戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
次に出るのはフィオナだ。
対するは、茶髪の強気な雰囲気の青年。
ライカがあれだけのことをやったので怪しまれるかと思ったが、特にそんなことはない様子だ。
これも瞬殺だろう。
『戦闘、開始!』
「ハァッ!!」
「えっ!?ッ!!」
声が響くとどうじに青年がフィオナに殴りかかり、反応が遅れたフィオナはバックステップで避ける。
青年は持ち込んだ剣を地面に食い込ませると、剣から手を放しその手をフィオナに向けた。
急激に雷のルーンが集まり、閃光の束がフィオナに放たれる。
バカな。なんだあれは。
あれではまるでレーザーではないか。
あんな使い手もいるのか。
レーザーが通ったあとは、残った電磁波以外に何も無かった。
柔土をスコップでえぐったようだ。
「ちょちょちょ!威力おかしいっス!」
「まだまだ!」
「うわあああ!」
悪戦苦闘…いや、一方的に攻められているフィオナ。
ふむ…相手に隙が無いからルーンを施す暇がないのか。
隙を作るために
「フィオナ!」
「な、なんスか!いま忙し─わわわ!」
「なんのためにアレを渡したと思っている!」
「アレ?あ!アレですね!」
「よそ見、している暇があるのかい!?」
「ちょっと待つっス!今話してるんスから!」
「えっあっ、ごめん…?」
相手の青年がかわいそうである。
しかし慈悲は与えない。
フィオナにあげた道具は手首に巻くリング。
黒を貴重としているが、外側に銀色の板がついている。
二つ、対で一つの道具なので反則ではない。
フィオナは銀色の板を掴むと、手の甲をなぞるように板を引っ張る。
すると、銀色の板が展開、中のからくりが動き出して鉄の手袋がフィオナの手を包んだ。
名付けて、『メタルナックル』。
フィオナは『ネーミングセンスぅ!』と言っていたが、なんに対して言ったのか理解できない。
「もう一個もこうして…よし、できた!」
『おーっとフィオナ、あれは持ち込んだ道具かー!?』
『独断で実況と解説をさせていただきます、実況のアルファと、その妹のベータです』
なぜか実況と解説が乱入してきた。
と、気がそれた。試合に集中しよう。
フィオナのメタルナックルを見た青年は警戒し、剣を引っこ抜いて構える。
そして、勢いよく飛び出してその剣をフィオナに降り下ろす!
対するフィオナは────
ガッ
『おおーっと!?フィオナ、剣を受け止めているぅ!?』
『あれは鉄でできているようですね。それ以上に受け止め切れるフィオナさんの腕力もすごいですね』
そう、フィオナはメタルナックルの手のひら部分で剣を受け止めたのだ。
そのままメタルナックルで剣をにぎり、剣を固定した。
「今だっ!」
「【秩序】のルーン…!」
ブオオオンッ!!!
謎の音と共にメタルナックルの手のひらから黙視できる密度の空気の波が放出され、剣を青年ごと吹き飛ばした。
彼女が発言させたルーンは【秩序】。
今までに無かったルーンを彼女は見つけ、それを実用化できるように俺が道具を作った。
秩序のルーンの真髄はその汎用性にある。
先程の音や、単なる衝撃、さらには一時的な障壁も作れるのだ。
「反撃開始っス!」
「…カッケェ!いいなあ、ソレ!俺も頑張らないと!」
焦るかと思った青年だが、逆に笑みを深めた。
雷のルーンと剣撃で、フィオナに畳み掛ける。
が、フィオナは事前に修業を積んでいる。
「遅いっス!」
手から衝撃を放ち、体を強制的に移動させ剣を回避、ルーンの雷は障壁を作って防いだ。
そして青年に急接近、首根っこを片手で掴んでもう片方の手から衝撃を放ち、リングの場外まで運んでいく。
そしてリングの場外間際に青年を放し、青年は勢いそのままに場外へ放り出された。
『ウィナー、フィオナ!』
『見たこともないルーンを使っての勝利となりました』
「やったっス!」
次の試合はゼータだ。
楽しませてもらおう。