時止めメイドと黒い玉   作:ばるばろさ

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11、あばれんぼう星人、おこりんぼう星人

 

 

 

「惑わされるな! これは人殺す武器ぞ!」

 

ガンツの情報提供の後、いつも通りに出てきた武器の中でXガンーそう加藤が名付けたーとレーダーを私が取ると、坊主が怒鳴った。流石に鬱陶しくなって睨み返すと、坊主は少し黙ったが、やがて低い声で、「今に地獄に堕ちるぞ……」と呟いていた。

 

それに構うのも面倒なので、無視して着替えのために部屋から出ようとする。が、外には玄野と黒髪の女がいるということを思い出した。

 

彼らにこの部屋に戻ってもらってその間に着替えればいいか、と思ってドアノブに手をかけたとき、ガンツの後ろの扉が目に入った。

 

(そういえばあの扉、一回も開けてないような……)

 

ネギ星人の時も田中星人の時もあのドアは開けず、皆外の廊下で着替えていた。

 

廊下で1人ずつ着替えるのは流石に非効率的だし、更衣室のようなものはないのだろうか、と思ったこともあったが、ひょっとするとあの部屋が更衣室なのではないか。

 

私がそのドアを開けてみようと取っ手に手をかけると、抵抗なく開いた。

 

「………?」

 

部屋の中には、いくつもの刀の柄、そして中央には黒光りする巨大な円形の物体があった。座席がついているのでおそらく乗り物なのだろうと見当はついたが、動かし方が分からない。

 

私はひとまず服を全て脱いでスーツに着替えた後、そこにあるものを調べることにした。向こうの部屋からは念仏やスーツを着るように勧める加藤の声が聞こえてくるので、時間的猶予はまだあると思い、私はひとまず刀の柄を拾った。

 

「……これも武器かしら?」

 

しばらくためつすがめつしていると、柄の側面に、ボタンのようなものがついていることに気がついた。かちり、と押してみると、柄から刃の部分が静かに滑り出てきた。

 

「剣……いや、刀か」

 

刃の部分はボタンを押し続けると際限なく伸び、部屋の向かいにまで達し、それすら越えて伸びようとしていた。どうやらこの刀の性質は、刃渡りを自由に変えられることらしい。その代わり、刃を伸ばせば伸ばすほど重みが増している。おそらくスーツを着用していなければ、自在にこの刀を振るうことは難しいだろう。

 

しかし何にせよ、この刀も何かに使えるかもしれない。そう思って刃を引っ込め、左手に持つと、部屋から、

 

「うおっ!? なんだ? 消えてるぞ!」

 

「見たか! 今からお前らは地獄に堕ちるのだ!」

 

 などなど、声が聞こえてくる。転送が始まったのだ。やがて向こうの部屋から誰の声も聞こえなくなると、私の体も消え始めた。

 

 

 

 

 目を開けると、寺の門前だった。新規メンバーはあの会社員と西を除いて、全員が集まっている。西の方はいつも通りどこかに潜んで獲物を横取りする機会を虎視眈々と狙っているに違いない。会社員はおそらく帰ろうとして爆死したのだろう。その証拠に新規メンバーはおとなしく、敵がいるであろう寺の中に突入するために門を開けようとする加藤たちに従っている。

 

 しかし扉は固く閉ざされているようで、加藤や玄野がいくら押してもびくともしない。やがて玄野はしびれを切らし、銃を門に向けた。

 

「時間がないし……門を壊そうぜ」

 

 玄野が裏側に閂があると思われる中央部分を撃つと、ばきゃっ、と木材の弾け飛ぶ音が聞こえ、門が揺れる。

 

「よし、開いた!」

 

 加藤が押すと門はゆっくりと開いていく。後ろで坊主が騒いでいたが、誰も相手にしていなかった。

 

 私も寺院に突入すべく門から中に入ろうとしたが、途中で、左右に恐ろしい形相の巨大な像に気づき、立ち止まる。するとちょうど振り向いた加藤が不思議そうに訊いてきた。

 

「咲夜、どうした?」

 

「ちょっと待ってください。この像……」

 

 ガンツの情報にあったあばれんぼう星人とおこりんぼう星人に酷似している。私は念のため、あばれんぼう(?)の足に向かって数回引き金を引いた。

 

すると、ぶじゃっ、と肉の弾ける音がして、像の足が吹き飛ぶ。骨が露出し、自重をささえられなくなった像は叫びながら、倒れてくる。

 

「うおおおっ!?」

 

 門を通過する途中だったメンバーは、倒れてくる巨像を見ると、慌てて走り出した。私も駆けて安全地帯に入った瞬間、あばれんぼう星人の頭に向けて、何度も撃つ。

 

 するとあばれんぼうの顔面は吹き飛び、ごとりと倒れたまま、動かなくなった。

 

「今のが……星人?」

 

 岸本が呟くと、それに応えるかのようにもう1体の星人ーおこりんぼう星人が動き出した。

 

「向こうまで走れ!距離を稼ぐんだ!」

 

 加藤の指示で、皆が一斉に走り出す。が、その中で私と玄野は、そこに立ったまま、おこりんぼう星人が来るのを待ち受けていた。

 

 

 

「ちょっと、リーダー!玄野くんと1人、取り残されちゃってるよ! どうするの?」

 

 そう言われて、俺は門の方を振り返った。見ると、門の前には、黒髪を後ろで編み込んだ彼女ー桜丘というらしい、が言った通り、計ちゃんと咲夜が銃を持って立っていた。

 

「加藤君……」

 

 岸本が不安そうにこちらを見る。

 

「いや……あの2人なら多分……大丈夫だ」

 

 計ちゃんも咲夜もこれまでの戦いで生き残って高得点を取れるほどの実力の持ち主だ。簡単に負けるはずはない。

 

「おい、なんかあっちから来るんだけど」

 

「なに?」

 

 ジャケットを着た2人組が示した方向を見ると、そこには1体の仏像がいた。

 

「ひじゃむぬるくろまにまにみずらにほにぬのだろう」

 

 意味不明な念仏を唱えているそれは、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

 

「敵の新手だ! スーツ着てない奴は下がれ!」

 

 

 

 

 

「おおおおっ!」

 

 先に動いたのは玄野だった。両手に銃を持ち、おこりんぼう星人に突進していく。おこりんぼう星人はじろりと向かってくる玄野を見下ろすと、手に持っている巨大な独鈷のような棍棒を振り上げ、力任せに薙ぎ払った。

 

「おわっ!」

 

 巨大な質量の生み出す猛烈な突風に、玄野の姿勢が崩れる。そして、そこにおこりんぼう星人の巨大な棍棒が振り下ろされた。がっ、と鈍い音が響き、攻撃をうけた玄野はその威力を殺すまでに数メートル近く石畳の上を滑った。

 

 私は玄野が攻撃を受け切ったと判断した瞬間、玄野に棍棒を叩きつけて伸びきっている巨像の腕に向かって、何度も引き金を引くーのではなく、玄野が戦っている間に時間を止め、伸ばしておいた刀を振りかぶった。

 

「シッ!」

 

 短い気合を発し、スーツのパワーをのせて斬り下ろす。すると次の瞬間、おこりんぼう星人の右腕が肩から離れ、痙攣しながら鮮血を噴き出していた。

 

 怒り狂い、叫ぶ巨像は残る左腕を私に伸ばしてくる。しかしその動作は緩慢で、続く私の攻撃を許した。2度目の斬撃はおこりんぼう星人の両足を切断し、空中に威力を散らす。

 

 両足を失ったおこりんぼう星人はついに膝をついた。

 

(これなら、頭を直接狙えるー)

 

 私は左手を刀からはなし、腰の銃を構える。しかし私の指が引き金を引く前に、おこりんぼう星人の顔が消し飛んだ。倒れこんでくるおこりんぼう星人を避ける。おそらく玄野が撃ったのだろう、そう思ったが、棍棒を受け止めていた玄野が身を起こしながら訊いてきた。

 

「今のは……咲夜がやったのか?」

 

「え? 玄野さんが止めをさしたのかと思ったんですが」

 

 私たちは少し首をかしげたが、よく見ると寺院の屋根に、あの寡黙そうな男が銃を構えて伏せていた。

 

「……多分あそこから狙撃したんだ」

 

「ここまでかなり離れていると思うんですが……なかなかの腕前ですね」

 

 私も少し練習したが、あれほどの距離から当てられる自信はない。もしこの戦いであの男が生き残れば、今後は強力な競争相手になるかもしれないーそう思いながら剣を通常の長さになるまで引っ込めると、玄野が不思議そうな顔をした。

 

「それ……どこにあったんだ?」

 

「ああ、あのガンツの後ろの部屋に置いてあったんです。自分の分しか持ってこられなかったんですけど」

 

「ふうん」

 

 話していると、いつのまにか玄野と私は寺の奥にたどり着いていた。しかし仏像たちの新手が来たらしく、激しい戦闘が起こっていた。

 

「……玄野君! 手伝って!」

 

 仏像をキックで蹴り飛ばした黒髪の女が叫ぶと、玄野は「おう!」とそれに応え、飛び出して行く。仏像たちの数は多かったが、見ているとスーツを着ていなくてもなんとか戦える、弱い相手のようだった。

 

「ぎゃあああ!」

 

ーしかしそう思った瞬間、叫び声が上がった。見ると、あの坊主が槍に刺し貫かれ、目を白黒させている。傷の深さからして致命傷だろう。しかも他のスーツを着ていないメンバーの動きが悪くなり、押され始めている。

 

「弱くても油断できないってこと……ですか」

 

 私が呟いていると、いつのまにかずらりと仏像たちが私を取り囲んでいた。

 

「……誰かが囲まれてるぞ!」

 

 眼鏡男が仏像たちに囲まれている私に気付いたらしく、加藤に言った。ーおそらく彼らは間に合わないだろうが。

 

 そこで私は素早く周囲に目を走らせ、数を確認した。

 

(1、2、3……4体か)

 

 徐々にその囲みを狭めていく仏像たちを見ながら、私は落ち着いて間合いをはかる。意味不明な念仏を唱えながら迫ってくる仏像たちは気のせいか、憎しみのこもった眼で私を見ているように見えた。そして、仏像たちが十分な距離まで踏み込んできた瞬間、時間を止めた。

 

 ぴたりと仏像たちの動きが止まり、全てが静止した世界の中。私は体を巡らせ、刀を一閃した。

 

「そして時は動き出す」

 

 ごとり、と目の前の仏像の上半身が、下半身と分離して落下する。残った3体の仏像も同じ運命を辿り、ぼとぼとと粘液質の血液を迸らせながら次々と倒れる。しかし間近でふきあがった血を体に浴びてしまい、べっとりと顔が血で汚れてしまう。

 

 顔を拭い、再び戦場を見渡した。

 

 先ほどまで苦戦していたメンバーは後ろへ退避し、玄野や黒髪の女、加藤、岸本、北条が中心となって仏像たちと戦っており、スーツのおかげで戦いは苦も無く進んでいるようだった。

 

「……おおっ!」

 

 玄野が最後に恐ろしく足の速い仏像を倒し、戦闘は終了した。加藤たちは汗や血をぬぐいながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。加藤は私に気付き、話しかけてきた。

 

「……今回は計ちゃんと咲夜さんがいなかったら危なかったな。あの外の仏像を倒してくれて、本当にありがとう」

 

「こちらこそ。……でも、まだ勝利を祝うには早すぎるのではないでしょうか」

 

 私がレーダーを見せると、加藤は顔をしかめた。

 

「……確かに、敵がまだ残ッてるな……」

 

「まだいるのか!?」

 

 玄野が聞きつけ、レーダーを覗き込む。そこには2つの点が表示されていた。まだ2ヶ所に敵が潜んでいるということである。

 

「……仕方ないな。前みたいに2手に分かれよう。こっちに近い方は……」

 

 加藤が何かを言いかけたその時、みしみしみし、と建物の倒壊する寸前のような、不吉な音を聞いた。私たちがばっとそちらを向くと、屋根を盛り上がらせ、壁を破り、現れたそれーおこりんぼうたちとは比べ物にならないほど巨大な仏像が、私たちを見下ろしていた。

 

「……計ちゃんと咲夜さんはこっちを手伝ってくれ! 多分こいつがボスだ! もう1つの方は、そうだ……ホ、北条とサダコ、あと誰か行ってやってくれ!」

 

 加藤が素早く指示を出すと、北条は頷いてばっと走り出した。サダコもそれにならい、さらに柔道家と2人の若い男が走っていく。

 

「よし……いくぞ」

 

 集まっているのは私の他には玄野、加藤、岸本、黒髪の女、太った男、眼鏡男の6人だった。太った男の名前はよくわからないが、加藤は名前を教えてもらったのか、さきほどの戦いの中で何人かの名前を叫んでいた。玄野の隣にいる女は桜丘、眼鏡の方は宮藤という名前らしい。

 

「……足を狙うんだ!」

 

 加藤の指示通り、大仏の足に向けて8丁の銃が、大仏の足に集中する。直後、大仏の足の表面が吹き飛ぶが、そもそもこの巨体なのでそれほど痛痒を感じていないようだった。

 

「くそっ!」

 

 玄野が毒づいて、大仏の顔に向かって一発撃ち込むと、額にあった白毫が消し飛ぶ。すると、これまでの仏らしい温和な顔つきが歪み、地上にいるこちらを睨みつけた。

 

「お、怒ッた……!」

 

 大仏は咆哮を上げると、私たちに向かって、拳を叩きつけた。

 

 

 

 




標準装備のわりに最後まで使われることの多かったガンツソード。個人的には吸血鬼戦で使われてたステルスとの組み合わせが好きですね。
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