長谷川千雨はペルソナ使い   作:ちみっコぐらし335号

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YSINB在住のIさん(年齢不詳)「――――っべー、うっかり間違うた場所に力送ってしもたわー。…………って何やこの土地、結界的な物あるやん! なら何も問題あらへんな!」
※似非関西弁翻訳





01.如何にして彼女は切り札を手にしたか

 

 人生最悪の日、という表現はよく見聞きする。昨今、巷に溢れていると言ってもいい。

 正直聞きすぎて「『最悪』のバーゲンセールかよ、ハードル低すぎるだろ」と思うこともある。

 だが『最悪』を称するだけあって、当人にとってはすこぶる嫌な出来事が一つ、或いは複数発生しているのだろう。

 

 はてさて、であるならば今日という日をどう形容すればいいのやら。

 

 長谷川千雨(ちさめ)の現実逃避は続いていた。

 

 事の始まりは一体何だったか。

 いや、そんなわかりやすい目印なんてなかった。

 

 ただ今日も、バカ騒ぎするクラスメイト共に呆れ、非常識を『常識』とするこの街に憤り、寮の自室で独りの生を謳歌していたはずである。

 

 自らが運営するブログを覗き、ファン達のレスポンスに口角を上げながら、次の衣装の計画を練っていたはずだ。

 

 それが、どうして。

 

「――――チクショウ、私が何したってんだ」

 

 一面の霧。

 四方を覆う実体なき壁。

 

 それが、千雨のいる場所の全てだ。

 

 誰もいない。

 何もない。

 

 虚無感を描け、とでも言われればこんな景色になるのかもしれない。

 

 どこなんだ、ここは。

 どうしてこんな所に。

 

 必死に脳内を検索するが、部屋を出た記憶もない。

 

 確か、録画しておいた深夜アニメを見ようとテレビを点けて――――点けようとして…………?

 

 何かに足を引っ掛けた、気がする。

 

 そうだ。転びそうになって。

 でも配線や衣装、機材を傷つけないようにバランスを取ろうとして。

 

 伸ばした手が()()()()()()()()

 

 そして、そして。

 

 顔を上げた先で、()()()()()()()()()()()()()()

 

「は………………………………? いや…………いやいやいや! ない、ないって!」

 

 ――――そうだ。あの時、うっすらと砂嵐と波紋を映す黒い画面には、千雨の右腕が半ばまで突き刺さっていた。

 

 頭は理解することを拒んでいたが、咄嗟に腕を引き抜こうとした千雨。

 だが、テレビは異常な力で以て千雨を飲み込んだ。現実は非情である。

 …………肩が画面枠に引っかかっていたが、無理やり引きずり込まれた。

 痛いだろちくせう。そんな文句を声に出す気力も起きない。

 

 …………ああ。と、いうことは、だ。

 

「まさかここ、テレビの中なのか……?」

 

 んな非常識(バカ)な。千雨は呻いた。

 

 だがしかし、麻帆良(まほら)ならばありえる。

 ただの女子中学生(JC)が自動車よりも速く走り、何百メートルもあるドデカい御神木が外の人間に騒がれることなく鎮座する。

 そんな非常識が徒党を組んでコサックダンスを踊っているような土地である。

 

 勝手に人の部屋に侵入し、勝手にテレビを改造している可能性も否定できない。

 むしろそのぐらいなら余裕でできるだろう。

 

 いや、だとしても一体どんな原理だ。

 吸い込まれたと思ったらだだっ広い空間だった? その無駄技術、掃除機にでも使えよ。めちゃくちゃ売れると思うから。

 そんな、明後日の方向にぶっ飛ぶ千雨の思考に、冷静なツッコミを入れられる人間はいない。

 

 というか本当に麻帆良の敷地内なのか? 千雨は訝しんだ。

 

 確かに麻帆良はそこそこ広大な敷地面積を誇るが、同時に多数の教育施設を抱え、人口が密集している場所でもある。

 その麻帆良にこんな区画があったか? 

 いくら歩けども街並みの一つとて見当たらぬ、濃霧に包まれた空間が。

 

 そもそも、どうすれば帰れる?

 ここに来る直前、まるで落下したような浮遊感があった気がする。

 だとすれば上れば帰れるのか?

 どうやって?

 ここには背の高い建造物は疎か、小高い丘すら見当たらない平坦な場所なのに。

 

「考えろ。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ…………!」

 

 人の手による物であるならば、絶対に何か取っ掛かりがある。あるはずだ。

 だから帰れる。

 そんな破綻した思考に縋る他ない。

 

 ――――――その最中だった。

 

『おっまたせー☆ みんなのアイドル、ちうだぴょーん☆』

 

 千雨は固まった。

 

 初めは、自分以外の誰かがこの空間にいたことに対して。

 次いで、誰も正体を知らないはずの『呼び名(ちう)』が出てきたことに対して。

 終いに、現れた人物が――――――。

 

『ああ…………本当にアホみたいだよな』

 

 ()()()()()()()()()()()()()ことに対して。

 

「――――――――――――は…………?」

 

『どうだ、あの語尾とかウケるだろ? …………ったく、コテコテに媚びて何が楽しいんだか』

 

 霧の中から浮かび上がるように出てきたのは、臙脂色の制服を着た千雨と瓜二つの何者か。

 

 唯一異なる点を挙げるとすれば、瞳の色。

 ギラギラと黄金に輝く眼は千雨を捉えて離さない。

 

「ッ、誰だ!?」

 

『あ? 長谷川千雨(お前自身)に決まってるだろ。我は影、真なる我…………ってな』

 

「わ、訳わかんねぇ………………」

 

 もう一人自分がいるなんて、ありえるわけがない。

 ついに頭がバグったか。きっとそうに違いない。角度を付けて叩けば治るか? 

 混乱が加速する千雨に冷や水を浴びせたのは、もう一人の千雨(自分)だった。

 

『やれやれ、ネットアイドル様も大変だよなぁ。人気が取れるように嘘のキャラクターで塗り固めてさ』

 

「っ!? 何で、それを」

 

『知ってるさ。私はお前なんだから』

 

 正体不明のもう一人の自分(長谷川千雨)は徐々に距離を詰めてきている。

 顔には微笑。嘘っぽいそれを貼り付けて、千雨らしき何者かはまた一歩千雨に近づいた。

 

 冷や汗が止まらない。

 まさか、本物()に成り代わろうだなんてありきたりな展開になるのでは。

 そうなった場合、偽物に居場所を奪われた本物はどうなる?

 

 ――――消される。

 

『何でネットでアイドルなんてやってるのか? 認めてほしいからだ。何でクラスのバカ共が騒いでるのが煩わしいのか? 自分がその輪の中に入っていないからだ』

 

 目と鼻の先、自分と同じ顔。

 その表情が一瞬ぐにゃりと歪んだ。

 

『自分の見てる物が、感じた事が共有されない。――――羨ましいんだよな? だから憎たらしい。近づこうとするクセにこっちのことなんて理解しようともしない、クソッタレなクラスメイトがよォ!』

 

「……………ッ」

 

 息が、詰まる。

 

『ぶち壊してやりたいだろ? 何もかも、キチガイみたいな学園都市も、脳天気な奴らも! でも、そんな力もない。だからずっと逃げてるんだ』

 

 この卑怯者め。

 囁く声が中空に解けた。

 

『我は影。真なる我』

 

 不気味な金の目が一層輝く。

 震えを抑えるために、千雨は拳を握り込み、

 

『私ならやれる。私なら全部変革し――――――――メキョッ!?』

 

 ――――()()()()()()

 

「さっきから聞いてればごちゃごちゃゴチャゴチャと…………」

 

 小刻みに揺れる肩、顔を上げた千雨の目は据わっている。

 

 もう我慢の限界だった。

 正確にはとっくの昔に限界が来ていたが、ついにプッチンした。

 

 千雨の口から言葉が氾濫する。

 

「そうだよ全部お前の言う通りだよ! ()()()()()()()()()()()()? 私はな、勇気も行動力も人脈もないガキなんだよ。なら偽るしかねぇだろ。自分を肯定してくれる場所に縋るしかねぇだろ」

 

 ()()()()()()()

 そう言い放った千雨を下から見つめるもう一人の千雨(自分)

 受け身を取った体勢のまま、心なしか先ほどより呆然としているようにも見えた。

 

「つーかもうこっちはいっぱいいっぱいなんだよ! 私がもう一人? 何だよそれファンタジーかよ、んなもんこちとら食傷気味だっつーの! 頭がおかしいのは麻帆良だけで十分だっ!!」

 

 千雨は半ば絶叫するように言い切った。ぜーはーと荒い息が零れている。

 ここまで息継ぎも最低限に叫んでいたのだ。

 運動部でもないインドア派な千雨は、見事に息切れを起こしていた。

 

 対するもう一人の千雨はすでに起き上がっていた。

 元々大したダメージもないのだろう。

 殴打された頬をさすってはいるが、よろめいたりする素振りはない。

 あれは不意打ちだったが故のラッキーパンチだったらしい。

 

 千雨(こちら)の息は絶え絶え、身体も何故かダルいときた。

 もはや、ロクな抵抗もできやしない。

 

 せめて、と心中で盛大に毒づきながら、千雨は目を閉じて――――――。

 

 

 

 

 

 一体何が鍵だったのか。

 それは千雨にもわからない。

 

 

 

 

 

 その後、想定されていた『もう一人の自分が成り代わるために襲ってくる』なんて展開(コト)はなく、

 

「うちのクラス何でロボ娘がいるんだ誰か突っ込めよ。いやそもそも留学生うちの組に固まりすぎだっつーの」

 

『他のクラスはいてもせいぜい一人だったよな、留学生』

 

 気づけば、もう一人の千雨(自分)と対面しながら愚痴り合っていた。

 

 麻帆良にあり得ざる、深い霧に囲われた二人っきりの空間。

 その相手が『自分』だと言うのもまた奇妙だった。

 

『おかしい物をおかしいって言って何で排斥されなきゃいけないんだ』

 

「マジでそれな。おかしいのは私じゃなくてテメェらの方だと何度も何度も何度も…………!」

 

 打てば響くと言うべきか、ツーと言えばカーと返ってくるとすべきか。

 

 ともあれ、その言を信じれば彼女は千雨自身(本人)である。

 根本的に話が合わないわけがなかった。

 

「たかが生活指導で人がポンポン宙に浮くかよ!? あの教師(デスメガネ)、やっぱりおかしいだろ!」

 

『ああ、あれな。魔法使ってても違和感ないよな』

 

 互いに麻帆良への文句を並べ立てていき、

 

「御神木のサイズが――――――」

 

『学園長の頭が――――――』

 

「文化祭のバカ騒ぎが――――――」

 

『都市伝説の内容が――――――』

 

 最終的には固く手と手を取り合っていた。

 シェイクハンズ。所謂握手である。

 

 そのまま幾度か手を上下に振ったところで、相手の身体がうっすら光っていることに千雨は気がついた。

 

「お前…………」

 

『我は汝、汝は我………………全部わかってるんだったら力を貸してやる』

 

 困ったことがあれば私を呼べ。

 彼女(千雨)は満足そうににんまりと笑った。

 

 千雨(もう一人)の姿がパッと立ち消えると同時、現れたのは見覚えのないシルエット。

 その正体は人間よりも遥かに大きな怪人だった。

 

 ひび割れた仮面を被っており、顔立ちは定かならない。

 胴体より下では、巨大な輪っかやらレース調の薄布らしき物が着飾るように辺りを循環していた。

 ぱっと見ドレスチックだが、身体に触れていないのに空中に浮いて動いている原理は不明である。

 そんな飾りから透けて見える本体は、一転して殺風景な印象だ。

 周りが派手だからというのも印象付けに一役買っているだろうが、それにしたってシンプルが過ぎる。

 女性らしいフォルムをしているので性別を間違えることはないが、それだけである。

 のっぺりとした身体には、どうにも人形の中身らしき不気味さが垣間見えた。

 

「はは…………姿が変わるとかアリかよ…………」

 

 怪人は喋らない。

 だが「コイツはもう一人の自分だ」と千雨は感じ取っていた。

 

 事態は推移を続ける。

 姿が変わったことへの驚きも覚めやらぬ中、今度は青い光を放つカード状の物体へと縮んだのだ。

 そしてカードは千雨の胸に吸い込まれるようにして消えた。

 

 

 カードが入っていった部分に手を当ててみれば、どこかじんわりと温かい。

 

 

 クソみたいな現実が変わったわけではない。

 だがしかし、もう少しあのヘンテコな場所で戦っていける、そんな力強い思いが湧いていた。

 

 何故ならこの胸の奥には、もう一人の自分――――――困難に打ち勝つための『ペルソナ』があるのだから。

 

 

 

 

 

 千雨は前を見据えた。

 

 大丈夫だ、自分は頑張れる。

 

 しっかりとした足取りで一歩、二歩と進み――――――――――止まった。

 

 

 

「帰り方、わからねえ…………!」

 

 ガックリと崩れ落ちる千雨。

 結局のところ、千雨は最初から最後まで迷子状態だった。

 

 このままではにっちもさっちもいかない。

 

 別れてすぐに呼び戻すのも気恥ずかしいが、四の五の言っていられないのだ。

 この不思議な霧塗れゾーンから出られなければ死活問題に繋がりかねない。…………主にブログの更新とか衣装作製とかで。

 

 覚悟を決めれば、青い燐光と共に出現するタロットカード。

 

 神秘的な光景の中で、千雨はほんのり顔を赤らめつつ、早速召喚したカードを握り潰したのであった。

 

 

 





 大体ノリと勢い。
 というかシャドウのシャの字も出てこなかったね。

 時系列とか年代とか気にしたら負け。
 ネギ先生はまだ来てないし、P4主はまだ鋼のシスコン番長になってないと思う(無計画)。

 俺達の戦いはこれからだ!





☆ペルソナ紹介☆


○アメノウズメ
 大アルカナ:Ⅸ 隠者

【初期スキル】
◆アギ
◆ジオ
◆ディア
◆アナライズ

【HP】低め 【SP】高め 
【力】極低 【魔】高め 
【耐】低め 【速】高め 
【運】普通

耐性:火炎耐性、雷撃耐性
弱点:氷結、疾風、物理


 千雨の初期ペルソナ。

 身体には殻の如く円環やレース調の飾りを纏っている。周囲の装飾は豪華だが、本体は小柄で華奢であり、デザインも非常にシンプル。千雨曰わく、「殺風景、ツルンとしている、のっぺらぼうみたい」。
 とはいえひび割れた仮面の隙間から目が覗いているので、完全にのっぺらぼうというわけではない。あくまで華美な装飾に比べて、という話。

 戦闘においては攻撃・回復・補助・解析と多彩だが、反面弱点が多い。

 戦闘中でも簡易アナライズは行えるが、詳細なアナライズのためには千雨がペルソナの飾りの内側にいる必要がある。
 千雨が内部にいる間、レース飾り等にはスクリーンのように情報が投影される。

 因みに、物理攻撃は全く覚えない。完全なマジックキャスタータイプ。
 コンセプトは「一人で冒険できるもん」(冒険できるとは言ってない)。





・追記(11/07)
 サブタイトルを編集しました。(なお続き)
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