長谷川千雨はペルソナ使い 作:ちみっコぐらし335号
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【問い一】
作者が千雨SSの続きをなかなか投稿できない理由を三十文字以上四十文字以下で説明せよ。
ヒント一:鬼滅沼
ヒント二:浮気
【2011/09/09 金曜日 晴れ】
八十神高校では二学期開始早々、二泊三日の日程で
昨年度までは二年生のみを対象者としていた修学旅行だが、予算不足や生徒数の減少などの理由により、今年度からは一、二年生合同、かつ隔年開催へと変更。
更には、
なお、この行事が『
この旅行は彼が生前に企画した、文字通り『最期の置き土産』なわけだ。『死してなお
それでも二日目、何とか与えられた自由行動時間。
悠らは繁華街・ポロニアンモールにある店を訪れていた。
薄暗い室内を煌びやかなミラーボールと怪しげな色合いの蛍光灯が彩る由緒正しきダンスクラブ『
何かと高額なイメージのあるクラブに資金が潤沢とは言えない彼らが留まっている理由は、端的に言ってりせの縁だった。
何でも昔、彼女がエスカペイドでシークレットライブを行った際に電源が落ちて中止になるトラブルがあったらしく、『そのお詫びに』と今回無料で利用できることになったのだ。
激しい音楽が流れる中、小さな丸テーブルを囲んでいるのは八人。
悠、陽介、千枝、雪子、完二、りせといった修学旅行の参加者に加え、鈍行列車で密かに辰巳ポートアイランドまで着いてきていたクマ…………の中身の金髪美少年。
それと、もう一人。
「…………どうして僕まで」
そう困惑気味に呟いた若者の名は
元々は警察の外部協力者として『逆さ磔連続殺人事件』の捜査をしていた探偵だ。
犯人が逮捕され警察の捜査が終了し、探偵活動の必要がなくなったため、二学期の始業式と共に八十神高校に転入してきた。
直斗は小柄な体格ながらクールで整った顔立ちをしている。
現役の探偵ということもあり、転入直後はクラスメイトにあれこれと声を掛けられていたようだ。
しかし――――
「だって一人でいたってつまんないでしょ?」
ストローから口を離し、千枝が笑いかけた。
転入してこの方、直斗は級友からのお誘いを冷たい態度であしらい続け、見事にクラスから浮いてしまっていたのだ。
千枝の言葉通り、この修学旅行でも一人でいるところを特捜隊メンバーに発見され、ここまで連れてこられた。
「変わってますね。僕を連れ回したところで、皆さんが楽しめるとは思いませんが」
「そんなことないよ。直斗くんと話せて私たち楽しいし」
「そーそー! それに私と同い年で現役の少年探偵! 色々と聞いてみたかったんだよねー」
雪子とりせも千枝に続いて畳みかけた。
近くに何かと一歩引き気味な
高校一年生にして人気アイドルだったりせも一般的にはかなりのレアケースだが、芸能界にいた当人の中では探偵への物珍しさの方が
彼らはしばらくの間、タダで振る舞われる飲み物を楽しみ、何てことのない雑談を重ねながら、八十稲羽にはない都会のクラブの雰囲気を味わっていた。
何やら雲行きが怪しくなったのはその後のことだ。
雪子やりせ、クマの様子がおかしい。……いや、クマに関しては普段からおかしな言動が多いが、それを差し引いても異常な様子だった。
具体例を挙げると、第一に顔が赤い。ケバい色のライトに照らされていても明らかなほど、赤ら顔になっている。
第二に呂律が回っていない。何を喋っているのかはおおよそ聞き取れるのだが、ところどころ発音が曖昧だ。
第三にノリ。悪ノリとでも言うか、やけに絡んでくるというか。
何だろう、彼女らの状態に既視感がある。その正体は、と思考してすぐ、ほぼ同時に彼らは思い当たった。
そうだ、身の回りの大人がこうなっているのを何度も見たではないか。宅飲みとか飲み会の帰りとかで。
つまり、この原因はまさか――――
嫌な予感に残りのメンバーは震撼した。
クラブでは酒を飲んで盛り上がっているイメージがある。もしも飲酒してしまったとしたら、
「ばっ…………どーすんだコレ!?」
「とりあえず、先輩ら吐かせるっすか?」
「待てそれはヤメロ」
喧々囂々。ディスコに紛れ、会議は踊る。
そうだ、無駄かもしれないが、探偵にも口止めをしておかなければ。
悠が慌てふためきながら直斗に話しかけようとして、
「これ、
直斗がグラスを傾けると、氷がぶつかりカランと鳴った。
「…………ほわっつ?」
「来た時に確認しました。何でも、飲酒運転への抗議で、この店は去年からアルコール類の取り扱いを止めたそうです」
「ん、ということは――――」
彼らの前に並ぶ飲み物は全て
つまり、該当者の変調の原因は――――場酔いだった。
「って、場酔いかよ!?」
「実在、していたのか……ッ!」
炭酸系の飲料でも酔う。そんな噂を耳にしたことはあれど、目にしたのは初めてだ。
しかし、酒類ではないと安堵したのも束の間、
「王様ゲェェェェム!!」
酔っ払いが暴走し始めた。
場酔いした面々によって唐突に強行された王様ゲーム――――の名を借りた傍若無人っぷりに素面のメンバーは振り回されることになった。
「よぅし、次は私ね王様! 女王様ー!」
「クジ引けよ天城!」
「というか落ち着け女教皇」
「落ち着かなぁい! だって私、王様だからー!」
赤ら顔の雪子はクジ引き前に王様だと宣言した。もはや王様ゲームの体をなしていない。
因みに『女教皇』は雪子のペルソナのアルカナであり、正位置では『直感、安心、知性、聡明、英知』などの意味を持つカードである。
酔いが酷すぎて、言動に知性の欠片も残っていないが。
クジの番号運もあり、ここまでの
雪子が王様命令と称して『口では言えない恥ずかしいエピソード』を語らせようとしたのだ。
指名された直後、直斗は困惑したように目を瞬かせたものの、そこは歴戦の探偵である。
「いいですよ。その代わり、僕が話したら皆さんにも
「んー? いいよー?」
「おい!」
酔っ払いが思考時間ゼロで安請け合いするや否や、「特に面白い話ではないですが」と前置きした上で直斗は語り始めた。
淡々と直斗の口から紡がれたのは、自らの生い立ち、そして探偵として活動を始めた経緯だった。
白鐘の家は代々探偵を生業としている家系であり、警察組織に力を貸してきたこと。
直斗はその五代目にあたり、先代の祖父と二人で暮らしながら、彼の後継として若くして探偵活動をしていること。
当然、真面目な直斗の話にオチなどない。
「では次は皆さんの番ですよ、答えてもらいましょう――――――皆さんが本当は事件とどう関わっているのか」
つまり直斗は己の話の対価として、特捜隊が何をしているのか聞き出そうとしたのだ。
非現実的な真実を伝えるわけにもいかず、悠たちがどうすればいいか戸惑う中、
「えっとー……テレビの中に入ってぇ、誘拐された人を助けてまーす…………それでぇ、うようよしてて邪魔なシャドウをー『ペルソナァー!』って」
「ばっ、おまっ…………!?」
「はぁ…………僕をからかってます?」
幸いにも戯れ言として流され、酔いどれ雪子は相手にされなかった。
それは良かったのだが…………。
「ああ、それともう一つ。事件への関わりを答える気がないなら、こちらの方を答えてもらいましょうか」
直斗はすっと目を細める。
まるで『お前たちの全てを暴いてやるぞ』と言わんばかりに。
「――――麻帆良学園女子中等部」
「えっ…………?」
「教師殺しの犯人が捕らえられた日、麻帆良学園の女子生徒と一緒にいましたね。彼女は一体何者なのか。あの日、何故遠く離れた稲羽市に来ていたのか。教えてもらえますか?」
――――皆さんは一体何を隠しているんですか?
◆
【2011/09/11 日曜日 曇り】
「――――ってことがあったんだ」
「はい?」
ジュネス屋上に設けられた休憩コーナー、もといフードコートにて。
悠と向かい合うように座っていた千雨は呆けた声を出した。
修学旅行のお土産を渡したいという理由で、八十稲羽に呼び出された千雨。
麻帆良学園の修学旅行はどの学校も例年一学期に行われるので、この時期の修学旅行に物珍しさを感じた。
お土産の『巌戸台饅頭』をありがたく頂戴し、すぐに帰ろうとした矢先の出来事だった。驚愕の土産話を聞かされたのは。
「つまり、その…………あれですか。八十稲羽の殺人事件には探偵が出張ってきていた、と」
「ああ」
「で、探偵に事件への関与を疑われている、と」
「そうなるな」
「そッ――――」
そんな探偵までいたのかよ!? という叫びを千雨は押し殺した。
これが探偵漫画なら、嫌なフラグが立ちまくっているところである。勘弁してほしい。
夏休みに目撃されてしまった
その鎮静化作業とて決して楽な道のりではなかった。
特捜隊間で話題に上りそうになる度に『あれは幻覚』『私に聞くな』『話せることは何もない』の三種の神器を駆使し、ひと月かかってようやく触れられることがなくなったのだ。
というか、ラブリーンコスの話をするぐらいなら、探偵についての情報共有をしてほしかった。
彼らがいるのは『非常識の爆心地』たる麻帆良学園でもないのに、こうも定期的に爆弾が投下されるのは何故だろうか。
事件が終わった後に探偵が転入してくるとか…………いよいよ嫌な予感しかしない。
新しい事件が発生したりするのではなかろうか、千雨がげんなりしていると、
「あ、修学旅行の時の写真があるけど、見てみるか?」
「何で疑惑を向けてくる相手と行動してるんですか……?」
「まあ、その…………直斗が一人でいたから、つい」
「お、お人好しすぎる…………」
噂の探偵こと白鐘直斗の写真を見るために、千雨は悠の携帯画面を覗き込む。
どこか呆れたような表情で写真に写っているのは、なかなかに顔の整った小柄な男だった。
探偵ということは頭もいいのだろう。おまけに綺麗で顔面偏差値も高めときた。
ああ、全くもって羨ましい限りである。
「――――ん?」
――――今、何か変な感じが…………そうだ、何で羨ましいと思ったんだ?
どれほど格好いい男がいたところで、普通羨ましいとは思わない。関心を向けることはあれど、無い物ねだりをしたところで意味がないからだ。性別が違えば見た目から得られる印象も異なる。
だのに、今感じたものは何だ。
しばし思考を巡らせるが答えは出ない。
千雨は諦めて頭を横に振った。
ともかく、喫緊の問題は高校生探偵の白鐘直斗だ。
――――あの事件の捜査にも関わっていて、しかも特捜隊が関わっていることがバレている? ペルソナ使いでもないのに? そんな奴いんのかよ!? どうやって感づいたんだ?
…………いや、それより学校を特定されてる方がヤバい。というか、たったあれだけの目撃時間でそこまで調査できるとか怖い。怖すぎる。
この様子だと学校には連絡してなさそうだが、もしされたら千雨としてもかなりマズい事態になる。
学校側から追及されたら、苦しい言い訳を考えねばならないのだ。
あの日、麻帆良外への外出届は当然のごとく寮に提出していない。
八十稲羽まで電車もバスも使わず…………というか、寮の自室から出ることなくテレビからほぼ直通で行けるのだ。
つまり、生徒教職員いずれにも見られる心配がないから外出したことはバレない。
そもそも部屋から一歩も外に出ていないので外出届は不要。そんな理論である。
なお、
そうだ。そんな話、普通は信じるはずがない、
今回は相手の常識に救われた形になるだろうか。流石は探偵。きちんと常識人だった。
ありがとう常識。やはり常識は最高だ。
というか一体何故、今になって事件の捜査じみた聞き込みをしているのか。
…………いや、実際これは『捜査』だ。解決した事件をわざわざ調べているのか。それはまた、どうして。
謎をすべて解かなければ納得しない潔癖症? 犯人は逮捕されたのだから、特捜隊のことを疑っているとすれば、共犯者や協力者として、か?
そうだとしても、さすがに『直接問い詰める』なんてわかりやすい悪手に訴えるとは考えづらい。
ならば、あるいは――――『まだ事件が解決していないと考えている』とか。
降って湧いたような考えを千雨は即座に否定した。
いいや、それこそ有り得ない。
あの男は犯人と特捜隊以外が知り得ぬテレビの中の世界にいた。『自分が全部やった』と自供もした。
ならば間違いなく、奴が犯人だ。
だというのに、何故だろう。どうして、何かがおかしい気がするんだ? 何かが噛み合わない。
「…………そういえば」
事件の犯人はテレビの中の世界に出入りできる能力者、すなわちペルソナ使いだと千雨は睨んでいた。
だが、
あの時、特捜隊を襲ってきたのは、ペルソナと表裏一体と思われるシャドウ…………ペルソナになる前の制御されていない状態――――。
「どうかしたか、千雨?」
「いや…………多分、気のせいだと思うので」
何か重大な点を見逃しているような、そんなモヤモヤした気持ちを抱えながらも、千雨はその日、八十稲羽を後にした。
『千雨主役の話が読みたいのにこの作品は更新が遅い』
そう感じているあなたに、ここで朗報です。
新しく千雨主役のお話ができました!()
魔入りました! 千雨さん
https://syosetu.org/novel/215154/
そしてみんな魔入間を読めばいい(ステマ)