オーバーロード ~アルストよりの来訪者~   作:ヲリア

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背負った名前

「それでどうするの、レックス?アインズさん行っちゃったよ?」

「それじゃあ村にもどろっか」

「待て、目的を忘れているぞレックス。我々はガゼフ殿の応援に来たのだ、彼の安否を確認しなくては」

 

ニグンによる天使召喚からのバトル、アインズ・ウール・ゴウン襲来と立て続けにいろいろ起こったため、助太刀するべき相手を見失っていた。ひどく痛めつけられて地面に横たわっていたが、五体満足で息もあった。

 

「お嬢様、私の力をお使いください」

「わかってる、ヒーリングハイロー!」

 

ビャッコの武器、ツインリングに込められたエーテルをニアが回復アーツとして放つ。その力でガゼフ含め部下たちが立ち上がれるようになった。

 

「これは・・・回復魔法か。助かる」

「これくらいなんてことないよ。でも大丈夫?回復したはずだけど、まだ顔が青いよ?」

「ああ、傷は癒えたのだが・・・貴殿らは大丈夫なのか?あの強大な力を持ったアンデッドを目の当たりにして」

 

ガゼフはアインズ・ウール・ゴウンと名乗る者を恐れていた。それは人間を憎む存在であるアンデッドが王国を滅ぼすほどの力を持っていることに対して。もちろん、王に命ぜられればどんな相手であろうと立ち向かう。しかし、だからといって恐怖がないわけではないのだ。

 

「アンデッド?」

「おそらく、骸骨が動いていることに忌避感を覚えているのだろう」

「でもさ、オレたちの言葉をしゃべれて、オレたちの味方をしてくれたなら、別に悪いモンスターじゃないんじゃない?」

「いつも悪さばかりしているターキンのなかにも料理をがんばってるやつらもいたも!きっとアインズっていうのは特別なアンデッドなんだも」

「うむ・・・まぁ、そんな考え方もあるか」

 

考え方の違いというやつだろうか。ガゼフにとってはわかり会えない敵だとしても、レックスたちにとっては数あるモンスターの一つにすぎないのだ。そういえばレックスたちの顔つきをあらためて見てみれば、自分たちと比べてほりが浅いというか、平たい顔というか、この地方に住まう人ではないと思えてきた。そうであれば、広い世界、そのような価値観を持っている人間もいるのだと理解した。

 

「ともかく、礼を言う。だが私も急ぎこの地に来たのでな、十分な報酬を用意することができないのだ。もしよければ王国に同行いただけないだろうか?」

「わかった。でもオレたちの戦いでカルネ村に被害が出てるんだ。このままほおっておくことはできないよ」

 

村についたガゼフ一行。確かに村を包囲されたときに火矢を放たれたらしく、家の一部が焦げている。また、ガゼフらが到着するより前、すでにレックスたちが囮部隊と交戦したときにも被害が出ている。レックスたちは村を助けたいが、報酬を受け取るには王国に行かなければならない事情を村長に話した。

 

「・・・なるほど、状況は理解しました。ですが、村を襲う賊を退治してくれたおかげで私達は生きている。それだけで十分ですよ」

「できた人間だと思うが、為政者としては失格だな。こんなときは『おまえたちがいたから我々は襲われたのだ』とでも言ってしまえばいいのだ」

「言い過ぎだよ、メレフ」

「・・・面目ない。国のいざこざにあなた方を巻き込んでしまった。本当に済まないと思っている。レックス殿、貴殿らへの報酬はこの村の復興を成し遂げた後でも構わないだろうか」

「あんさんらの仕事は国を守るために戦うことや。こーゆーのはワイらに金でも掴ませて任せてしまえばええんや」

「しかし、それを依頼するだけの手持ちが今ないのだ。待ってくれるのであれば必ずや戻ってくると約束するが」

「どれぐらいで戻ってこれるも?」

「そうだな、片道10日、王へとお伺いを立てて正当な報酬金を受け取るまで1週間、合計1ヶ月といったところか」

「長いも!どうにからならないかも?」

 

さらにいえば、ガゼフ自身彼らの働きに見合うだけの報酬を得られるか心配なのだ。ガゼフのことを敵視している貴族を見ると、難癖つけて報酬を渋るどころか、ガゼフが嘘をついていると言って法国のことすらまともに議題にしないだろうと予測していた。だからこそ彼らをせめて証人として連れて行きたかったのだが・・・

 

「トラ、ジーク、お前たち言っていることがめちゃくちゃになっているぞ。せめて意見の統一をだな・・・」

「じゃあさ、フレースヴェルグの村みたいに私達と同行してないブレイドをおいておけばいいんじゃない?」

「それだ!ニア、ナイスアイデア!」

 

そう言うとレックスたちは「イダテンはご飯いっぱい食べるからダメだね」「メイは裁縫上手だったよね」「ヒバナちゃんは私と同じでお料理できますよ」「ユウオウのスイーツを食べれば子どもたちにも笑顔が戻るでしょう」などと議論を重ねると、ブレイドを顕現させた。

 

「ユウオウ、この村は襲撃で弱っているんだ。だからユウオウたちの力でこの村を復興してくれないか?」

「了解した。それでは部隊名フライング・マーフォーク、出撃する」

「頑張れよー」

 

次々と人員を生み出すレックスたちの様子に放心したガゼフであったが、マジックキャスターではない彼には「彼らの魔法ではこんなこともできるのか」と言う程度の認識しか持てない。魔力の消費なしに未知の強力なモンスターを生み出すその様は、見る人が見れば位階魔法では説明できないと理解しただろう。

 

「なるほど、その手があったか。ガゼフ殿、カルネ村の復興は彼らが代行する。あなたの顔を見るに、我々が同行しなければ都合が悪かったのだろう」

「感謝する。それでは共に行こうか」

 

 

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「うわっ、なんだあいつら・・・白い犬と丸っこいへんな使役獣にキャットウーマンの亜人に、やたらと露出度の高い女たちに・・・しばらく見ない間に王国はサーカス団でも雇ったのか?」

「そういえばお前たちは法国まで遠征していたな。その間にあいつらちょっとした有名人になってたんだよ。変わり種ばっかりだけどな」

「正確な人数はわからんが、かなりの大人数らしい。最初は十人一組のパーティとして登録してたんだが、外では別の仲間と協力していたとかな」

「どんな人数で受けようとも報酬の金額は変わらない以上、儲けは少ないだろうによくやるもんだ」

「賊の襲撃を受けたカルネ村を復興してんのもあいつらの一員だっていうぜ?もう冒険者じゃなくて傭兵団でも名乗ったほうがいいんじゃないか?」

 

事実、彼らはガゼフに言われるまでは「フレースヴェルグ傭兵団」を名乗ろうとした。しかし、国の外に彼らのような力を持つ団体があると貴族がいい顔をしないと説明されたので、今の形に落ち着いたという経緯を持つ。

 

「まあそう言うなって。あいつらが来てからずいぶんと治安が良くなったしな」

「あの大人数で全員が相当の実力の持ち主だから二人一組で依頼を受けても難なくこなしちまうし、それでいて高ランク冒険者サマみたいなプライドもねえからどんな地味な依頼も受ける」

「そのうち低ランク冒険者が食うための依頼がなくなるからって追い出したら、今度は王国中の住民を相手に慈善活動みたいなことまでするんだ。依頼を出す金が無い貧乏人相手にも物々交換で応じるあたりありゃ筋金入りだぜ」

 

この世界に来る前・・・アルストでも困った人を見かけたらすぐに助けていた。お金や貴重なアイテムをもらうため、だけではなく、かけた優しさがいつしか返ってくることを知っているからだ。

大人数の異種族混合パーティのため、登録当初は嫌な顔をされたものだが、その行動からだんだんと信頼に値する者たちだと判断されるようになった。その結果、短期間で銅、銀、金、白金と階級を上げていった。

そんな彼らのチーム名は・・・

 

 

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「『ビャッコ隊』は・・・いえ、私がリーダーの部隊ではありませんでした。ここは辞退しておきましょう」

「ふふっ、『ファイヤー勇者軍団』なんてどうですか?」

「なかなかインパクトがあるな、だがまだまだや。ここはワイの『ブレイズ・D・共鳴(レゾナンスオブ)巨神獣(アルスト)』なんてどうや!」

「なげぇよ!周りの冒険者たちは『漆黒の剣』とか『クラルグラ』とか『蒼の薔薇』みたいにシンプルで覚えやすいし、そんなんでいいんだよ」

「うーん、『フレースヴェルグ傭兵団』は却下されたけど、傭兵団がだめだって話だから『フレースヴェルグ』ならいいんじゃない?」

「そこまでいったら傭兵団もつけないとイマイチだも」

「新しい部隊名を考えたほうがいいだろう。レックス、なにかいい案はあるか?」

「オレぇ?うーん、目新しさでいえばジークの案だけど、やっぱり長すぎるし・・・そうだ!」

 

 

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「ただいま!次の依頼ある?」

 

 

「おかえりなさい、『アルスター』の皆さん!」





投稿が遅れてしまいましたが、ゼノブレイド基準で1話分をお送りしました。

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