スタンド使いはヒーローになれるのか?   作:玉砕兵士

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お待たせしました(汗)
1ヶ月近くかけて書いた割には、内容の方があまり進展んしていないかもしれないです。

それではどうぞ!


12話

「あっデクくん!おはよう!」

 

「麗日さん、お、おはよう!」

 

緑谷出久が委員長を辞退して、その後任に飯田天哉を推してから早数日。

 

入学初日に彼が見せたいじめられっ子だった時の挙動不審っぷりも麗日お茶子、そして飯田天哉を始めとするクラスの良き友人達との出会いにより少しずつではあるものの改善されつつあった。

そんなクラスの友人達も緑谷の心優しい性格、さらには最初の戦闘訓練で見せた怪我をしてしまうデメリットはあるものの強力な個性に危なかっしい所もあるが、頼りになる奴と認識されつつあった。

 

「今日のヒーロー基礎学は何をやるんだろうね麗日さん。」

 

「うん?うーんウチはまた戦闘訓練とかやるんじゃないのかなぁと思うんだけど…。」

 

「どうしたの麗日さん?」

 

今まで緑谷が接した麗日さんはいつも明るく、そして優しい。

 

そんな麗日さんが自分の振った話題で何か気を落としている。

雄英高校に入学してから、いや入試の時から彼女に助けられ、そして自分の今までの人生で数少ない友人とも言える人が不安そうな表情をしている。

何故相手が落ち込んでいるのか分からない。人間は理解できないものには、恐怖を抱くというが、こんな時ほど小心者の緑谷出久という人物は慌てずにはいられなかった。

 

「ごごご、ごめん!麗日さん僕は別にそんな君を傷つけるつもりで言ったんじゃ!?」

 

「違うよ!デクくん!別にウチ戦闘訓練が怖いとか、嫌だとか感じてる訳じゃなくてね。」

 

これには、落ち着きを取り戻した緑谷も困惑する。

「え、で、でも麗日さん落ち込んだような顔をしてたから。」

 

「ウチ…心配してるんだよデクくんの事。入試の時からいつも酷い怪我ばっかしてるから心配で。」

麗日の脳裏には、入試の時に緊張した面持ちで転びそうになった彼に個性を使って助けてあげた時の彼が、入試の実技で、個性把握テストで、最後にヒーロー基礎学の戦闘訓練で怪我ばかりしていた彼がいた。

 

この麗日の緑谷を思う優しい言葉にハッとなった緑谷。彼の脳裏には相澤先生の言葉が思い起こされていた。

 

(見たとこ、個性を制御出来てないんだろ。また行動不能になって誰かに(たす)けてもらうつもりだったか)

 

この相澤先生の言葉を今緑谷は、改めて理解させられていた。

 

あの相澤先生の言葉は自分が行動不能になり、怪我を負うだけではない。

ヒーローである自分が不利な状況を見せれば、守るべき人達を不安にさせるだけでなく、その自分を助ける為に他のヒーローが危険な目にあってしまう。

誰かを助けるどころではない。自分が無理をして誰かを助けようとすれば誰かを傷つけてしまう。そんなヒーローに今のままではなってしまう。

 

「ありがとう麗日さん、心配してくれて。僕もっと頑張るよ!」

 

「…。うん分かった。でもあんまり頑張りすぎないようにね。」

 

緑谷の言葉に、まだ少し心の中では心配をしながらも麗日も幾分か安心する。

 

その後、緑谷出久は教室に入る前にトイレに行こうと思いたち、途中で麗日と別れる。

だが、まだ入学してから間もないこと。校舎が普通の学校よりも広かったのが災いしたのか、教室からトイレへの最短距離ではなくちょっとだけ回り道をする形でトイレを目指していた。

 

 

あんな所で何やってるんだろう、吉良君。

 

 

そんな回り道をした緑谷出久は、向かう途中で窓の外の何かをジッと見ている吉良を見つけていた。

 

緑谷出久から見て吉良吉影という男は、失礼ではあるが影の薄いイメージのある人物であった。

把握テストの時に見たインパクトのある強個性にしてはあまりにもかけ離れている程に学校では目立っていない。

自分は見ていなかったが、クラスのみんなの話ではヒーロー基礎学の戦闘訓練の時にはかなり凄いことをしていたらしい。

そのせいで、皆んな彼には話しかけづらいらしい。

 

今は着信があったのか携帯(・・)の方を見ているが、いつもだったら教室にいるのに窓の外を見て緑谷は何をしているんだろうと興味が湧いていたものの後で聞いてみようと思い、先にトイレを済ませることにした。

 

 

 

 

 

 

さっきのは緑谷出久だったな。

 

背後に気配を感じた吉良は携帯のカメラ機能で、緑谷に気づかれる事なく背後にいる緑谷を探り当てていたのだ。

いつもであれば話しかけられる事を嫌い、とっととその場を去る吉良であるが相手が気になっている相手だけにすぐにその場を去ることはしなかった。

 

 

教室から1番近いトイレの廊下を避けていたのに、何やってるんだアイツこんな所で?

だがこれは好都合かもしれんな。

緑谷には近いうちに話しかけようと思っていたし、クラスで緑谷の話題について聞き耳をたてていた感じでは相当なヒーローマニアなようだ。

戦闘訓練も見ている限りでは個性は扱いづらい事この上ない筈なのに、奴はそれをカバーできる程の頭を持っていることは中々に侮れない。少なくとも強個性持ちの爆豪を欺ける程度には頭の回る奴のようだ。

もしかしたらアイツなら、質問をすればこの私の求める答えを示してくれるかもしれんな。

 

 

緑谷出久の後を追おうとした吉良は歩き出した時に思い直して、教室に戻ることにした。

 

 

それは個性把握テストで吉良が見た周りを見ずに考察を始めていた緑谷の姿を思い出していたのだ。

あの様子だと何らかの答えも出るには出るだろうが、膨らみ過ぎた考察で周りを巻き込んだ挙句になにが起きるか分からない。最悪教室が混乱するような危うさが、そんな不確定要素が多いと吉良は判断した。

結果そのまま教室に立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「こういうタイプだったか、くそう!!」

 

「意味なかったなー。」

場所も変わって時間も進み。

午後のUSJでの救助訓練を行う為、雄英のバスでの移動中の車内で、バスの席位置の当てが外れて悔しがる真面目な飯田をからかっているのかとどめを刺す芦戸三奈。

 

それを横目で眺めながら飯田君頑張ってるなぁ、と緑谷は思いながら救助訓練は何をやるんだろうと考え始めていた時に唐突に女の子から質問をされる事になる。それに少し驚いたものの前のような固さは感じられず、ヒーロー科の高校生活で成長しているのか彼にしては柔らかい対応が出来た。

そもそも突然声を掛けられる事に慣れておらず声を掛けられれば固い口調に挙動不審になる緑谷であるが、麗日や飯田という友達が出来て仲良くなれたこと。先日の戦闘訓練でギリギリではあるものの昔からの幼馴染で関係のあった、ある意味では因縁深い爆豪に勝った事が内心でビックリするぐらいには動揺を抑えて緑谷は蛙吹に話しかけられていた。

だがしかし、失礼ではあるもののカエル顔の可愛らしい子に自分に、そして今この場には居ないオールマイトと共有する誰にも知られてはいけない秘密の核心に迫る一言でもって緑谷は大いに焦ることになる。

 

「あなたの個性、オールマイトに似てるわ。」

 

「そそそそ、そうかな!?いや、でもぼくはそのー。」

 

「待てよ、梅雨ちゃん。オールマイトは怪我しねぇぞ得て非なるアレだぜ。しっかし、増強型のシンプルな個性は良いな!派手で出来ることが多い。」

この時、しどろもどろになっていた緑谷の話を遮る形で切島が蛙吹の質問に対しての似ているという点で否定的な事を言っていなければ誤魔化せていたかどうか非常に怪しい所であった。

しかも緑谷の個性にそこまで反応する人は皆無であり、緑谷の慌てように怪しむ人は居なかったのもあった。

ここまで、今は違うが初めて緑谷に声をかけての挙動不審っぷりを見ていた面々、そして吉良もいつもの事と思い特に気にしてはいなかった。

いきなりの核心を突いたような蛙吹の質問に慌てた緑谷であったが何とかなったことに心の内では安心していた。

何せこのことはオールマイトとの秘密にしているにも関わらず少し前に爆豪に喋ってしまったのだ。

 

バスでの話題が良い感じに、緑谷出久の個性から他の人の個性について話題が移っていなかったら

もし、今の質問で秘密がバレる事はないにせよ、勘ぐられる事になってしまったらオールマイトに対して申し訳ない気持ちと惨めさで二度と顔向けが出来ないと考えていた。

 

 

そんなホッとしたような緑谷を吉良は見逃してはいなかった。

 

 

だが、そんな緑谷を鋭く睨んでいたのは一瞬ですぐさま視線を外してバスの向かい側の窓の景色を眺めていた。

しかし、蛙吹の突然の質問の矛先は緑谷から次に吉良へと移っていた。

それはバスの中の話題が誰の個性が派手で尚且つ強いといった具合に移り、轟は名前こそ上がるも雨吸の素直な評価もとい爆豪の弄りで和やかな、緑谷にとっては驚くべき空気が流れていった具合の時であった。

 

「あなたのこと、吉良ちゃんて呼んでも構わないかしら?私の事は梅雨ちゃんって呼んでいいわ。あなたの個性も中々強いと思うのよ。」

僅かにバス内の空気が和やかなものから数段程緊張が走るものの、蛙吹の言う通り、吉良の能力はこの中でも眼を見張るものがあるのも事実。

中々彼自身に以前より話を切り出しにくかった事も相まってクラスの皆もそれなりには耳を傾けている。

 

「確かに吉良の個性も強えよな。あのパンチのラッシュなんて目で追えねえし、訓練の時もビルの壁を簡単に粉々にしちまったしな。」

 

そんな雨吸と切島の言葉を聞いた吉良だったが、内心この中でも自分の能力は強いという自覚というか自負もあったので全員がこちらに注目するのは仕方がないとして、相手が必要以上の事を聞いてくる以外には何も言わないようにしようと思った。

吉良自身、特段何も感じはしなかった。

せいぜい話を早く終わらせたいと思い、話しかけられたから一応顔を雨吸の方に向けはしたが、それがどうしたという感じだった。

 

「えぇ、そうね。切島ちゃんの言う通りパワーの方も強いと思ったけど、吉良ちゃん…あなたの能力は本当にそれだけなの?」

 

尋ねるような雨吸の言葉に彼女が言いたいことを薄々感じつつも吉良はあえてしらばっくれようとしてみる。

 

「言っている意味がよく分からないなぁ。何が言いたいのかな?」

 

「あなたの個性はあの強い人型だけなのって聞いてるのよ?あの時轟ちゃんを吹き飛ばしたのって、あなたの仕業なんじゃない?」

 

「…。」

 

クラスの全員が気になっていた事を雨吸が代弁する事で知り得そうになり、クラスから注目の的になる吉良。

 

その事に若干不機嫌になりながらも、自身の服の上着からポケットティッシュを一枚だけ取り出して、腕だけを出したキラークイーンに触れさせた。

そして、すぐにそれを放すとフワフワと重力に従って下へと落ちていくティッシュを半分困惑しつつも眺めるクラスであった。

しかしカチリという何かのスイッチを押す音ともに軽い炸裂音とティッシュを中心にというか、何の変哲も無かったティッシュ自体が爆発し、ビックリしつつも先程まで落ちていたティッシュが跡形も無くなっている事に気がつき、ほとんどの生徒は驚きのあまり声も出ていなかった。

 

「これが君のいや、君達が気になっていた能力だ。」

静かになったクラスに、なおも続けて言う吉良。

「私のス、個性の亜人は触れたモノ(・・)を爆弾に変えることが出来る。例えティッシュであろうと、それがモノであれば爆弾にすることが出来る。」

 

この時、吉良は本当の事を言ってはいるが本当の事を言ってもいなかった。

嘘とは全部が全部真っ赤なウソであればすぐにバレてしまうものであるが、真実の中に重要な情報を隠すための少量のウソを混ぜると中々相手にはバレにくいものである。

吉良もそれを実践して、誰にも手動での点火の方法を見られることもなければ接触爆弾も、第2の爆弾も、人間等の生物すらも爆弾に出来ることを教えることはなかった。

ティッシュを爆弾にして落としたのも、クラスの視線をそこに集めて触れたものを爆弾にするという印象を相手に強く与えて肝心の起爆方法、加害範囲を教えることは無かった。

戦闘訓練で第1の爆弾自体も見られていることから遅かれ早かれ推測されるであろうということを考えて他の部分をボカそうとのことであった。

 

ちなみに奥の手でもある。第3の爆弾(バイツァ・ダスト)については誰にも知られてはいけない秘密であった。

それこそ知られた場合には十分に脅して喋らせないようにするつもりであったが、最悪その存在をなんらかの手段で知られて喋られる可能性があれば行方不明(殺す)にすることも考えていた。

 

クラス全員が想像していた以上に強い、いや凶悪なキラークイーンの能力に驚いていた。

先程の盛り上がっていた空気から妙な静寂に包まれたバスの車内は痛いほどに静かであったが何人かは気にもとめていなかった豪胆な人もいるにはいた。しかしそれを気にもとめずに運転をしていた相澤先生からもうすぐ着くとの言葉を聞いて、ゆっくりとスピードを落とし始めたバスの車内は幾分か先程の居心地の悪い静寂からは幾分かマシな、真剣に授業に臨もうという空気へと変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「スッゲー!USJかよ!!」

 

会場を見渡せる場所にきた瞬間にそのスケールの大きさから、先程のバスの車内での真剣な空気は吹き飛んでしまい、興奮する生徒達。

 

先に会場で待っていたスペースヒーロー13号先生はそのはしゃいでいる様子のヒーロー科の生徒達にたしなめるように、見事なまでの話を披露していた。

また、話の終わりの最後にお辞儀をするあたり彼の世間からの紳士的と言われている由縁が出ているところでもあった。

そんな先生の話を聞いて、先程のはしゃぎっぷりが嘘のように集中して話を聞いていた生徒達の中で、珍しく吉良もまた話を真剣に聞いていた。

 

つまるところ話の内容として大雑把に要約すると、前の授業の戦闘訓練では自分の個性の力を相手に使うのはどれほど危険かを学んだから、今回はそれを人を助けるために使おうというものである。

 

吉良も本人の意欲はともかくとして、ヒーローを目指す生徒の1人である。

今まで、将来は戦闘を主な活動にしたヒーローになるだろうと意識して考えていた吉良にとっては13号先生のお小言もといスピーチは拝聴するに足る最もなものであった。

成功して研鑽を積めば応用出来るものがあるかもしれないという打算もあって今度からは救助の分野でのキラークイーンの使用も真剣に考え始めていた。

 

傷を直したり、物を治すことが出来る能力である東方仗助のクレイジーダイヤモンド。

更にその能力の強さは作られた料理や、アスファルトを原材料にまで戻すことが出来るほどに強力でしかも、物語の終盤では出血して物体になった血を使って自動追尾弾という攻撃的な一面も見せている。

能力からしてヒーラーとしての面が強いにも関わらず、戦闘面でも積極的にその能力を使用することによって数々の強敵を打ち破っていた。

 

能力を最大限に活かした戦法を新たに生み出すには様々な視点が必要と考えていた。

 

今回の救助訓練は吉良にとってそのための第一歩になるであろう。

 

 

 

 

 

 

 

予定通りに授業が進んでいれば。

 

 

「一かたまりになって動くな!13号生徒を守れ!!」

 

 

雄英高校USJ襲撃事件の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 




次の更新も長くなりそうですが、長い目で見ていただければ幸いです。

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