彼の苦しみは終わらない
終わらないなら、まだ生きている。
「GV!!」
目の前に現れた
「
咄嗟に雷撃鱗を…。
(ダメだ!後ろにナインたちが居る!)
雷撃で実弾を弾こうにも、近くにいる彼女たちの回路を焼いてしまうかもしれない。
「ぐっ…!?」
しかし、狙いが雑だったのか、
そのすきに、G11が端末を破壊した。
「GV大丈夫!?」
「う、うん…助かったよ」
「…気を付けて。まだ何かいるよ」
G11に注意され、他のメンバーが臨戦態勢に入る。
…部屋の中央に、案山子のように立つ影がひとつ。
「…鉄血のハイエンドモデル!」
「各員、撃…」
「…待って、あいつから歌が聞こえるよ!」
「だとしても…撃てッ!!」
4人の銃撃が、そのまま鉄血の人形に突き刺さった。
…特に何か動きがあるわけでも無く、人形は崩れ落ちた。
「…何よ、肩透かしも良いところね」
416が銃口を向けながら近づいていく。
付近の警戒…しかし、周囲にこの子以外誰も居なかった。
「…いくら何でも…その、ハイエンドってことはここのボスみたいなものなんじゃないのかな」
「そうだけど…こんなあっけないハズ」
「…何よこいつ」
「どうしたの?416」
「見て…こいつ、普通じゃない」
「…」
416の言う事が、ボクには判断できない。
けれど、この戦術人形がおかしいことは…すぐにわかった。
顔も、腕も、腹も、何もかも
「うへぇ…なにこれ、気持ち悪い…」
思わずナインが顔をしかめた。
肌の色も違う。
繋がっている筈の手首と腕が明らかに太さが違う。
腰が足より細い。
そして、接合部分には全て、縫い合わせたような跡があった。
まるで、継ぎ接ぎされたかのように。
「頭部のタイプから、スケアクロウだってのはわかったけど…」
「…あのビットも、おかしかったよ…本当は光学兵器なのに、実弾が出てた」
「まさか、こいつが歌の正体…?」
だとしたら、この胸騒ぎはなんだろう。
「…これで終わり何て」
終わってほしくない。
そう思ってしまっているボクが、何処かに居た。
「…取り合えず、頭部を解析に回しましょう?」
「誰がやる…?」
「GV」
45がナイフを抜き、渡してきた。
「いずれやる事だし、慣れておきなさい」
「…分かった」
言わんとすることはわかる。
これは人形の残骸、いつまでも躊躇ってはいけない。
ボクは、人形の残骸にナイフを突き立てた。
----あーむど、ぶるー。
「っ!?まだ生きてる?!」
----ここに、なぜ。
「GV!」
手を掴まれる。
…電撃を流してしまえば、この人形の電脳を破壊してしまうかもしれない。
だから、咄嗟にナイフを首に刺してしまった。
ずぶり。
「あ、か…ひゅう…」
オイルが溢れ、人形は動かなくなった。
そのまま、首を切り落とす。
「びっくりした。まだ息が合ったなんて」
「取り合えずこれをペルシカのとこに回しましょう」
ナインと45が話している。
「g11これ運ぶわよ」
「えぇ…GVにやらせりゃいいじゃん」
「あんたね」
G11と416が話している。
さっきの声が耳から離れない。
だって、あれは…あの声は。
『私たちの
死んだはずの少女の声だったのだから。
少女の祈りは、新たな世界で呪いとなる。
少年の折った妄執は、世界を超えて彼を蝕む。
再開のための楽園か、罰のための煉獄なのか。
蒼き雷霆に安息の場所は無い。
しかし、彼の心は折れることは無い。
電子の妖精と、もう一度会うために。