桜が咲いたら、雪が…… 作:何故か外れる音
九校戦編 Ⅰ
神様転生の醍醐味と言ったら何だろうか。
当然の事だが、それは人によって変わることだろう。
神様から転生特典を貰うこと、自身の死因を知ること、神様をプリプリすること等々。
司波深桜として転生した私としては、プリプリすることもできたし、予想できない様な壮大な死を迎えた事を知れたりとまぁ良かった。
嘘である。
予想できない様な死などなく、突然の死を迎えた様だったが、プリプリさせて貰えた事もあり水に流した。
転生させてくれると言う話だったので、私は「魔法科高校の劣等生」の世界を指定した。
現代で育った私としては、現代と然程変わらない世界に転生したかったのだ。
勿論のことだが、身近な所で「さすおに!」を見たかったと言う願望も告げた為か、お兄様の双子の姉として転生していた。
確かに身近な所と言ったが、近すぎではないだろうか。
私としては、千葉エリカや西城レオンハルトと言った愉快な仲間たちに追加する程度でよかったのだが、神様が私の事を思ってこの立ち位置に転生させたと考えれば悪くは思わない。
では何故私が性転換することになったのかというと、転生特典に関係する。
転生特典を得る条件が性転換することだとは思いもしなかったが、性転換してよかったと今となってはそう思っている。
転生特典を得てよかったと言うべきか。
身近な所で「さすおに!」を見たいと言った以上、国立魔法大学付属第一高校に通うことが出来るだけの家柄に生まれることは決まっているも同然。
だが、四葉家に生まれたとなれば話は大きく違うモノになる。
司波達也の双子の片割れとして生まれるのだ。
もしかしたら二人で「分解」と「再生」を分かち合い、「二人はさすおに!」などというふざけた展開になっていたかもしれない。
それはそれで面白そうではあるが、司波達也の人生の難易度が跳ね上がったことだろう。
そんな面白い事になることはなく、私は私で異常な能力を手にすることができたのだからそれでよかったはずだ。
後、深雪とイチャイチャしても非常に仲の良い姉妹と見られて終わる。
まぁ、未だにそのような展開になっていないのだが、この話は後に回そう。
さて、そんな私が性を転換してまで手に入れた能力は、とあるシリーズの学園都市サイドの能力の詰め合わせである。
端的に言うと、一方通行や未元物質と言った数々の能力を頂いた。
サービスとして能力を色々と調整・改造して貰えたのも大きかった。
その内の一つが、幻想殺しの能力をこの身に宿しながら、他の能力を扱うことが出来るようになった。
もしそうならなければ、幻想殺しの能力のみを貰ったことになってしまい、また「さすおに!」を身近な場所で見ることが叶わなくなったことだろう。
魔法を扱うことも出来ず、銃を持ち出されでもしたらすべて終わりだ。
だからこのサービスは非常に大きな有益だった。
また、生まれてから数年して私は魔術サイドの能力も貰っておけばよかったと思ったということも伝えておく。
◇ ◇
二〇九四年
四葉家本家の応接室にて、深桜はとある女性と向き合い座っていた。
世界最強の魔法師の一人と目され、「極東の魔王」「夜の女王」の異名を持ち、外見年齢30歳でありながら既に44歳という年齢詐欺を行っている四葉家現当主四葉真夜その人である。
深桜の彼女に対する評価は、残念美人。
真夜に引き取られてから、数ヶ月の間私が母であるという主張を行ってきたのだ。
最初の頃は何を言ってるんだこいつは、という思いが強かった。
しかし数ヶ月に渡り事あるごとにその旨を主張してきた事と、偶然真夜の奇行を見た深夜の「真夜の事をよろしくね」という言葉と残念な妹をみた姉のあの表情は酷いものだった。
娘になんてことを頼んでるんだとは思いもしたが、真夜の今までの境遇を考えてみれば分かる…気もしなかった。
「深桜さん?どうしたの?私の娘になりたくなった?」
まぁ今ので分かっただろうがこの調子なのである。
最初の頃よりだいぶマシにはなっているのだ、これでも。
「そうですね、真夜さんにお願い事がありまして」
「お母様と呼んでもいいのよ?」
「……達也と深雪と同じ高校に進学したいのですが」
思わず目が死んでしまったが、深桜は気を取り直して会話を続けることにした。
深桜が真夜の事を叔母上、叔母様と呼ばないのは、真夜に「そう呼ばずにお母様と呼んで」と駄々をこねられたことがあり妥協点としてそう呼ぶことにしている。
その妥協は真夜にとって、深桜がいつの日かお母様と呼ぶ日がくるのでは!?と期待を煽る変化だった。
そんなことを知らない深桜は、いつになったら治るのだろうかと思いながら、真夜を見つめ直す。
「……残念だけどそれは無理よ。達也さんと深雪さんは国立魔法大学付属第一高校に進学する予定なの。魔法が使えない深桜さんでは通うことはできないわ。だから諦めて私をお母様と呼びなさい」
「何故その結論に至ったのか分かりたくないのですが。それはさておき、私、魔法使えますよ?」
「貴女の
何故
深桜が変に名前を付けられるのを嫌ったと言うのと、今の真夜を見れば分かると思うがこの時からその片鱗は現れていた。
それはさておき、深桜は自分がその普通の魔法を使えることを教えるため、自身の手前のテーブルに置かれている湯呑を魔法で手元に移動させて見せる。
「ほら、使えますよ?」
深桜はにっこりと微笑み、湯呑を口にした。
深桜は真夜が何故私が魔法を使えないと思っていたのかを考えるも全く思い当たらない為、取り合えず置いておいておくことに決めた。
一方、深桜が魔法を使えないと思い込んでいた真夜は、深桜がしてみせた光景に驚き目を見開き固まってしまうが、すぐに復帰を果たした。
「……そう、魔法使えたのね。そう。…お母さん知らなかったわ」
深桜はツッコミたい気持ちになるが、一高に通えるかどうかが重要なのでスルーすることに決めた。
「それで私もその高校に通ってもよろしいですか?」
「…そうね。これから勉強すれば受験には間に合うと思うわ」
「じゃあ!」
「ただし!今、私のことをお母様と呼ぶことっ!ただし、一度だけでいいわ。無理やり呼び続けさせても嬉しくないもの」
目に見えるほど目を輝かせながらふざけた事を抜かす真夜を見て、深桜は再び目が死んでしまうが、最後の言葉を聞いて気を持ち直した。
このわずかな時間で二度目とはやりおる。
深桜は目を閉じ、深い呼吸を一度行いながら決心し、目を開き真夜の目を見つめた。
「…お母様、私も達也と深雪と同じ学校に通いたいです」
「ぐふっ、いいわよ!!」
深桜は聞こえちゃいけない声が聞こえた気がしたが気のせいだと処理した。
何やら真夜の動きがうねっていて何とも言えない気持ちになった深桜は真夜にお礼を言い、そそくさと離れに帰った。
その様子を見送った真夜はにやけながら葉山を呼び寄せた。
葉山は四葉家先代当主の頃から四葉家に仕える執事で、執事長を務め入る人物である。
「葉山さん!空いている時間は深桜さんに魔法に関することを教えてあげてくださる?」
「畏まりました」
「あら、理由は聞かないのね。別にいいのだけど」
「真夜様のご様子を見れば何があったのか予想は付きますゆえ」
「それもそうね。さすが私の娘だわ!」
深桜と同様に葉山は真夜の暴走を見慣れているので、あえて何も言わずこれからの予定を組みなおす作業に戻って行った。
この時から一週間たった後、葉山によって魔法教育と受験に必要となる教育が深桜に施されたが、深桜の学習能力が非常に高くその教育は葉山の予定より早く終わることとなった。
その時再びとある女性が暴走したそうだが、深桜の耳に届くことはなかった。
◇ ◇
二〇九五年 七月中旬
ここ国立魔法大学付属第一高校にて、先週一学期定期試験が終わり、生徒たちの意識は八月に開催される全国魔法科高校親善魔法競技大会、通称九校戦へと向けれられた。
話が飛んだと感じるだろうが、司波深桜はこの三ヶ月の間何もなかった。
深桜は達也と深雪に黙って第一高校を受験し、見事合格した。
普通であれば、二人にもそのことを伝えるべきだろうが、四葉家現当主四葉真夜が黙っていた方が面白いとの発言があり二人に伝えることをしなかった。
二人の実姉とは言え六歳の頃から離れて暮らしていた深桜が、魔法を使えないと教えられていたであろう深桜が、九年ぶりに突然家にやってくるのだ。
一高の制服を引っ提げて。
二人がどの様な反応を示してくれるのか深桜は楽しみにしていたと言うのに、残念ながら二人には不興だった。
しかしよく考えてみれば、それも仕方ないと言える。
深雪は達也との二人っきりの生活が壊されることになり不機嫌になる。
その不機嫌さは酷く、同じ家で暮らしているにも拘らず会話がなく、さらに言えば避けられている様に感じる。
この家に引っ越してきてから入学式までの間は、距離感を計っていると思うことでやり過ごしたが、クラス分けで深雪と同じA組に配属となった。
そうなると、新入生総代として挨拶を行った深雪と私の関係を聞く生徒が現れるのは至極当然と言えた。
性と名で漢字が一文字違いで「桜」と「雪」である。
気にならない方がおかしい。
だが、深雪の口から発せられた言葉は、「あの人は私とは無関係です」という言葉だった。
そこまで怒っていたのかと深桜が戦慄したのは想像に難くない。
深雪の返答を聞いたA組の生徒は「まぁそうだよな」とあっさり納得したという事も深桜は少なくないダメージを受けた。
後になって深桜は気付いたのだが、深雪は並外れて可憐で神秘的な美貌を持つ美少女であるのと比べるとかなり見劣りするだろうが、四葉直系の血を引いている以上、それなりには整っている。全体的に白いが。
深雪は小学生の頃友達から、雪女みたいと言われていたみたいだが圧倒的に深桜が雪女である。
口から冷たい息でも出せればより完璧である。しいたけ目だが。
そして、達也は深桜を警戒していると考えられる。
達也が四葉家のことをよく思っていないことを知っている深桜はその警戒を理解している。
六歳の頃から離れて生活を送っていて互いの事をよく知らない関係にあり、達也からすれば、深桜は四葉の息がかかっている人間だと考えていても不思議ではない。
達也のオンリーワンである、というのは深雪にとって非常に大きいものだというのは想像に難くない。
更に達也は深雪が深桜とは無関係だと言ったという旨を聞き、自分も無関係だという立場を取りやがりました。
姉を何だと思っているのだろうか。
そんな二人との関係が微妙な期間が長く続き、四月、五月、六月と何の進展もなかった。…長くない?
いや、進展は少しあった。
家で朝食と夕食を共にするようになった。
それ以外には何の進展はなかった。
仮に深桜が学校で突然姉面しだしたとしても、二人が無関係だと主張した以上、私の頭がおかしくなったとみられるオチが待っていることだろう。
そういった事もあり、深桜は何の行動も起こすことなく学生生活を過ごしていたのだ。
そんなこんなで、深桜が関わることなく、四月五月のイベントは終わっていたのであった。