戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~   作:翠晶 秋

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暗号解読。ただし甘くはない

 

「さて、ノア」

「はい」

「もう落ち着いたな?」

「はい」

「ならば、本題に入ろうと思う」

 

うなずくノアを見て、俺はベッドの隣の棚から一枚の手紙を取り出す。

『ルーンナイト 育成 学園 卒業マデ 入学 ノインス ノア 』と書かれた手紙。

ナイアから受け取った手紙だが、やはりこれまでの経験からすると、本部からの指令がこれだけと言うのはおかしい。

本部で使っている暗号文は25通り全て試したが、ヘンテコな文になるだけで成果は得られなかった。

 

「ノアはなにか心当たりはないか?」

「どうでしょう。例えば、この国に、入る時の、船の暗号、とか」

「なるほどな。しかし頭文字が『シリィ』ではない。別の頭文字を探す必要があるか?」

「いえ、まだ、変える月では、ないです。ということは、他の読み方があるのでしょう」

 

ふむ……。

本部はどの年齢にも同じ暗号を使うので、幼い頃は苦労した。

ヨルノワールに行く時なんかは炙りだしでないと白紙のままで……。

 

「あぶり出しだっ!!」

「おうっ」

 

突然手を叩いた俺にノアがびくりと反応する。

紙の匂いを嗅ぐと、どこかほんのりと柑橘系の匂いがした。

 

「ノア、これはなんの匂いだ?」

「……?すんすん。これは……オレンジ?」

「やっぱりだ!」

「オレンジの匂い……ヨルノワールの時の?」

「同じ仕組みだな」

 

ヨルノワールという国がある。

ヨルノワールは夜景が絶景な国で、そこのパーティの主催者である公爵夫人が怪しげな薬を裏で売っているという証拠を掴むという依頼で……話が逸れた。まぁヨルノワールに行くときの暗号文という話だ。

 

あぶり出し暗号は意外と簡単に出来る。

紙に柑橘系のエキスで文字を書き、それを乾かせば完成だ。

液体を塗った所は、何も塗っていない所に比べて発火点が低くなる。

だから、紙が燃えない程度に炙ると、焦げて何を書いたかが分かる仕組みだ。

 

暖炉は奥に火がついているので直接炙ることはできないが……その点なら俺の得意分野だ。

暖炉から【火】のルーンを集め、酸素を小爆発させるていどに燃やす。

ポンと気の抜けた音がして、手紙に文字が浮き上がった。

 

「おお」

「『ソウビ』か……。これだけじゃまだ分からないな。もう少しやろう」

 

そうして次々に紙を炙って行くと、やがてちゃんと文字が読めるようになった。

 

「っ……ますます読めなくなったな」

「最初の文字も合わさってぐちゃぐちゃなのです……」

「この状態でまた暗号を当てはめるんだろうな……」

 

まぁ面倒臭いが仕方がない。

25通りの暗号を試すことになりそうだ。

まずは行の初めから……『シ』『リ』『ィ』……。

 

「……ふぅっ」

「ノインっ!?どうしたのです、ノイン……」

「25通りの暗号、その全ての暗号を当てはめた結果、全ての頭文字が『シリィ』だった」

「……もしかして」

 

微妙な顔で口をもにょもにょさせるノアに、俺は苦い顔でうなずく。

本部の暗号で解読した文を、さらにこの国の暗号で解読する必要があるようだ。

それに、全てが『シリィ』で始まっているので、どの暗号が正しいか、25通り全ての暗号を試す必要がある。

ざっと計算して775通りか……?途中で絞り込めばもっと少なくなるが。

 

「ノアは、本部の暗号もこの国の暗号も記憶しているわけじゃないしなぁ……」

「す、すみま、せん」

「……これは重労働だ」

 

気まずそうにノアが「コーヒーを淹れてくるのです」と呟く。

この国のコーヒーは不味いから正直要らない。紅茶は一級品だが。

 

「ノア、紅茶を」

「っ……すみません」

 

ノアはすでにカップを手にしていた。

黒い液体が入っている。

……ノアの給仕の才能か……。

エグみのあるコーヒーをすすりながら暗号を解読する。

 

ノアは負い目からか本を読むことも応援することも出来ず、先ほどから俺のベッドでソワソワしている。

 

「ノア」

「ひゃっ、ひゃい」

「明日の授業は休む」

「伝えておくのです」

「体調不良と言っておけ」

「はい」

「解読は明日に回す。今日のところは帰れ」

「っ……はい」

 

ノアが立ち上がる。

風のルーンでノアにバリアを作る。

ノアがバリアを作ろうとするとこの国を中心に台風が作れてしまうからな……計算則だが。

 

ノアが窓から帰って行くのを見たあとに、俺はひとまず仮眠を取ることにした。

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