長谷川千雨はペルソナ使い 作:ちみっコぐらし335号
【悲報】五秒で決めたサブタイトルがヒドい【突貫工事】
~ちゃんとしたお知らせ~
原作時系列の整理、及び年代を設定しました(今更感)。
簡単に言うと、ネギま側時空が軒並み九年ほど後ろにズレていると思ってくだしゃあ。
え、動物占いによるキャラ付け?
知らんな、そんなことは俺の管轄外だ。
(赤松先生マジごめんなさい)
というかスマホ壊れてバタバタしてる間にすごいことになってりゅぅ(白目)。
お気に入りもUAも桁がいつもと違うよぅ…………(gkbr)。
麻帆良祭。
それは麻帆良学園で行われる年に一度のビッグイベント。
麻帆良祭。
それは三日間の開催期間で、同期間の
麻帆良祭。
それは
そして――――――――祭りの平穏を守るため、麻帆良に住まう『魔法使い』たちが縦横無尽に飛び回るファンタジー空間でもあった。
◆
「あ゛ー………………」
寮へ帰宅途中、疲れ切った
明らかに女子中学生が出していい声ではないが、周囲に
元来、クラスメイトに非常識を煮詰めたような人間が多いせいで、千雨は学校生活においてストレスを抱え込みやすい。
しかし、此度の
その大きな要因の一つ。
それは三週間ほど前に開催された、千雨が中等部に上がってから二度目の
麻帆良学園に存在する全ての教育機関が合同で行う恒例行事で、毎年大勢の外部客も招き入れるため桁外れのどんちゃん騒ぎになる。
そして今年は、ペルソナ使いとなった千雨が初めて経験する麻帆良祭でもあった。
麻帆良祭、と一口に言ってもその関連範囲は広い。
何せ、準備期間だけでも二週間以上に及ぶのだ。
中間テストを終えてからの十五日間、『例のアナライズ』の際に
普段から同級生と距離を置いていたので、『魔族』やら『烏族』やらであっても別段違和感を抱くことはないだろう。
悲しいことに、集団から外れることに関して千雨は一家言持っている。
そこまでの対応は何一つ間違えていなかったと確信していた。
ことの問題は麻帆良祭であった。
正確には麻帆良祭で起こっていた異常事態である。
まず千雨が気づいたのは、時々感じる
行こうと思っていた場所を忘れる、或いは目的を忘れるといった内容で、特定区域に近づくと必ずと言っていいほど発生したそれには、作為的な物を覚えた。
だが、『一定範囲に近づけさせない』『精神活動を落ち着かせる』といった目的だったらしく、これに関して千雨は被害らしい被害を受けていなかった。
誰かが
…………人払い云々などと考えたくもないのだが。
それより大変だったのは、騒ぎに乗じて街を駆け巡っていた『魔法使い』絡みである。
それも一人二人ではない、何十人といたのだ。
観察していたところ、どうも彼ら彼女らは祭りのトラブル対応のために動いていたらしい。
すわ運営スタッフか、警備員か。
皆が楽しんでいる祭りを守ろうという志は立派なのだろう。
が、しかし、派手な魔法はバンバン使うわ、いつどこから現れるかわからないわで千雨の神経をすり減らした。
善意で動いている分、下手なお化け屋敷よりも質が悪い。
ついでに、その魔法使いたちのほとんどが麻帆良学園に在籍している教師や生徒だったことも付け加えておく。
おかげで千雨は『彼らが魔法使いだと知っている』ことを相手側に気づかれないようにする――――という七面倒な対応を迫られることになった。
麻帆良祭も終わり、連中が魔法を使う瞬間を目撃しなくなった。
とはいえ、魔法使いの顔を思わず凝視しそうになることが多々あり、千雨は余計な気苦労を重ねている。
で、非常識のオンパレードたる麻帆良祭を抜けた千雨を、目下悩ましているもう一つの原因は、だ。
チラリと後ろを向けば、先ほどまではなかった小さな人影が二つ。近くの塀や看板に身を潜めている。
だが、大きさはともかく、好奇心から来る存在感はちっとも隠せていない。
立派なストーカー行為だが、千雨はとっくにその正体を掴んでいた。
麻帆良学園女子中等部、文化系運動系問わず乱立する部活動の中でも屈指の『存在意義の不明さ』を誇る団体――――『さんぽ部』である。
部員数は少なく、千雨の把握している限りで三人。
全員千雨と同じクラス、A組である。
尾行がバレバレの方、鳴滝
姉・風香主導で何度も
何をするにも一緒だがしかし、性格や一人称、よくよく聞けば声も違うことに気づく。
千雨を見かけ次第引っ付いてくるので厄介ではあるが、こちらは重要ではない。
それこそ小学生のイタズラとでも考えればいい。どうとでもやり過ごせる。
肝心なのはもう一人――――――存在感を完全に消し去っている方、長瀬楓だ。
今も二人と共にいるはずだが…………そちらは微塵も気配を感じなかった。
クラスでも上位に食い込む高身長。目を常に細め、糸目であることが多い。
特徴的なのはその口調。人を呼ぶ際には『殿』を付け、語尾は『ござる』。口癖は『ニンニン』ときた。
彼女が忍者だというのは、千雨のトラウマ・アナライズの御墨付きである。…………元より全く忍んでないが。
そう――――――ある種
千雨がそれに気づいたのは全くの偶然である。
双子のコソコソとした話し声に耳を止め、異変を感知しアナライズ。
すると長瀬楓が解析の網に引っかかったのである。
千雨が尾行現場を直接目撃したことは一度たりともない。恐ろしいほどの隠行だ。
毎度近くに双子がいるからこその発見と言えよう。
当然、千雨には忍者に目を付けられるような覚えはなかった。
出し物の製作中も常に気を張っていたのだから。寝耳に水、完全に不意打ちである。
なお、魔法使いへのあれこれと合わせてか、
これが彼女にとって不本意なことは言うまでもない。
「……………………行ったか」
入り組んだ路地を抜け、いくつかジャンクショップを経由したところ、双子は千雨を見失ったらしい。
念のため、アナライズを掛けてみるが
悪しきストーカーは去った。千雨は今日もやり遂げたのだ。
遠回りした結果長くかかった帰り道。
ようやく寮の自室に到着である。
扉に中から鍵を掛けたところで、千雨は人心地付いた。
毎回相手が同級生だからいいものの、ストーカーとは本来唾棄すべき犯罪者である。
そもそも、ほのぼの系クラブと思われているさんぽ部が何故こんなことをしているのか?
千雨をターゲットにする目的は?
そろそろこちらから何か探りを入れるべきなのかもしれない。
根本的なところを解決せねば、今後もずるずると続く可能性があるのだから。
喉が渇いたので冷蔵庫から適当にペットボトルを引っ張り出す。
キャップを捻り、さあ飲もうとしたその時。
「――――――なあ、ここで待っとれば長谷川に会えるってホンマなん?」
「ホントホントー、ボクたち途中ではぐれちゃったけど、ルート的に寮に帰ってるっぽかったし。ねー、史伽」
「うん、お姉ちゃんと一緒に確認してたです」
外から聞こえてきた会話に千雨の顔は引きつった。
ギギギ、と錆び付いたブリキ人形の如き緩慢な動作で入口の方を向く。
外から三人分の声がする。すなわち扉の前に誰かがいる。
いや、名前も呼んでいるし、十中八九
やや関西系の訛りのあるこの声は。
「まさか、和泉か…………?」
ぼそりと出た言葉には千雨の困惑が滲んでいた。
和泉亜子。
千雨のクラスメイトの一人で保健委員に所属している生徒である。髪型は色素の薄い髪をショートカット。
詳しくはないが時折関西弁を話しているので、
アナライズは掛けてないが、恐らく一般人であろうと千雨は目している。
千雨と特に親しいわけでもなく、ただの同級生にすぎない。
そんな亜子が加担している? この三週間に及ぶ追跡行為に――――――。
「――――――ん? 和泉…………麻帆良祭…………?」
ストーカーが始まったのは麻帆良祭後から。
そして、和泉亜子が関わっている可能性がある。
何かが引っかかる。
そういえば、この組み合わせで何かがあったような…………?
「………………………………………………あ」
そうだ、思い出した。
確か麻帆良祭で和泉亜子と
麻帆良祭三日目、工学部での買い物の帰りのことだ。
屋根の上をぴょんぴょんと跳ね回る魔法使いたちの姿に、いい加減嫌気が差していた千雨。
なるべく上を見ないよう、魔法使いから逃げるように小走りで移動していた。
上に注意を向けていた分、周囲への気配りが疎かになっていたのだろう。
千雨は荷物を持ったまま、曲がり角で誰かと出会い頭に衝突。
その時ぶつかった相手というのが和泉亜子だった。
単にぶつかっただけであれば、軽く謝って済んだであろう。
しかし、当たりどころが悪く、互いに創傷・出血。更に亜子が血を見て気絶するという一幕があった。
亜子は保健委員だが、病的なまでに血が苦手なのだ。
故意ではないとはいえ過失の意識もあり、亜子をそのまま放置しておくのは気が引けた。
いつもの千雨であれば何ができるわけでもなかったが……………事故現場は人目のない路地裏だった。
そして、
だから千雨は、これ幸いと試すことにしたのだ――――――ノータッチだった回復魔法『ディア』を。
魔法は拍子抜けするほどあっさり成功。
二人の傷は跡形もなくなった。
事故の隠蔽は完了したので、残るは当人を言いくるめるだけである。
千雨は目覚めるまで亜子を介抱した――――といっても他人にちょっかいを出されないか見張っていただけだが。
数十分後、意識を取り戻した亜子に対して千雨はこう説明した――――――「ぶつかった衝撃で、買い出しの品物の中にあったトマトジュースの紙パックが破裂。和泉はその赤い液体を血と勘違いして気絶した」と。
我ながら苦しい言い訳だったが、祭りの空気もあってか和泉亜子は納得していた様子でその場を後にして――――。
カチリと噛み合う音がした。
これ以外に原因は考えられない。
あの時のことに後から疑念を抱いたのか?
あえて騒ぎ立てるようなタイプには思えなかったので、亜子のことは千雨の要注意リストにはなかったのだが………………まさかこんなことになるとは。
汗が一筋、千雨の頬を伝い落ちた。
「あ、かえで姉ー」
「こっちですー」
扉を隔てて聞こえてきたその台詞に、千雨は
こいつもか、やはりこいつも来たのか。
「ふむ、部屋にいるみたいでござるな、気配がするでござる」
「え、そうなの?」
「じゃあ呼べば出てくるかな?」
――――――行くわけねえだろ!? そこの忍者、余計なこと言うんじゃねえ!
などと叫べばモロバレするので叫べやしない。
千雨は奥歯を強く噛み、部屋の奥で震えていた。
もっとも、震えといっても怯えではなく怒りによるものだが。
「おーい」
コンコンと大きなノック音が響く。
返事はしない。当然だ。
返事をすれば出て行かなければいけなくなることぐらい察していた。
「もしかして居留守なのかな?」
「かえで姉ー、これ開けられたりする?」
「ふむ、そうでござるな…………」
――――――ヤバい…………っ!?
さんぽ部+αが鍵開けの算段を始めたことに千雨は戦慄した。
このまま居留守していても、無理やり鍵を開けられる公算が高い。
侵入されたらどうなる?
好奇心旺盛な奴らことだ。絶対に室内は蹂躙される。
しかし、趣味の物が詰まったパソコンもクローゼットも、おいそれとは見せられない。
もし見られたら学校には行けない。むしろ死ぬまである。
つまり、部屋には絶対入れられない。
これが結論だ。
だが居留守は効かない。
ガチの忍者相手に気配を消す術を千雨は持たないからだ。
居留守がダメなら実際に部屋からいなくなるしかないが、扉の前には奴らが陣取っている。
出入口からの逃走は不可能。
かと言って、窓から逃げるなんて曲芸じみた真似は到底無理。
ああ、他に取れる脱出手段なんて――――――。
千雨が目を泳がせた先には小さなテレビがあった。
黒々とした画面に苦虫を噛み潰したような己の顔が映り込んでいる。
そうだ――――テレビの中だ。
非常識な
もしテレビに出入りできるなら、既に画面から侵入してきてもおかしくはない。
だが、そのような裏道は使ってきていない。知らない、乃至使えないと見るべきだろう。
そうと決まればさっさと避難するに限る。
いつ楓のピッキング作業が終わるかわからないのだから。
ふと、以前中に
確かに濃霧はひどいが、ペルソナがあれば何とか脱出できる。
それに延々と隠れるわけではない。
ほとぼりが冷めるまでテレビの中で過ごすだけだ。せいぜいが二、三時間だろう。
この時の千雨にとって、これ以上ない妙案に思えた。
手早くパソコン画面にロックだけ掛け、テレビに身体を押し当てる。
本来硬質なはずのテレビ画面は、何の抵抗もなく
「む………………?」
「かえで姉ー?」
「急に手を止めてどーしたですー?」
「これは………………………………中の気配が、消えた?」
◆
今回ちょっと短めなのは、文量が予定文字数の二倍近くに膨れ上がったから分割して云々。
サブタイのネタ溢れる適当感も本来予定になかった区切り方だからでござる。
残りの後半部分も近々投稿できる…………ハズ。
【おまけ】
~麻帆良祭打ち上げパーティー中~
亜子ちゃん「さっきのことで長谷川にちゃんとお礼しときたいなぁ。でもあんま近づくチャンスもないし……」
亜子ちゃん「実は斯く斯く然々で、長谷川に介抱してくれた時のお礼したいねん」
不忍の忍者(む、これは…………血の匂い?)スンスン
不忍の忍者「――――あいわかった。では拙者が機会を見繕うでござる。………………個人的にも少々気になるでござるし」
亜子ちゃん「んー、何か言うた?」
不忍の忍者「いやいや、何でもないでござるよ」
双子姉「あれ、何やってるのー? 面白そうだからボクらも一緒にやろーっと」
双子妹「さんぽ部の活動ですねお姉ちゃん!」