戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
「ノアの話、です?」
「あぁ。お前の番だ」
「ノインが、ノアのことどう思ってるか、知りたいのです」
そう微笑むノアの頰を指でぷにりと潰して、俺は語り始めた。
◇
俺は機械の破片を集めるために、酸素ボンベを使って海の底へ潜っていた。
ん?酸素ボンベが何かだと?
ふむ……箱の中に空気を詰め込んで、それをチューブで吸うだけの装置だ。
船に紐を括り付け、ボンベを使って海底に潜っていたとき。
機械の残骸の中に、なにかを見つけた。
カプセルのようなそれは、少なくとも汎用型の機械がつけているエネルギーキューブとは違って……ん。
エネルギーキューブ?ルーンを溜め込んだ箱のようなものだ。
それで、そのカプセルを持って地上に上がり、よく確認した。
人1人入れそうなそれにはネームプレートがあってな。
それを確認したと同時に、カプセルが蒸気を吹き上げて開いた。
「……人?」
そこには、白い髪をした人間が入っていた。
老人かと思ったが、どうやら違うらしい。
髪をかき分けると、そこにいたのは見目麗しい少女だった。
息はしている。痩せてもいない。
とりあえず、俺はその少女を抱えて師匠の家まで連れて行った。
……あとからわかったことだが、カプセルの扉側にはチューブが付いていて、そこから栄養を摂取していたことがわかった。
おおかた、周りに電磁系の罠を貼って魚を採ってペースト状に、海草などからミネラル分を採っていたのだろう。
今更ながら、あのカプセルの技術は目を見張る物があったな。
「は?なんだ、その女?」
「海の底にいた。カプセルのようなものに入っていて……痩せてはないけど、とにかく磯臭い。師匠は歳をめしているから少女の裸体くらい平気だろう。体を洗って、寝かせてやってくれ」
「師匠になんて口聞く。……で、お前はただサボってるわけじゃないな?」
「カプセルを回収してくる。あと、カプセルがあった場所周辺をあさる」
「よし。いってこい」
「頼んだぞ、師匠!」
そうして俺はカプセルを回収しに行った。
真っ先に確認したのはネームプレート。
『ノア・ディアーテ』
ディアーテの意味が何かは分からなかったが……幼い俺は無視して少女をノアだと考えた。
これが『ノア』との出会い。
で、海をあさり、カプセルだけ回収して帰ると……。
「こいつマジ強い」
「師匠!?」
師匠がぶっ倒れていた。
衝撃だったな、どれだけ頑張っても越えられなかった師匠が地に伏しているのだから。
「……?」
「君は……?」
「……?」
「名前だ。俺はノインス。お前は?」
「……ない」
「ない?だったら君はノアだ。君のカプセルに書いてあった」
「カプセル?」
驚くことに少女は目覚める前の事をまったく覚えていなかった。
それどころか、戦闘センスは俺をも越えた。
ギルドに行けば剣術や会計術を覚え、酒場に行けば舞と接客を学んだ。
戦闘以外はからきしだったが……ノアは戦闘に必要なこととなるとなんでも覚えられる。
魅了。暗殺に使えると言った。
技師。銃の手入れができると言った。
スポンジのように技術を吸収していくノアに、俺は畏怖した。
才能の塊。
コイツは十分に……機械と渡り合えると、俺はそう確信した。
◇
「これが俺とノアの出会いだな」
「……そんなことが、あったのですか?」
「あぁ。お前が目覚めたのは師匠の家だったからな。カプセルのことは……いつか話そうと思っていた。今まで話せなくてすまん」
「気に、しないでください。同じ、立場だったら、ノアも、そうするのです」
そうか……それなら安心だ。
「ハイ、みんな授業やるよー」
「席につけ。お話は終わりだ」
昔話をするのも悪くない。
そう思った。