透明に輝く新入りの話 作:凍血
「あとここを短くしてー……ウエストもちょっと絞ってー」
「レッド、朝礼始まっちゃうんだけど……」
冬の間に着ていた予備の制服から一転、新しい夏服をもらったはいいんだけど。
朝礼に向かう道を歩きながらあちこち引っ張られたり採寸されたりして、めちゃくちゃ落ち着かない。
「……よし!改善点は分かったわ、後でまたモデルやってね!」
「え、でも僕」
「やってね!」
「はい」
逆らえない。
結局朝礼には間に合った。むしろフォスが遅れた。
でも状況説明のときのインパクトは最高だったね!みんなびびってたけど!
「先生、彼は?」
僕よりちょっと濃いくらいの緑色の髪をちょうちょ結びにした、リーダーっぽい子。ジェードかな?
「三十二日目に発見された、新しい仲間だ。ダイオプサイド」
「はい!」
返事は元気に!大きく!
今日のためにフォスに付き合ってもらってこっそり練習していたのだ。
「ダイオ頑張って……」
当のフォスは仲間にドン引きされて元気がないっぽいけど。
そんなに怖いかなあ、フォスの腕。
ちょーかっこいいよ合金。略して超合金だよ。
……じゃなかった。
「えっと、ダイオプサイドっていいます!硬度はフォスよりは上かな。勉強はだいたい終わってます。どんな仕事ができるかはまだ分からないけど、仲良くしてね!」
にっこり。
笑顔大事。
「かわいー」
「よろしくねー」「よろしくねー」
「元気がいいな」
「新入り久しぶりだねー」
とか、がやがや。
ありがとー。ありがとー。
みんな優しそうでよかったよ。
でもあんまり注目されると、やっぱり照れる。
「恥ずかしい……」
またフォスの背中を貸してもらうことにした。
別の話題を待ちながらぼんやりと思う。
わかってはいたけど、やっぱり宝石っていっぱいいるなあ。
これじゃ誰が誰だか確かめるのは難しい。
後でまた改めて挨拶回りしようかな。
「……って思ってたんだけど!?」
「その前に服よ!あとちょっとだけ、あとちょっとだけサイズをいじって髪を切ったら完璧なのよ!」
「髪も切るの!?聞いてないよ!?」
別にこだわりはないけどさ!
でもどんな感じにしてもらえるのか興味はある。わくわく。
「じゃあねじゃあね、僕もっとすっきり短くしたいんだけど──」
「それは」
かつん。
ルチル靴音鳴らすのうまいなあ。
制服にはないはずの白衣。だけどよく似合ってる。
「後になさい。まずは診察ですよ、どんな特異な体質があるか分からないんですから。髪にインクルージョンがないとも限りません」
「えぇー!?ダイオの髪型一番気になってるんだけど!」
「結果次第ですね」
「うー……」
「しょうがないよレッドー。僕も自分の硬度くらいはちゃんと知っときたいし」
あとルチルがなんか怖いし。
「……しょうがないなー」
「ありがと!」
「でもついてはいくからね」
「えっ」
「ね」
「はい」
逆らえない。
「はい、終わりましたよ」
「……ひゃい」
……怖かった……。
ちょっと触ったり軽く叩いたりするだけだと思ってたのに思いっきりハンマーで殴られた。せめてひとこと断って!
でもそう言ったら「怯えながらその時を待つのと、ほんの一瞬で終わらせるのと、どっちがいいですか?」って真顔で尋ねられた。もちろん後者だよ。
「あなたの硬度は六。二方向にへき開がありますね。当然靱性も下です」
へー……。
「……弱くない?」
「何をもって弱いとするかによりますね。私たちの中では相対的に考えて強い方ではありませんけど」
「だよね……」
ルチルは難しいことを言うなあ。
まあつまり、僕はわりと弱いと。
「つらみ……」
「そこで横になられると邪魔なんですけど」
「医者に心の傷をつけられてる……」
ヤブじゃん、と言おうとしたらすごい目で見られた。ごめんなさい。学びました、ルチルは怖い。
その後フォスがやってきたので強制的にどかされた。
ちなみに髪にインクルージョンはいないそうで、レッドに任せてみたら想像してた1.5倍くらい短くなった。結ぶどころかアレンジの余地がない。
もう一生くらげを撫で続ける仕事に就こうかなと思ったけど、珍しい腕のせいで尋常でなく構われてるフォスをみたら生きる気力が湧いてきた。
ありがとうフォス。