迸れ、蒼き雷霆。
目の前の哀れな妄執を、穿き滅ぼせ。
――潜入から二時間が経過した。
今の所は監視にも見付からず、するりと潜入出来ていた。
「……静か過ぎるわ」
416が、ぽつりと漏らす。
ここまで、いくらなんでも警備がザル過ぎる。
誰もがそう感じていた。
「……まさか、誘導されている?」
「既に術中だと?」
「可能性は」
何となく、肌がピリピリする。
こう言うときは、決まってろくな事が起きていない。
「……GV、大丈夫?」
「……ありがとう、大丈夫だよ」
ナインに気遣われて気持ちを切り替える。
今更恐れてはいけない。
「皆、ここから先は開けたフロアになる。注意して」
45の一言で思考を目の前に引き戻す。
確かにこの先は吹上構造になっていて、かなり広い……それこそ、ここで銃撃戦もありうるほど。
「……ねぇ、皆。嫌な予感がする」
G11が呟く。
……その様子は、普段の無気力さを払しょくさせるほど。
「何か、怖いのが居る」
「……拙いわね。G11がこうなるって事は……」
「さっき言ってた能力者ってのが、居る」
足音が、響く。
ホールの奥から、誰かが歩いてくる。
……グレーのアーマーを身に着けた、男。
「………………」
「やっぱり、テンジアン……!」
かつて戦った、エデンの守護戦士……
エデンの巫女としてトップに立っていた妹を護る騎士。
彼は、一言も喋らない。
テンジアンが無言で剣を構える。
「各員戦闘準備!来るわ!」
45の号令のもと、散開しテンジアンを包囲する。
……テンジアンは真上に飛び上がる。
「高っ……!?」
「ナイン!」
「わっ……!?」
ボクはナインを急いで突き飛ばす。
……先ほどまでナインが立っていた場所を、チャクラムの様な物が通過した。
「ご、ごめん!GVありがとう!」
「油断しないで!ナイン!GV、前に戦った事あるんでしょ!自由に動いて!」
「わかった!」
ダートリーダーの安全装置を外す。
……テンジアンの戦い方は、自身の作り出した7本の氷の剣を駆使した我流剣術が厄介だ。
裏を返せば、接近戦を行わなければ落ち着いて対処することが出来る。
ダートがテンジアンに着弾する。
「行くぞ……!」
ボクの
一言も物を言わぬテンジアン。
恐らく彼もまた……。
感傷は無い。
どんな姿になろうとも、妹を護るその意思は変わらないのだから。
「GV、援護するよ」
G11の鋭い援護が、テンジアンの飛び道具を撃ち落としてくれる。
45がスモークでかく乱、ナインがフラッシュを使い、416も火力支援をしてくれる。
誰かと一緒に戦うのも、本当に久しぶりな気がする。
「……迸れ!
ボクは、今は一人じゃない。
……けれど、隣に居てほしかったひとは……もう、居ない。
白き鋼鉄のXをプレイしていて大幅に更新が遅くなってしまった……。
このSSも、テンジアン戦後にイベントを挟み、ラスボス戦を行った後にエンディングとなります。
あと少しだけお付き合いください。