透明に輝く新入りの話 作:凍血
ぼんやりとした光が小さな部屋に差し込む。
最近はかなりお日様が出る時間が増えてきて、朝も自力で起きられるくらい明るくなってきた。
「ん、んー」
おおきなあくびをしながら、思いっきり伸びをする。
早く目を覚まして着替えないと。
先生が待ってる。
なんとはなしに外を眺めながら長い廊下を歩く。
僕が生まれたときには一面真っ白だった世界ももう雪は全部溶けきって、今度は一面草が生い茂っている。
ついこの間まで時が止まっているようにすら見えたのに、目まぐるしい速さで変わっていく。
きっと外に出られるようになったら、知らないものがたくさんあるんだろうなあ。
学校の中からでも草の緑が綺麗だ。
おかげで最近はまた観察が楽しくなってきてる。
「今日は明るいなあ」
雲の向こうにお日様の影が見える。
位置的に、いつもよりちょっと高いような……。
「……急がなきゃ!」
ちょっとのんびり歩きすぎたみたいだ。
あんまり遅くなると先生寝ちゃうからなあ。
最近はもう習うことはほとんど無くて、大抵が今までの復習になっている。
必要なこともあらかた覚えて、もうすぐ授業がおしまいになるらしい。
こんなに早く終わるのは珍しいってフォスが言ってた。先生が「お前は賢いな」って言ってくれたけど、不意打ちでの応用問題は苦手だから、多分覚えるのが得意ってだけだ。
それでもうまく答えられると先生に頭を撫でてもらえるしフォスも褒めてくれるから、この記憶力は結構ありがたい。
──なんて考えてたら、先生の姿が見えてきた。
足に力を込めてぱたぱたと走りだす。ふんわりと頬にふれる風が気持ちいい。
走るのはたくさん練習したから、自分でもわりと速いんじゃないかなって思う。
その証拠に、もうこんなに近づいた。
さっきは気づかなかったけど、先生のそばに綺麗な薄荷色が見える。
……あれ!?
「フォスぅ!?」
キキッと急停止して彼の名前を呼ぶ。
今日はちょっと遅くなったとはいえ、今はまだ朝だ。
いつもなら僕が起きるずっと前に出ていってるはずなのに。
「あ、ダイオ。おはよう」
「おはよう、ダイオプサイド」
「お、おはようございます……って、なんでフォスがいるの!?仕事は!?」
フォスは一瞬きょとんとした後、「ああ」と声を上げた。
「今朝はお休み」
「お休み?」
確かに今は曇ってるけど、この明るさだとすぐ日が出てくると思うんだけど。
また僕が知らないだけで、晴れてても出なくていいときもあるとか?
「ダイオ、みんなのこと見たことあるよね?」
「へ?」
他の宝石のことか。
そりゃあある、っていうかだいぶある。
フォスに頼まれてボルツに布をかけたりもしたから。
「これから起こしに行くから手伝って」
「……!」
春になったら一緒にお話できるから。
初めて冬眠室に行ったときにそう言われたのを思い出す。
それがすごく楽しみだった。
だから、僕は春が楽しみだった。
「……て」
「て?」
「手伝う〜!!」
「ちょ、割れる!割れるから!」
「お、ごめん」
危ない危ない、嬉しくなって抱きついちゃった。手袋しててよかったや。
「ねえ行こうよ!早く早くぅ」
「そんなに急がなくても……若い子は元気だな、ちょっと待ってよ」
半ば僕にひっぱられている状態のフォスが先生の方を振り返る。
「じゃあ先生、行ってきます」
「あ、行ってきます!」
僕らよりもひとまわり大きい先生を見上げて話すのはけっこう大変だ。
そういえば先生、さっきからずっと静かだ。
「…………」
「……せんせー?」
「……寝てる」
先生はいっつもうとうとしてる。
だけどこうやって話の途中で寝ちゃうのはどうしたもんかなあ。
起こすのやだし。腕持ってかれるし。
「……行こっか」
「……そうだね」