時止めメイドと黒い玉   作:ばるばろさ

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16、秘密の告白

 

 

 

「……それで、その和泉って奴はガンツのことを知ってたのか?」

 

 加藤は先日訪れた奇妙な男―和泉の話を聞いて、眉を寄せた。今日、私たちはそれぞれ武器を持ち寄って性能の確認、訓練などを行う予定で、玄野の家に集合―といっても来る必要があるのは加藤だけだが—ということになっていた。

 

「……知らねえよ。俺が学校でヤンキーどもに殴られて平気なの見て、ガンツのメンバーかって聞いてきたんだけど……お前喋った?」

 

「いや。てか殴られて大丈夫なのか?」

 

「スーツ着てるから問題ねー。それでさ、和泉がなんか教えてくれたんだが、見てくれよこのサイト」

 

 玄野は机の上に置いてあったパソコンを開くと、その画面を加藤に見せた。

 

 

『黒い玉の部屋

 

 その部屋には黒い球があった。直径1mほどのチタンの様な光沢の光るドス黒い球だ。この球には様々な武器や道具が納められていてその性質はどれも現代科学の範疇から外れている。

 

 これらを使用する人間は神にも悪魔にもなれるだろう…それだけの能力と魅力をこの球は秘めている』

 

 

「何だこれ。ガンツってWEBにも進出してんのか?」

 

「ちげーよ。……ほら見てみろ。戦いの様子が記録されてるんだけど……田中星人のところで更新ストップしてんだろ。サイトの立ち上げ日がちょうど1年前だし、これを書いてたのは西だ」

 

「……あの部屋のことを喋ったら頭パーンって言ってませんでしたっけ? こんな風に公開するのは良いんでしょうか」

 

「さあ。皆小説だと思ってるからセーフなんじゃね? それに西の言ってたことが全部本当とは限らねーだろ」

 

「そうですかね……」

 

 人間は嘘をつくとき大抵何かしらの目的があるはずである。もちろん特に理由もなく嘘をつく者もいるが、西があの状況で嘘を言う必要はそれほどない。今となっては実際にそれをやってみる以外に確かめようがないが、ガンツのことを口外してはならないというルールは守っておいた方がいいだろう。

 

「それでさ、この『小説』の中に俺とか加藤とか咲夜とか、ばっちり出てくるんだよね……」

 

「それで感づいたんだろ。「玄野計」とかなかなかない名前だろうし、それに家に来たってことは咲夜さんにも会ったんじゃないか?「玄野計」と「十六夜咲夜」が2人ともいるんだから、その和泉って奴はガンツの存在を完全に信じ始めるかもな」

 

「……面倒ですね」

 

 最近は銃を撃つ訓練を廃工場などでこっそりしているのだが、和泉につけられて現場を見られでもしたら、私の頭が吹き飛ぶかもしれない。和泉は早めに何とかしなくては。

 

「……いっそあの人を銃で撃って私たちの仲間入りさせるのはどうでしょう。邪魔者は消えますし、和泉さんも気になるガンツの正体が分かって一石二鳥ですが」

 

「流石にそれはちょっと……それに死んだら絶対あの部屋に行くってわけじゃねーし」

 

「ジョークですよ、ジョーク」

 

「じゃあ真顔で言わないでくれ。たまーにすげえブラックなのかますよなお前」

 

 最近、口から滑り出た思い付きをジョークと言ってごまかす術を身に着けてから、玄野からはそういう認識を受けている。

 

「……まあ、その和泉って奴については後で話そうぜ。武器の情報交換とかしときたいんだが……」

 

 加藤がちらりと時計を見て言った。今日は休日だが、アルバイトに行く予定があるのだろう。あまりだらだらとしてはいられない。玄野と私は頷いた。

 

最初は加藤が鞄から捕獲用の銃を取り出した。

 

「俺はこれ……捕獲用の銃……ワイヤー発射するし形がそれっぽいから俺はYガンって言ってるんだけど、上トリガーにロックオン機能がある。ロックオンしとけば適当に撃っても、確実に当たるみてーだ」

 

 なるほど。そのために2つトリガーが分かれていたのか……と私が感心していると、玄野が自分のXガンを見て、「お、じゃあこれもロックオンできるのか」と呟いていた。

 

「じゃあ私は、この刀の機能を。と言っても玄野さんは知ってますか。刃の部分が自由に伸びます。結構切れ味ありますし、ちょっとした建物、例えば前回行った寺のお堂とかは破壊できました」

 

 加藤は私からそれを受け取ると、「あれ咲夜さんのせいだったのか」と呟きながら刀をためつすがめつしていた。

 

「うーん……やっぱ俺はYガンかな。ちょっとこの刀は扱いづらいし、Xガンで殺すのもあんま好きじゃないしな」

 

「私は銃が少し苦手ですし、刀を持って行きたいです」

 

 玄野は一応刀をお守り代わりにして基本は大型のXガンと通常のXガンを使うことにしたらしい。選ぶ武器は全員前と同じだったが、皆が同じ武器であるよりかはマシだろう。

 

「……まあ訓練は和泉さんをどうにかしないとできませんから今度の機会にするとしましょう」

 

 2人とも特に異論はないようだった。命を守るための訓練を見られて即死など、私の「ブラックジョーク」よりも笑えない話だ。そのうちどこか人目のない訓練場所を探さなくてはならないーそう思っていると、玄野が手を挙げながら口を開いた。

 

「そーいえばさあ、あの西のサイト見てて、分かったことと、妙なことが1つずつあるんだ」

 

「何ですか、玄野さん?」

 

「サイト内の記録で、一度星人の全滅に失敗したことが書いてあったんだ。それによると、制限時間内に星人を全滅させられなかった場合のペナルティは今までの点数が0になることで、次のミッションで15点を取らなければ死ぬってことだ」

 

「……では、強すぎる星人が出てきた場合は、逃げるという選択肢もあるというわけですね」

 

「そーゆーこと。それと、もう1つの「妙なこと」は咲夜についてなんだけど」

 

「私、ですか?」

 

 聞き返すと、玄野はまたパソコンを操作して、文章を見せた。

 

「いざよいさくや(おそらく漢字は十六夜咲夜)がねぎ星人との戦闘や田中星人との戦闘でたびたび瞬間移動のようなことを行っている。100点クリア者である可能性があり」

 

(そういえばあの人感づいてましたね……)

 

 西には生きている間にかなり迷惑をかけられてきたが、死んでからも私に迷惑をかけてくるらしい。銃を突きつけてきたり田中星人との戦いに巻き込んできたりしてきたので、ガンツのことを教えてくれたことをプラスとしても十分お釣りがくるレベルで迷惑だった。

 

「そういやあの時も、何か俺の手の中から武器が消えて咲夜が持ってたよな。あれ、どういうわけなんだ?」

 

「それは……」

 

 私は口ごもった。私が能力について隠していたのは西の存在があったのと、自分だけで点を取ってさっさと抜けるのであればむしろ教えない方が優位に立てるからだった。

 

しかし現在、西は死に、私は本当の意味で帰るために協力して生き残り続ける道を選んでいる。協力のために、能力は明かしておいた方がいいかもしれない。彼らが情報を悪用しないと信用できるのであれば。

 

「………」

 

加藤を見る。彼は最初から一貫して正義漢ーというかお人好しだった。彼は信用できる。

 

そして玄野。……一緒に生活していれば分かるが、特に危険な思想もないし、むしろ日常生活では頭がからっぽである。加藤ほど信用できるわけではないが、私の情報を明かしたところでどうこうできるとは思えない。

 

私は意を決し、口を開いた。

 

「信じろと言ってもすぐには難しいでしょうが……私は端的に言うと時間を止めて、その中で動くことができるんです」

 

「……はあ?」

 

 玄野は予想通りの反応で、何を言っているんだとでもいいたげな顔でこちらを見てきた。

 

「そういえばねぎ星人の時もいつの間にか突き飛ばされてたし、田中星人のときもちょくちょくそんなことがあったな。ステルスの応用かと思ってたけど」

 

「じゃあ実演してみせましょうか。例えばこの漫画……」

 

 私は時間を止めて、近くにあった漫画を加藤の頭に載せる。

 

そして時間停止の効果が切れた瞬間、加藤は自分の頭に漫画が載っていることに気付いた。

 

「……すげ……瞬間移動」

 

「だから時間を止めてるって言ってるじゃないですか。瞬間移動なら加藤さんの漫画本を頭の上に載せられるわけありませんし。あと分かりやすく言うと……」

 

そう言って周りを見回すと、ちょうどジュースの入ったコップが玄野の前にあるのが目に入った。

 

「お借りしてもいいですか」

 

「いいけど……何に使うんだ?」

 

玄野の目に不安が浮かぶ。やはりいい勘をしている。私はにっこりと笑って、コップの中身を玄野に向かってぶちまけた。

 

「何やって……!」

 

玄野にジュースが当たる寸前に時を止め、残ったコップですくいとる。液体は玄野に向かって一直線になって固定されていたので回収は用意だった。

 

時が動き出したときには、すでに空中におどりでたジュースはおとなしくコップの中に納められていた。玄野はそれを見て、大きく目をみはった。

 

「信じてくれましたか?」

 

「……ああ。確かに時間でも止めないとこんなことは無理だ」

 

 加藤はようやく私の能力を認めてくれたようだった。玄野も納得したらしく、改めて物珍しいものを見るような目をしながら、訊いてきた。

 

「どうやってそれを…時間を止めてるんだ?」

 

「さあ。自分でもよくわかりません。でも、玄野さんだってどうやって呼吸するのかなんて聞かれても答えられないですよね。それと同じですよ」

 

そう言うと、玄野はうーむと唸り、

 

「……てか、何で最初から教えてくれなかったの?」

 

「訊かれなかったので」

 

 私の答えを聞いて、玄野はやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。

 

「でもその能力があれば、千手みてーな再生能力がある奴以外なら楽勝ってことだよな。……頼りにさせてもらうぜ」

 

「ええ……こちらもです」

 

 その後、それぞれ情報交換という名の世間話をしていると、加藤が「俺そろそろバイトあるから帰るわ」と言ったので、集会はお開きということになった。

 

 

 

 

 

 

 新しい朝が来た 希望の朝だ 喜びに胸を開け 大空あおげ……

 

「……はっえーな、次のミッション」

 

「合同訓練する暇もありませんでしたね」

 

 集会から3日が経った夜、私たちは早くもガンツの招集を受けた。最初に転送されたのは私、次に玄野、最後に加藤という順番で、新規メンバーはなかった。

 

「俺ら3人だけだが……大丈夫か」

 

 加藤は不安そうな顔で、また転送されてくる人がいないかと思っているのか、ちらちらとガンツの方を見ている。

 

「今日はたまたま死人がいなかったか、ガンツが3人でも大丈夫と判断した敵なのでしょう。あんまり力みすぎるのもよくありませんよ」

 

「そうだといいな」

 

『てめえ達は今からこの方をヤッつけに行って下ちい

 チビ星人

・特徴 強い、根にもつ

・気にしてること 背の低さ

・特技 人マネ、心を通わす』

 

 チビ星人は血管の浮かんだ翼のようなものが背中についている人型の星人だった。もっとも人型と言っても顔や体の特徴は人間とはかけ離れていて、似ても似つかなかったが。

 

「ははは。弱そー……でもどうせボスがいるか実はこいつがめちゃくちゃ強いパターンだろ」

 

「でしょうね。油断はしない方がいいかと」

 

「ああ……生きて帰るぞ」

 

 

 

 

 私たちが転送されたのはどこかのビルかマンションの屋上で、使えないらしいソファやテレビが辺りに放置されていた。私はひとまずチビ星人の位置を探るためにレーダーを見た。

 

「えーと……向こうのビルに1体いますね。それと……3……4……全部で10体います。それ以外は今のところ反応ありません」

 

「分かった。じゃあそこへ行こう」

 

「行こうって……このビルとビルの間を飛んでいけるか?」

 

 加藤は下を覗き込んでいた。確かにかなりの高度がある。落ちれば即死とはいかないにしても、スーツの耐久力は大幅に下がるだろう。

 

「……助走つければ行けると思う。俺がやってみる」

 

 玄野は目標のビルと正反対の方向へ歩いていくと、そこから助走をつけ、大きく跳躍した。

 

「やっぱ怖ええええ!」

 

 叫びながら、玄野は向こうのビルに向かって吸い込まれていく。勇気があるのか無いのか分からないが、とにかくビルからビルへ飛び移ることは可能らしい。

 

 同じようにして私と加藤が目的のビルに飛び移ると、すでにチビ星人は私たちの存在を察知していたらしく、貯水タンクの上に乗って、こちらを見下ろしていた。

 

「……情報通りだな」

 

 加藤が呟くと、チビ星人は貯水タンクの上から飛び降り、私たちの目の前に着地した。そして銃を構える私たちを見ると、近くの壁を素手で殴りつけた。

 

 ばごっ!と壁に放射状のヒビが入る。なかなかの腕力を持っている。当たればかなりのダメージになるはずだ。当たりさえすれば、の話だが。

 

「デモンストレーションか……でも、こっちには銃がある」

 

 玄野がXガンの引き金を引こうとした瞬間、チビ星人の姿が消え、いつの間にか数メートル右にずれていた。遅れて壁が弾ける。玄野は避けられたことを知ると、チビ星人に向かって照準し直し、何度も撃つ。

 

「おおおっ!」

 

玄野の連射をことごとく回避すると、チビ星人は玄野の懐に入りこみ、殴り飛ばした。壁面に叩きつけられた玄野は埃を払いながら立ち上がったが、その顔には驚きの色があらわれていた。

 

「なんだ、こいつ……速いし、強い。咲夜……いけるか」

 

「了解です」

 

私は時間を止めると、Xガンでチビ星人に向けて数回引き金を引く。どれほどパワーやスピードがあっても、時間の止まっている間はどちらも意味をなさない。チビ星人が単なるパワータイプであれば、私の敵ではないのである。

 

時間が動き出したとき、チビ星人の全身が四散した。弾けとんだ肉体に秘められていた血液が即席の血の池を作りだし、目の前でわだかまる。

 

千手観音のような再生能力は持ち合わせていないようで、復活することはなかった。

 

「終わりました。次、行きましょう」

 

「あ、ああ……」

 

加藤はレーダーに目を落とし、眉をひそめた。

 

「………あれ? 反応1つしかねーぞ?」

 

「1つ? 残り8つはどこに行ったんですか?」

 

加藤はレーダーを見ることがあまりないので見間違えたのではないだろうか、とレーダーを覗きこもうとした瞬間、辺りに目をやっていた玄野が、緊張を孕んだ声で呟いた。

 

「囲まれてるぜ」

 

私と加藤が顔を上げて周りを見ると、そこには何匹ものチビ星人がたたずんでいた。おそらくここに密集していたので反応が1つに見えたのだろう。

 

『同胞はもう2度と動かない!許すまじ!』

 

奇妙な声が頭の中に響いてきた。

 

「玄野さん、なにか言いました?」

 

「いや…俺は何も言ってねえ。多分こいつらのテレパシーだろ」

 

だから仲間が倒されてすぐにわらわらと現れたのか、と納得しながら、私は銃を構え、チビ星人を狙う。

 

『お前たちを……破壊する』

 

チビ星人たちは私たちを睨み付け、握っている拳に力を込めた。

 

 

 

 

 




今回は誤字は無い!無いといいな……。あったらすみません。

いつも誤字を確認してから投稿はしてますが、チェックがザルかってくらいミスがあるので、今回は(改)をつけないことを目標に、きっちり書いてみました。


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