決して、誰一人として助ける事が出来なくとも。
鏡が砕け散る様に、パンテーラの体が粉々に砕け散った。
彼女もまた、オリジナルが夢見た偶像の一つに過ぎなかったのか。
「やった……のね」
誰かが呟く。
「GV」
歌が止まる。
振り返ると翼を生やし瞳の色や前髪の一部がシアンの色になったナインが立っていた。
「ナイン……?」
「ありがとうGV。消え掛けの私を、助けてくれて」
「……ボクは、何もしてないよ」
消え掛けの。
それを言われて理解出来ないほど愚かではない。
彼女もまた、パンテーラの残滓が生み出したまぼろし。
「シアン……」
「偽物の私でも、そう呼んでくれるんだ」
「………………」
「意地悪だったね。ねぇ、GV」
「……何?」
「私の残った力で、貴方を空の向こう……元いた世界に帰してあげる」
「それは……!」
45が声を上げる。
……この一件が終わった後、ボクをどうするかは……何となくだけど、分かってしまう。
「ごめんなさい」
「……まあ、そうよね。残ったらどうなるかなんて分かり切ってるわよね」
「……45」
「はいはい。そう言うの良いから。上には戦死したって伝えとくわ」
「……ありがとう」
「早く可愛い妹分を返してくれないかしら。ほんと、GVに会ってから非日常の連続よ」
「GV」
今度は。416が口を開く。
「貴方が来てから、まぁ楽しかったわ」
「そっか」
「GV〜またね」
「11も、ありがとう」
「それじゃあGV。私と共鳴して……空を目指して」
「……うん」
ナイン……シアンが、謳う。
「45」
「何?」
「ナインに、よろしく」
「………………ええ」
解けない心、溶かして二度と。
離さない、その手を。
「シアンは……」
「私は、行けないの」
「……そう、なんだ」
せっかく、こうして会えたというのに。
「GV……オウカの傍に、居てあげて」
「………………っ」
ボクは、空を目指して地を蹴った。
――――――――――
「ナイン、ナイン」
「う、ううん……はれ?45姉……」
名前を呼ばれて、意識が戻ってくる。
「大丈夫?ナイン」
「うん、大丈夫だけど……私、何が」
「鉄血の攻撃で一時的にシャットダウンしてたみたい」
45姉が指さした方には、バラバラになった鉄血の量産型が散らばっている。
「……そうだっけ」
「そうよ。しっかりしてよ?まだ任務は終わってないんだから」
45姉に手を引かれて立ち上がる。
全身のチェックを素早く済ます。
特に異常は無いみたい。
「……こいつら、何で動いてたんだろ」
「さぁね。こんなのの究明はペルシカにでも投げちゃえば良いのよ。あーあー、こんな辺鄙なトコに来たのに何も手掛かりがないなんて」
45姉がボヤくのを聞きながら、ふと。
「そうなのかな、G―――――」
あれ?
だれだっけ。
「45姉」
「なーに?」
「45姉、私、416、G11……これだけだっけ」
「もう、まだ寝惚けてるの?
「……そうだね」
――――――――――
目が覚めてから、一週間が経った。
どうにもボクはまる一日眠っていたらしい。
「心配しましたよ、GV」
「ごめんねオウカ……ちょっと疲れてたのかも」
テーブルの向かいに座る柔和な雰囲気の女性……オウカは、未だ心配の色の濃い表情をしていた。
「大丈夫ですよ、まだまだ……休む時間はたくさんあります」
「そうだね」
「それにしてもGV……夢でも、見ていたんですか?」
「夢……どうなんだろう。とてもやるせない気持ちだったけど」
「……GV、今日は天気も良いですし。出掛けましょう」
――蒼き雷霆の最前線 完
ご愛読ありがとうございました。