オーバーロード ~アルストよりの来訪者~   作:ヲリア

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傭兵団、始動!

「村長、あの者らに見覚えは?」

「ありません」

 

 

不審者が現れたとの一報から、村の入口でその真偽を確かめようとした村長と、見かけ上の戦力として後ろに控えていたレックスたち。

現れたのは鎧を身にまとった騎士たちで、村長には見覚えないようだ。騎士たちは村長と、その後ろにいるレックスたちを見つけると、武器を構えながら問いかけてきた。

 

「貴様らは王国の冒険者か!」

「そうじゃないけど、そもそも王国って?」

「レックス、村の者たちから地理情報は聞かなかったのか?ここ、カルネ村は王国の領地だ」

「ふん、おおかた旅人と言ったところか。ならば村から出ていくことだな。村人以外の命を刈り取る必要はないからな」

 

指揮官らしき人が指示すると、周りの騎士たちが火矢を構え始めた。

 

「!カルネ村に何をするつもりだ!」

「我々は鮮血帝の命によってこの村を焼き払いに来たのだ。貴様らはこの村に偶然立ち寄った旅人に過ぎないのならさっさと逃げることをおすすめするぞ。まあ・・・」

 

そう言うと指揮官らしき男はレックスたち、それもホムラとヒカリ、カグツチといった女性らをいやらしい目で見つめながら言った。

 

「そこの娘たちをやるというのなら、せめて苦痛なく滅ぼしてやろう」

 

そう言うと横にいた男・・・副指揮官であろうか・・・が困ったような顔を手で覆った。

 

「こいつぶっ倒しちゃお、レックス。話はそれからでいい」

「何が鮮血帝の命や。上の人の命令だったらなんだってするんか、自分」

「レックス、やつの言うことに耳を貸す必要はない。『せめて苦痛なく滅ぼしてやろう』、だと?薄ら笑いしながら人を殺そうと言う輩なぞ何を言っても信用ならん」

「やっつけちゃうも!」

「カルネ村はオレたちにメシと寝る場所をくれた場所だし、見知った人たちを襲おうなんて許さないぞ!」

 

 

--------

 

 

私、ガゼフ・ストロノーフは急いでいた。なんでもリ・エスティーゼ付近の村々を襲っている帝国騎士を目撃した、と。

貴族たちは多少国民の数が減る程度だと、物事の重要性を理解せず、これまでと同じ税収を得ようとしている。

働くものが一人でも減った状態でこれまでと同じ量を維持しようとするなら、一人ひとりにかかる負担は倍増する。ましてや、隣村が滅んだから、その村が今まで納めてきた税のぶんだけ金を払えなぞ、だれが納得できるだろうか。

ゆえに私ができることは唯一つ。速やかにそれを退治することだ。ただし、その程度の輩に最強装備は必要ないとのことで、満足な装備は与えられていない。正直、貴族たちにきな臭いところがあるが・・・そうであっても、帝国と共謀して自国民を殺すような貴族がいるだろうか。・・・考えたくもない。

 

次はカルネ村だが・・・見られているな。村の方角・・・ということは、彼らはまだ生きているということか!間に合ってよかった。

あれは村長と・・・ここらでは見慣れない格好の者たち。どうやら冒険者か旅人の助力を得たようだな。

 

「皆!生きている村を見つけたぞ!」

 

私についてきてくれた戦士たちの顔に活気が戻る。無理もない、ここまで休憩もなく駆けてきて、その上道中にあった村全てが壊滅していた。やるせない気持ちにもなっていただろう。

 

「おまえたちは何者だ!」

 

村長の後ろにいた少年が声を張り上げて話しかけてきた。かなり警戒されている・・・もしや、すでに帝国騎士に襲われた後なのか!?であれば我々がその仲間だと疑われるのも仕方ない。皆傭兵団のように統一感のない軽装で来ているから騎士とは思われないにしても、彼らにとって害するものであれば皆同じく敵だ。

 

「私は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフである!このあたりに出没している、村を襲う賊を追っているところだ!敵意はない!」

「村長、この人は本当に王国戦士長なの?」

「い、いいえ、私は名前はしっていても顔までは知らないので・・・」

「ならば彼の言うことを裏付ける証拠はないということか」

 

すぐさま馬から降りる。言葉で説得するより前に行動するべき場面だとわかったからだ。

 

「あなた方がこの村を守ってくれたのだろう?感謝する」

「当然のことをしたまでだよ!」

「眩しいものだな。我々こそ民を守るべき存在だと言うのに、場合によっては目の前に助けたい人がいても力になれないことがある。君のような人間が世界に溢れていてほしいものだ」

「へへ・・・照れるなぁ」

「世辞はそこまでにしてもらおう。あなた方は先に我々が戦った鮮血帝の騎士となにか関係があるのか?」

「やはりそうであったか。私はリ・エスティーゼ王国より命を受けてこのあたりの村を襲っている帝国騎士を退治しにきたのだ」

「ほんならあんさんの仕事を奪ってしもうたってことやな。ワイらがおらんかったらこの村滅んでたで」

「それは本当に申し訳ないと思っている。間に合わなかった我々をどうか許してほしい」

 

頭を下げる。副隊長やラナー王女からは、王国戦士長がそう簡単に頭を下げるなと口酸っぱく言われているが、気持ちを伝えたいのなら深いことを考えずにそうするべきだと私は考えている。

 

「許すも何も、オレたちは怒ってるわけじゃないし、このくらいどうってことないよ!」

「そうそう、メレフは仕事柄はっきりさせたいのはわかるし、亀ちゃんも当たりが強すぎ。そんでもってレックスは考えなさすぎ!」

「ごめんニア、でもうまくまとまりそうで良かったよ」

「では帝国騎士を引き渡してくれるだろうか。我々が倒したわけではないが、対象がいなくなったという証がほしい」

「いいんだけどさ、私達いま根無し草っていうか・・・とりあえずカルネ村に住まわせてもらう予定だけど、現地のお金がないんだよね」

「わかった。私の裁量で出せる分だけ出すことを約束しよう。ただ今は軍事行動中なので持ち合わせがない。王国についたら私の名前を出してくれ。すぐに駆けつける」

「ニアったらがめついも!」

「もらえるもんはもらうべきや。特に金が無いときはな」

 

根無し草、つまり所属が決まっていないということは、彼らは冒険者ではなく旅人であったか。帝国騎士を下したその実力次第では王国にスカウトするのもいいかもしれん。しかし少年少女から大人まで、はては人間と亜人に獣まで、バラエティに富んだパーティだな。

 

「隊長!周辺を警戒していた偵察員からの報告です!」

「どうした?」

 

彼らに聞かせるべき話題ではかもしれん。

 

「はい、四方に出歩かせた偵察員が今戻ってきたところ、どの隊員も天使を召喚している人影をみて、危険を感じて戻ってきたと。おそらくこの村は包囲されています!」

「なんだと?」

 

天使を従えるほどの練度を持つ隊を村を包囲するために使う?このカルネ村になにかがあるとは考えにくい。ならば狙いは・・・私か!

 

「なんかあったんか?」

「隠す必要もあるまい。どうやら私の命を狙いに刺客が来たようだ。すでにこの村は包囲されている。このまま私だけが逃げればこの村は犠牲になるだろう」

 

だから、打って出る。私が村を見捨てることができないことは相手にわかられているだろう。そこまで用意周到な相手であれば、私の能力以上の編成を用意しているはずだ。ならば・・・

 

「単刀直入に言おう。雇われる気はないか?」

「相手の規模はわかっているのか?」

「正確なところはわからん。おそらく、我々だけでは勝てないと言ってもいいだろう。相手は我々を殺しに来たのだからな」

「傭兵ってことならオレたちに任せて!元々傭兵団もやってたんだ。腕には自信があるよ!」

「はは、それは頼もしい。ちなみに団長はそこの隻眼の男か?」

「隻眼の男、なんかかっちょええな。まあハズレや、ワイは後から乗っかったクチやからな。正解はこっち」

「オレの名はレックス。フレースヴェルク傭兵団の団長を受け継いだんだ。高くつくからね!」

「う、うむ、よろしくお願いする」

 

なにか複雑な事情・・・前任者が教育中に殉職したというあたりか。

正直協力は得られないと思っていたが、幸運であったな。名前に聞き覚えはないが、実績があるのなら頼もしいかぎりだ。

 

「作戦はどうする?」

「もちろん一点突破だ。包囲されている状況で村に危害を加えないようにするにはそれしかない。全速力で駆け抜けるぞ」

 

 

--------

 

 

「猛獣は檻に入った。だが奴は鉄格子を食い破り、その中の子を守らんとするだろう」

「ニグン隊長!想定通りガゼフらが向かってきます!」

「了解した。では迎え討つこととしよう、亀の頭を出させて首を刈るようにな」

 

ガゼフ・ストロノーフ。王国最強の剣であり、人類の宝。個の強さを議論するならば五指に入るだろうその実力は、味方になれば必ず人類救済の力になるだろう。

だが、彼に鮮血帝の10分の1でも、いや、せめて政治に少しでも関わろうという意志さえあればこんなことをせずとも良かったのに。

部下の手前態度に出す訳にはいかないが、できることなら彼を殺す任務など受けたくはなかった。だが、彼がいないほうが世界にとって都合がいいと上層部は判断したのだ。ならば私はそれに従うまで。

 

「報告します!先行して村を焼かせていた部隊員が帰還しました!この先にいるカルネ村にて冒険者と思われる集団と交戦し、敗北した模様!」

「ならばそいつらはガゼフと合流した可能性が高いな。王国のアダマンタイト級冒険者ではあるまいな?」

「はい、【青の薔薇】、【朱の雫】ともに別の任務に出ています。帰還した隊員も彼らではないと言っています」

「戦いにイレギュラーはつきものだ。彼らほどの実力者でない限り我々の敵ではないが、警戒はしておけ」

 

もし彼が助力を要請するとしたら、事情を説明し、自身が害される程の実力者に囲まれていると説明するだろう。彼は実直だからな。だからもし戦場に立つとするなら、それは殺される覚悟のあるやつらということだ。だからどんな善良な奴だとしても容赦しない。そして、油断はできない。我々が戦力を隠すように、世界には隠れた実力者なんていくらでも存在しうるのだから。

 

「見えてきました、ガゼフ一行です!」

「天使を散開させろ!間合いの外から弱らせるんだ!」

 

隊を固めて正面突破か、芸はないが力あるものにとっては王道こそ正しい道。あとは協力者がどこにいる?奴らの中に混じっているか、それとも囮か。

天使による包囲攻撃と魔法によって足を止めたガゼフが問いかけてきた。

 

「なぜだ!なぜ法国の人間が私を殺そうとする!?」

「貴様が死んだほうが後々人類にとっての利益に、未来の損失が少なくなると法国が判断したのだ。その理由は自分でもわかっているのではないか?」

「わかりたくもない!私は王の剣!ただそれだけだ!それだけでいいというのに、なぜそうなってしまうんだ!」

「わかろうとしないからこそ、貴様はここで殺されるのだ!」

 

ここまで愚直なやつとは、呆れを通り越して感心してしまうな。こちらの隊もかなり傷ついてしまったが、ガゼフはもう虫の息だ。

 

「ふん。カルネ村にいた協力者はどうした?姿を見せないということは、さしずめ村の守りを任せたといったところか?」

「ふっ、我々だけで勝てればよかったのだがなっ・・・」

 

「それだったら!」

「ここにいるぞ!」

 

ガゼフの隊員の後ろから天使を斬りながら何者かが現れた。こいつらがやつの協力者か!

 

「遅れてやってくるとはヒーローの真似事か?戦力の逐次投入は愚策だぞ」

「あの馬ってのに乗れるのがいなくてね!頑張って走ってきたんだ!」

 

馬を知らない?こいつらどこか別の世界からやってきたのか?

 

「ダブルスピンエーッジ!」

「ジャガースクラッチ!」

「ぐるぐるカッター!」

 

天使がやられるスピードが早い!そこそこできる奴らであったか。

 

「レックス!雑魚はワイらに任せろ!」

「だからそこにいる将を討つんだ!」

「わかった!そっちは頼んだ、ジーク、メレフ!」

「さぁ、おっぱじめるでぇ!」

 

 

--------

 

 

「烈火!」

超絶迅雷閃光斬(ダイナミックスパーキングソード)ッ!!」

 

メレフが攻撃を引き付け、ジークが相手を攻撃する。今回は回復役がいないが、二人だけでも十分に相手ができた。

 

「ぐぁっ!」

「ひるむな!魔法で迎撃するんだ!」

魔法の矢(マジックアロー)!」

「やらせるかよ!衝撃波(ショック・ウェーブ)!」

「俺だって!火球(ファイヤーボール)!」

 

陽光聖典の隊員らによる魔法の一斉射撃。第三位階を扱える魔法詠唱者(マジックキャスター)の総攻撃力に耐えられる者はいなかった。

 

「やったか!?」

 

その余波によって砂煙が立ち上り、陽炎によって空間が歪んで見えるほどの熱量を食らった相手は。

 

「その程度か?まるで当たってないぞ」

「メレフ様の玉の肌には傷一つつかせません!」

 

その全てが有効打とならず、さばかれていた。

メレフに同調したブレイド、カグツチのスキル、《ゆらめく炎》は射撃による攻撃に対する回避率を上げる効果を持つ。そこにメレフ本来の素早さによってほとんどの攻撃を避けていた。また、必中効果を持つ魔法の矢(マジックアロー)は威力が足らず、メレフの持つサーベルによって撃ち落とされた。

 

「ワイらもええとこ見せんとなぁ!いくでぇサイカ!」

「王子も無茶せんといてな!」

「轟力降臨!極・雷神斬光剣(アルティメットライジングスラッシュ)!...(かい)!」

 

ジークが大剣を思いっきり地面に叩きつけると、【極】の文字と共に周囲に電撃が流れ、陽光聖典の隊員は嘘のように吹き飛んでいく。

アルストにおいて雷轟のジークと呼ばれていた彼の実力は高い。かつてレックスたちがドライバーとしての経験が浅かったとはいえ、3人相手に腕試しを仕掛け、三度追い詰めた実績もある。

 

「決まったなっ・・・!」

「王子、後ろ、後ろ!」

「なんやサイカ、今はワイがキメてる最中やぞ?ボケる場面じゃ「ちゃうちゃう、背中のマントが!」って、あぁーっ!」

 

だが、なぜ三度も腕試しを仕掛けることになったかというと、持ち前の運の悪さゆえにである。火球(ファイヤーボール)によって草に引火し、その状態でジークのアーツを受けた炎はその勢いを増し、マントを燃やすに至った。もっとも、原因として大きいのは、ジークがアーツのあとのキメポーズで動きを止めていたのが一番なのだが。

 

「おんどれぇ・・・ワイの一張羅に何してくれとんじゃあ!」

「それはただの腹いせ、ぐあぁ!」




はやくアインズ様出したい・・・
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