時止めメイドと黒い玉   作:ばるばろさ

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20、ダイナソーハンティング

 

 

 

「計ちゃん、上から来るぞ!」

 

「分かってる!」

 

俺はギリギリのところでトリケラトプスの攻撃を回避すると、刀で右足を斬る。

 

「グガアアッ!」

 

怒りの声を漏らしながら、トリケラトプスは両腕を振り上げ、俺に向かって叩きつけようとする。

 

しかし腕を挙げて無防備になったところに風が踏み込み、体当たりをかますと、トリケラトプスは軽々と吹き飛んだ。

 

「大丈夫か?」

 

「ああ……でもやっぱお前、ぶっ飛んでんな…」

 

咲夜の能力も初めて聞いた時は反則だと思ったが、風も生身でスーツを着た俺と戦えるという漫画のような身体能力だった。それがスーツを着ているのだから、トリケラトプス1匹くらいぶっとばしても、不思議には思えない。

 

加藤はしぶとく起き上がってきたトリケラトプスをYガンで拘束し、「上」へ送ると、こっちに近づいてきた。

 

「スーツ大丈夫か?」

 

「ああ。まだまだ余裕だぜ」

 

俺と加藤、風の3人は、これまででブラキオサウルス1体、トリケラトプスを2体倒していた。風が星人じみたパワーを発揮したのと、俺と加藤が戦い慣れしていたのもあって、楽に勝てた。寺で似たようなデカい相手と戦った経験も、今回の戦いで活きたかもしれない。

 

「まだ敵はおるんか?」

 

「ああ。だけどこっちに向かってきてるから、わざわざ移動しなくても良さそうだ」

 

加藤はレーダーに目を落としながら答える。そして数秒後、白亜期あたりをモデルにしているらしいジャングルのセットの中から、地響きをたて、「それ」が現れた。

 

ごつごつとした荒い皮膚に不釣り合いなほど小さい目。強靭な顎を持つ肉食恐竜ーティラノサウルスだ。しかも、2体いる。

 

「こいつもどうせ見かけ倒しだぜ。一気に始末してやる」

 

「そうか……?」

 

加藤はそういいながらもYガンでティラノサウルスの頭に狙いをつけている。そして俺たちがトリガーを引き絞ろうとした瞬間、ティラノサウルスの口から妙な光が漏れだしているのに気づき、思わず動きを止める。

 

「なんかやばい感じがせんか…?」

 

風も気づいたらしく、ティラノサウルスの口に目を釘付けにされている。

 

「計ちゃん! 嫌な予感がする。ここは、逃げー」

 

加藤が叫ぼうとしたその時、ティラノサウルスの口から、太陽のような炎の塊が発射された。

 

「あんなのってありかよ!?」

 

俺たちはすんでのところで炎球をかわすと、その太陽は熱気を振り撒きながら壁に激突し、どろどろに溶かしてしまう。

 

「やべえっ! これ当たったらスーツが意味ねーやつだ! 建物の中は回避が難しいから、一旦外に出るぞ!」

 

俺は加藤の指示に従い、風も名残惜しそうにティラノサウルスの方を見ていたが、建物から脱出することを決めたようだった。

 

「外は回避しやすいし、咲夜さんもいる。俺たちでまとめて当たればあいつを倒せるはずだ!」

 

俺たちは走って何とか建物を出た。しかしすぐに新規メンバーを見つけることはできず、そしていつの間にか起こっていた変化に、唖然としてしまった。

 

「なんだ、こいつら……」

 

大量の小型肉食恐竜ー確かヴェラキラプトルというやつだーが辺りを闊歩していた。加藤の「万が一」が当たり、外に敵が大量に出現していたのである。

 

「皆はどこだッ!?」

 

「あれじゃないんか?」

 

風が指差した方で、恐竜たちに囲まれながら懸命に戦う人間が何人か立っていた。しかしその数から察するに、すでにかなりの数がやられているのだろう。

 

「くそっ、こっちにいっぱい出てきてたのか」

 

加藤はそう言うと、真っ先にそちらに向かって走っていた。俺も新規メンバーを助けるために急行する。

 

移動する途中で襲いかかってくるラプトルを撃ち殺しながら近づいていくと、残していったメンバーとラプトルが死闘を繰り広げているのがはっきりと見えてきた。

 

「稲葉君っ!これ撃って!」

 

「わ、分かったッ!」

 

「桜井、こいつら右胸の心臓を潰せば楽勝だ」

 

「了解っす!」

 

すでに半数近くが死んでいたが、残ったメンバーはうまく連携をとりながら何とか押し潰されずにいた。レイカと鈴木が敵をおさえ、名前は知らないが背の高い男がへっぴり腰ながらもXガンで応戦している。そして咲夜は単身ラプトルの群れに斬り込み、周りに群がる恐竜を薙ぎ倒していた。

 

俺は走っている間に恐竜を1体ずつロックオンする。そしてだいたいの敵に対してそれが完了した瞬間に、引き金を引いた。

 

すると恐竜たちは一斉に弾け、内臓をぶちまけたかと思うと、すぐに死骸と化した。唯一ロックオン攻撃を免れていたらしい1匹も、咲夜に首をはねられて絶命した。

 

「……これで、終わりか?」

 

俺が訊くと、レイカは「まだあと1匹残ってる」と言って、街灯のそばにいる星人ーかっぺ星人を指差す。

 

「キューッ、キューッ!」

 

奴が叫ぶと、新規メンバーが怯えた顔になる。

 

「敵が来るかもしれません。あの星人が叫ぶとさっきの恐竜がやってくるんですが……」

 

しかし、新しいラプトルは現れなかった。全て倒しきっていたのだろう。そしてかっぺ星人は加藤によって捕獲、上に送られた。

 

戦いが終わると、新規メンバーは緊張の糸が切れたのか、へなへなと座り込む。ただ1人、咲夜が返り血を拭いながら、こちらに向かってきた。

 

「……すみません、加藤さん。全員は守れませんでした」

 

「いや、おれの判断ミスだ。いくら咲夜さんでも1人であの数の敵から皆を守れるわけないしな」

 

「そちらはどうでしたか?」

 

「こっちは数は少なかったけど、デカい奴が多かったな。ブラキオサウルスとか……あっ」

 

「どうしました?」

 

「忘れてた……後ろから追ってきてる奴がいるんだった」

 

加藤がそう言った時、建物の中から、のそり、とティラノサウルスが現れた。俺たちを追って、出てきたのだ。

 

「あんなのに勝てるの……?」

 

レイカが心配そうに呟き、鈴木のおっちゃんも呆気に取られてティラノサウルスを眺めていた。

 

「スーツを着てない人と戦いに慣れてない人は下がってください。私たちで仕留めます」

 

いつもと変わらない声の調子で言ったのは、咲夜だった。咲夜は俺に目くばせし、新規メンバーの方を見やる。皆を安心させろということだろう。

 

「……皆、安心してくれ。あんなのは見かけ倒しだ。ぜってー俺たちが倒すから」

 

加藤も頷いたので、パニックを起こさずメンバーの5人は下がった。しかし風はそこにとどまったままで、スーツ一丁で勝負するつもりのようだった。

 

「よし、行くぞ!」

 

俺たちは走り、現れた2体のティラノサウルスに突撃する。自然と加藤と風が左側、俺と咲夜が右のティラノサウルスの相手をすることになった。咲夜は走りながら、

 

「玄野さん。巨大な敵を相手どるときのセオリーは……」

 

「足から、だな! あとあいつはデカい火の玉を吐き出す! 気をつけろ!」

 

言うと同時に、その巨大な口腔から、炎の塊が発射された。俺と咲夜は素早く左右へ回避し、足元に向かって走る。

 

「おおおっ!」

 

俺が右足を斬り飛ばすと、同時に咲夜も左足を一刀両断にした。ティラノサウルスの巨体は足を置いてけぼりにして地面に突っこみ、叫び声をあげる。

 

すかさず俺は銃に持ちかえて頭を撃とうとした。が、トリガーを引く寸前、ティラノサウルスの頭は切り落とされた。転がっている頭の向こうから咲夜がこちらを見て、少し得意気に笑った。

 

「私が先でしたね」

 

「……本当にお前の能力反則だよな。今度は譲ってくれないか?」

 

「考えておきます」

 

そう言うと、咲夜はもう1体のティラノサウルスの方を見た。そちらでは加藤と風が戦っていたが、少しして風の拳で倒された。

 

「……2人とももう倒したのか」

 

走ってきた加藤は、俺たちのそばに転がる死体を見て、感嘆の息をはいた。

 

「これで今回のミッションは終わりなんですかね」

 

「……いや、分からない。今倒したのも2体いたし、ボスがまだ別にいるような気がするんだよな……2人とも、スーツ大丈夫か?」

 

加藤がそう言うと、咲夜は珍しく心配そうな顔をして、着ているスーツを見下ろした。

 

「さっきの恐竜の群れでちょっと無理したせいか、かなりダメージが蓄積してるみたいで……」

 

先ほど咲夜はラプトルの群れの中で鬼神のように刃を奮っていたが、流石に全ての攻撃を回避することはできなかったのだろう。

 

「そうか。もし本当に危なくなったらすぐに逃げてくれ。俺たちが何とかー」

 

加藤が言葉を続けようとしたとき、一際大きな破砕音がして、俺たちはそちらへ目を向けた。

 

「ブラキオサウルス……か」

 

俺が前に殺したのと同じ恐竜。だが、そのサイズは前とは比べ物にならないほど大きく、建物から飛び出していた。

 

俺たちがあまりの巨大さに圧倒されていると、和泉がパンダを抱えて建物の方から走ってきた。

 

「あ、和泉さん。生きてらっしゃったんですか」

 

「……俺のセリフだ。なんであんなに生き残ってる?」

 

和泉は俺たちと同じようにブラキオサウルスに目を釘付けにされている新規メンバーを見ていた。

 

「さあな。ところでお前、あいつとやりあってたのか?」

 

俺がブラキオサウルスを指差すと、和泉は何も答えずにパンダを置くと、ブラキオサウルスへ向かっていく。

 

「おのれ……小さき者ども……」

 

ブラキオサウルスは低く、ドスのきいた声で呟くと、刀を構えて飛びかかってくる和泉に向かって、鋭利な刃が上下についている首を振り下ろす。

 

赤い火花が散った。和泉は見えないほど速く振り下ろされる一撃を、刀で受け止めたのだ。

 

「……和泉さん、意外と目がいいんですね」

 

隣で見物している咲夜はのんびりとコメントしていた。

 

続いて横薙ぎ、右斜め上、垂直と降ってくる斬撃を弾き、和泉はブラキオサウルスとの間合いを詰めていく。そして4度目の攻撃を弾いた直後ー

 

「ハアッ!」

 

裂帛の気合いとともに、和泉はブラキオサウルスに斬りつける。完全に虚をついた攻撃だったーように見えたが、ブラキオサウルスの尻尾が和泉へ向かい、殴り飛ばす。

 

高々と宙を舞った和泉は、遠くの地面に落下した。よく見ると両腕が折れており、和泉は仰向けに寝転がったまま、痛みに呻いていた。

 

「……あれが、ボスだな」

 

加藤はそれを見上げ、圧倒されているようだった。前の大仏とどちらが大きいだろうかと思っていると、ブラキオサウルスはゆっくりと動き始めた。

 

「我が子を殺めた者ども…この身滅びるまで、滅してくれよう」

 

どうやら俺が殺ったのはあれの子供だったらしい。だとすれば、弱点もおそらく同じ腹だろうー

 

「計ちゃん、やべーぞ! あいつ、新しく入ってきたメンバーの方行ってる!」

 

加藤の言う通り、ブラキオサウルスは俺たちに見向きもせず、まっすぐそちらへ向かっていた。

 

「こちらに引き付けられませんかね」

 

「そうだな……」

 

あいつは子供を殺されたから怒っているのだ。だから最優先で殺したいと思わせるにはー

 

「俺だッ! 俺がお前の子供を殺した!」

 

叫ぶと、ブラキオサウルスの動きが止まった。そしておもむろにこちらを振り返り、目を開く。

 

「覚悟せよ……」

 

そう言うと、ブラキオサウルスはこちらに向かって移動を始めた。

 

「よし、引っ掛かった!」

 

俺たちは走ってブラキオサウルスを新規メンバーから十分遠ざけると、立ち止まった。

 

「で、どうするんですか?」

 

「あいつの腹に潜り込んで攻撃する。だけど、あの頭と尻尾を何とかしねーと無理だと思う」

 

俺が言うと、加藤はブラキオサウルスとの距離を確認しながら答える。

 

「咲夜さんは時間を止めて腹の下まで移動できるか?」

 

「……ちょっと難しいです。時間を止めると言っても止められる体感時間はそれほど長くないので、移動するどこかのタイミングで攻撃を受けます」

 

「じゃあ何とかしてあの頭と尻尾を防いで、その間に手の空いた奴が腹に潜り込んで倒すか」

 

「多分頭の攻撃はスーツでは防げないので、刀を持った私か玄野さんが引き受けないといませんね」

 

「マジかよ……」

 

あの超高速の連撃を、全て防ぎきらなければならない。無茶苦茶だ。

 

「いいですか、私と玄野さんしか防げませんから。それにここで踏ん張らないと、他のメンバーが危ないんです。協力してくれますよね?」

 

俺が少しビビったのを察したのか、咲夜は笑顔で、しかし執拗に念を押してくる。

 

「ああ……分かッたよ! やりゃあいいんだろ、やりゃあ!」

 

俺は銃を腰のガンホルダーに仕舞うと、刀を両手で持った。あの攻撃を防ぐのに銃は役に立たない。咲夜も常に持っているXガンは持っておらず、刀一本で勝負するつもりのようだった。

 

「計ちゃん、ブラキオサウルスがもうそこまで来てる! 俺たちは後ろから尻尾を押さえるから、正面から向かってくれ!」

 

ブラキオサウルスはすぐそこまで迫り、まっすぐと俺を睨んでいた。燃え盛る復讐の炎が、怪物の目をらんらんと輝かせている。

 

「上等だッ! ぜってー生き残ってやる!」

 

 

 




ガンツを読んでマジかよ、と思ったことの1つが博多=田舎扱いだったことですね。一応都会じゃけん! 東京に比べたらそうかもしれんけど、都会じゃけん!
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