戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~   作:翠晶 秋

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2人の知将

 

「───じゃ、俺はもういくぜ。妹がどうにかなったら、また来る」

「ああ、待っている。そのときは……」

「「また、研究を」」

 

シャカが背中を見せ、去っていく。

足を貫かれているのでやや引きずり気味であるが、元気そうで良かった。

……かく言う俺の足も、撃たれて包帯が巻かれているのだが。

 

「さて、ノイン君?授業を勝手に抜けた罰を受けてもらおうか?」

「生徒指導室にあるプリントなら、すでに終わらせてある」

「えっ嘘。いつの間に!?」

「勝手に拝借しておいた。無論、答えも見ていない」

「君は……もう、何も言えないよ。わかった、やったのなら終わりにしよう。……はあ。反省する時間を稼ぐだけためのあのプリントなのに……」

 

レンナ先生が肩を落とす。

今は……時間が惜しい。

ルーンについて、もっと深く知りたいのだ。指導など受けている暇はない。

 

「さて、レンナ先生。教室に戻ろう。授業中なのだろう?」

「そ、そだね。帰ろうか」

 

レンナ先生を後ろに、俺は考える。

 

───何かが、来る。

 

 

 

 

教室前につくと壁越しに喧騒が聞こえた。

何かあったのだろうか。

 

「コラー!騒がしいぞー!」

「あっわわ、先生!助けてください!」

「ライカ。何があった?」

「ゼータ君が脱走しそう!」

「離せフィオナ、セルカ!ノインを助けに行くんだ!」

 

火のルーンを撒き散らし、窓から飛び降りようとするゼータ。

氷のルーンで足を氷漬けにするとバランスを崩し、氷ごと床に倒れた。

 

「うごごごご!ノインを助けに……」

「……俺ならここにいるが」

「ほあっ!ノイン!大丈夫か!あのよくわからん転校生にいじめられてないか!」

「誰がいじめられるか。あいつは知り合いだ。……機械の国のな」

 

いつからこんなに暑苦しいキャラになったのだろうか。

フィオナとセルカに押さえつけられたゼータが見上げてくる。

 

「へ?そうなのか?……そういや、ノインの故郷の事は全然知らないな。どんなとこなんだ?」

「ノアちゃんに会ったときのことも詳しくお願いするっス」

「ふむ……。いいか、ノア?」

「構わない、です」

 

ではまずは俺とシャカの出会いから……と前置きをして、俺は語り出した。

 

 

 

 

「ハァッ!!」

「狙いが単調だ!もっと視線と殺意を隠せ!」

 

機械の残骸で作られた的を撃ち抜くと、家の方から声が出て聞こえた。

師匠だ。物心ついたときから親のように俺を育ててくれた。

俺に両親がいないことを教えてくれたのが8歳の頃。俺に銃を渡してくれたのが10歳の頃。

なんてスパルタ……とも思えるが、ここは機械たちとの戦場ギリギリのライン。

 

「俺の弟子なら、もっと精度を上げられる」

「……はい」

「ほら、これ飲んどけ」

 

俺に瓶を放る師匠は、この国で一番の傭兵。

だからこそこうして戦場───【ウォーライン】ギリギリに家を建て、やってきた機械を打ち倒して生計を立てているのだ。

 

銃の弾丸を見定めていると、ふいに師匠が言った。

 

「なあ。お前さん、お国の学園に行く気はねえか」

「…………っ」

「そう身構えんな。別にお前の面倒みるのが嫌になったわけじゃない。けれどな、お前が学園に行きゃ、お前はもっと強くなるし、良い成績を残しゃ俺にもハクがつく。【ウォーライン】は俺だけで十分だ。だから、行ってきちゃくれねえか」

 

こうして俺は機械の学園の編入テストを受けた。

【ウォーライン】ギリギリで半サバイバルのような生活をしていた俺はもちろん勉強などしているわけがなく、筆記だった編入テストに落ちた。

師匠は言った。

 

「……落ちたのか?落ちたからって帰ってきたのか、のこのこと?」

「でも、勉強など経験がない。いきなりテストを受けても、出来るはずが」

「じゃあ誰かに教わるんだろう?お前の勉強は学園でないと出来ないのか?」

 

学園に合格するまで家の敷居を跨ぐなと言われた。

国を生きるのは楽だった。

ゴミ捨て場のガラス瓶を砕いて粉にし、質屋に入れた。

勉学に必要と思われる一式を揃えて俺は再び学園に来たが、こんな貧乏な人間に勉学を教えてくれる先輩などいるわけがない。

そう考えたときだった。

 

「……」

「…………」

「………………」

「「……………………あ」」

 

いた。

くすんだ銀色の髪を肩先まで伸ばし、小脇にノートと鉛筆をもつ少年が。

彼もまた、学園に落ちたらしい。

勉学を教えて欲しい旨を伝えると、少年は快諾してくれた。

曰く、「妹を守るには1人じゃ足りない。前から仲間が欲しかった」らしい。

 

少年は珍しい銀髪をある程度まで伸ばして切り、それを売って飯を食っていたらしい。

卒業生に土下座してもらった教科書、ボロボロでメモだらけのノート、なんども削ったのか殆ど芯の残っていない鉛筆。

どれもこれも、彼が惜しまぬ努力をした証だった。

 

俺はまず教科書を暗記した。

いちいち借りていたら彼に迷惑をかける。

次に、彼のノートを暗記した。

どんな問題がどんな答えになるのか、逆算するために。

俺が一つ、なにかをする度に彼は───シャカは複雑な表情をひていた。

 

そうして俺は見識を深め、2人で必死に働いて自身やシャカの妹を食わせて、身だしなみも整えた。

そうしてテストに挑んだ。

結果は俺が一位、シャカが二位。文句なしの合格だ。

俺たちは「天才のノインス、秀才のシャカ」と呼ばれつつ2人並んで成績を伸ばし、革命を起こしていった。

 

最終的には俺たちは知将として国に呼ばれ、戦場で指揮をとることになった。

 

 

 

 

「とまあ、あいつとの出会いはこんなもんだ」

「ええ!?今ので終わり!?」

「もっとこう……なんであの人があんなにピリピリしてるのか、とか、師匠はどうなったの、とか、色々あるんだけど!」

「ふむ……しかし、時間を考えると次の授業までにはどっちかになってしまうな」

 

今も授業をすっぽかしているのだが、その先生も俺の話に興味津々なので問題はない。

次の授業は違う先生なのでどうにもならないが。

 

「ノアとの出会いと、今の話のその後。どっちが」

「ノアちゃん!」

「ノアだな」

「わかった、わかったから被せるな、女子ども。あと顔が近い」

 

必死に近づいてくる女子2人をあしらいつつ、俺はノアとの出会いを思い出し始めた。

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