戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~   作:翠晶 秋

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決戦

 

「シャカ!妹は元気か!?」

「皮肉か!あいも変わらず、床に伏してるよ!」

 

銃を構えながら走る。

互いに銃の扱いに長けている、そう簡単に相手の斜線に入ったりはしない。

 

この戦いのルール。

自らの銃に込める弾は6発きり。

本来はゴム弾を使うのだが、リベンジルールを用いた決闘のみ、本物の弾丸の仕様が許される。

もちろん、殺生は厳禁。頭や心臓への攻撃は禁止だ。

……狙いがそれて当たってしまったという名目では不問となるが。

 

「この技術なら!ルーンなら、治せるかもしれないんだぞ!」

「知るものか!ルーンで治せる方法を見つける前に、妹が死んでしまう!」

 

彼の妹は、生まれた時から重い病気を患っていた。

【銀弾】の称号は、それだけで価値がある。

膨大な金がかかる手術を【銀弾】の称号で賄おうとしていたのだ。

……だが、そんな事情に同情するほど、機械の国は甘くない。

機械の国は、喰うか、喰われるかなのだ。

 

「銀弾は渡さないぞ!」

「だったらその四肢を砕き、撃ち抜き!お前から勝ち取るだけだ!」

 

地面に違和感を覚え、垂直に跳躍する。

俺のいた位置を土の槍が貫通し、とっさにシャカの方を見ると……。

 

「穿て!」

 

火球が、奴の手のひらにあった。

豪速で放たれた火球。【風】のルーンで飛力を伸ばし、なんとかかわしていく。

着地の瞬間【土】のルーンで地面を振動させ、衝撃を周りに受け流す。

受け流した衝撃をなんとか扱い、波打つ土をシャカの方向へ追いやった。

 

名付けて【アースクエイク】か。

 

勿論、揺れている土の上では銃の狙いなど定まらない。

その分、揺れているのだからこちら側からも狙いにくいはずだが……。

 

「あいにく、俺は揺れ動く海の流れの中で、遠く離れた標的を狙い撃ったことがあるのでな」

 

一閃。

シャカの足が貫かれた。

……伊達に【銀弾】と呼ばれていないからな。

 

ルーンを集めつつ、もう1発とばかりに狙いを定める。

……が、何故か視点が揺れる。

気がつけば、俺の左足から血が流れていた。遅れてやってくる、刃物で切られたような痛み。

 

「ほら、どうしたんだよ【銀弾】───いや、ノインス!」

「まさか、揺れる大地の中で俺を撃ちぬくとはな」

 

俺の中で、痛み、怒り、憎しみ全てを増幅させる。

任意で分泌されたアドレナリンが俺の足の痛みを軽減し、なんとか立てるようにまでなった。

 

が、これ以上地面を揺らすような大規模なルーンの行使は無理そうだ。

使うルーンを【土】から【氷】に変える。

振動が収まった事で、シャカも立てるようになってしまった。

お互い、片足が撃ち抜かれた状態でリング上を駆け回る。

 

「いい加減、降参したらどうだ!」

「足を撃ち抜かれてしまったら、もう逃げるという選択肢はないな!」

 

片方が撃てば、片方が防ぐ。

氷の壁が砕けて散り、岩の壁が抉れて舞う。

残り、互いに4発。

足がじんじんと痛い。

任意で出したアドレナリンは効果がすぐに切れてしまうから不便だ。

【氷】のルーンを集め、行使。

 

「氷で足を固定か!考えるじゃねえか!」

「岩は傷口に菌が入る!貴様にはできない芸当だ!」

「ふんっ、今のタイミングでそれをするってことは、アドレナリンが切れたんだろ!」

 

さすがは(ホークアイ)か、よく見ている。

互いに壁を作って隠れる。呼吸を整えるためだ。

……まだ奴の声には元気があった。虚勢ではなく、体調が良好な証だ。

呼吸を整え、ルーンを左手に、銃を右手に。

貴重な弾だが、ここは牽制が必要だ。

 

バン、と火薬がは弾ける音。

キン、と弾が何かに防がれる音がした。

 

氷の壁を透かして向かい側を見る。

二つの弾が転がっていた。

 

「……撃ったのか?」

「どうだ?俺の方が【銀弾】らしいだろ?」

「…………」

 

シャカは、弾を撃った。

音速で飛来する弾を撃ったのだ。

恐らく、長年の経験と冴え渡る勘。

俺がきっと撃ってくると考えたシャカは、未だにアドレナリンを分泌して正常な判断ができない脳で勘を頼りに銃口を傾け、ほぼ俺と同じタイミングで発砲したのだろう。

少なくとも、今の俺にはできない。

 

互いに残り3発。

 

もう出し惜しみはしていられない。

被害を最小限に抑えるという選択を捨てろ。

 

「……ッ!!」

「おああああああああ!」

 

互いに飛び出し、氷で、岩で、空中に道を作る。

足を道にかけてルーンで氷を動かせば、自動レールのように動き出す。

すれ違った瞬間に撃ち合う。肩に鈍痛。

ルーンを集め続け、道を作り続ける。距離が近まった。

 

「ふんっ!」

「はッ!!」

 

銃身で殴り合い、衝撃でレールから落ちそうになったところをルーンで無理やり固定。

天地が逆さまだ。頭に血が昇っていく。

 

考えろ、勝つ方法を。制空権をとる方法を。

俺は氷のレールを、奴は岩のレールを。状況も似ている。

俺がやられたら嫌な事を考えろ。それは───。

 

「「そこだ!!」」

「なっ!?」

「なにっ!!」

 

二人とも、相手のレールを撃ち砕いた。

まさか、同じ事を考えているとは。

ルーンで衝撃をいなす余裕もなく、地面に激突する。

だが、痛みに悶える時間もない。走れ、走れ、走れ!

 

「「おああああああああああ!」」

 

残り1発しか入っていない銃で殴りあう。

受け止められ、受け止め、殴り、殴られる。

 

ぐらり、とシャカがバランスを崩した。

 

刹那、銃口を突きつける。

刹那、眉間に銃口の冷ややかな感触が突きつけられた。

 

「……頭への攻撃は禁止だぞ」

「……それ、先にやったお前のセリフじゃねえよな」

「……ふっ。わかった、俺の負けだ。素直に認めよう。【銀弾】はお前が持っていけ」

「良いのか?」

「この国ではそんな称号、石ころ一つの価値もないらしいからな。書類を出せ、元【銀弾】のサインをやる」

 

リベンジルール。

機械の国発祥の、決闘のレベルを上げた戦いだ。

お互い全力をぶつけあうため、戦ったあとはボロボロになって笑い合うのが基本だ。

 

すっと手を差し出す。

ぎゅっと握られた。

 

「妹によろしくと伝えておいてくれ、、【銀弾(シルバー・バレット)】」

「……いろいろありがとう、【鷹の目(ホークアイ)】」

 

……そういえば、負けて二位になったのだから俺が鷹の目になるのか。

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