戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
もうなんだか自らの言葉で解説をするのがめんどくさくなってきたな。
今からやるのはゼータ。俺が発現を促したのは【熱】のルーンだ。
対するは金髪の女…ん?女は珍しいんじゃなかったのか?
『ゼータVSマナ!戦闘、開始!』
「おうらあっ!」
先手はゼータが打った。
ゼータが持ち込んだのは修行の時にも使ったリング。
設定したルーンを自動的に集める力があり、ゼータの基本のルーンとなる【熱】のルーンを集めるように設定してある。
ゼータは手首のリングが集めたものとは別に火のルーンを集め、右腕を炎に包みながら特攻した。
相手の女───マナは即座に火のルーンを展開し、炎に耐性を持った状態で真正面から受け止めた。
右拳を捕まれたゼータは左膝を曲げてマナの横腹に膝蹴りを見舞わす。
が。
「んっ」
マナは少し顔を歪めて右腕から手を離し、バックステップで距離をとっただけ。
ダメージはそこまで入っていないように見える。
「ふう…そろそろ溜まったか?始めるぞ」
「っ…?何を」
する、とマナが問う前にゼータの体から凄まじい熱が解放される。
ゼータは【熱】のルーンを使ったコンボを作るために、相手に先制攻撃を譲らなかった。
さらに言うなら、控え室でも常に【火】のルーンを集めてリングを通し、【熱】のルーンに変質させていたのだ。
「ふう………ハァッ!!」
「ッ!?」
ゼータの掛け声で【熱】のルーンが放出され、土の地面が真夏の日射しの下に放置した鉄板のように熱くなる。
マナはローファー越しの熱さに気づいたのか、近くから【氷】のルーンを集め、体の端々に氷を纏った。
フシュウウ、と氷が水分となり、そして霧となっていく。
「無駄だぜ、すぐに霧になっちまう」
「それでも、熱さくらいはしのげるんじゃないかしら?」
意外と美人な顔を今度はにやりと歪ませるマナ。
先程からルーンを継ぎ足して氷を作っているのか、マナの端々から蒸気がもうもうと出ている。
何をするつもり……あっ、なるほど……
「ゼータ!蒸気だ!!」
「あなた全部の試合でアドバイス叫んでるわね!?遅いわ、よ!!!」
マナが気合いを入れる掛け声と共に辺りに氷が撒き散らされ、その瞬間に溶けきって大量の蒸気を出現させる。
これでは視界が塞がってしまう。
「おぶっ!?げほ、げほ……」
大量の蒸気にゼータがむせる。
確実じゃない視界のなかで咳をするなんて自らの場所を相手に教えているようなものだ。
視界が塞がっているのは相手も同じだが、これを決行したということはなにかしらの作戦があるのだろう。
「ゼータ!風のルーンで…」
「アドバイスは……もう遅いわっ!」
マナが剣を振りかざし、霧を切るように現れて───
ゼータに、喉を掴まれていた。
「………!?」
『勝負あり!ウィナー、ゼータ!』
『はい、何をしたのか見当もつきません。これ、解説の私要ります?』
『気分です!いてください!』
開場がわっと沸いた。
クラスメイト皆が───ノアは例外だが──困惑しているようなので、ざっと今の出来事を話す。
マナはしっかりとゼータの後ろから現れ剣を振り上げたのだが、ゼータは後ろに…否、
なぜ俺がそのようなことがわかるのかは、ルーンの動きである。
目をこらせば誰でもルーンは見えるが、無論、開場には【水】のルーンの分岐、【霧】のルーンが充満していた。
押し分けられた【霧】のルーンのおかげで、二人の位置を逆算、細かい動きもわかったのだ。
特にゼータは常に【熱】のルーンを集めていたし、わかりやすかった。
「しかし、どうやった?マナの位置をどうやって探知したんだ?」
自慢ではないが、俺の頭は特別らしい。
常人が今のようにルーンの動きで人を探知しようとすると、まず間違いなく脳が情報焼けするそうだ。
帰ってきたゼータに聴くと、帰ってきた答えは、
「いくら視界は隠せても、体温までは隠しきれねぇ。そういうことだ」
だった。
確かに、地面、空気の熱と体温は熱量が全く違うのでわかりやすい。
ルーンを視るよりも効果が指定できる分、脳への負担も少ないだろう。
こいつは本当にルーンの天才だ。
まさか、そんなことを成し得るとは。
次の試合はノアだ。さて、どうなるか。