戦場最強の二人が学校で生活するそうです~魔術と機械のエージェント~ 作:翠晶 秋
「……」
カリカリ。
「…………」
キュッ。
「………………」
キュポン。ちゃぷちゃぷ。
「……ふう」
やっていることが全く変わらん。
どうしたものか。
暗号の解読は進んだが、正直言ってつまらん。
スパイやら何やらが「飽きた」と言って放り出してはいけないのだが……とりあえずは伸びをして、窓の外を眺める。
せっかくのズル休みだ、なにか……ん。
「まったくサインに気づかなかったな」
窓を開けて外に飛び出る。
なかなか高いが別に構わん。【氷】のルーンで足場を作り、それを移動させてレーンのようにして滑る。
シャカと戦ったときに思いつきで使った力だ。空中にレーンを作れば、空騎兵───戦争のときに苦戦したやつにも簡単に肉薄できる。
なんせこのレーンは、空中に一本だけ作り続けるために土台が必要ない。
わざわざ【ウォーライン】の壁に登ってそこから狙い撃つより遥かに楽だ……っと。
そう考えている間に学園の敷地から出られた。レーンは【火】のルーンで溶かしておく。
それで……城下町、のような表現があっているのだろうか。
俺は一般人を装ってそこらをうろつき、対象を尾行する。
……ん、路地裏に入ったな。来ても良いという合図か。
俺も追って路地裏に入ると、開幕肩を掴まれた。
「バカなの!?なんで制服のままきちゃったのさ!!」
「……あぁ」
「あぁじゃないでしょおバカ!!トーヘンボク!!スカポンタン!!」
「トーヘンボクはわかるがスカポンタンはわからない」
金髪に翡翠色の、見た目はただの町娘……ナイアだ。
最初にこの国に来たときには世話になっ……てない。こいつはポンコツだった。最初から、最後まで。
翡翠色の瞳が、俺の全身をくまなく見つめる。
「成長したねぇ」
「お前はまったく、一ミリも、成長してないようだがな」
「そこまでいうことなくない!?」
軽口を叩き合い、そして互いに呼吸を切り替える。
「それで今回は」
「新しい電報……というよりかは、新しい情報を伝えに来た、
「構わない」
「学園の地下がキナ臭い。調べてみる必要がありそうだ。地下への行き方は分からない。学園長が何代も代わって、地下の存在は忘れ去られてしまった。……でも一つ、リスクを伴うけど調べるに値しそうな部屋がある。一階の倉庫。表上は倉庫室になっていたけど、どれもこれも勉学に使わないものばかり。機会について深く学んできたノインスならそれの謎を解けるし、地下への扉があるかも分かる」
「……なるほど」
「……まぁこんなもんだね。伝えることは伝えたよ!それじゃあ私はパフェでも食べてこようかな〜」
「また食うのか」
「もちろん君の奢りイッダァ!?」
阿呆なことをぬかすナイアの額にコインをぶつけてその場をさる。
釣りはいらない。
「ツンデレかー?」
「それでいいから早く帰れ!」
地下か……。
学園に地下があったとは。
それで、その地下へ行ける扉があると思われるのは、倉庫室
……ん。
なぜナイアは、そこまで学園の構造に詳しいんだ?
現役の学生でも、迷子になって帰ってこない時があるのに?
…………。
◇
ふう。行ったかな。
やれやれ、スパイってのも大変だね。何人も何人も、人を演じなきゃいけないんだから。
【色】のルーン。
「……あー、あー……。【音】のルーン。あー、あー……よし」
髪の色が、緑色に変わった。
声が、少し大人っぽくなった。
えーと、髪型も変えないと。髪を編んで、えーと……鏡を確認。よし。
懐から一枚の紙を取り出す。
この国での、身分証明証みたいなもの。
『魔法学園講師:レンナ』と書かれたカードを丁寧に懐にしまって、るんるんと町に繰り出す。
今日は体調不良で教師の仕事はお休み貰ってるもんね!行きつけのお店のパフェを食べにいこっと!!