桜が咲いたら、雪が…… 作:何故か外れる音
新人戦・五日目
前日のモノリス・コードにて悪質なルール違反の影響で、本来であれば、第一高校チームは棄権、となるところを大会本部の裁定により、代理チームの出場による順延が認められた。
その影響により、大会は困惑の空気と共に幕が上がった。
モノリス・コードの予選は、各校が四試合行い、勝利数の多い上位四校が決勝トーナメントに進出するという変則リーグ戦を起用している。
そして現在の勝ち数を比較した結果、一高が二高に勝利すると、本来であれば決勝トーナメントに出場できた二高が予選落ちしてしまうこととなっており、二高から一高に向けられている敵意はかなり厳しいものとなっている。
また、一高の代役が三人とも登録選手外だったことも困惑の種となっている。
一人は技術スタッフ、後の二人は新たに招集したメンバーとなっており、一高の実力者上位者であるはずの登録選手以外から選ばれていることも原因となっている。
それらに加え、新たに招集されたメンバーの内の一人が女子生徒であることは、他校だけでなく一高の面々も戸惑わずにはいられない。
その女子生徒の名前が深桜であることを知った深雪が一時期困惑し、達也にどうして教えてくれなかったんですかと文句を言いに行ったのは当然の流れと言えよう。
そうして、フィールドにそのお三方が登場すると、さらに困惑に拍車を掛けることとなった。
端的に言うと、目立っていた。
そんな現状に落ち着かない様子の幹比古が達也に目を向けると、達也は何やら意味ありげに頷くだけである。
幹比古はこのざわつきの主な原因となっている人物に、そしてその腰に差されている「刀」に目を向ける。
当の本人はその目線も、観客のざわつきも理解できずにいるのだが。
幹比古のその目線の意味も、それらを一切理解していない深桜の事も分かった上で、達也は別の方向へと持っていく。
「…?何?」
「…昨日まで剣だったモノが一晩で刀に様変わりしていたら驚くのも無理はないだろう」
「達也、確かにそれも気になるところだけどそうじゃない」
幹比古の言う通り、観客がざわついているのはそこではなく、直接打撃が反則とされているモノリス・コードに刀を持ち込んでいることにざわついているのである。
武装一体型CADの存在を知っている者は、この会場に来ている人の一割程度しかいない。
それだけでなく、武装一体型CADの特性上、一体化している武装の能力を高める魔法が編み上げられているはずである。
「刀」で言えば、切断力を高める魔法を編み上げているものである。
それ故に、武装一体型CADの存在を知っている者はこのことも当然知っており、それがレギュレーション違反であると考え、尚更理解できずにいた。
その刀を差しているのが女子生徒であることから、そのことを揶揄する者まで中にはいる。
その「刀」のことも勿論だが、一高メンバー、特に深桜のことを少なからず知っている面々も騒いでいた。
交代選手が発表されてからすぐに、真由美の手により、深桜は達也と深雪の姉であると周知された。
一年女子は知ってたとでも言うようにあっさりと納得し応援しているが、一年男子の一科の面々が妬みか僻みかよく分からない感情を深桜に向けている。
勿論、四月の件を知っている面々が深雪を揶揄いに来たりと、深雪の周辺は賑やかであった。
そして、注目を集めているのは深桜だけではなく、達也も別の意味で注目を集めていた。
担当競技でことごとく上位を独占した、忌々しいスーパーエンジニア。
そんな彼が二丁拳銃に、ブレスレットと三つのCADを同時操作を行うのだろうと、他校のエンジニアや選手から警戒の視線が向けられている。
実績があるからか、警戒こそすれど、そのイレギュラーなスタイルを揶揄するものはいない。
そんな中で、いよいよ第一高校対第八高校の試合が始まる。
◇ ◇
モノリス・コードは様々な条件付けをされた野外ステージで執り行われる競技である。
九校戦で採用されているステージは、森林、岩場、平原、渓谷、市街地の五種。
今回選択されたのは、森林のステージ。
第八高校は魔法科高校の中で最も野外演習に力を入れており、言うなれば、森林ステージは彼らにとってホームに等しい。
ステージの選択はランダムに行われると言われているが、今回に関しては、本来であれば不戦勝であった八高に有利な条件を与えたと考えると、いいハンデである。
達也が「忍術使い」九重八雲の教えを受けていることは一高の首脳部にとって周知の事実であり心配していない。
心配するとしたら、実力が完全に未知数である幹比古と深桜の両名である。
双方のスタート地点、モノリスが設置される場所の直線距離は八百メートル。
座標移動を使えば一秒と掛からないな、と深桜は思えど、それを行う気は一切ない。
プロテクション・スーツやヘルメットを着用し、木々の間を走り抜けるのには最低でも五分掛かると言われている。
当然だが、接敵することも考えると、動きは自然と慎重になるため、戦闘を抜きにして考えても、最低で倍掛かると言われる。
ところが、五分も掛からない早さで、八高側のモノリスで戦端が開かれた。
選手の姿はルール違反防止用のカメラが追いかけており、その映像は観客席前に設置された巨大ディスプレイに映し出されるようになっている。
今回の森林ステージのように障害物が多いステージだと、この映像が観客の頼りとなる。
そのディスプレイには、八高ディフェンダーの前に躍り出た達也の背中の姿が映し出されていた。
それから達也は一度画面外に出るが、切り替わった画面では、ディフェンス選手が片膝をついており、その右側面を回り込み、モノリスへと疾走する姿が映し出された。
しかし、先の達也の攻撃は相手の体勢を崩すに留まっていたようで、ディフェンス選手は起動式を展開する。
その直後、想子の視覚化処理が施された画面は、八高選手が展開していた起動式が、非物理的衝撃波、想子の爆発で消し飛ばされる様を映し出した。
それが信じられないと棒立ちになったディフェンス選手を尻目に、達也はモノリスを二つに割るとすぐに樹々の中へと離脱していく。
達也が扱った魔法、
一高一年女子の間では達也の活躍を見て盛り上がりを見せている。
圧縮されたサイオンの塊をイデアを経由せずに対象物に直接ぶつけて爆発させ、そこに付け加えられた起動式や魔法式といったサイオン情報体を吹き飛ばすという魔法。
射程が短い以外に欠点らしい欠点が無く、実用化されている対抗魔法の中で最強と称されている。
ただ、並の魔法師では一日かけても搾り出せないほどの大量のサイオンを要求するため、使い手が極めて限られる。
真由美曰く、超・力技。
この魔法を扱えることから、達也が保有するサイオン量がどれだけのものなのかと真由美が思いを馳せた頃、試合に動きがあった。
八高のフォーメーションはオフェンス二枚、ディフェンス一枚。
左右に展開して攻めて来ていた内の一人が、一高の本陣へと辿り着いた。
一高本陣、すなわち、一高のモノリスが設置されている場所、そこは観客席から直接視認できる所にある。
モノリスの前で立っている白髪の女子生徒の姿を見て、一年女子の面々が、達也くん早くしないと、と急かすように応援している。
達也が映像に映る前、ディスプレイに映っていたのは深桜だった。
本来であれば、出場することのない女子生徒にカメラが向けられるのも無理はなかった。
深桜は男子生徒用の制服、その上に防具を着け、更に、片手で日傘を差している。
それでいてディスプレイに映った深桜は、応援席が大丈夫なのかと心配になる程に朗らかに微笑んでいた。
それに加え、観客席側に振り返り深雪を見つけて手を振る始末である。
やる気あるのかと疑わしくもなるし、一人で笑っている姿を見せられると頭を打ったのかと心配にもなるというもの。
観客席前にあるディスプレイには深桜とオフェンス選手の一人が十メートルほど離れて対峙している様子が映されている。
そこに映っている深桜は、先ほど観客が見た時以上に喜びを表している様子がディスプレイに映し出されていた。
選手応援をしている面々がそういった心配をしているのも露知らず。
深桜はようやく、獲物が来たことに喜んでいた。
ディフェンスなんぞ選択しなければよかったとすら思うほどに、なんでこんな真夏日に日の下に立たされなければならんのかと小さな声で溢してしまうぐらいに暇だった。
達也の移動速度が速くなったからといって、相手選手の移動速度が速くなるわけではない。
言うなれば、深桜は十分以上一人、モノリスの前で立たされていた。
緊張感が無いと言われそうではあるが、八高相手に緊張することがあるかと言われるとそんなものは存在しないと深桜は胸を張って答えられる。
魔法の収集に励むため、
今回のターゲットは吉田幹比古。
長々と待たされた鬱憤をついに晴らすことができることに、笑みが隠せずにいる。
それを自覚しながら、そんな歪んだ喜びの歪んだ部分だけを綺麗に隠し、笑顔を浮かべ腕を広げながらオフェンス選手に告げる。
「Welcome!」
「えっ?」
まぁ、ディフェンスを行う選手に歓迎されるなどと誰が予想しようか。
オフェンス選手がその言葉に、深桜のその奇行に動きを止めてしまった。
悲しいかな、その隙を見逃す優しい人間はこの場に一人もいない。
そして十メートルという距離を制するのに深桜が必要とする歩数は僅か一つ。
その勢いのまま抜刀し、オフェンス選手を宙へと叩き上げた。
深桜が差していた日傘がカメラを遮るように地に落ちていく様子がディスプレイには映されていた。
「……何ですか、あれは」
「司波君が開発した武装デバイスとオリジナル魔法、『小通連』……だったもので、武装デバイス『小通連ver.深桜』です」
鈴音の視線は深桜の右手に握られている刀に向けられている。
最初こそ、直接打撃を加えたのかと思ったが、その刀を見ると違っていたことが分かった。
宙へと叩き上げられたオフェンス選手は深桜からの追撃が無かったことが幸いし、森の中へとふらつきながらも逃げ帰っていく様子がディスプレイに映されていた。
その疑問に答えたのは、前日にCADの調整の手伝いを申し出たあずさだった。
あずさはそのまま小通連の説明を行った。
「では、深桜さんが持つ刀は別物ということですか?」
「えっとですね。まず、刀身が直刀型から湾刀型に変わりました。それに伴い、鍔元付近で分離する様に設計されていたのが、最初から刀身部分と柄部分が分かれているようです。後、鞘に収まっている状態で既に刀身と柄の間に五センチほど空いているので、硬化魔法で相対位置を固定してから抜刀しないと刀身がついてこないそうです。ちなみに魔法は相対位置を固定するだけの魔法だそうで、小通連では無いみたいです」
小通連では、分離した刀身が時間経過で柄部分に残った刀身部分とドッキングし一本の剣に戻るようになっていた。
ちなみに、このドッキング技術は柄と鞘の接触部分に流用されている。
「相対位置を固定しているだけということはつまり」
「はい、柄と刀身の間に五センチの空間が出来上がっているだけで、それ以外は刃が無いだけの刀ですね」
「そうですか。では、使用者が著しく限定される欠点は無くなったのですか?」
「……それは、解消されるどころか寧ろ大きくなっています。元々小さい質量だったものが刀身が変わったことで更に小さくなりました。刀身の長さは少し長くなったのですが、幅が半分以下になりましたから」
鈴音は、あずさの説明を聞いて、どうやって勝つつもりなのかと、愚痴を溢した。
決定力がただでさえ、不足していたものを更に不足させてどうするつもりなのかと。
そんな鈴音を見て、あずさは焦りながらフォローを入れた。
「だっ、大丈夫じゃないですか?先程の深桜さんの一撃が、決定力が不足していないことを物語っています!だって、プロテクション・スーツを身に付けた男子生徒が宙に浮くほどの打撃を放っているんですよ!」
「……深桜さんの身体能力はどうなっているんですか」
鈴音は先ほど見た映像を思い出し、そう溢してしまう。
あずさと鈴音の会話は周りの人にも当然聞こえている。
そして、鈴音のツッコミともとれる疑問は会話を聞いていた人たちに共有されたのだった。
「お姉さんはどうして追撃しなかったのかな」
深雪の近くで応援している一年女子の呟き。
それは会場全体の疑問でもあった。
深桜が発揮した異常とも言える打撃には誰も触れようとはしない。
あのまま追撃すれば、オフェンスを一人戦闘不能にすることもできただろう。
だが、深桜はそうせず、ふらつきながらも樹々の中へ逃げ帰っていく姿を見送った後、納刀し、日傘を取りに戻っていた。
ディスプレイに映る深桜の表情は笑顔である事に変わりはなかったが、どこかスッキリしていた。
映像はそのまま幹比古の戦況へと切り替わった。
一年女子は深雪を中心に構成されているためか、達也のことはお兄さん、深桜の事はお姉さんと、自然と統一されていた。
だが、その呟きに答えられる人はいなかった。
あの深雪ですら黙っている。
「ねぇ、深雪?深雪??」
「はっはぃ?」
「深雪はどうしてだと思う?お姉さんが追撃しなかった理由」
「えっと、ごめんなさい。私にもそれは分からないわ。お姉様が対人戦を得意としていることは知っていたけど、こんなに強いとは思わなかったわ」
「そうなんだ」
深雪と達也は、深夜と真夜を通じて、それなりに深桜のことを知っていた。
その中に、深桜が対人戦を得意としている、という話があったのを覚えている。
実力があることは知っていたが、それは昔の話であって、達也ほどの実力は無いと思っていた。
達也の実力を身近な場所で見てきたからこそ、深桜の実力を思い込みで測り損ねていた。
だけど、先程の動きを見て考えを直させられた。
それが悪い事だったかと言われるとそういうわけではなく、深雪は嬉しく思っていると同時に、勘違いしていたことを深桜に謝っていた。
「あっ!お姉さんがまた手を振ってるよ!深雪!」
その声に反応し、深桜の方を見やると、日傘を回収し終えた深桜が再び手を振っていた。
それを見て、深雪は手を振り返す。
手を振り返しながら、深雪は深桜のことをおもいやる。
この大会が始まるまで、深桜のことを知ることは殆どなかった。
自業自得な部分があるが、精々、実技の様子を盗み見たり、筆記試験の成績で頂点に躍り出たことしか知らない。
深桜が深雪に見せる姿は新鮮なもので溢れており、それが深雪にとっては嬉しいモノ。
だが、深桜の実力のほとんどが未知であることに変わりはない。
だからこそ。
どうか大怪我だけはしないでください
一回目とは違い二回目は深雪が手を振り返してくれたことに深桜は非常に大きな喜びを得た。
深桜からすれば深雪が応答してくれたのは数ヶ月ぶりの事であった。
だからというわけではないが、深桜は日傘を差し直し、樹々の中へと消えていったオフェンス選手の後を追うことにした。
あれだけの威力で一撃入れたこともあり、オフェンス選手の足取りはかなりおぼつかないモノとなっていた。
そんな状態であり、彼がオフェンスを担っている事も踏まえれば、そう遠くない距離に居る事は確実だろう。
達也の現在地は八高のモノリスの近くであると当たりをつけている。
幹比古の現在地は
「八高の陣地まで逃げ帰ってなければいいけど」
人知れず、誰にも聞こえない声の大きさで深桜は呟きながら、樹々の中へと足を踏み入れた。
十メートルを一歩で制せるだけの機動力の元である。
勿論のことだが、解析不能を起用している時と比べると出せる出力は格段に低い。
それでも、素の状態で発揮する身体能力が一般的な女子生徒のものとは掛け離れていることに変わりはないのだが。
また、
お陰様で動物に好かれることが非常に困難なものとなったおかげでペットのいない生活を送ってきた。
御坂妹に懐いた黒猫のような動物がいれば話は変わってくる。
だが、容姿に影響を及ぼしアホ毛が生えてくるのと、現状、どちらが良かったかと言われると大変悩ましい訳で。
実際、現状は動物に好かれにくく嫌われやすいという欠点の代わりに、電磁波の反射波を利用したレーダーの様に周囲の物体を感知し、たとえ視覚や聴覚が潰れていたとしても、緻密に空間把握を行うことができ死角からの攻撃にも対応できるという利点がある。
だが、この利点は
ただ、意識を多く割いて感知できる範囲は、
因みに、
そんな訳で、深桜は意識を切り替える。
オフェンス選手がダメージを負った状態のまま移動しているのだとすれば、今の深桜でも感知できる範囲にいるはずである。
日傘を回収したり、深雪に手を振ったりしていたが、時間は多く使っていない。
意識を割き、樹ではない反応を探す。
そしてそれはすぐに見つかった。
逃げる気が無いのか、モノリスを割る事を諦めておらず一高本陣から遠くまで離れる気はないのか、ゆっくりと移動していた。
深桜はゆったりとした足取りで静かに近づいていく。
ある程度近くまで寄った所で、オフェンス選手に囁きかけるように告げた。
「本陣まで逃げ帰っていれば、こんな目に遭わずに済んだのに」
深桜に追い付かれたことで一瞬おびえた表情を浮かべたオフェンス選手だったが、気を持ち直し対峙した。
そんなオフェンス選手の姿勢に笑みを溢しながら、深桜はオフェンス選手に襲い掛かる。
そう簡単に戦闘不能にならないで欲しいなと思いながら。
◇ ◇
第一高校対第八高校の試合は、達也がモノリスのコードを打ち込み、試合を決めた。
次の試合、第一高校対第二高校の試合は、三十分後に執り行われることとなった。
第三高校の二人、将輝とジョージの二人は、達也をどうにかすれば勝てると算段を付けた。
力ずくの真っ向勝負に持ち込めば九分九厘三高が勝つと。
オフェンス選手を追い込んだ深桜の機動力と一撃には驚かされたが、やる気の無いような振る舞いと逃げる相手を走って追いかけることもなく魔法で追撃することもなかったことから、走り回り続けられるだけの体力はなく中・遠距離の魔法攻撃は行えない選手、そういった評価を深桜は他校の選手及びスタッフに付けられた。
そんな大いに間違っている評価を付けられた深桜はというと、一高の控室で深雪に捕まっていた。
怒られているわけでも、達也のように理不尽な攻撃を受けているわけではない。
オフェンス選手を追って、森林の中へと踏み入ってから、試合が終わるまで何をしていたのかと問い詰められていた。
「お姉様!答えてください!」
「それは…言えないわ」
「言えないことをしていたんですか!?」
深雪が何やら盛大な勘違いをしているが、深桜はこの場を切り抜ける方法を考えているため気付いていない。
ただ、人によっては言えない事を行っていたことは事実であり、少なくとも深桜は胸を張って言えない。
飛天御剣流・九頭龍閃の練習をしていたなどと。
言い方が悪いが、その練習台としてオフェンス選手を利用したなどと深桜は言えない。
この十年、四葉家が深桜に何もやらせなかったわけではない。
魔法が使えないと思い込んでいたと言え、魔法師相手でも生き残れるように訓練や演習が組まれていた。
やり始めた時こそ、言われるがままにやっていたが、深桜はあることを思い出した。
この世界には、忍びが、忍術使いが実在することを。
ここで、前世にて架空と言われる武術を再現しようとせずして、何が転生者かと深桜は思った。
かといって闇雲に突っ走ったところで出来るようになるわけがない。
そこで深桜は学園都市に倣い、架空とされていた武術を習得するための
例として、飛天御剣流は「剣の速さ」「身のこなしの速さ」「相手の動きの先を読む速さ」という三つの速さを最大限に活かし、最小の動きで複数の相手を一瞬で仕留める、といった、指針が示されている。
この指針を元にし、現実にするための
この
それを可能とするだけの要素を深桜は持っていた。
無理をしない様に、四葉側が用意した項目を利用しながら少しずつ再現していった。
だが、今もその全てが未完全である。
この世界に存在しない流派の剣術の技の練習してましたなどと、深雪ほか達也や幹比古、レオ、エリカといった面々の前で誰が言えようか。
どうやって切り抜けようかと悩んでいた深桜は、まず最初に思考が飛躍している深雪を正すとこから始めることにした。
結局、聞き出そうとあきらめなかった深雪に折れて、九校戦が終わったら教えてあげる、という事で手打ちとなったのだった。