に溺れそうになったら言ってください。

 

       私は全力で貴方に光を、届けてみせる       」

 

 

彼のアメジストの瞳が大きく見開かれ「ひゅっ」と息をのんだのを感じた。

それでも私は彼の瞳を見つめ続ける。

彼がここから、消えてしまわないように。

この世界に縫い留めるように。

 

なんてらしくないことを言っているのだろう。

後々ベッドに埋もれて、悶えて、叫びたくなるようなセリフなのに。

 

でもこの平和な世界で自由自在に殺気を操って、心に闇を持った貴方を私は見逃すことなんて、出来るはずないんだ。

 

何時か自分が抱いた感情と同じ。

自分は他者と違う。

いつも誰かに傷付けされる。

それでも誰かを求めてしまう。

 

『お願いキース、その心のままに死なないで。』

 

友達になってしまったが故に、貴方を失いたくない私の自己中心的で自己満足な我儘。

勝手に扉こじ開けて、土足で入って、一方的に思いを伝えて。

我ながら酷いと思うが、それでもいい。

彼が闇から浮き上がってきてくれるなら。

 

 

**

 

 

きつく拳を握りしめ、顔を伏せて沈黙を保つキース。

暗闇のせいで彼の表情が全く窺えない。

一方で私は、ずっとキースについて考えていた。

『もしかしたら本当に余計なことだったのかも』とか『何を偉そうに言ってしまったんだろう』とか。

『光を届ける』と言っても私には側にいてあげることしかできない。

 

何分、何時間も悶々と思考に耽っていると、がこんと大きな音をたてて馬車が止まった。

 

「………着いたみたいですね」

 

人が動く気配がする。

直ぐにユー君たちがここに来るだろう。

 

だから、その前に一言。

 

「行きましょう?キース。貴方の希望を探しに」

 

闇があるから光があるのだと、貴方に知ってほしい。

何をすれば良いのか、まだ分からないけれど。

貴方の幸せは、私が絶対に守り切って見せる―

 

 

 

 

To be continued………

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