転生戦姫の恋事情。~転生して三千年、目覚めたら乙女ゲームが始まりました~   作:れーと

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遅くなり申し訳ございません<(_ _)>
★ラヴィレント視点になります


少年とお茶会(お披露目会)

「アミスがファルファード家の養子に…ですか」

 

王宮の図書館から戻る途中、宰相であるカエルム公爵に話かけられた。

最近仲良くなったキースと同じ、青緑色の髪にカエルム家の証である紫の瞳。

四十歳近くになっても彼の美貌と片眼鏡の奥の鋭い光は、衰えることを知らないらしい。

 

「はい、三日後のお茶会でアミス様のお披露目をするそうですよ」

「…へぇ」

 

なるほど、だから最近レグルしか来なかったのか。

それに彼がニヤニヤしながら「お茶会楽しみだな」と言っていたのもそういうことだ。

 

「うん、分かった。ありがとう、カエルム宰相」

 

彼にお礼を言ってグレンの部屋へと向かう。

グレンは滅多に茶会や夜会へ参加しないが、レグルやアミスがいるならば別だろう。マナーだけなら完璧だし。

 

「グレン、いる?少し話があるんだけど」

 

もう夜も深い。

流石にこの時間は部屋にいると思うんだけど…

 

「んー?あぁ、兄さんか。どうした?」

 

よし、私の推理は当たっていた…ッ!

少しご機嫌になりながらグレンに言う。

 

「三日後の茶会について話があってね」

 

つい最近まで入ったことのなかった部屋に入る。

こうしてグレンと普通に会話できるようになったのも、今五体満足でここにいるのも、全てあの少女のお陰だと考えると何だか胸が暖かくなった。

 

 

**

 

お茶会当日。

 

ファルファード家の養子に興味を持った大勢の貴族が、二人の到着を心待ちにしていた。

少し耳を澄ませば『ファルファード家に取り入るチャンスだ』とか『うちの子と仲良くしてもらわなくちゃ』とか自己中心的な馬鹿馬鹿しい策略が伺えた。

…貴族社会の筆頭である私がそんなことを言うのも変な話だと思うが。

 

そして少し経った頃―

ざわり、と空気が動いた。

全ての人の視線が入口の方向に釘付けになっている。

そしてその横顔は老若男女問わず夢見心地に紅潮していた。

 

「…あれは……」

「あぁ、アミスとレグルが着いたらしいぞ」

 

グレンの言葉を聞いて私も視線を動かす。

 

「……ッ!!」

 

視線の先には一組の男女。

しかし彼らの周りだけ空気が変わっている。

妖しい美しさと神々しさを持った少女はさも月の女神の様で、エスコートしている少年はその亜麻色の髪と顔立ち、オーラも相まって太陽の使いの様。

二人を見ていると神話の一頁を覗き見たような気分になる。

 

アミスは元から美人だとは思っていたが、少しめかしただけでここまでになるとは思っていなかった。

 

「あら、あの子がファルファードの養子ちゃん?随分と可愛いわねぇ」

 

母の言葉に現実に引き戻される。

危ない危ない。

思わず見惚れてしまっていたらしい。

 

「えぇ。それに彼女は伯爵の一件で軍兵器から私を助けてくれた恩人でもあるんです。この間は【緑の攫い手】という大山賊も一人で潰したんですよ」

 

後にレグルとキースから聞いた話だと、危うく世界崩壊の危機に面するところだったらしいし…。

 

「あら!あんなに華奢なのに!?ファルファードに入るからそれなりに剣の心得があるものだとは思っていたけれど…凄いわねぇ」

 

全くだ。

天は二物を与えずとか言うくせに、アミスは強いし格好良いし可愛いし美人だし……もうあの子は出来ないことも、苦手な物もないのではないかって思う。

 

アミスたちに視線を戻してぼーっとしていると、いつの間にか二人は目の前まで来ていた。

僕に目配せしてから、王妃である母に頭を垂れる。

 

「本日はお招きいただきありがとうございます」

 

挨拶を述べるのは事実上姉であるアミス。

彼女に合わせる形でレグルも礼をした。

 

「ねぇ、貴方が噂の少女なのよね?」

 

一応礼儀として確認する母。

しかしその横顔が幼い少女のように輝いていることを私は知っている…。

 

「えーっと、噂については存じ上げませんが…初めまして王妃様。ファルファード家が長女になりました、アミス=ファルファードと申します」

「えぇ初めまして。養子に入ったのは一週間前だと聞いたのだけれど、随分としっかりしているね」

 

『しっかりしている』とはマナーについてだろう。

お辞儀をする角度も、話し方も、ましてや微笑み方も完璧な令嬢である。

まるで何年も貴族令嬢をやっているみたいだ。

 

「はい、お義父様が急に言い出したのは大変でした」

「ふふふ、困ったことがあれば直ぐに相談してね。あら、そろそろラヴィルとグレンの我慢の限界みたい。別日にお茶のお誘いをさせてもらうわね」

「はい、楽しみにしています」

 

あらら、母上に気に入られてしまったかぁ…

まぁ、アミスならなんとかするだろうけど。

 

「ラヴィル、グレン。お久しぶり」

 

母上から離れて、人気のない一角を占領する。

私たちにたくさんの視線が集まっていることは全員無視。

そりゃ、噂の美少女公爵令嬢とダブル王子、イケメン公爵子息がいたら仕方がないんだろうけどさ。

 

「あぁ、一週間ぶりだね。アミス」

 

ふわりと微笑んだアミスにつられて、私も微笑みながら挨拶を返す。

いつもは仏頂面のグレンも、今はどこか嬉しそうにしていた。

 

「貴族令嬢って大変なのね。基本的なことは出来るようになったけれど、刺繍やダンスより剣を振りたいし、魔法を使いたいわ」

 

なんていうか…アミスに同じ令嬢の友達が出来る日が来るのか心配になってきた…。

まぁ、この国は政略結婚よりも恋愛結婚を重視している面があるから、無理して交友関係を広める必要も…ない、のか?

 

「あぁ、そうだ。この前言っていた槍斧(ハルバード)、基本的な型なら出来るようになったぞ」

「おぉ、流石グレン。優秀ね。使い心地はどう?上手くいっている?」

「あぁ。剣よりも扱いやすいし、応用も効く。それにアミスの魔法のお陰で伸縮自在だしな」

 

アミスのアドバイスによって、グレンは剣ではなく槍斧という武器を使い始めた。斬る、突く、叩く、引っかける、など色々な使い方が出来る武器でグレンは実に気に入っている。

しかも、本来二・五メートルほどある槍の形をしたソレは、アミスの魔法によって伸縮自在で持ち運びも楽なのだ。

 

「そっか~、じゃあ今度手合わせしよう。型の応用の仕方を実践で教えるわ。あ、ラヴィルは?光魔法ある程度使えるようになった?」

「あー、うん。中級魔法までなら詠唱ありでなんとか」

 

私もアミスに護身用の魔法とレイピアを教わっている。

「もし一人になってしまっても、本当に助けたいものを助けるために」と言われては、習わない訳にはいかなかった。

 

「うーん…分かった。ラヴィルの場合は魔法をレイピアに付与して使うから、その練習を始めようか。剣に常に魔法を付与しておくくらいの気持ちだから、頑張ろう!」

「……おー」

 

そもそも魔法剣なんて本の中の存在だからぁああああああッ!!!

という、ここにいるアミス以外四人の心情は見事に一致し…

え?四人?

 

「そう言えば二か月後のアレ。アミスも行くの?」

 

黒いタキシードに身を包んだ少年が彼女に問う。

 

「二か月後…?あぁ、ノトス王国ね。勿論行くわよ」

「ふぅん。じゃああっちへ行ってもみんなで遊べるんだ」

「うん、そういうことになるわね…って、キース!こんにちは」

 

何時の間にか輪に入っていた青緑の少年をアミスが笑顔で迎える。

コイツ見た目派手な癖して何故か存在が薄い時あるんだよなぁ。

 

「あぁ、こんにちは。今日は一段と綺麗だね、アミス」

「そぉう?ありがとう。私もこんなに綺麗なドレスを着たのは初めてだわ」

 

いや、キースはドレスの話をしているんじゃないと思うよ…?

あっ、レグルのその諦めたような苦笑いは経験済みってこと…?!

なんていうか本当、さすがアミスだ。

 

「いや、そういうことじゃなくて…」

「?どうし…」

 

アミスの疑問は途中で遮られることになった。

 

「あっ!あのッ!私伯爵家の…」

「ずるいわッ!ごきげんよう。よければあちらでお話…」

「そのドレス綺麗ですねッ。一体どこでおつくりに…」

「御髪も美しいですわッ!何か秘訣がおありになりま…」

 

キースが輪に入ったことにより、自分たちも会話に入れると考えたらしい。

何時の間にか遠巻きに見ていた令嬢、子息が私たちのもとに押しかけていた。

いや、超が付くレベルで無礼なんだけどね。

 

「あのっ!ラヴィレント殿下!!」

「グレン様!少しお時間よろしいですか!?」

「レグル様ぁ!今度の夜会で…」

「キース様ッ!少しお話が…」

 

押しかけている人の半分がアミスへ、残りが無駄にハイスペックな私たち四人のところへ来た。

 

「ちょッ!ちょっと。一気に話さないでッ!?」

 

初めての体験なのか慌てているアミス。

 

「はいはーい、なんだい?お嬢さん」

 

女受けの良さそうな作り笑いを浮かべて対応するキース。

 

「ヴァ―フリー伯爵だったよな?それで…」

 

そして反対に真面目な雰囲気を醸し出すグレン。

 

「あぁ、あっちで話そうか。ほら、飲み物をどうぞ」

 

男女関係ないレグル信者に囲まれるレグル。

男子からは強いと、女子からは王子様みたいだと人気なのだ。

 

「はい、分かりました。チェスキー侯爵様。是非あちらでお話しましょう」

 

そして来賓の対応に当たる私。

この話の続きはいつものお茶会でしよう。

 

暖かくなった風に吹かれて、そう決意した。

 

 

 

 

To be continued……

 

 

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