戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
「ふん。逃げずに来たか、Fクラス」
「なにぶん、面倒くさい輩に絡まれてしまってな。まったく、頭の悪い者もいるものだな」
開口一番、見下そうとしてきたブリーチを軽くあしらう。
やがて来た学園長がスピーチを始めた。
おかしい。以前とは身に纏う風格が違う。
転入前はそこまで強そうに感じなかった。
暗殺者の場合を考えわざと隙を作り、油断を誘っていたのか?
今は生徒の前であるから、力を隠す必要はない、と。
…戦場で生きてきた俺が、その程度の偽装も破れないとは。
「今回も、素晴らしい対抗戦を期待している。以上だ」
拍手が起こる。
学園長が台から降りると、その後ろに巨大な絵が浮かび上がった。スクリーンだ。
どうやら、大勢の教師で扱うルーンを分担し、空中にスクリーンを浮かび上がらせているらしい。
浮かび上ったのは、トーナメント形式の対抗戦内容。
Fクラスは…いきなりCクラスか。腕がなる。
さて、最初に誰を戦場に出そうか。
◇
「ええっ!?僕!?」
「ああ。こちらの切り札としては俺とノアを抜いてゼータの力が飛び抜けている。ここは派手な消耗をせず、じっくりやっていきたい」
控え室にて、俺たちは作戦会議をしていた。
といっても既に決定事項だ。拒否件はない。
それに、新しいルーンを扱えることにワクワクしているのか、ライカもまんざらでもなさそうだ。
俺たちは控え室から見ているからな。
絶対に勝ってこい。
『Cクラス VS Fクラス!両者入場!』
アナウンス、もとい実況に呼ばれ、Cクラスの男子生徒が前に出る。
拍手喝采。Cクラスと言えど上位クラスだからな。
対してライカには、嘲笑や非難がプレゼントされる。
趣味の良い連中である。せいぜい驚くと良い。
ちなみに、このバトルに大したルールは無い。
殺しはなし、相手を場外に押し出すか相手がなにも言えなくなるまで叩き潰すか。
道具は一つだけ持ち込んで良いことになっている。
「…十四秒だな」
「え?なにがっスか?」
「ライカの戦闘時間だ」
「すくなっ。いくらライカが弱いからって、それは可哀そうっスよ」
「ん?お前はなにを勘違いしている?」
「え?」
呆けた顔をしたフィオナに俺は事実を伝えてやる。
「十四秒。ライカは十四秒で勝利する」
「え…」
『戦闘、開始!!』
ライカには秘策を伝えてある。
ゴングの鳴りと同時に、すべての力を使え、と。
ライカの元に膨大な量のルーンが集まる。
八秒たった。
ルーンが解放された。
ライカの周りで暴風が吹き荒れ、相手の男子生徒はいつの間にか壁に押し当てられていた。
すなわち、場外。
『…え?』
「「「「「………………」」」」」
沈黙。
「や、やった?僕、勝った!?」
それを破ったのは当人のライカ。満面の笑みである。
ライカに覚醒させたルーンは【風】。
【風】から【強風】、そして最終的に【旋風】というルーンにまで仕上がった。
旋風。風を感じたと思ったら次の瞬間、人に反応できない勢いで吹き荒れ、『いつの間にか』飛ばされているという、反則なルーン。
圧縮すれば暴風の刃となり、体の周りでキープすれば嵐の鎧となる。
このルーンはゼータと違い、ライカが独自の解釈で見つだしたもの。
相手が怪我の一つも負っていないのは、直前でライカが風のクッションを作ったからか。
『しょっ、勝者、Fクラスのライカ!』
Fクラスの面々がわっと大きな拍手をしたのにつられ、ぽつぽつと会場全体が拍手をし始める。
チラリとAクラスのほうを見れば、ブリーチは口をぽかんと開けていた。
ふふふ、まだだ。まだそんなリアクションをとるには早い。
次はフィオナか。
さてさて、次はどんな反応をするだろうか。