戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
「今日は、ルーン式の応用問題をします」
先生が不機嫌だ。
先程からムスーッとしている。
童顔を膨らませ、ぷりぷりと怒っていた。
「せ、先生?なにか、あったんですか……?」
ライカが恐る恐る手をあげる。
それに対し、レンナ先生は持っている資料を教卓に叩きつけた。
「怒ってるよ!今世紀最大で怒ってるよ!」
「えっと……先生、何があったのか教えてくれはしないか?」
「うん、ゴメンね、みんなは悪くないよね……!」
「何があったんだ、先生」
「いや君だよ!!」
ダァンと教壇を叩く先生。
……そんなことを言われても。
心当たりがありすぎて何を謝ればいいのかわからない。
「ほんっとうに、ほんっっっとうに君は!肝が座ってるどころの話じゃないよ!」
「ちょっ、待て待て。ノインお前、また何かしたのか?」
「侵害だな、俺は当たり前のことをしたまでだぞ」
「何が当たり前って!?クラスの階級を無くすだなんて!」
「「「「「クラスの階級を無くす?(のです?)」」」」」
あぁ、それか。
ようやく、この無駄が多いシステムにも終わりが来たらしい。
「……今回は授業やめてノイン君がやったことを小一時間ほど話そうか」
「やーりぃ!」
「空気読むっス、ゼータ。今そんな雰囲気じゃないっスよ」
「あっ……すまんついぐえっ!?」
フィオナが言うが早いか、レンナ先生から白い物体が飛来、見事ゼータを撃ち抜いた。
……チョークだ。
鳥が締められたような声を出しながら白目を剥くゼータを一瞥し、黒いオーラを纏ったレンナ先生は語り始める。
「……時に聞こう諸君。階級分けにはどんな意味があるか。……答えろセルカァ!」
「ッッッ!!強さやスペックをわかりやすくし、戦争時にも作戦が立てやすくなるからです上官!」
「目上の者にはSirをつけろ!」
「も、申し訳ありません、
びしっと敬礼するセルカ。
たしかにすごい気迫だ。
「そう。クラスって、そうやって強さとかを分けるためにある。強い者は指揮官になったりするからね。しかし……!」
その細い指が、俺に向けられた。
「ノイン君。君はクラス制度を無くすことを望んだそうだな!?」
「学校として適切だろう、Sir」
「クラス制度が無くなれば、いつか攻められたときに対応できなくなる!」
確かに、この学園は元は軍人を育てるために開設されたそうだが……。
「既に軍事施設がある今、教育機関としては最適解な気がするが?」
「Sir!」
「……気がするが、Sir」
「たしかに教育機関としては正しいのかもしれないね。けど、この学園の由緒あるシステムを生徒が作り変えるだなんて!」
だが学園長はそれを許してくれた。
だからこそレンナ先生がこんなにも荒れているのだろうが。
あらゆる時間と効率の良さを配慮してこそのシステム改変。
学園側も、システムの改変を前々から狙っていたのだろう。
「……ノイン、知らぬ間に何してんスか」
「あ?クラスを無くすとどうなるんだ?もっとわかるように説明してくれ」
「ゼータにはまだ早かったっスねぇ」
「おま!それどういう意味だよ!」
ゼータの絶叫でレンナ先生は我に返り、説明を始めた。
「クラスを無くすって言うのはね……例えば、Sクラスにブリーチって人、いたでしょ」
「おう」
「その人とゼータが、もしかしたら一緒の授業を受けるかもしれないって事」
その通り。
補足をするとすれば、頭の良いやつが頭の悪いやつと絡むことによって、自動的に悪い奴の学力水準も上がる……かもしれない。
「……ほぉ。つまりは、合法的にあいつを殴れるってこった」
「違うよ?いやまあ、立場的には簡単に殴れるようになるけど、違うよ?」
「先生。クラス替えはいつからだ?」
「来月。まったく、凄いことしてくれるよ……」
「世辞はいらない」
「褒めてないよ!?」
対抗戦での結果は、じわりじわりと出ている。
……いつか、アイゼンという名の意味も分かるのだろうか。
どうにも気にかかる。
それに、学園に入学してから本部からの指令が1つも出ていない。
俺とノアはこの学園で何をすれば良い?おちゃらけていればいいのか?
意図を感じるんだ。何をさせようとしているのか。
「ノア」
「はい?」
「今夜、俺の部屋に来れないか」
「……?わかりました、です」
ノアは首を傾げながらも頷いた。
妙な胸騒ぎ。
嵐が、来る。