WA2000が最後に戦闘したポイントは司令部エリアの最北。
そこで囮となるよう数体の人形と残り派手に暴れているとのこと。
『まずはその位置まで前進してください』
「了解」
右耳にインカムがはまっている。
これは出る前にスプリングフィールドさんから渡された物だ。
何でも、試作段階だから相手がスプリングフィールドさんとしか通じないが。
「そっちの状況は?」
『こちらは気にしなくても大丈夫ですよ。撤退の準備は出来ています』
「奴らに勘付かれる前に戻ります」
自身の
ボクの身体はなんの重みも感じないほど高く飛び上がり、更に壁を蹴り上げ建物の屋上に躍り出た。
「…屋上に到着、敵影はなし」
『早いですね。流石最新鋭の人形です』
「違いますよ…ボクは人間です」
『?人間にそんな芸当は出来ないと思いますけど…』
それはそうだけど。
――と、出そうになった言葉を飲み込み、次の目的地を探す。
屋上は占拠されてはいないが、下層からの狙撃など留意することは多い。
長居はできない。
「…あれは、ロボット?」
屋上から戦場を一望する。
その中で一際目を引いたのが、四本足の装甲車のような機械。
『…何ですって。GV君、それの詳細な情報を』
「機体下部に大型の…アレはチェインガン?」
『マンティコアだわ…!鉄血の装甲機械!ライフルなら装甲を抜けるけど、一緒に居るハンドガンの子たちが危ない…!!』
あの四本足はマンティコアと言うらしい。
ハンドガンの子、と言うのがWA2000の護衛戦力の事だろう。
「要はアレさえ壊せば後は何とかなりそうですか?」
『撤退ルートはこちらから確認できませんが、進路上の鉄血は粗方GV君が排除している筈です』
「了解!」
脚力を強化して、走る。
そのまま屋上から飛び上がった。
空中で雷撃鱗を展開、落下スピードが緩やかなものになる。
足元にいた鉄血の人形達がこちらに気が付き、手にした得物で銃撃をしてくるが雷撃鱗に実弾は無力だ。
そのまま着地、交戦ポイントは目と鼻の先だ。
「敵の数が多い…蹴散らす!」
恐らく籠城しているであろうトーチカを発見。
まだマンティコアは後方に居るが、その随伴兵の人形達はトーチカに殺到している。
展開している…女の子達がハンドガン片手に応戦していた。
「伏せろ!」
「なっ…ガンヴォルト!?」
「迸れ!
閃く雷光は反逆の導
轟く雷吼は血潮の証
貫く雷撃こそは万物の理
「ヴォルティックチェーン!!」
周りから鎖を召還する。
次々と鉄血人形達に、突き刺さり、絡まる。
鎖が雷へと変わる。
鎖の犠牲者たちは、全て雷撃に焼かれていく。
「…ここまで多い相手に使ったこと、そういえばなかったな…」
「ガンヴォルト!何でアンタここにいるのよ!?」
「WA2000さん…良かった、離脱しますよ」
トーチカからサイドテールが飛び出す。
目標人物のWA2000だった。
「離脱って…出来ないわ、そんな事」
「出来ない…それはどうい」
言葉が止まってしまった。
今まで考えていなかった事が、目の前に叩きつけられてしまう。
何故、彼女たちが武器の名前で呼ばれているのか。
何故彼女達のような少女が銃を持ち人形と戦っているのか。
聞かなかった。
聞けなかったのだ。
…WA2000の左足は、膝から先が無くなっており、赤い…血ではない液体が滴り、鉄血の人形達と同じようなケーブルやパーツが飛び出ていた。
「…ガンヴォルト?」
「…キミも、人形…だった…?」
「え、何を言っているの…?」
「ワルサー!ヤバイわ!もうマンティコアが来る!」
「…ここまで、ね。ガンヴォルト、貴方なら逃げ切れるわ…理屈は知らないけど、普通とは違う人形みたいだし」
私達みんな、もう逃げられないしね。
そう続けた彼女の顔は、寂しそうだった。
周りを見る。
ハンドガンを持っている子たちも、よく見れば片腕が無かったり、脇腹を抑えていた。
…この子達は、逃げられないから、せめて時間を稼ごうとしていたのだ。
「私達のデータはI.O.Pのデータバンクに保存されてるから、このボディが壊されてもまた復活できるわ…まぁ、何も覚えてないけどね」
ああ、どうしてボクの目の前には、助けたいと思う存在が多いのだろうか。
「…駄目だ」
「ガンヴォルト、さぁ…行って!」
「駄目だ!!」
もう二度と、目の前で死なせて堪るものか!!
もう絶対に、差し出した手を離したりするものか!!
「ボクはスプリングフィールドさんからキミの、キミたちの救出を依頼されている!絶対に連れて帰る!」
「どこの誰か知らないけど、こんな状況で…ひっ!?」
隣に居たハンドガンの子の前で雷撃鱗を展開。
顔の目の前で弾丸が阻まれて顔面蒼白になる。
『GV君!?WA2000は?!』
「発見しました。けど、足を負傷しているので動けません…マンティコアを迎え撃ちます」
『…出来るんですね』
「勿論」
『その周囲を掃討できれば、回収部隊が送れる筈です…どうか、死なないで』
通信が切れる。
その場に居る人形達に告げる。
「全員トーチカの中に退避して。アレは、ボクが片付ける」
「何を言って…」
「良いから、早く!!」
「……………判ったわ」
「ちょっ、ワルサー!?」
「そこまで言うなら、助けてもらいましょう…もう一度」
彼女は、手を痛いほど握り締めていた。
悔しさを紛らわせる様に。
「こんな
「…………」
ハンドガン達は、大人しくトーチカに入っていった。
「ガンヴォルト」
「…何?」
「ありがとう…絶対、忘れないわ」
その表情は、諦めに満ちていた。
その言葉に、返事はしない。
目の前のマンティコアに向き合う、そして、啖呵を切る。
今までも、そしてこれからも。
目の前の敵を貫き滅ぼす為に。
「こんな理不尽な結果になんて、させるものか!!」
「迸れ!
次回、VSマンティコア。
彼女達が人形だと知ってしまっても、蒼き雷霆は止まらない。
自分の守りたい物の為に今まで戦ってきたのだから。
それが何度、哀しみに満ちた結果だとしても。